さようなら、オレンジ の商品レビュー
他の方の感想を読んで初めてオーストラリアに逃げてきた、と知った。読んでる天気予報がスカンジナビアンというので、北欧へ移民したのかと思っていた… アフリカへの勝手な偏見から、始まりの文章で血のついた作業着、という表現で最悪な仕事かと、これまた勘違い…日本人の移住者のさおりの手紙で...
他の方の感想を読んで初めてオーストラリアに逃げてきた、と知った。読んでる天気予報がスカンジナビアンというので、北欧へ移民したのかと思っていた… アフリカへの勝手な偏見から、始まりの文章で血のついた作業着、という表現で最悪な仕事かと、これまた勘違い…日本人の移住者のさおりの手紙で段々と明かされていく。 何人かの女性の生き様を、第二言語に悩むことを、また教育を受けたことのない人とで会った日本人女性の反応を、国力の違いをありのまま表現しているのはとてもよかった。 短いながらに深い。 薄く、文字も大きい本なのだが、内容は深く読ませる。とてもよかった。小学生の推薦図書にしたい一冊だ。
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移民の国オーストラリアでも白人優位社会なんだろうか?アフリカ難民も日本人も差別を受けながら暮らしている。サリマは学ぶ機会がなく母語さえも不十分な状態で第二言語を学んでいる。その困難さがよくわかった。表現する言語を持たなくても感じることはたくさんある。少ない言葉、稚拙な表現でも伝わ...
移民の国オーストラリアでも白人優位社会なんだろうか?アフリカ難民も日本人も差別を受けながら暮らしている。サリマは学ぶ機会がなく母語さえも不十分な状態で第二言語を学んでいる。その困難さがよくわかった。表現する言語を持たなくても感じることはたくさんある。少ない言葉、稚拙な表現でも伝わるものがある。日本に暮らす技能実習生や難民の人と接するとき、この本を思い出したい。
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サリマが難民になって異国に来て言葉の壁を克服する過程が感動的でした。ハリネズミこと日本人が子供を亡くすシーンは悲しかったです。サリマの仕事を覚えて行き英語学校での頑張りは読んでいて応援したくなりました。 異色の感動作もあなたもぜひ読んでみてください。
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感想 アイデンティティを凝縮した言語。手放すことがあまりにも容易な現代社会。それでもあえて固執する。ずっと消えない灯火を灯し続ける。
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生まれたばかりの女の子の母親であり、大学で働く夫を持ち、、自らも高等教育を受けてオーストラリアに暮らす日本人女性。アフリカで戦争に巻き込まれ命からがら逃げ出し、難民としてオーストラリアに移住。夫は蒸発し二人の子を男の子を育てる黒人女性。同じ英会話教室に通う全く異質な二人の女性が主...
生まれたばかりの女の子の母親であり、大学で働く夫を持ち、、自らも高等教育を受けてオーストラリアに暮らす日本人女性。アフリカで戦争に巻き込まれ命からがら逃げ出し、難民としてオーストラリアに移住。夫は蒸発し二人の子を男の子を育てる黒人女性。同じ英会話教室に通う全く異質な二人の女性が主人公の話です。 それぞれの生き様を描きながら、合間に書簡体を挟み込み、重層的に話が進みます。本音の話、最初は話の筋が見えずかなり苦戦したのですが、途中からはグイグイ引き込まれます。これが岩城さんのデビュー作のはずですが、そんなことを全く感じさせない見事な構成力です。わずか170頁。余白も大きな本ですが、充実度が高く、重たい長編小説を読んだような気がします。 岩城さんは長くオーストラリアで生活されている作家さんで、先日読んだ『サウンド・ポスト』でもこの作品でも、母語(日本語)と第二言語(英語)の葛藤が大きなテーマなのですが、どうも岩城さんの文体は、翻訳書を、あるいは英語で考え日本語で書た文章の様な感じがします。それも味なのでしょうが、私はちょっと苦手です。 全体を覆うどこか重苦しい雰囲気は岩城さんの持ち味なのでしょうね。それでも二人の女性がしっかりと前を向いて進んでいくエンディングは心地良く。
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それでもイタンジたちは強く生きていく。 アフリカから難民として渡ってきたサリマ。夫と共に日本から渡ってきたサユリ。2人の女性を軸として、オーストラリアの田舎町で生きていこうとする異邦人の生き様を描いた小説。 第二言語という異国で生活するための言葉を獲得したサリマだが、彼女の底にある強さは今までの人生と息子への思いにあった。決して奪われないものがある。それは自分の人生を肯定するための尊厳。日が沈んでまた新しい日が来るたびに、新しい自分へと生まれ変わり、階段を登っていくのだという前向きな強さ。 サリマからハリネズミと呼ばれるサユリは、幼い娘を事故で亡くす。大学で学び、書くことを手放そうとした彼女に、サリマは「違う」と伝え続ける。結局彼女は書き続けることを選んだ。様々な事情に振り回される彼女も奪われないものを見つけた。それが母語で書くことだった。 言語は思考を形作る。コミュニケーションの手段となる。マイノリティつまり「イタンジ」である登場人物たちが、自分の中にある奪われないエネルギーを見つけ、立ち上がっていく姿は美しい。まるで鮮やかなオレンジの夕陽のように感じた。
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ダイバーシティは孤独な戦いだ。その辛い現実を描くだけでなく、希望を描ききっている秀逸な作品だと思う。特に92頁から94頁の溢れる言葉に強く胸を打たれた。違うことを諦めない力強い宣言がそこにあった。
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外国に限らず、慣れない土地で暮らす苦労や地元の人から滲み出る「よそ者」としての扱いが滲み出していました。 どんよりしていて、無気力な雰囲気で途中で読むのをやめようかと思いましたが 後半は光が差し込むような感じでじんわりと温かい気持ちになりました。
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2014本屋大賞4位と表紙に惹かれて手にしてみました。 この年の本屋大賞は「村上海賊の女」和田竜(未読)、第2位は木皿泉「昨日のカレー、明日のパン」(読了☆3)、第3位は辻村深月「島はぼくらと」(未読)... 本屋大賞受賞作には大好きな作品が多いのですが、この年の受賞作はあまり相性がよくないのかな。 本作の主人公はアフリカ出身の難民でオーストラリアに辿り着いたサリマ。 生きていく為にはお金が必要で、お金を稼ぐ為には働くのが普通の考え方。 しかし、母語の読み書きすらおぼつかない彼女は当然英語なんて話せる訳もない。 生きていく為に英語を学び、通い始めた学校、勤め始めた精肉作業場での出会いと彼女の成長の物語。 残念ながら私にはまだ本作を読み込む力が不足しているようです。 説明 内容紹介 第8回大江健三郎賞受賞 2014年本屋大賞4位 第150回芥川賞候補 第29回太宰治賞受賞 「私は生きるために、この異国にやってきた。 ここが今を生きる、自分のすべてなのだ。」 ■各所から絶賛の嵐! 「言葉とは何かという問いをたどってゆくと、その先に必ず物語が隠れている」 ―小川洋子 「読んでいて何度も強く心を揺さぶられ、こみあげるものがあった」 ―三浦しをん 出版社からのコメント 異郷で言葉が伝わること― それは生きる術を獲得すること。 人間としての尊厳を取り戻すこと。 オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の子どもを育てている。 母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。 そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。 内容(「BOOK」データベースより) オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。第29回太宰治賞受賞作。 著者について 岩城けい(いわき・けい):大学卒業後、単身渡豪。 SW TAFE ヴィジュアルアート科ディプロマ修了。 社内業務翻訳業経験ののち、結婚。 在豪二十年。 太宰治賞受賞時の「KSイワキ」から改名。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 岩城/けい 大阪生まれ。大学卒業後、単身渡豪。社内業務翻訳業経験ののち、結婚。在豪二十年。『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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アフリカからの難民としてオーストラリアにやってきたサリマは、1人でこどもを養い語学研修所で英語を習う。そこには赤ちゃんを抱いて参加している日本人「ハリネズミ」がいた。 本作はサリマの目線とハリネズミの恩師への手紙によって交互に書かれる。 サリマの話を追いながら何度も目頭があつく...
アフリカからの難民としてオーストラリアにやってきたサリマは、1人でこどもを養い語学研修所で英語を習う。そこには赤ちゃんを抱いて参加している日本人「ハリネズミ」がいた。 本作はサリマの目線とハリネズミの恩師への手紙によって交互に書かれる。 サリマの話を追いながら何度も目頭があつくなった。祖国を失い異国で居場所を求める、その苦難や悲しみだけでなく勇気や幸福にも。 ハリネズミが書くジョーンズ先生への手紙は英語だろうか?だとしたら、これだけライティングができても異国では「言葉もわからず取り残される」気持ちでいるのだ。 異国で居場所を見つけられず、子どもを生み育てることの孤独が伝わる。 ハリネズミから終始伝わってくるのは強い焦り。したいことができない子育中の多くの女性が感じる焦りだ。 ハリネズミの手紙から、母語の意味についても考えさせられた。 ふたりは同じ語学研修所に通いながら境遇がまるで違う。相容れないと思っていたふたりが大切な友になっていく過程には、女性が知る哀しみの共感もあるのだろう。 「シャーロットのおくりもの」を読み聞かせてもらっていた文盲のトラッキーの「女ってすげえ」の一言は深い。
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