バナナ剥きには最適の日々 の商品レビュー
なるほど.わけがわからない.が,面白い. 読む人を選ぶことは間違いないが,フィットさえすれば,琴線に触れてくるはず.私にはフィットしたため,円城塔に引き続き絡み取られてみようと思う.
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フリオかオクタビオのどちらでもない『オクタビオ・パス』が1番好き。本の上の波紋から魚が跳ね、白紙のページは白い獣の流れ、八本脚の乗物、対岸を求めて旅立つおじいさん、そして白い宇宙服の細身の女性。イメージも内容も綺麗で面白かった。『捧ぐ緑』ゾウリムシの実験構想を長々と語り合いつつロ...
フリオかオクタビオのどちらでもない『オクタビオ・パス』が1番好き。本の上の波紋から魚が跳ね、白紙のページは白い獣の流れ、八本脚の乗物、対岸を求めて旅立つおじいさん、そして白い宇宙服の細身の女性。イメージも内容も綺麗で面白かった。『捧ぐ緑』ゾウリムシの実験構想を長々と語り合いつつロマンチックだった。『AUTOMATICA』文章にまつわる考察的な話。『エデン逆行』DNAを辿ってルーツを調べる調査からこんな考察的な話が生まれたのかしら?文庫帯がとても素晴らしい。まさに「研ぎすまされた適当」を堪能した。
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「パラダイス行」★★★ 「バナナ剥きには最適の日々」★★★ 「祖母の記録」★★ 「AUTOMATICA」★★★★★ 「equal」★ 「捧ぐ緑」★★★★ 「Jail Over」★★★ 「墓石に、と彼女は言う」★★ 「エデン逆行」★★★★ 「コルタサル・パス」★★★
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理解しきることはたぶんできない。けれど、面白い。よくわからない言葉の渦の中で、ずっと迷っているのも楽しいかもしれない。新しい感覚だ。
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相変わらずのわからなさ(笑) でも、独特の雰囲気とリズムで読まされ、ほんのごく一部わかったような気になっただけで、面白いと思わされてしまう。 うーん、レビューもわからなさすぎやな。
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「どんな話なんですか?」 葉月は、胡散臭げな表情で表紙を眺めている。そこには確かに、胡散臭いとしか形容しようがないバナナが描かれている。 「短編集だから、一言でまとめるのは難しいんだけど…」 そう言われ、葉月は目次を開いた。まとまらないなら、まとめなければいい。 「んじゃ、『コ...
「どんな話なんですか?」 葉月は、胡散臭げな表情で表紙を眺めている。そこには確かに、胡散臭いとしか形容しようがないバナナが描かれている。 「短編集だから、一言でまとめるのは難しいんだけど…」 そう言われ、葉月は目次を開いた。まとまらないなら、まとめなければいい。 「んじゃ、『コルタサル・パス』」 「後ろからなの? まあいいや。いつも思うけど、円城塔は読者を巻き込むのが非常に上手い。それに尽きる」 「次、『エデン逆行』」 「名前はエデンでも何でもいいんだけど、文章の上で展開する壮大な宇宙創造っていうか、何でもいいや」 「ここで面倒くさがらないでくださいよ。次。『Jail Over』」 「これは好き。赤いソーセージが白いソーセージを家に招いて食べようとする話だ」 「わけわかりません。次、『捧ぐ緑』」 「これも、個人的に非常に好きだ。ゾウリムシの寿命を縮める研究についての話なんだけど」 「さらにわけわかりませんが、次、『equal』」 「唐突に横書き。何というか、冗談にしては意味不明だし言葉遊びでもないんだけど、ええと、何だろうこれ」 「ええと、じゃあ、『AUTOMATICA』」 「文章の自動生成について。円城塔は割とこのテーマに拘っている印象を受ける」 「はい。で、『祖母の記憶』」 「植物状態のお祖父さんを爆走させて映画を撮る話だ。人形が人形であるためには鋏は不要だ。己に繋がれた糸に意味がないことに気づいてはいけない」 「なるほど。では、『パラダイス行き』」 「今、ひとつ飛ばした?」 「表題作は最後です」 なるほど、と蛹は頷く。 「右が生まれると同時に左も生まれるという話。もう少し言うなら、レモネード抜きのレモネードを注文する方法」 ふむ、と葉月は頷く。 「んじゃ次。『バナナ剥きには最適の日々』…表題作ですね」 「ああ、これは切なかった。たぶん、一番読みやすいと思う。というか、彼の小説の中で数少ない、普通の小説的な小説といえるかもしれない。俺個人としては、やはり最後の寂しさがとてもいいと思う。もしかしたら誰にでも通じる寂しさではないのかもしれないけれど。メッセージというのは自己満足だ。誰かが拾ってくれればいいと思う、でも返事は全く期待できない。それは途方もない孤独だ」 「そういうの、好きですね」 「うん。たぶん、一番透明な孤独だと思う」 「これは確かにまとまらないですね、バナナにソーセージにエデンじゃ…」 「うん。あ、コーヒー、おかわりいる?」 頷きながら、これは珍しい、と葉月は思う。普段はこんなことを尋ねたりしない。自分が飲みたければ勝手に淹れるし、そうでないなら動かないのだ。よほど気分がいいのだろう。 葉月は改めて、本の表紙に目を落とす。 バナナ剥きには最適の日々。
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まぁ円城塔である。二回読んだけどわかったとはよう言わん。わからんのと、わかった気くらいになるのと。いや、別にわかりたくて読んでるわけでもないので、わかった気になっておもしろかったりわからんけどおもしろかったりでいいのだ。 ということで、わかった気になっておもしろかったのがまず表題...
まぁ円城塔である。二回読んだけどわかったとはよう言わん。わからんのと、わかった気くらいになるのと。いや、別にわかりたくて読んでるわけでもないので、わかった気になっておもしろかったりわからんけどおもしろかったりでいいのだ。 ということで、わかった気になっておもしろかったのがまず表題作。うん、頭使わずにぼんやり読んでもおもしろい。 「祖母の記憶」ノリ的にちょっとバリー・ユアグローっぽい。悪趣味さと乾いた感触。ユアグローに比べると長いだけおもしろいのとダレるのと。アイディア一発ではないのだな。 「捧ぐ緑」何だよゾウリムシ。といいながらこういうなんちゃって生物学みたいなの好き。石黒達昌とか。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「パラダイス行」 わっかになった裏山の通路。 「バナナ剝きには最適の日々」 星間探査球の一部である僕が、旗を置いていく。 チャッキーとバナナ星人。 「祖母の記録」★ 失踪する祖父をコマ撮影する僕と弟、と、彼女とその祖母。 ジョンとは…… 「AUTOMATICA」 二重括弧、文章自動生成。 「equal」 「捧ぐ緑」 ゾウリムシの研究。 「Jail Over」★ 赤いソーセージと白いソーセージ。 「墓石に、と彼女は言う」 「エデン逆行」★★ 時計の街、わたし=祖母。母=娘。 「コルタサル・パス」★ コムの向こう側のクィ。 詩的論理の力でもって「わたし」を解体してくれる。
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文庫で再読。 単行本も持ってるけどボーナストラック入ってるし表紙も素敵だし(後に100%ORANGEと判明)、何より帯のコメントに心を鷲掴みにされてしまった。 「研ぎすまされた適当」とは、言い得て妙すぎる。 そんな感じの惹句を自分でも妄想してみたのだけれど、 「思わせぶりな無意味...
文庫で再読。 単行本も持ってるけどボーナストラック入ってるし表紙も素敵だし(後に100%ORANGEと判明)、何より帯のコメントに心を鷲掴みにされてしまった。 「研ぎすまされた適当」とは、言い得て妙すぎる。 そんな感じの惹句を自分でも妄想してみたのだけれど、 「思わせぶりな無意味」とか「回りくどい明快」とか「難解な明解」とか、そんなのしか思い浮かばなかった。 円城作品を読むときにいつも悩まされるのは、そこに現れる(もしくは表れる、または著される)「わたし」とは一体だれなのか、ということだ。そこが幾重にも重ねられた比喩で覆い隠されている(ような気がする)から、読む「わたし」が読まれる「わたし」に翻弄されてしまうのではないか、と「わたし」は思うのです。 けれど「『わたし』とはだれか」という問い自体は決して新いものではないし、「読む者」と「読まれる者」の対立なんて、小説が生まれる以前からすでにあった問題であり、どちらもすでに語りつくされているはずだ。 難解な事柄をいかに分かりやすく解きほぐして伝えるか、ということが、近年求められている才能であったりスキルであったりする。 けれど円城作品では、ある程度語り尽くされて解き解されてきた単純な事柄が、あえて難解に書き直されているように思う。 それが作品の中にしばしば登場する「再構築」とか「書き換え」ということでもあり、この「逆行してる感」が円城塔という作家の「他を寄せ付けない感」の正体なんじゃないかなと思ったりした。 それを真顔でやってのけるから、だから円城塔を読むのはなんかよくわかんないけど痛快なんだと思う。
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