セラピスト の商品レビュー
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心の病は、どのように治るのか。膨大な取材と証言を通して、心の治療のあり方に挑むノンフィクション。故河合隼雄の箱庭療法の意義を問い、精神科医の中井久夫と対話を重ね、セラピストとは何かを探る。 読み進めるのに苦労した。 箱庭療法など一度経験してみたい。
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自分を知ること、苦悩を知ることがいかに困難か。著者も含めそこに向かい、働き続ける人がいる重み。時代と社会をあぶり出す視座もすごいが、沈黙を護る意義を示したことが大きい。 ・中井:言葉はどうしても建前に傾きやすい。善悪とか正誤とか因果関係の是非を問おうとする。絵は因果から解放して...
自分を知ること、苦悩を知ることがいかに困難か。著者も含めそこに向かい、働き続ける人がいる重み。時代と社会をあぶり出す視座もすごいが、沈黙を護る意義を示したことが大きい。 ・中井:言葉はどうしても建前に傾きやすい。善悪とか正誤とか因果関係の是非を問おうとする。絵は因果から解放してくれる。メタファー、比喩が使える。 ・山中:カウンセリングでの話の内容や筋は、実際は治療や治癒には余り関係がない。それよりも無関係な言葉と言葉の間とか、沈黙にどう答えるとか、イントネーションやスピードが大事。 ・村瀬:精神的に追い詰められている人々は、健常者よりずっと鋭い眼力を持つ。 ・普通ならば、大丈夫ですか、といわれるところ、お気を付けて、と声をかけられた。主語がYOUであるかどうか。 ・絵は防衛手段。自ら絵を描きたいという患者はうまいと褒められる事への期待があった。 ・心理臨床の営みの目的は悩みを取り去ることではなく、悩みを悩むこと。 ・山中:言語化せずとも癒されることがある ・山中:言葉は無理矢理引き出したり、訓練したりする必要はなくて、それ以前のものが満たされたら自然にほとばしり出ていく。 ・中井:先生は子どもの秘密を知りたがる。しかし、秘密を尊重するところから始める。 ・因果律のないものをかたるのがいい。因果関係を作るのはフィクション、妄想。妄想は統合失調症の専売特許ではなく、自分との折り合いの悪い人に起こりやすい。 ・構成がうまくできることは、ちゃんとご飯を食べる、寝るにつながる。構成法は日常をつなぐ部分を見る。 ・受診拒否、言葉を発する恐怖、罰が当たると思う、緘黙も色々 ・アセスメントは自分でやった方がエンパワーされる。 ・物語を紡ぐということは、一次元の言葉の配列によって、二次元以上の絨毯をおる能力。無理もある。 ・ストレスがあると緊張は高まって、しんどいということはわかる。だけど葛藤がなんなのかわからない。主体的に悩めない。 ・よくしゃべるクライエントは、よくなってくると黙る。そんな人がキャンセルするようになる。ポジティブな意味もある。 ・発達障害は社会の第三次産業化に応じて、可視化されてきた。 ・人間の心には必ず二つの側面がある。良くなりたい、けど変わりたくない。 ・深いところってどういうところかと突き詰めていくと、なかなか…。宗教はみなそうですが、籠もったり、沈黙したりとさまざまな方法をもっている。そこには表面を断つ、という意味がある。 ・双極性障害は「気分屋的生き方をすると気分が安定する」(神田橋條治)
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とても丁寧に取材し、書かれた本だということは、読んでいてよくわかる。ただ、どうもモヤモヤしたものが残る。 一番の疑問は、最後になって自身の病気について語り始めること。もちろん、著者自身が病気に苦しむ立場であればこその視点というものには、大いに意味があると思う。ただしそれを明らかにせず、あくまで部外者としての視点から書いているように読者に思わせておきながら、最後に「実は…」というのは、ちょっと納得ができなかった。 内容的にも、何をテーマとしてどこを掘り下げようとしているのか、最後まですっきりしなかった。セラピストや心理療法という世界の概要については理解できたけど、そういう目的のための本であれば、最早さんが書く必要はないと思うし。 最早さんの本ということで期待値が上がりすぎているのかもしれないけど、ちょっと肩すかしでした。
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良書。 心に興味のある人、人事の人や身近な人が病んでしまった人は読むといい。 内部事情も分かって興味深い。 ただ、後半、「最近の患者は主体性がなく、表面的」っていう論調があって残念。
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単にノンフィクションを読んだというより、最相さんやセラピストの世界に潜っていく感覚になりました。 「セラピスト」という職業は、素人目に見ると結局何をする人なのかわからない存在でした。 医者とは違うのか、心理テストみたいなのをされるのか、なんか怪しいことをされて法外なお金を巻き上...
単にノンフィクションを読んだというより、最相さんやセラピストの世界に潜っていく感覚になりました。 「セラピスト」という職業は、素人目に見ると結局何をする人なのかわからない存在でした。 医者とは違うのか、心理テストみたいなのをされるのか、なんか怪しいことをされて法外なお金を巻き上げられるのではないか…などなど。(ごめんなさい) そんな、私にとっては謎に満ちた世界を覗くことができ、セラピストへのイメージがガラリとら変わりました。 こんなに研究を重ねられて体系だてられているとは思わず…。 言葉と心の関係や、パーソナリティについてドキッとさせられる文章が所々に書かれていて、自分自身のことやコミュニケーションについて考えさせられました。
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なかなかの分厚い本で読みごたえがある。 箱庭療法の意味合いがなんとなく理解できた。 一人前のカウンセラーになるには25年かかるそうだ。 ながっ!!
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精神科や心理臨床にロマンがあった時代のこと、そして 自分が若い時に熱中していたことを思い出させてくれて、ノスタルジックな気分になりました。 ノンフィクション作家であり、読ませる文体ではあります。 前著の星新一はよかったですが、これは個人的な感情も含めて書かれている部分もあり、少し...
精神科や心理臨床にロマンがあった時代のこと、そして 自分が若い時に熱中していたことを思い出させてくれて、ノスタルジックな気分になりました。 ノンフィクション作家であり、読ませる文体ではあります。 前著の星新一はよかったですが、これは個人的な感情も含めて書かれている部分もあり、少し情緒的な一冊と感じました。
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河合隼雄が果たした役割の大きさが分かったような気がします。しかしながら、カウンセリングとは難しいものだと思いました。因果関係に落とし込まない、物語を紡ぎださない、言語にならないものを引き出して治療していくことは医者にとっても患者にとっても途方もなく時間と労力がかかる仕様だと思いま...
河合隼雄が果たした役割の大きさが分かったような気がします。しかしながら、カウンセリングとは難しいものだと思いました。因果関係に落とし込まない、物語を紡ぎださない、言語にならないものを引き出して治療していくことは医者にとっても患者にとっても途方もなく時間と労力がかかる仕様だと思いました。
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もうね、この本、私の「2014年読んだ本ベスト3」には必ずランクインする! 定価1800円という、本をガンガン買う私からしても高額本に入る本だけど なんか運命を感じて、リアル書店で中身確認せずにポチってたんだよねぇ~ それは、ある日曜日、地元新聞と日経の本初回のコーナーで揃って紹...
もうね、この本、私の「2014年読んだ本ベスト3」には必ずランクインする! 定価1800円という、本をガンガン買う私からしても高額本に入る本だけど なんか運命を感じて、リアル書店で中身確認せずにポチってたんだよねぇ~ それは、ある日曜日、地元新聞と日経の本初回のコーナーで揃って紹介されていた どちらの書評も興味をくすぐるもの・・・ 「これは買いだぁぁぁ」と本能が察知した(笑) 私の本能、ありがとう!いい、涙が出るほど、良かった! これからも苦難の道だけど、カウンセラーになって良かったと思えた(涙) 私が選んだ道が正しかったと確信が持てた そして・・・ 付箋だらけで、どこから何を紹介して良いのか悩みます(苦笑) 今、いろんな療法があって・・・ 正直、勉強するだけで精一杯と言うか・・・ でも、カウンセラーとしての一番大事な基本的な姿勢はここにあるんだと思える 文章に何度もぶち当たった 「カウンセリング」と言う占いと何が違うのか、化粧品コーナーのカウンセリングと同じなの?と 勘違いされ、しかもその値段の高さに胡散臭いと思われ・・・ そんな一般の人にも分かるように書かれてあるので、勉強してる側にも伝わりやすい 「そうそうそう!そう言いたかった」って何度も膝を打った 最相さんの文章の伝え方に感動した そうだ、こうやって伝えれば良かったんだと・・・ 正直、ユングもフロイトも心理の教科書に出てくる昔の外国人だったけど この本のおかげで私の中で繋がったんだよね ちょっと付箋部分をご紹介します ・事例研究会に出されるレジメは、クライエントの症例でありながら、カウンセラーを映す鏡でもある。 カウンセラーは、同業者とのこうした研究会でふだん抱えているものの荷下ろしをしながら、同時に 自分を晒け出し、第三者の目を通して厳しく自分を客観視することを常に課せられている。(p75) → ここの部分なんて激しく首を縦に振った!5年目に入る逐語の勉強会がまさにこれだよぉぉ! 泣きながら帰ったあの日々は大事だったんだ(涙) ・患者の苦悩に寄り添い、深く「関与」しつつ、一方で、その表情や行動、患者を取り巻く状況に対しては 冷静で客観的な「観察」を怠らない(p230) ・熱意をストレートにぶつけるのはなく、内に秘めて一歩退く。沈黙は沈黙のまま見守る(p233) ・セラピストの作業とは、主体の立つための場所を用意し、語りのための沈黙を準備するもの(p300) ・人が変わるって、命がけなんです(p308) ・私の相手をしているのは、クライアントの全存在である、それがどのように進んでゆくかは よほど慎重に、そして、私の態度を柔軟にしていないとわからないと思います。 自分の意識を表層から深層まで、できる限り可動の状態にしていることによって、クライアントと共に 自分の行く方向が見えてくるのです(p313) ・新しい生き方を見出すとは、なんと苦しいことだろう。それに伴走するとは、なんと過酷なことか。 「『深い』過程は文字どおり死にもの狂いにならぬと不可能」であるからこそ、医師やカウンセラーは クライエントと関わることによって生じるすべてのことを引き受ける覚悟で臨まなければならないのだろう(p318) この本がキッカケで、河合隼雄先生の著書も何冊もポチり、箱庭療法の勉強会も予約! 簡単なことじゃないのはカウンセラーの入り口にいる私でも分かる もっと自分と向き合わないといけない場面が出てきて、逃げ出したくなると思う・・・ もしかしたら、壊れちゃのかも知れない・・・ だけど、もっともっともっと勉強して、目指すカウンセラーになりたい!と強く思わせてくれた1冊 私のバイブルになりました!
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書評で、河合隼雄と中井久夫が登場すると紹介されていて、これは見逃すわけにはいかない。 河合隼雄の始めた「箱庭療法」と、中井久夫の始めた「絵画療法」が二つの軸となって構成されており、お互いがインスパイアーし合っていて興味深い。言葉に依らない表現を通して会話しながら心の病を治療...
書評で、河合隼雄と中井久夫が登場すると紹介されていて、これは見逃すわけにはいかない。 河合隼雄の始めた「箱庭療法」と、中井久夫の始めた「絵画療法」が二つの軸となって構成されており、お互いがインスパイアーし合っていて興味深い。言葉に依らない表現を通して会話しながら心の病を治療するという方法は注目に値する。 人は、言葉を身に付けたために、言葉に依拠して、知らず知らずのうちに言葉がすべてという錯覚に陥っている。言葉にできないものの中に、大事なことが含まれているのかもしれないのに。詩人田村隆一の「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」(『帰途』)という詩の一節がフラッシュバックしてくる。 河合隼雄と中井久夫の出会いのエピソードが印象的だ。箱庭の枠の内側にさらに強固な柵を設けてから物を置き始めた患者の箱庭を見た中井は、これをヒントに絵画療法の「枠付け法」を始めたという。一枚の紙に枠があると、内面的な欲求や攻撃性、幻想などが現れるらしい。 中井久夫と著者が向き合って行った絵画療法の場面が、3回に分けて「逐語録」として収められている。二人が語り合う空気や、沈黙による交感まで感じられ、中井の温和で優しい人柄とともに、精神科医としての冷静な眼差しも伝わってくる。 著者自身も心の病の持ち主(診断名は双極性傷害Ⅱ型)であり、「心について取材しながら、自分の心を知りたかったのだ」と吐露している。 私も、A4のスケッチブックと24色のクレパスを買ってきて、思いつくままに絵でも描いてみることにしよう。「枠なし」と「枠付き」で。そこに何が現れるか楽しみになってきた。
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