これはペンです の商品レビュー
“わたしが計算機室で見出すのは、ループに落ち込み、くるくると虚しく回っている判定プログラム。複数の分岐したルーチンたちが活発に互いを牽制しつつ、分岐の先のどの結論を議決するのか、盛んな言い争いを続けている。計算はそうして続いているが停止をする様子は見えず、結論が導き出される気配は...
“わたしが計算機室で見出すのは、ループに落ち込み、くるくると虚しく回っている判定プログラム。複数の分岐したルーチンたちが活発に互いを牽制しつつ、分岐の先のどの結論を議決するのか、盛んな言い争いを続けている。計算はそうして続いているが停止をする様子は見えず、結論が導き出される気配はない。健忘症に襲われた登場人物たちが自分たちでは気がつかないまま、堂々巡りの議論を続ける。 抽出された叔父の特徴たちは互いに互いを論駁しながら、どこかの結論へと落ち込むことを拒否し続ける。 ドアを蹴破るようにして登場したわたしが突きつけたプリントアウトを乱雑な机の上に放り出し、教授は降参するように両手を挙げる。 「二十四」 と眠そうに重い瞼を持ち上げつつ、教授は問う。 「二十四」 とわたしは答える。”[P.99_これはペンです] 少し泣きそうになる。 よいよる。 「これはペンです」 「良い夜を持っている」 “父は絶えず、このような想起に直面していた。何かを覚え、思い出し方を設定し、思い出し方を思い出し、何を思い出すのだったかを洗い出し、自分が何を知らないのかを選別しては拾い続けた。自分の袖に赤い光が灯るのを見て、思い出すべき単語は、父だったのか、袖だったのか、腕だったのか、肌だったのかを自分で決めねばならなかった。 父がその技を自在に扱えるようになるまでは長い時間が必要だったし、達成できたかどうかは意見が分かれる。”[P.157_良い夜を持っている] 20170504 再読
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
難解といえば難解だけど、文体がしっかりしているから読みやすい。 ネタバレになるので詳しく書かないけれど、表題作の「これはペンです」と、もうひとつの収録作品「良い夜を持っている」のつながりに、ある場面で気づいたとき、思わず「うわっ」と声が出そうになった(^^ゞ 勘のいい人なら、もっと早く気づくのかもしれないけどね。
Posted by
「叔父は文字だ。文字通り。」 そんな文章から始まるこの小説は、言葉遊びのような文章を並べて、文字、言葉、文章といったものを風変わりな視点から述べている。のだと思う。 一読しただけでは理解できたとはとても言い難い。翻訳小説のような、言葉の意味は分かるのに、文章の意味を捉えられないも...
「叔父は文字だ。文字通り。」 そんな文章から始まるこの小説は、言葉遊びのような文章を並べて、文字、言葉、文章といったものを風変わりな視点から述べている。のだと思う。 一読しただけでは理解できたとはとても言い難い。翻訳小説のような、言葉の意味は分かるのに、文章の意味を捉えられないもどかしい感覚。 あと2回ぐらい読めば、少しは分かったと思えるようになるだろうか。。
Posted by
存在の証明。この本を読んでて思い浮かんだ言葉。小説とは何か、についてつらつら述べられているだけではなくて、人が存在するとはどういうことか、をずっと考えさせられる一冊でした。ちょっと読みにくいけど、面白かった。
Posted by
理解しきれていない。長期休暇中にまた挑戦する。言語について掘り下げられた一冊。『良い夜を待っている』の方が好き。言葉にして説明することが難しい、抽象的なことを描写している点がすごい。自分が普段目にしているモノが物事の一面にすぎないことを痛感した。言語についてもっとしっていたらもっ...
理解しきれていない。長期休暇中にまた挑戦する。言語について掘り下げられた一冊。『良い夜を待っている』の方が好き。言葉にして説明することが難しい、抽象的なことを描写している点がすごい。自分が普段目にしているモノが物事の一面にすぎないことを痛感した。言語についてもっとしっていたらもっと理解しやすかったかもしれない。言葉は記号にすぎないこと。モノで記憶する方法。「無」について考えようとして亡くなった父は最後にどんな世界をみたのか。再読必須。見たことのない世界を見せつけられました。他作品も読みたい。
Posted by
いいなー、 非実在かもしれないけど定期的にお手紙くれる叔父さんほしい。 自分が自分と同一であることを認識してくれないお父さんはまったくほしくないけど。 (ちょっと何を言ってるかわからないとは思うのだけど、あらすじなんて説明できないので省略します)
Posted by
表題作「これはペンです」と「良い夜を待っている」で1つの話。「良い夜を待っている」を読まなければ意味化が不十分になり,「よく分からん」という感想になっていただろう。 わかりやすい物語ではないが,物語の構造になっている。テーマは私の専門領域に近いので何となく分かるし,興味を持てるも...
表題作「これはペンです」と「良い夜を待っている」で1つの話。「良い夜を待っている」を読まなければ意味化が不十分になり,「よく分からん」という感想になっていただろう。 わかりやすい物語ではないが,物語の構造になっている。テーマは私の専門領域に近いので何となく分かるし,興味を持てるものだったが,かといって物語の理解を促進する者ではなかった。 このような物語を創り出す作者の感性に驚く。自分じゃとても思いつかない。
Posted by
うーん、わからん。読んでて楽しい気がするからそれ以上は何もいらんと思えば楽なんだけど、そう思うには一作がちと長くてワンアイディアストーリーとして読むのはちとしんどい。わからんのは元々オイラの手に負えないからなのか、通勤電車で居眠りしながら読んでるからなのか。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
■「これはペンです」 叔父は文字だ。文字通り。 ■「良い夜を持っている」 目覚めると、今日もわたしだ。 それぞれの書き出しだが、短く端的で膨らみがある。 そこから始まるのはどちらも物語というよりは、徒然なレポートのようなもの。 叔父や父といった近親者が、妙に遠く、特殊な存在である。 自動文章生成の叔父、 超記憶のため二重写しの街に心漂わせる父。 飄々と孤高に生きることをしている。 さらにスポットは語り手自身の意識にも亘る。 最終的には書くこと考えることについての小説になっている。 やはりこの作者の書くものは素敵だ。
Posted by
難解で、たぶん1/3も理解できてないのだけど、けっこうすき。かも。 解説読んで、読み直したい一冊。
Posted by