これはペンです の商品レビュー
#32奈良県立図書情報館ビブリオバトル「からだ」で紹介された本です。 2013.8.17 http://eventinformation.blog116.fc2.com/blog-entry-1005.html?sp
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とてもとっつきにくいと感じてしまい、なかなか進みませんでした。手紙を読むのにこんなに苦労させられるなんて、主人公のように調べる意欲がかなり必要ですし、定期的に来るとなるとついていくのは難しいですね。
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短編集あるある、表題作より併録されている方の作品の方が好きになる。 今回のもそれで、というかそもそもそっち目当てで9,8年振りに手に取った本書。小説のために書かれた小説(のために書かれた小説)。 自動小説生成装置がもしもあるとするなら、それに反抗していきたいというのが著者のスタン...
短編集あるある、表題作より併録されている方の作品の方が好きになる。 今回のもそれで、というかそもそもそっち目当てで9,8年振りに手に取った本書。小説のために書かれた小説(のために書かれた小説)。 自動小説生成装置がもしもあるとするなら、それに反抗していきたいというのが著者のスタンスらしい。前半はそれこそAIが書いたかのような、文法だけ正しくて内容は支離滅裂な文章が続くが、終盤に至るにつれ比較的物語としてわかりやすい展開となっていき、コントラストで無理やり感動させられてる感、いや実際、謎にとても感動する。 著者のブログには小説の書き方のポイントがまとめられていておもしろい。曰く、「2人の登場人物が、時空的に離れた場所で、それぞれモノローグする(なんかわからんが泣ける)」、「特定のジャンルものとしてはじめ、ある地点でジャンル自体をひっくり返す(エロ漫画と思ってたらハードSFだった、みたいな?)」、「理詰めで押し続けるように見せて、限界に達したところで破綻させる(感情を喚起しやすい)」など。 まんまとハメ手にハメられた。
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第145回芥川賞候補。選考委員の石原慎太郎が全否定した作品。何故か自分は石原慎太郎が強くけなす作品を好きになる傾向がある。
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時間をかけて読めばわかるような気もするし、わかっていないような気もする。 ・これはペンです 叔父=「書くこと」 「書く」とはどういうことなのかということを、あらゆる極端な方法を試すことで浮かび上がらせる話。 テーマを言ってしまえばそれまでだけれど、それを叔父という存在を通して描い...
時間をかけて読めばわかるような気もするし、わかっていないような気もする。 ・これはペンです 叔父=「書くこと」 「書く」とはどういうことなのかということを、あらゆる極端な方法を試すことで浮かび上がらせる話。 テーマを言ってしまえばそれまでだけれど、それを叔父という存在を通して描いたことに面白味というか発想の意味がある。 このことが、物語の中で描かれている、「書く手法は書くことに意味を与えるのか」という問いのひとつの答えになっているのかな?と思った。 大きな入れ子構造?
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「これはペンです」 5 始 叔父は文字だ。文字通り。 終 たとえそれが、あなたの目には文字なのだとしか映らなくても。 「良い夜を持っている」 4 始 目覚めると、今日もわたしだ。 終 いつから握っていたのだろうか、丸く赤いビー玉が夜の中へ走り出る。
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この本を端的に言うなら「亡くなった父は変わった人でした」という一言で説明できてしまう。でもこの本は、それを最初から最後まで延々説明していく。 超記憶を先天的に持っていた父が、頭の中で築き上げた言葉の街。その中では事象の数だけ無限に住人が増えていく。 そんな風に表現される...
この本を端的に言うなら「亡くなった父は変わった人でした」という一言で説明できてしまう。でもこの本は、それを最初から最後まで延々説明していく。 超記憶を先天的に持っていた父が、頭の中で築き上げた言葉の街。その中では事象の数だけ無限に住人が増えていく。 そんな風に表現される父親の話が、ずーっと続く。そして盛り上がること無く終わる。この本の評価が分かれるというのはとても納得できる。つまらないと言うには心の奥に何かがひっかかるし、面白いと絶賛するには魅力を説明しにくいし、そもそも伝わるかどうかも怪しい。 例えるなら、2年前に1度だけ使ったキュウリを綺麗に裁断出来るキッチングッズを捨てるかどうかで悩むことに似てる気がする。つまり、そういう類の本です。
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表題作は“叔父は文学だ。文字通り。”の書き出しで、抗う間もなく円城塔ワールドに放り込まれる。大学生の姪が、叔父と不思議な手紙のやり取りをしているのだが、途中、この叔父は本当に存在しているのかと疑いたくなった。同時収録の『良い夜を待っている』は、息子が語る父の人生。記憶の宮殿ならぬ記憶の巨大都市。読んでいると、記憶能力以上に、忘却能力の偉大さを思い知らされた。(再読本)
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姿の見えない叔父との手紙とメールのやり取り。 あらゆる方法で文字を書き手紙を送ってくる叔父。そんな叔父の姿を見極めようと試行錯誤する姪のお話…なのかな? 『良い夜を持っている』はこの叔父のあらゆることを忘れない、超記憶保持者の父親の話。
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文学的滋味ももちろんあれど、どちらかと言うと理詰めで書く作家であり、SF小説としても一風変わった雰囲気をもつ円城塔の作品。「学術論文的」と形容するのはいささか安直な気もしますが、オリジナルの概念なり定義なり固有名詞なりを提示し、それらを一定のロジックに従い展開し繋ぎ合わせ、小説の...
文学的滋味ももちろんあれど、どちらかと言うと理詰めで書く作家であり、SF小説としても一風変わった雰囲気をもつ円城塔の作品。「学術論文的」と形容するのはいささか安直な気もしますが、オリジナルの概念なり定義なり固有名詞なりを提示し、それらを一定のロジックに従い展開し繋ぎ合わせ、小説のような思考実験のような、何かそういったテキストに変換していく様は学者然とした趣もさもありなんでしょうか。読者に理解と混乱の閾値をふらふらさせつつ、そこに何となく物語みたいなものを浮かび上がらせるスタイルは相変わらずと言うか、こんな無茶な作風で芥川賞作家に上り詰めるのだからこの人も底が知れないなと思わされます。 表題作「これはペンです」は居場所どころか実存も不明な「叔父」から媒体を問わず送られてくる手紙を解読するお話。語り手である「姪」はいちおう大学生で、教授との小難しくも洒脱な会話や論文執筆・出版のプロセスなど「理系の大学生活」の一端も描写されており、みなさまが入学後の生活をイメージする一助になるかもしれません。
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