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これはペンです の商品レビュー

3.5

49件のお客様レビュー

  1. 5つ

    6

  2. 4つ

    15

  3. 3つ

    16

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    1

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2024/03/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

とてもとっつきにくいと感じてしまい、なかなか進みませんでした。手紙を読むのにこんなに苦労させられるなんて、主人公のように調べる意欲がかなり必要ですし、定期的に来るとなるとついていくのは難しいですね。

Posted byブクログ

2024/01/26

短編集あるある、表題作より併録されている方の作品の方が好きになる。 今回のもそれで、というかそもそもそっち目当てで9,8年振りに手に取った本書。小説のために書かれた小説(のために書かれた小説)。 自動小説生成装置がもしもあるとするなら、それに反抗していきたいというのが著者のスタン...

短編集あるある、表題作より併録されている方の作品の方が好きになる。 今回のもそれで、というかそもそもそっち目当てで9,8年振りに手に取った本書。小説のために書かれた小説(のために書かれた小説)。 自動小説生成装置がもしもあるとするなら、それに反抗していきたいというのが著者のスタンスらしい。前半はそれこそAIが書いたかのような、文法だけ正しくて内容は支離滅裂な文章が続くが、終盤に至るにつれ比較的物語としてわかりやすい展開となっていき、コントラストで無理やり感動させられてる感、いや実際、謎にとても感動する。 著者のブログには小説の書き方のポイントがまとめられていておもしろい。曰く、「2人の登場人物が、時空的に離れた場所で、それぞれモノローグする(なんかわからんが泣ける)」、「特定のジャンルものとしてはじめ、ある地点でジャンル自体をひっくり返す(エロ漫画と思ってたらハードSFだった、みたいな?)」、「理詰めで押し続けるように見せて、限界に達したところで破綻させる(感情を喚起しやすい)」など。 まんまとハメ手にハメられた。

Posted byブクログ

2023/07/29

第145回芥川賞候補。選考委員の石原慎太郎が全否定した作品。何故か自分は石原慎太郎が強くけなす作品を好きになる傾向がある。

Posted byブクログ

2023/04/13

時間をかけて読めばわかるような気もするし、わかっていないような気もする。 ・これはペンです 叔父=「書くこと」 「書く」とはどういうことなのかということを、あらゆる極端な方法を試すことで浮かび上がらせる話。 テーマを言ってしまえばそれまでだけれど、それを叔父という存在を通して描い...

時間をかけて読めばわかるような気もするし、わかっていないような気もする。 ・これはペンです 叔父=「書くこと」 「書く」とはどういうことなのかということを、あらゆる極端な方法を試すことで浮かび上がらせる話。 テーマを言ってしまえばそれまでだけれど、それを叔父という存在を通して描いたことに面白味というか発想の意味がある。 このことが、物語の中で描かれている、「書く手法は書くことに意味を与えるのか」という問いのひとつの答えになっているのかな?と思った。 大きな入れ子構造?

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2022/04/18

「これはペンです」 5 始 叔父は文字だ。文字通り。 終 たとえそれが、あなたの目には文字なのだとしか映らなくても。 「良い夜を持っている」 4 始 目覚めると、今日もわたしだ。 終 いつから握っていたのだろうか、丸く赤いビー玉が夜の中へ走り出る。

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2022/03/05

 この本を端的に言うなら「亡くなった父は変わった人でした」という一言で説明できてしまう。でもこの本は、それを最初から最後まで延々説明していく。  超記憶を先天的に持っていた父が、頭の中で築き上げた言葉の街。その中では事象の数だけ無限に住人が増えていく。  そんな風に表現される...

 この本を端的に言うなら「亡くなった父は変わった人でした」という一言で説明できてしまう。でもこの本は、それを最初から最後まで延々説明していく。  超記憶を先天的に持っていた父が、頭の中で築き上げた言葉の街。その中では事象の数だけ無限に住人が増えていく。  そんな風に表現される父親の話が、ずーっと続く。そして盛り上がること無く終わる。この本の評価が分かれるというのはとても納得できる。つまらないと言うには心の奥に何かがひっかかるし、面白いと絶賛するには魅力を説明しにくいし、そもそも伝わるかどうかも怪しい。 例えるなら、2年前に1度だけ使ったキュウリを綺麗に裁断出来るキッチングッズを捨てるかどうかで悩むことに似てる気がする。つまり、そういう類の本です。

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2022/01/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

表題作は“叔父は文学だ。文字通り。”の書き出しで、抗う間もなく円城塔ワールドに放り込まれる。大学生の姪が、叔父と不思議な手紙のやり取りをしているのだが、途中、この叔父は本当に存在しているのかと疑いたくなった。同時収録の『良い夜を待っている』は、息子が語る父の人生。記憶の宮殿ならぬ記憶の巨大都市。読んでいると、記憶能力以上に、忘却能力の偉大さを思い知らされた。(再読本)

Posted byブクログ

2021/08/02

姿の見えない叔父との手紙とメールのやり取り。 あらゆる方法で文字を書き手紙を送ってくる叔父。そんな叔父の姿を見極めようと試行錯誤する姪のお話…なのかな? 『良い夜を持っている』はこの叔父のあらゆることを忘れない、超記憶保持者の父親の話。

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2021/07/16

文学的滋味ももちろんあれど、どちらかと言うと理詰めで書く作家であり、SF小説としても一風変わった雰囲気をもつ円城塔の作品。「学術論文的」と形容するのはいささか安直な気もしますが、オリジナルの概念なり定義なり固有名詞なりを提示し、それらを一定のロジックに従い展開し繋ぎ合わせ、小説の...

文学的滋味ももちろんあれど、どちらかと言うと理詰めで書く作家であり、SF小説としても一風変わった雰囲気をもつ円城塔の作品。「学術論文的」と形容するのはいささか安直な気もしますが、オリジナルの概念なり定義なり固有名詞なりを提示し、それらを一定のロジックに従い展開し繋ぎ合わせ、小説のような思考実験のような、何かそういったテキストに変換していく様は学者然とした趣もさもありなんでしょうか。読者に理解と混乱の閾値をふらふらさせつつ、そこに何となく物語みたいなものを浮かび上がらせるスタイルは相変わらずと言うか、こんな無茶な作風で芥川賞作家に上り詰めるのだからこの人も底が知れないなと思わされます。 表題作「これはペンです」は居場所どころか実存も不明な「叔父」から媒体を問わず送られてくる手紙を解読するお話。語り手である「姪」はいちおう大学生で、教授との小難しくも洒脱な会話や論文執筆・出版のプロセスなど「理系の大学生活」の一端も描写されており、みなさまが入学後の生活をイメージする一助になるかもしれません。

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2021/04/25

▼表題作  1+1=2という計算させるのにもプログラムを作らねばならなかった時期だけはようやく脱し、まだみんなハンドアセンブリでマシン語使うかBASICインタプリタを使っていて、かろうじて半角カタカナは使えるマシンが出始めたがひらがなや漢字など全角文字はグラフィックで描かない...

▼表題作  1+1=2という計算させるのにもプログラムを作らねばならなかった時期だけはようやく脱し、まだみんなハンドアセンブリでマシン語使うかBASICインタプリタを使っていて、かろうじて半角カタカナは使えるマシンが出始めたがひらがなや漢字など全角文字はグラフィックで描かないかぎり存在しなかったパソコン(パソコンという語も生まれたばかりでずっとマイコンと呼ばれていた)草創期、俳句の自動生成プログラムを作ったことがありそれは季語データベース(とりあえず五文字か七文字になるようにしておいたもの)と、五文字語、七文字語のデータベースを作っていき、それらをランダムに組み合わせるだけだったのだが、たまにはけっこうおもろい俳句ができデータベースを増やすにつれバリエーションも増えていったのでデータベースを外部に持たせ(当時は磁気テープが主流でフロッピーディスクですら高額で入手困難だったが)量的な問題をクリアした上で洗練させていけばいつか質量ともに既存及び未来の俳人全てを凌駕していけそうな気もしてた。最終的には俳句採点プログラムを作ろうとか思ってた。ちなみにぼくは俳句に興味がないわけではないのでけっこう読んではいるがちゃんと作ったことはほとんどなくこれまで作った総量で千句ていどかと思う。でもまあ特に囲碁将棋が強くない人でも強いプログラムを作ることは可能なもんやからなんとかなるやろうと。ちなみに試しに作った五目並べプログラムはぼくより強かった。ともあれ次は語句の関係性を考慮できるようにして無駄な句を減らしつつ思いがけなさの面白味は残すようにしたいとか思ってた頃、パソコンが世の中で仕事の道具になり始め玩具としておもろなくなっていったので途中やめになった。なんかその頃を思い出した。  《否定とその否定の否定。叔父の時間はそんな単純なやりかたで駆動されている。》p.28  《自分が切り貼りをしていると承知しながら、全く別の内容を書こうとする輩が一定の割合ででてくるからだ》p.60。学生のときこういうのやったことあるなあ。99%あちこちからの引用で、引用元とは全く異なる内容の論文にした。ぼく的には面白かったけど、誰も評価してくれなかった・・・単にレベルがいまいちやっただけかもしらへんけど。  この本、何が書かれてあるのか一度目で全て理解しながら読んだ人がいたらすごいもんやなあと思う。あるいは眠くならずに読めた人も。  ときおり何も考えず意味もなくほぼ自動筆記したらこんな文章になったような気もする。  作家なら一度はこういう文章を書いておきたいもんやないかなあと思う。  たまに読み返したらなんとなく刺激受けるんやないかなあと思う。電子書籍の形でもいいので持っておきたい一冊。  ある意味メタやけどメタっぽいしらける感じはなくそこはかとなく面白く感じさせるのはえらい力量やなあと思った。 ▼良い夜を持っている  記憶の中に都市を構築した父の話。確実ではないが「これはペンです」の叔父の父ということだろう。姪にとっては祖父ってことになる。  記憶は改竄できるものだから、もし完全な記憶力を持っている人間がいるならその人はタイムトラベラーかもしれない。  自分のなかで増殖し続ける迷宮都市をさまよいつづける父の肖像。  無限に入れ子になっていくエミュレータとしての架空の都市群?  ぼくの卒論は大雑把に言えば「文学における記憶というもの」だったのでこの作品を面白がる素地はあった。  卒論の形式は注につぐ注の塊で互いが互いの注であり続け本文量は全体の一割もなかった。発想をきっちり伝えるためにはそうするしかなかった苦肉の策だったが提出した夜、教授から「面白かったよ」とわざわざ電話がかかってきた。  昔のMacにおまけでついてきてたハイパーカードというアプリの機能ロックを外したものに出合ったときこれがあったらもっとうまく構築できたなあとか思った。 【一行目】  叔父は文字だ。文字通り。(これはペンですp.9)  目覚めると、今日もわたしだ。(良い夜を持っているp.119)

Posted byブクログ