饗宴 の商品レビュー
所詮私は私でしかなく、子は私とは別のものでしかない、というのはしごく簡単な疑問である。しかし、この疑問を解決するのは実に 簡単で、我々がそもそも我々自身と思っている物ですら、子供から老年までに構成要素から外見まですっかり変わってしまっているのであり、 それをして同一であるとみなし...
所詮私は私でしかなく、子は私とは別のものでしかない、というのはしごく簡単な疑問である。しかし、この疑問を解決するのは実に 簡単で、我々がそもそも我々自身と思っている物ですら、子供から老年までに構成要素から外見まですっかり変わってしまっているのであり、 それをして同一であるとみなしているのである。また、これは心の状態(欲求、快楽、苦痛)にも同じことが言える。そして、 我々は(動物も含めて)上記と同様に、神のように永遠に同一性を保つというやり方ではなく、老いて消え去りながら、自分にに似た別の新しいものを 残していくというやり方で永遠の自身を確立させるているのである。これについては、ヒュームが極めて似通ったことを述べている。 曰く、我々は得てして想像が、つまり観念から観念への移行が滑らかに容易く行われる時、それらを混同してしまいがちである。そして、 やがてその錯覚を、つまり変化し続ける対象が同一なものであるということを確定させるために、様々な知覚・印象の持続的存在としての魂とか 自己という物を作り上げるのである。 更に、我々は太陽などの一般的にも不変である思われるような物よりも、より変化しやすい物に対して整合性を持たせる場合には、 対象間に共通の目的意識を見出すことがある。ここで、人性論ではテセウスの船が例に挙げられているが、人間の身体は正にこの論理に当てはめることで 同一視することができるのである。
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古代ギリシャの饗宴(飲み会)でのオッサン達による戀バナ。 テーマはエロス(愛)古代ギリシャなので当然少年愛(パイデラスティア)エロさえも哲学なのだ。 成人した男性が少年と恋愛する事こそが最高の教育とか流石古代ギリシャレベル高すぎ。 今作ではソクラテス自身ではなくマンティネイアのディオディマ(多分腐女子)の言葉として語られている。 曰く戀とは、善きものと幸福への慾望である エロスとは美しさと醜さ、良さと悪さの中間にあり、神と人間の間にある精霊である エロスは既知の神ポロスと貧乏神ペニアの間に生まれた存在(マジで?) 肉體の美から精神の美、知識の美、美のイデアへと至るなどプラトン先生らしくここでもイデアは健在。 アンドロギュノス(両性具有)の元ネタはアリストファネスの演説だったのか。本書では解説が充実していて分かりやすくて助かる。
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今までの対話編と違って、宴会で一人ずつが愛の神エロスについて話を披露するという形式。ソクラテスの話の内容も、今までのように論理的な対話形式でなく伝聞の話を延々語るというもので面食らった。しかし構成やストーリーとしてはいままでになく凝っていて面白いので、二重に面食らうことになってしまうのだ。ソクラテスの語るのは「エロスの奥義」という一見何ともうさんくさい話なのだが、中身はプラトンのイデア論につながる哲学的談義になっている(ただ、神話的・直感的な話が多い)。 美を求めるエロスとは人と神との中間である聖霊であり、美や良いものに欠けるがゆえにそれを激しく求めるという性質を持つ、というところから始まり、美の中でも肉体的なものではなく知恵が最も美しく、求められるということが示される。人間は永遠に生きて美を自分のものにすることはできないけれど、肉体的には子供を作ること、精神的には哲学的対話により徳を生むことで永遠が実現する。そのように肉体、精神、そして知恵へと上昇しながら美を追い求め、究極存在のイデアへ至る(ことができるかも)という話らしいのだが、なんだかいままでの著作の現実的な徳の話はいったい何だったのかと思うような壮大な、幻想的な話でとまどいがまず先に来てしまう。解説を読んでよくよく考えると、よくできているな、と思うのだけど。 最後に乱入者によって突如ソクラテス擁護の賛美演説が始まるのもご愛敬だが、当時の少年愛の習慣やソクラテス批判の状況などこれも解説を読んで勉強になったし面白かった。光文社訳、すごく読みやすくて親切丁寧で大好き。
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アンドロギュノスの話の原典が気になって購入してみた。 小難しい哲学書なのかもしれない…と少し身構えていたのだが、平易な文章で非常に読みやすく、登場人物それぞれの語り口も個性的で、文学作品として楽しむことができた。巻末の丁寧な解説のおかげで時代背景や文化の理解もしやすい。 「子孫を残すこと(体に宿す子を産む)・知恵や思想を遺すこと(心に宿す子を生む)、これらは不死性への欲求であり、エロスとは美しいものを永遠のものにしようとする欲求である。」という主張は、クリエイターである自分にとってかなり腑に落ちる考え方だ。 私は美のイデアに触れることができるのだろうか。私は美しいものを永遠に残すことができるのだろうか。 紀元前に書かれた本なのに、現代の私の心に深く問いかけてくる。読み終わったあとに、なんだか壮大な物思いに耽ってしまった。
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エロスはイデアに昇るための強烈な欲求ってことかな?美の段階説(外見、内面、普遍、イデア)はいい視点になった。
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エロスについて語る饗宴。ソクラテスの登場まで、美辞麗句、レトリックに満ちたエロス賛美が続き、ちょい退屈だが、演劇と思えばありか。
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ソクラテスやプラトンについて語られる時によく出てくる逸話が、もともとどんな文脈で語られたものかがわかって面白かった。訳者による時代背景等の解説も有用。
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素直におもしろく読めた。情景が浮かんでくるようで、哲学者らの人間味や関係性も伝わってくる。それでいてエロスをそれぞれが真剣に語り合う。自分もその中に放り込まれた感覚になる。一気に読めるが中身は深い本でした。
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古代ギリシャ当時のエロス観と、ソクラテスの哲学的エロス観との対比が、物語調で書かれた本です。 当時の少年愛という風習があることは知っていたし、ギリシャ神話を少しかじっていたことが理解の助けにもなり、読みやすかったです。 訳者による、時代背景や登場人物一人一人のエロス論への丁寧な解...
古代ギリシャ当時のエロス観と、ソクラテスの哲学的エロス観との対比が、物語調で書かれた本です。 当時の少年愛という風習があることは知っていたし、ギリシャ神話を少しかじっていたことが理解の助けにもなり、読みやすかったです。 訳者による、時代背景や登場人物一人一人のエロス論への丁寧な解説があるのはとてもありがたいですね。 エロスとは、「何物とも比較できない、独立した普遍的な美」を追い求める欲望である(と解釈しましたが正しいのかはわかりません笑)、というソクラテス(プラトン)の考えが、後のプラトンのイデア論へと繋がっているそうです。
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構えてたよりも読みやすくてびっくりした。 文化の背景は違うけれど、現代にも通じそうなことを書いていて驚いた。
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