やわらかなレタス の商品レビュー
食べ物にまつわる短編のエッセイ集。 たびたび出てくるのは、実際に食べたものではなく、本の中に出てくる料理やその描写への憧れ。本の中に出てくる、知らない名前の、どんなものかも分からない料理の、それでも味やにおいや食感を確かに感じる経験。 私自身、色々な作品の中に出てくる食べ物の描写...
食べ物にまつわる短編のエッセイ集。 たびたび出てくるのは、実際に食べたものではなく、本の中に出てくる料理やその描写への憧れ。本の中に出てくる、知らない名前の、どんなものかも分からない料理の、それでも味やにおいや食感を確かに感じる経験。 私自身、色々な作品の中に出てくる食べ物の描写が好きだ。こんなふうに本の中でだけ味わえる食べ物があることは、読書の醍醐味でもあると思う。昔本で読んで憧れた食べ物の描写の数々を思い出した。 どのエッセイもさらっと読める短さと内容で、しなやかな文章で綴られる日常や旅先の、あるいは本の中の、食べ物に関するあれこれ。お茶を飲みながら休日の午後に読むのにちょうどいい、良い本だった。
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こんなにあたたかな文章を書けるのに(書けるから)、日常生活のいろんなことが苦手で、それもチャーミングな魅力になる江國香織さんの食べものにまつわるエッセイ。 こないだ再読した、”冷静と情熱のあいだ”から江國さん熱です。 “食べ物には静かなのと、賑やかなのがある...
こんなにあたたかな文章を書けるのに(書けるから)、日常生活のいろんなことが苦手で、それもチャーミングな魅力になる江國香織さんの食べものにまつわるエッセイ。 こないだ再読した、”冷静と情熱のあいだ”から江國さん熱です。 “食べ物には静かなのと、賑やかなのがある”という感覚に同調しました。そして、わたしも静かなのが好きです。
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2021 #1 お正月に読み始めるにはピッタリのエッセイ。 朝雪で覆われたニューヨークの街を見て「早朝、目を覚ますと世界から音が消えたようになっていて、」と書かれた部分がお気に入り。(P54) ----メモ---- P37 ところで、目玉焼きと最初に呼んだ人はどういう人なの...
2021 #1 お正月に読み始めるにはピッタリのエッセイ。 朝雪で覆われたニューヨークの街を見て「早朝、目を覚ますと世界から音が消えたようになっていて、」と書かれた部分がお気に入り。(P54) ----メモ---- P37 ところで、目玉焼きと最初に呼んだ人はどういう人なのだろう。豪胆だなあ、と思う。だって、目玉焼き。ぎょっとする日本語だ。英語ではサニー・サイド・アップという美しい名前だし、スペイン語ではウエボ・フリートで、辞書をひいたらウエボは卵、フリートは揚げる、油焼きをする、という意味だった。日本以外のどこかに、あれを目玉焼きと呼ぶ国はあるのだろうか。 P66 以来、春になって生のめかぶが店頭にでると、嬉々として買う。新鮮な海草は味もいいが、それよりも、湯通ししてたちまち青々とすきとおる、あの目のさめるような瞬間を味わいたくて、買ってしまう。 P80 すればできることなのに、そして、大抵の場合そう難しいことではないというのに、エイヤッ、と思わないとできないことは、いろいろある。用事があって電話をかける、あるいは、もらったのでかけ直す、と言う行動が私にとってはたとえばそれで、かけなきゃ、かけなきゃ、と思うのになかなかかけられない。 P82 牛すじ肉のかたまりを、野菜と一緒にひたすら煮込む。味つけはローリエと、コンソメキューブ一個だけ。 P161 味ではなく、焼いているときに部屋じゅうにひろがり、立ちこめる匂いが好きだった。味ではなく匂いのために、たぶん私はせっせとお菓子を焼いていたのだ。 P205 おいしいポタージュは、たべると全身の細胞にしみわたる感じがする静かなたべものだ(たべものには、静かなのと賑やかなのがある)。 P220 なんてやわらかなレタス!それはたぶん、うさぎになりきってしまった私が、心の中で上げた感嘆な言葉だったのだ。
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作者の日常を記した日記のようでありながらこれまて自分がどこか感じてきたような感覚が描写されている作品。一つ一つの話が細かく区切れているので寝る前の読書にぴったりだった。
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江國さんの本を読むと、自分が肯定された気がして癒されます。お風呂にずっと居座るの、わたしもやってみたいなあ
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やはり言葉のプロだ、と感じさせられた 江國香織の文書は優しくて、甘くて、さっぱりしている。それでいて、目に見えない鋭さを持っていてすごい。江國さんのように大人でないし、少女でもない危うい女になりたい。儚くて自我が強い女に!
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江國香織さんの食べ物にまつわるエッセイ。 読むと必ずお腹が空きます。 ありふれた食べ物たちがこんなに美味しそうに描かれるなんて。 おすすめです。
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タイトルも含めてすごく好き。癒し系ほのぼのエッセイ。 作家さんのエッセイってどうしてこんなに素敵なんだろう…なんでもない食べ物が、日常がキラキラして見える。 私も果物食べよう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「あたたかいジュース」「おみその矜恃」「バターミルクの謎」「やわらかなレタス」… 目次を開くだけでもう楽しくなれるなんて。江國さんの日常が垣間見える、おいしいエッセイ。 一番好きなのは「さすらいのウェイターのこと」。 数年ごとに毎回違うお店で同じウェイターさんに会うって素敵。 魚には性格があると感じたり、気になる言葉があると思わず立ち止まって考えたり、独特の感性だなあと思う。 小説に出てくる主人公や登場人物はこの人によって作られてるのだなあというのがよく分かる。 外はしとしと雨が降っていて、お風呂に入って、お酒を嗜み、果物を食べ、晴れた日にはたっぷりとしたフレアスカートを揺らして歩きたい。 -------- 子供の頃からの習慣である豆まきについて 「じゃあ、みんないつやめたんだろう。私に分からないのはそのことで、たぶん私の問題は、物事のやめどきというものが全く分からないことなのだ。豆まきも、しゃぼん玉を飛ばしたり絵をかいたりする遊びも、もうだめかもしれない恋も。」 もうだめかもしれない恋も。! いつのまにか自分も周りも大人になっていて、だけど一体いつなったんだろう?と、取り残されたような気持ちになるのがすごく分かる。 -------- 「機会が苦手、という人はたくさんいる。上手に使いこなせない、という人は。けれど私について言えば、使いこなせないだけじゃなく、機会がこわく、こわがるあまり、ほとんど憎悪している。その憎悪は機械にも伝わるらしく、彼らの方でも私を嫌っている。だからどんどん壊れる。」 機械からも嫌われていて、どんどん壊れる、というところにふふっとなった。笑 あとは 「テレビの付け方が分からなくなっていたのだ。(中略)ようやくこれだと分かったものの、画面には映像も音もなく、ビデオ2という文字が出ているのみ。ビデオではなくテレビを見たいんですけれど、と思いながら、リモコンのボタンをあちこち押した。」 ビデオではなくテレビを見たいんですけれど、と思う江國さんが可笑しくて可愛い。笑
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熱いコーヒーとドーナツ、湯通ししためかぶ、やわらかなレタス。 江國さんは食べ物を美味しそうに描くのが本当に上手。絵や写真よりもその魅力が伝わるのはすごい。 ニューヨークに行ってみたくなりました。
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