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地図と領土 の商品レビュー

4.2

34件のお客様レビュー

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    10

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2024/03/12

背景がわからないため十分消化しきれていないが、作品の中に現代フランス社会が描き出されていて興味深い。日本と同様国内需要だけではたちゆかず、ロシア人、中国人などのインバウンドに頼らざるをえない経済、パリ郊外伝統的地域住民の閉鎖性が、国家権力の手先としての警察に対する敵意など、様々な...

背景がわからないため十分消化しきれていないが、作品の中に現代フランス社会が描き出されていて興味深い。日本と同様国内需要だけではたちゆかず、ロシア人、中国人などのインバウンドに頼らざるをえない経済、パリ郊外伝統的地域住民の閉鎖性が、国家権力の手先としての警察に対する敵意など、様々な形で登場人物の生活に影響を与えている。

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2023/04/12

新鮮。他の小説であればそれひとつで物語になっていそうな成功,情熱的な恋,別れ,親の死,殺人などがすべて通過点として淡々と描かれている。作者自身が登場して惨たらしい死に方をするのも…意味深。自分を殺してみたかったのか?意外性を狙ったのか?ジェドの最後の作品とされているビデオ、文字で...

新鮮。他の小説であればそれひとつで物語になっていそうな成功,情熱的な恋,別れ,親の死,殺人などがすべて通過点として淡々と描かれている。作者自身が登場して惨たらしい死に方をするのも…意味深。自分を殺してみたかったのか?意外性を狙ったのか?ジェドの最後の作品とされているビデオ、文字で見るだけでもとてもとても興味深い。「世界」って結局そうなのかもしれない、人生ってこういうものなのかもしれない。アートにもっと触れて、その作品の背景というのを考えてみたくもなったし著者の作品ももっと読みたくなった。

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2022/05/15

なかなか端的に評しづらいのは、本書の中の圧倒的な場面転換(Ⅲ部の冒頭)が小説全体の構成の中でうまく消化されていないように感じたからなのだが、本作が作者自身を含む作家やアーティスト、建築家等が抱えるどうしようもない孤独にかつてないほど肉薄しているのは間違いなさそうだ。 ただ、農業へ...

なかなか端的に評しづらいのは、本書の中の圧倒的な場面転換(Ⅲ部の冒頭)が小説全体の構成の中でうまく消化されていないように感じたからなのだが、本作が作者自身を含む作家やアーティスト、建築家等が抱えるどうしようもない孤独にかつてないほど肉薄しているのは間違いなさそうだ。 ただ、農業への回帰や植物の勝利がイメージされる最終盤はどうも唐突としか受け取れなかった。

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2022/02/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アーティストのジェド・マルタンはある日ミシュランガイドの地図に感銘を受け、その地図と衛星写真を対照的に表示した現代アート「地図は領土よりも興味深い」を発表する。展示会は大成功を収め、ジェドは一躍セレブアーティストの仲間入りをするが…事態は思わぬ方向へと動いていく。 ウエルベックが作中に重要人物として登場する。「とにかく、絵を掛けるための壁ならあります。人生でわたしが本当に所有している唯一のものがそれですよ。壁です。」と作中で彼が言うように偏屈で孤独な男として描かれている。彼が描いた自身の像は世間の持つ彼に対してのイメージ通りらしい。 巻末の訳者である野崎歓さんによるあとがきが素晴らしかった。 「芸術と資本の結びつきを鮮やかにとらえている。」「架空のアーティストの作品の数々を傑作として描き出すのは、小説家にとって大きな挑戦であり、また腕のふるいどころでもあるだろう。」と言っている。たしかにウエルベックの想像力と知性はとんでもないという印象だ。 また「作品の誕生から流通、消費に至るメカニズムを総体的にとらえることで、物語は大きな広がりと魅力を獲得している。」と言うように、写真、絵画、建築、文学を鋭く批評的に論じながら、ひとつの世界として芸術が生まれる過程を描き出した、とても説得力のある小説だったと思う。そういう見方でひとりのアーティストの生涯をたどることができたのは特別な読書体験だった。 でも個人的にはウエルベックはやはり「闘争領域の拡大」がもっとも私小説的で、身を削っていて、魂の叫びの発露な感じがして気に入っている。小説家としてはウエルベックは確実にパワーアップしてる感もあるけど、読むほどに作品のスタイルが似通っていて、もうウエルベックはしばらくいいかなという気になった。

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2019/04/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

初ウエルベック。 めちゃくちゃ仕事ができる魅力的な美女を惚れさせる主人公は内省的で小さい芸術家。 ってまんま春樹世界やな、と思ったり。 作中に出てくるジェドの作品のモチーフになった現実の登場人物は知らなくても検索すると「ふむふむ、なるほど」と腑に落ちるので、流さずに読み込むことで味が分かります。 施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』にて本書の文庫版の帯をド嬢の目に触れさせないように神林さんが必死になるエピソードに興味を惹かれて読みました。 おそらく、その帯にはウエルベック殺人事件!とでも書かれていたのでしょう。 確かにひどいネタバレだと思う。 神林さんありがとう。私はそれを知らずに読めたのでとても幸せでした。

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2019/03/25

作中で芸術が創作されている。それも迫真の形で。 作中で作者が出てきて死ぬ。それも凄惨な形で。 2つの意味で入れ子構造だ。 どの一文も即物的でありながら、真実味がこもっている。訳文がうまいのだろうか。不思議なことに、しみじみとした手触りがあった小説だった。 それにしても配管はな...

作中で芸術が創作されている。それも迫真の形で。 作中で作者が出てきて死ぬ。それも凄惨な形で。 2つの意味で入れ子構造だ。 どの一文も即物的でありながら、真実味がこもっている。訳文がうまいのだろうか。不思議なことに、しみじみとした手触りがあった小説だった。 それにしても配管はなんのメタファーなんだ。 父の安楽死はなんの象徴なんだ。

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2019/01/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

芸術家ジェドは、母を自殺で失い唯一の肉親の父とクリスマスの晩餐をとることとテレビ番組の視聴を習慣としている。 工業製品や職業人の写真をとるシリーズなどの制作に寡黙に取り組むがミシュランの地図を写真に収めるようになったところ、ミシュラン広報の担当のロシア美女オルガの目に止まり、人脈が広がり芸術家として成功する。 しかし、オルガの転勤により今までの作品制作をやめ絵画に回帰する。再び展示会を開こうとしたとき、作家のウェルベックに紹介文を依頼したことから、この作家との繋がりが始まる。お礼に肖像画をジェドはウェルベックに送る。再び脚光を浴びたジェドは大成功を収める。しかし、その肖像画があだになり作家は惨殺されてしまう。そして、父は人工肛門を憂いスイスの自殺幇助団体ディグニティスの元へ旅立ってしまう。 ジェドは、残された30年を友人や父の写真や人形が朽ち果てるのをビデオ撮影するという作品を黙々と作るのに費やしたのだった。 フランスの料理、ワイン、食材、芸能人や富豪、フランスの製造業の18世紀の栄光と凋落とアメリカ資本の製品やスーパーマーケットなど大量消費社会、市場での成功が芸術作品を正当化するなど資本主義の狂乱を遺憾無く描き尽くす。けれど、最後には、植物が勝利を収めるというどれだけ金銭を手にしてもついには孤独のまま、埋もれていく虚無感がなんとも言えない。

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2018/10/28

【由来】 ・amazonでケストラー本のつながりでたまたま。興味を持ったのはタイトルで、地図関連のものかと思ったら小説だった。 ・ちくま文庫の新刊案内で。タイトルに惹かれたが登録済みだった。 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマ...

【由来】 ・amazonでケストラー本のつながりでたまたま。興味を持ったのはタイトルで、地図関連のものかと思ったら小説だった。 ・ちくま文庫の新刊案内で。タイトルに惹かれたが登録済みだった。 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】

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2018/10/13

結局めくるめくうちに読んでしまった。人生の終焉を見た。ベストな終焉であってもせいぜいがジェドなのだ。それが死ということだろう。カミュのいう「太陽と死は直視できない」を超えてぎりぎりまで死を追いかけていくとこんな話になるのだろうか。いくつかの死が描かれる。別れてそれっきりの人物も多...

結局めくるめくうちに読んでしまった。人生の終焉を見た。ベストな終焉であってもせいぜいがジェドなのだ。それが死ということだろう。カミュのいう「太陽と死は直視できない」を超えてぎりぎりまで死を追いかけていくとこんな話になるのだろうか。いくつかの死が描かれる。別れてそれっきりの人物も多い。父は商業的安楽死、作家は変態に惨殺され、主人公も想い出まくらを紡ぎつつ死んでいく。しかし、そう考えるとテーマは古いし陳腐なのか? 図書館本だがひと月もすると文庫が出るようだ。また読んでみたい気もする。

Posted byブクログ

2018/09/12

マッチョ過ぎるし、ネットが出てこない。若い読者に無理して阿ろうとしているのかな。こんなところに孤独なんてないし、絶望もない。それともむしろ自虐なのかなあ

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