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木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下) の商品レビュー

4.2

41件のお客様レビュー

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2014/09/18

筋肉質の大きな身体の男性が、アップに写る表紙、そして刺激的なタイトル。 この本が単行本として書店に置かれていた時から、「どんな内容なのだろう」と気になっていました。 しかしあまりの分厚さに躊躇っている間に、時は流れてしまいました。 記憶から薄れかけていたところ、上下巻の文庫となっ...

筋肉質の大きな身体の男性が、アップに写る表紙、そして刺激的なタイトル。 この本が単行本として書店に置かれていた時から、「どんな内容なのだろう」と気になっていました。 しかしあまりの分厚さに躊躇っている間に、時は流れてしまいました。 記憶から薄れかけていたところ、上下巻の文庫となって平積みされていたので、今度は迷わず、レジに運びました。 「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」と言われた柔道王、木村政彦の生涯を追った、ノンフィクションです。 熊本の貧しい家庭に育った、木村少年。 その彼が日本一の柔道王、牛島辰熊と出会います。 彼が待ち受けていたのはまさしく、「鬼」の猛練習。 師弟が目標にしたのは、開催不定期の天覧試合を制覇すること。 「強くなりたい」という一心で、人の3倍、9時間とも10時間とも言われる壮絶な練習を積んだ木村は・・・という展開。 戦時中に柔道界トップに登りつめ、全盛期を迎えた木村。 しかし戦争による大会と練習の中断、戦後の柔道の組織統合・ルール変更。 師匠と離れ、抑えられていた奔放な性格を御せず、体力も経済力も堕ちていく日々。 その先に待っていたのが、もうひとりの怪物、力道山。 著者は木村の戦闘能力と、力道山の興行主としての力量を、詳細に検証していきます。 そして格闘家としての名声が地に落ちた木村が、その後どのような人生を歩んだのか、多くの関係者の証言を交えて、トレースしていきます。 一人の柔道家・格闘家の人生を追うということが主題になっているのですが、その副流として、数多くの要素が織り込まれているなあと、感じました。 主だったところを挙げてみます。 ・柔道の成り立ちと講道館という存在、スポーツ競技としての柔道、立技と寝技 ・師匠と弟子との関係、思想を持つ人間/持たない人間 ・究極まで鍛えた人間の強さ ・武道としての格闘技と、プロとしての興行 ・ブラジルの日本人移民の歴史と、柔道の世界伝播 ・戦中/戦後における在日朝鮮人の意識の変化 ・家族愛 上下巻通じて1200ページ近くある大作ですが、本流と副流のバランスが良いこともあり、次へ次へと、読み進めました。 格闘技に全く興味が無い人には辛い分量かもしれませんが、20世紀という時代を振り返るという意味でも、魅力がたくさんつまった作品だと思います。 読了後は、この本で触れられている試合を動画サイトであれこれ、見てしまいましたよ。 久しぶりに、「読み応えのあるノンフィクションに巡り合えたなあ」と感じた、力作でした。

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2014/09/18

純粋な柔道の申し子であり木村の後に木村なしと言われた、木村政彦が戦争の混乱に翻弄されて、妻の薬代を稼ぐために魑魅魍魎渦巻くプロレスの世界の渦中に引きずりこまれる。そして、目の前に立ち塞がったのは戦後が生んだ怪物である力道山だった。筆者が18年もの歳月をかけて追いかけた木村政彦とい...

純粋な柔道の申し子であり木村の後に木村なしと言われた、木村政彦が戦争の混乱に翻弄されて、妻の薬代を稼ぐために魑魅魍魎渦巻くプロレスの世界の渦中に引きずりこまれる。そして、目の前に立ち塞がったのは戦後が生んだ怪物である力道山だった。筆者が18年もの歳月をかけて追いかけた木村政彦という男、柔道の鬼。臭気とともに、まるで汗ばむような勢い筆様で、上下巻1000ページの長さを感じさせないくらに読ませてくれる。圧倒的完結。読後はまさに少しばかり胸をはって肩で風切り歩きたくなる。

Posted byブクログ

2014/08/17

【選んだ理由】 アマゾンの評価が高かったから 【読んだ感想】 格闘ファンでない私でも非常に楽しく読めた。最後は少し冗長だったが、緻密な取材でひきこまれていった。

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2014/07/23

間違いなく『空手バカ一代』&『燃えよドラゴン』世代である。悪ガキ共が手製のヌンチャクを振り回しながら奇声を上げ、とある友人は極真空手を学ぶべく故郷を出奔したあげく不審者尋問にひっかかりあえなく強制送還された。ブラウン管の中では端正過ぎる竹脇無我が姿三四郎を演じていた。そんな格闘フ...

間違いなく『空手バカ一代』&『燃えよドラゴン』世代である。悪ガキ共が手製のヌンチャクを振り回しながら奇声を上げ、とある友人は極真空手を学ぶべく故郷を出奔したあげく不審者尋問にひっかかりあえなく強制送還された。ブラウン管の中では端正過ぎる竹脇無我が姿三四郎を演じていた。そんな格闘ファンタジーの中で育った私には戦後混乱期の闇に蠢く格闘界の巨人(木村政彦、力道山、大山倍達等)の実像は壮絶でもあり夢から覚める思いでもある。何よりも驚いたのは本書読了後YouTubeを検索して見た好々爺のような“鬼の木村”晩年の姿。

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2014/05/03

牛島辰熊、木村政彦、岩釣兼生、石井慧と連なる柔道の鬼の系譜。 今後三倍努力の柔道家は出現するのであろうか? 柔道(柔術)の日本および世界への伝播の歴史、ブラジリアン柔術や総合格闘技、プロレスの創成期が表から裏から紹介されており、また聞きだった知識、特に武徳会について、が頭の中で...

牛島辰熊、木村政彦、岩釣兼生、石井慧と連なる柔道の鬼の系譜。 今後三倍努力の柔道家は出現するのであろうか? 柔道(柔術)の日本および世界への伝播の歴史、ブラジリアン柔術や総合格闘技、プロレスの創成期が表から裏から紹介されており、また聞きだった知識、特に武徳会について、が頭の中で整理されました。 混乱が続く柔道会ですが、武徳会や他流派、木村政彦とプロ柔道に関してこの機に総括して前に進むべきでは?と考えさせられました。 噂通りの素晴らしい本でした。近々再読します。

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2014/04/26

読み進めるのが辛い。だけど、読まずにはおれない木村政彦の後半生が、この下巻です。 憎たらしいぐらいに強いエリオ・グレイシーとのマラカナンスタジアムでの一戦は、想像するだけで手に汗握る世紀の大一番。 かなうことなら、この一戦をライブで見てみたかった! それほどの作者の熱量と筆力の...

読み進めるのが辛い。だけど、読まずにはおれない木村政彦の後半生が、この下巻です。 憎たらしいぐらいに強いエリオ・グレイシーとのマラカナンスタジアムでの一戦は、想像するだけで手に汗握る世紀の大一番。 かなうことなら、この一戦をライブで見てみたかった! それほどの作者の熱量と筆力のド迫力パワーで満ちていました。 また、上巻での太平洋戦争から敗戦を経ての状況が綿密に語られていたので、この試合が持つ意義や勝利の価値がよりいっそう重く感じられました。 そして、ついに力道山戦。 上巻から読み進めていくと、読者なら必ず木村政彦へ強く思い入れてしまうでしょう。 それゆえに、事実を既に知っている読者としては読み進めるのも辛いです。 でも、同時に「どうしてプロレス興行が今日存在するのか?」を読んで納得できる気もします。 歴史にifはありませんが、もし力道山がプロレスも興行もフェアプレーで臨んでいたら、今日のようなプロレスや格闘技興行があり得たのだろうか? とも思ってしまいます。 そして晩年の木村政彦の苦悩についても語られます。 皮肉なのは、木村政彦自身はエリオの息子ホイス・グレイシーが第1回UFCで優勝する前に亡くなっていること。 それが本人にとって良かったのかどうか分かりませんが…。 プロレスや格闘技ファンには、ぜひとも本書をオススメします!

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2014/04/26

ノンフィクションだからこそ、 寂しい気持ちになってしまった。 地下闘技場って、本当にあったのか。

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2014/04/18

下巻はブラジルでのエリオ・グレイシーとの戦いから始まり、力道山との巌流島決戦、その後の人生が描かれる。なぜ木村政彦が力道山との試合に勝負師として臨むことができなかったか。その後もどのように勝負師としての心を失わずにいたのか。それ故いかに苦しんだか。木村への尊敬と愛に溢れた文章が続...

下巻はブラジルでのエリオ・グレイシーとの戦いから始まり、力道山との巌流島決戦、その後の人生が描かれる。なぜ木村政彦が力道山との試合に勝負師として臨むことができなかったか。その後もどのように勝負師としての心を失わずにいたのか。それ故いかに苦しんだか。木村への尊敬と愛に溢れた文章が続く。素晴らしいノンフィクションだ。

Posted byブクログ

2014/04/10

戦後の支配下で、嘉納治五郎が柔道の生き残りをかけて東奔西走した結果が世界のジュードーとしてオリンピック種目にもなり、逆に必殺の武術としての強さが色褪せてしまったことを知った。武徳会や高専柔道について、素人には知り逢瀬なかったことが分かり、興味深かった。

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2017/08/15

 プロレスの世界に入った木村は力道山とタッグを組み、シャープ兄弟との闘いを繰り広げる。それがテレビやラジオで放送されるやいなや、たちまちのうちにプロレスは大人気となった。敗戦後、アメリカとの国力の差にいやが上にも気づかされ、鬱屈した気分でいた日本人は互角以上の戦いをみせる日本人チ...

 プロレスの世界に入った木村は力道山とタッグを組み、シャープ兄弟との闘いを繰り広げる。それがテレビやラジオで放送されるやいなや、たちまちのうちにプロレスは大人気となった。敗戦後、アメリカとの国力の差にいやが上にも気づかされ、鬱屈した気分でいた日本人は互角以上の戦いをみせる日本人チームに歓喜の声をあげ、熱狂した。街頭テレビの前には何万人もの観客が押し寄せた。  しかし、その熱狂とは裏腹に木村の心は暗く沈んでいく。人気が出るのは力道山ばかりだったからだ。それもそのはず、あらかじめストーリーを決められた試合の中で、木村は常に負け役を演じさせられ、勝つのはいつも力道山だったからだ。プロレスがショーではなく真剣勝負だと勘違いしていた国民が、柔道王の木村より、力道山のほうが強いと思うのは当然だった。  最初はプロモーターでもある力道山のやり方に協力をしていたが、自分だけがヒーローになろうとする力道山の仕打ちに、木村は怒りを覚える。    ついに「真剣勝負だったら絶対に勝つ」と発言してしまった。  それはつまり、暗にプロレスは八百長だと公言してしまったことと同じだった。  これには力道山もだまっていない。八百長がバレれば興行は失敗し、プロレスはその黎明期を経験しただけで、消滅してしまいかねない。  このような経緯から「昭和の巌流島」と称される世紀の一戦がはじまった。    しかし木村の絶対の自信に反して結果はKO失神という惨敗。果たしてそこにはどのような駆け引きがあったのか。  現在、YouTubeでもこの試合の動画は観ることができる。  著者は、この動画を様々な格闘家に観てもらい、格闘家の目にはこの試合はどう映ったか、そして真剣勝負だったら、はたしてどちらが勝っていたのかをインタビュー取材している。  ここがこの本の肝であり、最大の山場だから著者が至った結論は伏せたい。  それとは別に戦後のヒーロー力道山と、戦前のヒーロー木村政彦の対象的な生き方が、とても興味深い。    力道山はテレビの顔からは伺いしれない裏の顔があった。権力をもった者には愛想良く近づくが、利用し尽くしたらあとはさっさと切り捨てる。恩を仇で返し、多くの人から恨みを買った。大恩人を割腹自殺をさせる事態にまで追い込んでもいる。  弟子であるジャイアント馬場には「人間的には尊敬できるところがひとつもなかった」と言わしめ、アントニオ猪木には「けっして弱い者いじめはだけはしないと心に決めた」と反面教師の扱いを受けている。  これだけ人から恨みを買っていれば、やくざに刺されなくても、遅かれ早かれの問題で殺されてたんじゃないかと思う。  木村はガキ大将がそのまま大きくなったような裏表のない豪放磊落な性格で、無茶をして迷惑もかけるが、どこかに茶目っ気がある。そして人に好かれる。  もともと木村がプロレスの世界に入ったきっかけも、家族を養うため、妻の結核を治す薬を手に入れるため大金が必要だったという一面もある。  後半生は後進の指導にあたり、多くの逸材を育てている。  しかし、力道山との再戦が叶わず、汚名をすすぐ機会を永遠に奪われた木村の心には、そのことが澱となっていつまでも残り続けた。心中いかばかりかは察しようもないが、木村の後半生で暗い部分があるとすれば、これが原因としか言えない。  著者がヒクソン・グレイシーにインタビューした様子も記されている。  グレイシー一族のなかで、木村政彦はいまでも尊敬されている伝説の格闘家だ。そもそも木村の名前が再び注目を集めたのはUFCの大会でホイス・グレイシーが尊敬する格闘家として「マサヒコ・キムラ」の名前をあげたことからだ。ケネディが尊敬する政治家として上杉鷹山の名前をあげたようもので、木村はほとんどの日本人に忘れ去られていた。だからグレイシー一族の活躍がなければ木村の復権もなかった。    そのヒクソンのコメントが重く響く。  「木村先生のような勝負師が、そんな八百長の舞台にあがるべきではなかった」  この言葉に尽きると思う。

Posted byブクログ