終わらざる夏(下) の商品レビュー
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登場人物の視点から、さまざまなシーンが次々と描かれるので、私のような短期記憶力保持者、には集中して読むことをお勧めする。暑かったこの夏。どうしても読んでたさおきたかった作品。まさか、故郷北海道からさらに遠い、あの島々でこんな歴史があったとは知らなかった。ラストにロシア人兵士の視点から、登場人物の最期が語られるシーンは読んでいて胸が痛んだ。 いつか、今年のような、暑い夏に読み返したいと思った。タイトルに反し、もう夏が終わる。
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1945 8/15日本人として忘れては行けない終戦日の玉音放送、ポツダム宣言受諾での無条件降伏、勝負けよりも戦争が終わる事に喜びを感じるまで苦労&矛盾を重ねた人々の気持。沖縄戦、硫黄島、南方戦線等戦い末期の話は戦後生まれの私達は映画、本で知っているが、北方果ての北千島列島...
1945 8/15日本人として忘れては行けない終戦日の玉音放送、ポツダム宣言受諾での無条件降伏、勝負けよりも戦争が終わる事に喜びを感じるまで苦労&矛盾を重ねた人々の気持。沖縄戦、硫黄島、南方戦線等戦い末期の話は戦後生まれの私達は映画、本で知っているが、北方果ての北千島列島での戦いは、シベリア抑留の話は耳にしていたが理不尽な戦争の果てに有る史実を知るに触れ哀しさ、悔しさ、凛々しさ色々な感情に心揺さぶられる。 終戦間際で徴兵上限の45歳で通訳の役目を担い戦後の交渉を目的に千島の北端の島に渡った片岡、その島で自給食料確保で缶詰め工場で働く女子高生600人、二度の戦争で自己の思いとは別で英雄と化した鬼熊軍曹、南方戦線で生き残った岸谷らは、玉音放送で戦争は終わった後に戦争を挑んでくるロシア軍に対し、女子高生をなけなしの船で逃しながら戦いに挑む。 やめろと言われてもやめられない戦いと違い、終わった後に手を上げている相手に戦いを仕掛けてくるロシア軍に鬼熊等の軍は戦い局部戦に勝利し美しき島を守る。しかし敗戦国の軍人らは、シベリアの強制労働(捕虜同様)の扱いを受ける。何処か幕末の戊辰戦争での会津藩が斗南への流された史実と同じ匂いを感じた。 片岡の子嬢が疎開先の長野から東京を目指す旅程の出来事(最後は、渡世人で人を殺めた務所から徴兵を受けた途端終戦を迎えた男に上野まで送られる)にも涙する。人を殺めた自分が刑務所で生き、人を殺めても正当化されながら多く死する堅気の軍人の差に矛盾を感じ、心を入れ替える渡世人も何故かカッコ良い。 終戦まじかな日本で個々の生活、感情を読むにつれ当時の不幸な時代に涙が出る。 幼少時代に戦争、終戦を生きて高度経済成長を支えた私の両親の時代、亡くなった寡黙な父からは直接戦後の苦労話など聞いた事が無く、噂程度で潜水艦の乗務中亡くなった叔父がいて、両親も居らず戦後を姉に育てられ幼少時代を生きた事を知る程度だが、戦争を知らない私としては、色々と考えさせられた。多分、これからの時代、間接的にも遠ざかる戦争を語り継ぐ良い本の様な気がする。
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壮絶な話だった。これまで見聞きした戦争に関するエピソードは沖縄、硫黄島、長崎広島が多くのところだったけど、ちょっと毛色が違った。 やめろと言われて止まらないのは仕方ないが、 終わったあとに始めるのは、意味が違うよな。
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さすが浅田次郎、惹きつける力がある。でもオチはモヤモヤ感が残る。「終わらざる夏」っていうタイトルも平凡で、もっとほかの案はなかったのかなあ。
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上・中・下巻を通して悲しい小説でした。戦争、そして国家に翻弄され続けた人々の姿は、戦争によって真に失われるものは何なのか、ということを示しているように思います。 下巻に入り、日本はポツダム宣言を受け入れ、戦争は終わります。しかし、それにも関わらず占守島にソ連軍は攻めてきます...
上・中・下巻を通して悲しい小説でした。戦争、そして国家に翻弄され続けた人々の姿は、戦争によって真に失われるものは何なのか、ということを示しているように思います。 下巻に入り、日本はポツダム宣言を受け入れ、戦争は終わります。しかし、それにも関わらず占守島にソ連軍は攻めてきます。それは、戦後の領土確保というソ連国家の思惑のためでした。 しかし、占守島は戦時中、戦力を移動させる手段がなかったため、戦車などの機械も、そして実力のある兵士たちも十分すぎるほど残っていました。一方のソ連は戦闘があったという記録さえ残しておけばいいため、送られた兵士たちはわずか。戦機も不十分でした。 国自体はすでに勝利しているにも関わらず、死地へ送られるソ連兵たち。そして、その攻撃に応戦せざるを得ない日本軍。戦争が終わってすらもその余波は、人々の想いも涙も、戦勝国も敗戦国も関係なしに飲み込んでいきます。 作中に「戦争をしたものはみんな敗者」という言葉があります。物語が終息に向かうにつれ、その言葉が実感を伴って心に打ち込まれます。しかし戦争の奇妙なところは、その敗者の責を負うのは、戦争を起こした国家や、権力者たちではなく、市井の人たちなのです。戦争の不条理の真実は、そこにあるのではないかと思いました。 妻、子供、親……、この小説に登場する人たちの誰かを想う気持ちは、とても美しいです。そうした大事な人を想う心の強さは、普通の世界では賞賛されるはずのものです。 しかし、戦争という異常自体の前には、そんな美しい想いも無力なのです。この想いを持ち続けている人が、生きることができる世界を造ることが、自分たちの使命なのだろう、と感じました。
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暗い内容で気が滅入り、読む終えるまでに何ヶ月もかかってしまった。 入れ替わり立ち代わりそれぞれの立場の人間が語り手となっていく手法だったが、読みづらいと感じたときもあった。 占守島の戦いのことは全く知らず、たまたま聞いていたラジオ番組のゲストが著者で本書の紹介をしていたため、手に取った。 日本でこの戦いの知名度は低いが、教科書に載せても良いのではないだろうか。 結末は救いがなく、心が重くなった。 生き残った人々はシベリアに送られ、無事に帰国できたかどうか胸が痛い。 娯楽のための読書はすばらしいが、ときどき本書のようなジャンルを読むことは大事なことなのかもしれない。
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戦争に巻き込まれた人たちの哀しい物語。 たくさんの登場人物の視点から、戦争の悲惨さ、理不尽さをあらわした物語です。 いよいよ最終巻です。 下巻では、いよいよ終戦に向けての話になりますが、今度はソ連側軍人の話も入り始めます。 また、ファンタジックな話も含まれます。(浅田さんらしい...
戦争に巻き込まれた人たちの哀しい物語。 たくさんの登場人物の視点から、戦争の悲惨さ、理不尽さをあらわした物語です。 いよいよ最終巻です。 下巻では、いよいよ終戦に向けての話になりますが、今度はソ連側軍人の話も入り始めます。 また、ファンタジックな話も含まれます。(浅田さんらしい) そして、いよいよ玉音放送です。 片岡の息子たちは召集されようとしていた口の悪いやくざに助けられて汽車で東京に戻ることになります。 このやくざが実はまたいい人!東京に到着して、片岡の息子を母親に返すときに、最後に片岡の息子にわかるように言う言葉がしみる!! 「二度と、戦争はするな。戦争に勝ちも敗けもあるものか。戦争するやつはみんなが敗けだ。大人たちは勝手に戦争をしちまったが、このざまをよく覚えておいて、おめえらは二度と戦争をするんじゃねえぞ。 一生戦争をしねえで畳の上で死ねるんなら、そのときが勝ちだ。じじいになってくたばるとき、本物の万歳をしろ。」 浅田さんの思いそのものだと思います。 一方、玉音放送が入って、敗戦したにもかかわらず、いよいよ占守島にソ連の攻撃が始まります。 どうやって缶詰工場で働く女学生たちを脱出させるのか。そのやり取りに熱いものがこみ上げます。 さらに、ソ連側軍人の思いも語られます。 降伏している相手に攻め入るということ。さらにはそこには日本軍最強の戦車軍団がいること。その戦闘に何の意味があるのか? そして、最後の戦闘シーンとつながっていき、ソ連軍人の視点から戦闘が語られます。 最後はシベリア抑留... 戦闘のどんぱちが数多く語られるわけでもなく、悲惨さを前面に押し出しているわけでもないのに、戦争の現実がありありと感じられます。 この時代を生きたさまざまな人の視点から、その生き様、感じ方、考え方を語ることによって、その時代の悲惨さと哀しさを浮き彫りにしているのだと思います。 名作です お勧め!!
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戦争については知らない事ばかり。 でも戦争を知ると益々戦争と言うものが分からなくなる。 「シベリア送り」と言う言葉は知っていたものの、その経緯までは知らず本当に初めてその事実を知りました。 本当に戦争とは何なのだろう。
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疎開先での玉音放送が終わったシーン、教師たちがこれをどう解釈すればよいのか、子供になんと説明すればよいのか、ともすればそのまま解散になりそうなところでの浅井先生のお話が心に響いた。 終盤は哲学的というか浅田次郎にありがちな夢との錯綜で読みにくい。1人の死を感情的に主観的に書くより...
疎開先での玉音放送が終わったシーン、教師たちがこれをどう解釈すればよいのか、子供になんと説明すればよいのか、ともすればそのまま解散になりそうなところでの浅井先生のお話が心に響いた。 終盤は哲学的というか浅田次郎にありがちな夢との錯綜で読みにくい。1人の死を感情的に主観的に書くより、文学的にはこういう書き方が良かったのだろうか。
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【ナツイチ】上・中・下と読了したが、どの巻からも、戦争は絶対悪であり、皆幸せにならないこと、勝ち負けではないことがひしひしと伝わって来る。本巻では、終戦記念日以降もロシアでは戦争が終わっていなく、ソ連侵攻など、終盤になるにつれ戦争の真実、辛い気持ちになってしまった。子供たちにポツ...
【ナツイチ】上・中・下と読了したが、どの巻からも、戦争は絶対悪であり、皆幸せにならないこと、勝ち負けではないことがひしひしと伝わって来る。本巻では、終戦記念日以降もロシアでは戦争が終わっていなく、ソ連侵攻など、終盤になるにつれ戦争の真実、辛い気持ちになってしまった。子供たちにポツダム宣言の天皇陛下の言葉を咀嚼して伝えた「しっかり勉強して、戦争でなくなった方を犬死しないような日本を作ってください」が戦後復興を担う気持ちとともに強く印象に残る。戦後70年の年に読めて良かったと思う。平和な未来を願いたい。
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