木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下) の商品レビュー
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【2017/12/07読了】 エリオ・グレイシーとの勝負から力道山との「昭和の巌流島」、拓大柔道部の指導者を経て最期まで。 木村は勝っていたはずだ、ということを証し立てしたくて筆を執ったと、筆者は正直に語る。しかし導き出された結論は、「やはり木村は負けたのだ」というものだった。単なる試合結果やポテンシャルの問題ではなく、たとえブック破りをした相手の狡さによるものではあっても、自らの油断が招いた惨敗だったということが、「負けは死」と自らに言い聞かせてきた歴史を持つ格闘家にとっては、自らの存在意義を自ら崩壊させてしまった「負け」だった…ということなのだろう。力道山の死によって、自らその傷を癒す機会は永遠に失われた。当人にとって、それは一生の悔いだったろう。 修羅の道を踏み外した、という点に絞れば、人生は終わったことになる。しかし個人的には、決して癒されない後悔に苛まれながらであったとしても、木村の後半生は豊かであったろうと思わずには(信じずには?)いられなかった。おそらく人の親になってこそ感得されるものがあるように、後を継ぐ者をもつ師となってはじめて見えてくる光景があるように思われるから。
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まあ普通に考えたら、プロレスは八百長でもしない限り、興行の数こなせないよなあ。 見始めたらそれななりに興奮はするけれどね。
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【文章】 読み易い 【気付き】 ★★★・・ 【ハマり】 ★★★★・ 【共感度】 ★★★・・ 力道山のブック破りというのは、ささいな要因であり、木村政彦が力道山に負けてしまった本質的な原因は、プロレスに対する気の緩み。 自分自身もプロレスの興行をやり続ける中で、ブックは守られて当然というプロレスに対する固定観念が出来ていたのかもしれない。 牛島辰熊は天覧試合での優勝を木村政彦に託し、木村政彦はスポーツではなく実践的な格闘技としての柔道を岩釣兼生に託した。 木村政彦が師匠である牛島辰熊に対して、緊張感を持って接するのは分かるが、牛島辰熊も木村政彦に対して緊張感を持って接していたというのは面白い。牛島辰熊も木村政彦という人間を尊敬していたのだと思う。
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差別問題で大相撲をドロップアウトした力道山と 柔道修行に見切りをつけてフリーランスになった木村政彦とでは モチベーションに格段の差があった だがそれにつけても力道山は悪魔的な男だった 外面(そとづら)と内面(うちづら)の使い分けが極端な男だった 外ではたいへんな魅力を放つ好漢とし...
差別問題で大相撲をドロップアウトした力道山と 柔道修行に見切りをつけてフリーランスになった木村政彦とでは モチベーションに格段の差があった だがそれにつけても力道山は悪魔的な男だった 外面(そとづら)と内面(うちづら)の使い分けが極端な男だった 外ではたいへんな魅力を放つ好漢として、人々をひきつけたが 抱え込んだ身内には、冷酷な暴君の本性むきだしに当たった プロレスラーとして八百長を手がけながら 高度なボクシング(ノーモーションパンチ)を身につけていたあたりも 二面性だった 八百長破りぐらい、大相撲時代に経験ずみだったかもしれない 木村相手のそれが、どこまで計画されたものかはっきりしないけれど 隙あらばやってやろうという気持ちは絶対にあったはずだ でなければ、自分だけ念書を書かずに試合を強行するなんてことはしない レフェリーは力道配下のハロルド登喜 そしてなぜかその日だけは、木村もゴネることなくそれらを見逃した おそらく、自分の側から他団体に挑発を仕掛けた負い目を突かれたのだ かくして、昭和の厳流島に歴史は繰り返されたのである いや 敗者の苦しみを味わわず済んだ分、小次郎のほうが多少ラクだったろう その後の木村政彦には 「バキ」のドリアン海王よろしく力道山へのテロルを計画しつつ ためらうばかりの時期もあった それはあるいは、遅れてきた敗戦国民としての屈託だったかもしれない 勝手に寿司食って死んだ…とも言われる自由主義者・力道山とは まったく対象的だった 敗れるまでは木村もけっこう自由だったけどね まあどちらも、己の強さをたのむ心に足をすくわれたということだろう もしそこに気がついていたのであれば ぎりぎり木村政彦が人生の勝利者ってことでいいんじゃなかろうか
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(01) 木村政彦という主人公から離れることはないが,近代柔道史とも言える内容で,木村が活躍した20世紀前半の柔道が日本のスポーツ(*02)の中で大きな一角を占めていたことからすると,格闘技史を超えて,日本スポーツ史の重要な部分を含む内容になっている. また,戦後日本におけるプロ...
(01) 木村政彦という主人公から離れることはないが,近代柔道史とも言える内容で,木村が活躍した20世紀前半の柔道が日本のスポーツ(*02)の中で大きな一角を占めていたことからすると,格闘技史を超えて,日本スポーツ史の重要な部分を含む内容になっている. また,戦後日本におけるプロスポーツの初動がどのようであったか,その動きの中でプロ柔道やプロレスリングはどのように起こったかなどにも,本書の射程(*03)は及んでいる. (02) 柔道がメジャーなスポーツであったことなど,今からでは考えられないが,近代における武道の位置づけ,また武道がつなげた戦後社会の人脈なども興味深い. 20世紀後半のスポーツは安全に競技されるものであり,木村や師の牛島らが戦前に行なっていた鍛錬は,現代の様々なトレーニングを考える上でも何事かを示している. 柔道(柔術)がアメリカ大陸やヨーロッパへの展開することによって,かつてあった寝技につなげる最強の柔道が海外に保存され,現代の格闘技に復興されていることは,武道や武術も文化であり技術であることを告げている. (03) 本書の方法として,文献調査もさることながら,関係者へのインタビューに多くを負って構成されていることにも注目すべきであろう. つまり,この格闘技に関わる記録は,書かれたものとしてはあまり残らずにいたこと,過去の美化も含む自伝的な記述としては残されていたこと,講道館正史よりも新聞報道などが記録として価値があったこと,これらから洩れた過去が木村という強い個性とともに関係者の記憶の中にまだ遺されていたことなどはまだ歴史的な記述の及んでいない分野があることへの示唆にもなっている.
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下巻、ブラジルでのエリオグレイシーとの一戦。そして力道山との一戦。いかに勝負師である木村政彦が、いかに負けたかを検証するとともに、鬼の木村がその敗北により、葛藤とともに生きていくのかを見事に書き上げている。著者の取材力とその喘ぎともとれる執筆にも目を見張るべきであろう。 果たして...
下巻、ブラジルでのエリオグレイシーとの一戦。そして力道山との一戦。いかに勝負師である木村政彦が、いかに負けたかを検証するとともに、鬼の木村がその敗北により、葛藤とともに生きていくのかを見事に書き上げている。著者の取材力とその喘ぎともとれる執筆にも目を見張るべきであろう。 果たして木村政彦みたいな怪物が、この時代に出てくるのであろうか。
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木村政彦の生涯を追うドキュメンタリーの後編。 後編は師弟の絆を切って始めた、プロ柔道の旗揚げ。 そしてプロレスに進出するところから始まる。 実入りがいいショーとしてのプロレスを始めた木村だが、それがちょうど日本プロレスの黎明期に重なり、時代の寵児となる。 しかし狡猾な怪物、...
木村政彦の生涯を追うドキュメンタリーの後編。 後編は師弟の絆を切って始めた、プロ柔道の旗揚げ。 そしてプロレスに進出するところから始まる。 実入りがいいショーとしてのプロレスを始めた木村だが、それがちょうど日本プロレスの黎明期に重なり、時代の寵児となる。 しかし狡猾な怪物、力道山に陥れられ、歴史的な決戦で屈辱的な敗戦を喫する。 その時の恨み、苦しみは生涯晴れることはないが、それでも木村は生き続け、古巣である拓大柔道部に指導者として居場所を見つける。 対してプロレス会の王となっていた力道山はヤクザ者の刃物で死ぬことになる。 武道・格闘技の歴史としても面白いですが、人を踏み台にして成り上がった力道山と大事な一戦を敗けはしたが、その後家族と弟子たちに愛されながらひっそりと生きた木村。どちらの人生がより豊かだったかと考えさせられました。
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師匠・牛島との決別、プロレス団体設立、海外興行、ブラジルでのフリオ・グレイシーとの対決。 柔道と距離を置きショーとしての格闘技に身を置く木村。そして運命の「巌流島決戦」。 全てを手に入れながら命を落とした力道山。 表舞台から抹殺されながらも不器用に生きつづけた木村。 運命に翻弄さ...
師匠・牛島との決別、プロレス団体設立、海外興行、ブラジルでのフリオ・グレイシーとの対決。 柔道と距離を置きショーとしての格闘技に身を置く木村。そして運命の「巌流島決戦」。 全てを手に入れながら命を落とした力道山。 表舞台から抹殺されながらも不器用に生きつづけた木村。 運命に翻弄された男たちの人生と苦悩が交錯する熱くて哀しい人間ドラマ。 筆者の徹底した取材と熱意が作品全体から伝わってくる魂のノンフィクション。
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中途半端な気持ちで読んじゃいけない気がして、買ってから約3年読んでいなかったけれど、意を決して読んだ。むせかえる程の漢臭と膨大な資料調べとインタビューは圧巻だった。そして無敗時代の試合の様子にワクワクした。
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http://sessendo.blogspot.jp/2016/10/blog-post_13.html
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