人質の朗読会 の商品レビュー
死んだおばあさんと、B談話室が面白かった。 佐藤隆太さんの解説も良かった。 同じ経験はないけれど、その人にしか語れない経験談。自分が語るとしたらなんだろう…考える機会を与えてくれた作品。
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8人の人質たちが行う朗読会。解放される未来を夢見るのではなく、自分の中にある不変な過去の話を、まるで祈るかのように、静かに、優しく、語っていく。各個人の小さな出来事は、読んだ者の心を穏やかな風とともに揺らしていく、そんな感覚になるのである。しかし、温かい中にも切なさを感じるのは、...
8人の人質たちが行う朗読会。解放される未来を夢見るのではなく、自分の中にある不変な過去の話を、まるで祈るかのように、静かに、優しく、語っていく。各個人の小さな出来事は、読んだ者の心を穏やかな風とともに揺らしていく、そんな感覚になるのである。しかし、温かい中にも切なさを感じるのは、各朗読の最後の1文があるからだろう。 オススメ度: ★★★★☆ 鑑真(海洋生物資源学科) 所蔵情報: 品川図書館 913.6/O24
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あらすじは省略。 ふつうの人の人生の、他愛のない日常の、でもなぜか忘れられないエピソード集。 誰もがひとつ、語られるべきストーリーを持っている。それを抽出していけば、その時代のその国を切り取ることができる。それはつまり、ポール・オースターのナショナル・ストーリー・プロジェクトが...
あらすじは省略。 ふつうの人の人生の、他愛のない日常の、でもなぜか忘れられないエピソード集。 誰もがひとつ、語られるべきストーリーを持っている。それを抽出していけば、その時代のその国を切り取ることができる。それはつまり、ポール・オースターのナショナル・ストーリー・プロジェクトがやったことを、小川先生がフィクションを使ってやろうとした作品。ってことで良いのかな。 さて、これ本当に全部、小川先生の頭から出てきたのかな。こんなにちょうどいいエピソードがたくさん、ひとりの頭の中から出てくるんだろうか。どう考えても、ほんとにいろんな人から出てきたストーリーとしか思えない。 僕が今、明日死ぬかもしれないとして。でも周りには僕の生い立ちを知っている人はいなくて。そんなとき、他人に語るべきストーリーが、僕にあるだろうか。
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「やまびこビスケット」 「B談話室」 「花束」 が特にお気に入り。 もし自分が人質の1人だったら、これまでの人生の中からどのエピソードを選び、どう話すのだろうと考えた。
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物語は、恐らく人間関係から始まる。主人公がいて、その周りにいるの人間がいる。周辺人物は往々にして家族だったり、恋人だったり。この構図から物語が始まり、引き伸ばしていく。 遠い国に旅行で行った日本人ツアーの8人が、反政府ゲリラに囚われ、最後は無惨な姿で殺害された。人質を救出た...
物語は、恐らく人間関係から始まる。主人公がいて、その周りにいるの人間がいる。周辺人物は往々にして家族だったり、恋人だったり。この構図から物語が始まり、引き伸ばしていく。 遠い国に旅行で行った日本人ツアーの8人が、反政府ゲリラに囚われ、最後は無惨な姿で殺害された。人質を救出ために設置された盗聴器に、彼らの朗読会は録音されていた。互いに語る物語は自身と全くの他人との話。ほんのいっときに時間を共有して、それ以上の関係性が進むことなく、タイムになったらまた離れていく。語る相手は名前もなく、代名詞は「彼」や「彼女」という性別の表記しかない。人質として、死と隣り合わせしているのに、彼らが語るのは自身の過去の栄光でも、悔いでもなく、全く関係のない他人と過ごした時間だった。 その物語(ストーリー)が、とても鮮やかで、突拍子もない話かもしれない。それでも人質達は互いに語っていた。 死ぬかもしれない、と思った時、その些細な時間を思い出して、語っていくのか。 8人の物語が静かに、時にじーんとくる。 印象に残った話のは死んだおばあさん。個性的なおばあさん達と彼女らに似ていた主人公は、最後に語ったのは、自分の血縁は結局残さず、子も孫もいないが、それでもおばあさんの気持ちになれたと話す。 こぐ人生の片鱗を大切に語るほど、生きる事を大事にしているのでしょう。
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しんどい経験だったり少し苦しくなるような経験も書かれているけど、人生には絶対よく分からない事とか、偶然だけど意味を考えちゃうこととか絶対に起こる。 特技にも自慢にもならないけれど、自分にとって意味があること。 偶然集まった1人1人の生活が少しでも輝いてほしいと思った。もちろん現在...
しんどい経験だったり少し苦しくなるような経験も書かれているけど、人生には絶対よく分からない事とか、偶然だけど意味を考えちゃうこととか絶対に起こる。 特技にも自慢にもならないけれど、自分にとって意味があること。 偶然集まった1人1人の生活が少しでも輝いてほしいと思った。もちろん現在は全員人質なんだけど。 分からないけど、名作だってことはわかる。わからなくて再読してしまうのも小説の魅力で、何度も楽しませてくれる。
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独特で美しい雰囲気を持つ本。 冒頭から結末が知らされるけど、それゆえにその後の短編がなんとも切ない気持ちになる。 静謐な文章とは、こういう事かと思った。 読後の余韻がすごいです。 静かな夜にゆっくり読みたい本。
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IGでみんな大好き小川洋子、の存在は、 「博士の愛した数式」に乗り切れなかった印象の強い私にとってはハードルの高い作家の一人として常にアウェイ感を持って半顔で眺めるだけだった。 けれど、この「人質の朗読会」は最初から純粋に興味を持った。そして中を確認するまでもなく購入した。 ...
IGでみんな大好き小川洋子、の存在は、 「博士の愛した数式」に乗り切れなかった印象の強い私にとってはハードルの高い作家の一人として常にアウェイ感を持って半顔で眺めるだけだった。 けれど、この「人質の朗読会」は最初から純粋に興味を持った。そして中を確認するまでもなく購入した。 読めた。面白がれた。再読必須だけれど、短編の面白さというか、こんな些細なことを切り取って一つのものがたりに出来ることに驚いた。 人質8人が、人に話すまでもないくらいなんだけど、記憶に残る出来事をさりげなく語る。誰も、なんだ、そんなこと、なんて言わない。誰にとってもある、身近な、それゆえに忘れちゃっても全く支障のない「ことの起こった時間」を丁寧に掬い上げる。 私だったらなに? いろいろありそうな、でもこんなふうに文章にできるかな? テロリストに人質に獲られるという異様な事態。 一向に解放交渉は進まないようだ。 緊迫感は長くは続かない。誰だって自分に危険が迫っているなんて信じられないもの。そんな中でも無意識に、日常を取り戻そうとしちゃうのかな、それで、みなさん、なにか、語ってみましょうよ、ってなったのかしら? 自分のストーリーを考えている時、人のストーリーを聞いている時、それを咀嚼している時、せめて穏やかな時間を過ごせていたらと願わずにはいられない。 「杖」「B談話室」「花束」が好き
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人質となった人達が、一人ひとり自分のことを語っていた。 録音していた声をラジオで朗読会として放送したというお話。 小川洋子さんの設定は私には創造できないものが多いです。 そして、人にも物にも強い意志を感じる文章で、何かを伝えてくれます。 全身にしみました。
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どの話も良かったのですが、私が1番気に入ったのは、「槍投げの青年」です。空っぽの毎日を過ごしていたのに、ある日、槍投げの青年を観て、自分の心の空白が埋まった。って言うのは、今どきの言い方をすると、オシを見つけたってことかなって思いました。オシは有名人じゃなくてもいいんですよね。そ...
どの話も良かったのですが、私が1番気に入ったのは、「槍投げの青年」です。空っぽの毎日を過ごしていたのに、ある日、槍投げの青年を観て、自分の心の空白が埋まった。って言うのは、今どきの言い方をすると、オシを見つけたってことかなって思いました。オシは有名人じゃなくてもいいんですよね。そしてこの方は10年以上も同じ青年のことを思っているけど、それも人それぞれかと思います。何かが心の空白を埋めてくれると嫌なことがあっても頑張れるような気がします。
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