ほろびぬ姫 の商品レビュー
自分でも分からない自分の輪郭が、少しずつ形を成していく…と思ったと同時に物語は唐突に終わる。 それにしても、難しい言葉を使うわけでもないのに複雑な心の襞や感覚を表す言葉のチョイス、文章の確かさには脱帽です。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
あなたはあなたが連れてきた――サスペンスとたくらみに満ちたハードな愛の物語。 嵐の日、あなたは、行方不明だった弟を連れて来た。 あなたに瓜二つのあなた。 そして言った、「僕は死ぬんだ」―― 幸福な結婚生活を送っていると感じていた「私」に、ある日訪れた不可解な出来事。 女が男を愛するとき、取り替え不可能なもの、確かなものとは何か。 (アマゾンより引用) あなた、あなた言うから何が誰か分からんくなる
Posted by
起承転結の転だけがずっと続くような話。 少し時代を遡ると、家庭というものは完全なブラックボックスであり、ものすごく閉鎖的に書かれている。 現代では、ネットを通して些末な家族のやりとりをいくらでも見ることができる。それに一億総発信社会となり、自分の考えを他者に開陳することのハード...
起承転結の転だけがずっと続くような話。 少し時代を遡ると、家庭というものは完全なブラックボックスであり、ものすごく閉鎖的に書かれている。 現代では、ネットを通して些末な家族のやりとりをいくらでも見ることができる。それに一億総発信社会となり、自分の考えを他者に開陳することのハードルが下がって、翻って自分の中に「人に説明できる理屈」を無意識に作るようになった。自分の発言を遡られた時に矛盾が起こらないように、本当に繊細に理論立てしている。 でも家庭って、本来は社会規範とか道徳とかを超越した、人間同士のぶつかり合いなんだよな〜ということを思い出した。 文体は好きだけど、テーマはずっと自分の中の禁忌をカリカリ引っ掻かれる感じがして苦手かも。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
あなたが連れてきたあなたと私とあなたの関係。 夫がある日突然、長らく行方不明になっていた双子の兄弟を見つけて連れて帰ってきた。 それから夫は自分はもう余命わずかだと言い、さっさと自分で見つけてきたホスピスに入ってしまった。 残された私のもとに定期的に通ってくる夫の双子の兄弟。 同じ顔をしているのに何一つ似ているところがない性格に戸惑い、受け入れる余地もなかったのに、夫は自分の代わりに双子の兄弟を私に当てがったのだと気づく。 愛する私を残して死んでいく悲しさと、双子の兄弟を自分と思って愛して欲しいという気持ちと、同じ顔をしているけれどあなたはあなたしか愛せないと言って欲しい夫の気持ち。 夫もあなた、双子の兄弟のこともあなたという代名詞なので、最初は混乱しかけたけど、それも2、3ページくらいのことで、自然にどっちがどっちのあなたなのかすぐにわかってしまう不思議さ。 まどろっこしさが心地よい。
Posted by
死期間近の夫が、生き別れになっていた双子の弟を自宅に連れてくる。混乱しながらも義弟との距離を縮めていく妻の姿を描く。 両親を失った日に知り合った年の離れた男と結婚し、その夫だけを頼りに世間とは没交渉に生活してきた妻。自分の死後の妻を心配して、身代わりとして弟を近づける夫。その異...
死期間近の夫が、生き別れになっていた双子の弟を自宅に連れてくる。混乱しながらも義弟との距離を縮めていく妻の姿を描く。 両親を失った日に知り合った年の離れた男と結婚し、その夫だけを頼りに世間とは没交渉に生活してきた妻。自分の死後の妻を心配して、身代わりとして弟を近づける夫。その異様さは、妻が夫も義弟も「あなた」と呼ぶことで、さらに拍車がかかる。 華やかでもなく本人の意図するところでもないにもかかわらず、周囲の男たちにとっては放っておけない「姫」として扱われる女性は、確かに存在する。 作者ならではの冷ややかな目線も感じられ、暗くじわじわと締め付けるような怖さのある作品だった。
Posted by
「あなたはあなたが連れてきた。」から始まる不思議な文章。最愛の夫である「あなた」と一卵性双生児の弟の「あなた」 読みながら、これはどちらの「あなた」だろうと考える。そして、最後まで読んで気づいた。弟の盛時は、二人称の「あなた」から最愛の「あなた」にスライドしたのだと。夫は最愛の妻...
「あなたはあなたが連れてきた。」から始まる不思議な文章。最愛の夫である「あなた」と一卵性双生児の弟の「あなた」 読みながら、これはどちらの「あなた」だろうと考える。そして、最後まで読んで気づいた。弟の盛時は、二人称の「あなた」から最愛の「あなた」にスライドしたのだと。夫は最愛の妻を一人で残しては逝けなかった。だからこうなるように仕向けたのだが、途中からそれは契約ではなく恋愛になったんだね。
Posted by
あなた、とあなた。 あなたが2人いて、ちゃんと読まないと迷子になる。 どろっとした、という擬音がふさわしいと思える作品でした。 2017.4.9 30
Posted by
「あなたはあなたが連れてきた・・・」出だしから激しく混乱。だけど、夫も「あなた」、夫の弟も「あなた」なのに、なぜか読んでいてどっちのことかわかるのが不思議。 夫は、自分の余命がいくばくもないと知って、行方不明だった双子の弟を探し出し、「わたし」の面倒を見るように頼んだ。 「グヤグ...
「あなたはあなたが連れてきた・・・」出だしから激しく混乱。だけど、夫も「あなた」、夫の弟も「あなた」なのに、なぜか読んでいてどっちのことかわかるのが不思議。 夫は、自分の余命がいくばくもないと知って、行方不明だった双子の弟を探し出し、「わたし」の面倒を見るように頼んだ。 「グヤグヤナンジヲイカニセン」あなたの呟き。 私の愛はどうなるのだと抵抗する「わたし」の気持ちが次第に変質していく。 「愛ってそれほど重要なもの?」 荒野さんらしい不思議な世界だった。
Posted by
あなたとあなた。 最初から二人にあなたと語りかけてるということは、 同じくらいの愛情が芽生えていたのかな。 性格は違っても、顔は同じなら 夫が死んだあとも弟を見れば 夫のことを思い出してしまうだろう。 妻に自分の存在を永遠に忘れてほしくなかったのだね。
Posted by
色々な愛のかたちと表現。 死に行くものは残して行く妻を気づかい生きて行けるように仕向けるが実は自分への愛を確認している。とても残酷だ。 残される妻はそれを拒否しながら最後にはその提案を受け入れる形になってしまう。 ドキリとするラストは予想外というか、やはりというか。
Posted by