終わらざる夏(下) の商品レビュー
さまざまな人たちの戦争にまつわる群像劇。すべての人たちの一瞬一瞬の出来事や思いを連ねて描いたことにより、単なる戦争悲惨物ではなく、一人一人の生き様が描かれたと思う。 その反面全員のその後も知りたいが、それは自分が味合うこともできないのだから、致し方ないし、それが当たり前なのだ。 ...
さまざまな人たちの戦争にまつわる群像劇。すべての人たちの一瞬一瞬の出来事や思いを連ねて描いたことにより、単なる戦争悲惨物ではなく、一人一人の生き様が描かれたと思う。 その反面全員のその後も知りたいが、それは自分が味合うこともできないのだから、致し方ないし、それが当たり前なのだ。 そう思うと一瞬一瞬の夏を大事にしていきたいと思う。それが戦争をさせない戦後の者の務めと思う。
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ほんの少し前の日本にこのようなことがあったことをなぜ誰も教えてくれなかったのか、ということをすべての教育者に考えていただきたい。と思わせる小説。
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昭和天皇の終戦の詔勅(玉音放送)には「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」との表現がある。これは国民の苦しみを理解していない言葉である。国民は戦時中に十分過ぎるほど耐え難きを耐え、忍び難きを忍んでいる。むしろ、敗戦は解放である。「もう、がまんできないことはがまんしなくていい。いやなら...
昭和天皇の終戦の詔勅(玉音放送)には「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」との表現がある。これは国民の苦しみを理解していない言葉である。国民は戦時中に十分過ぎるほど耐え難きを耐え、忍び難きを忍んでいる。むしろ、敗戦は解放である。「もう、がまんできないことはがまんしなくていい。いやならいやとおっしゃいなさい」(下巻72頁)。納得できる台詞であるが、当時の人物が喋ることは中々できないことだろう。 『終わらざる夏』は大丈夫という言葉を持つ欺瞞を指摘する。「「大丈夫」という言葉はほとんど何の意味もない、空疎な掛け声になっていた。おそらく日本国民の誰しもが、一日のうちで最も多く使う日本語だろう。少しも大丈夫ではないとき、人はみなそうと信じ、そうと信じさせるように「大丈夫」と口にした」(下巻235頁) 『終わらざる夏』はソ連軍将校も視点人物にしており、物語の奥深さがある。日本人から見るとソ連の卑怯な騙し討ちとなるが、ソ連将校も上の命令に振り回されており、望んで戦場に来た訳ではなかった。憎むべきは民族ではなく、官僚制である。
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いやぁ、戦争は救いがないな… わかってはいても、そう思わざるを得ない終わり方。 占守島について、終戦後何があったか事前知識なく読んでいたので、片岡も普通に召集されなくて良かった…なんて思っていた私がバカでした。 天国のように美しく花咲き乱れる占守島と、無条件降伏をしたあとに味方がいないままソ連に挑むしかなかった人たちの落差がもう辛い。 占守島の悲劇を小説にするにあたり、日本兵だけでなく大本営の参謀や、赤紙を届ける人、疎開した子ども、そしてソ連の兵士たちそれぞれの視点からの戦争を描く。 この小説に出てくるこの一節 「戦争の犠牲者をひとかげらにしてほしくない。100人の戦死者には100人の人生があり、千人の戦死者には千人の勇気があった」 が、作者が伝えたかったことを表しているに違いない。 そして子どもたちのシーンで出てくる宮沢賢治の 「星めぐりの唄」 美しい言葉には、救われることもあるのかもしれないと感じる。
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その当時から今に続くソ連の実態を少しでも伝えているのではないか? それだけでも意味のある小説。 美しい話にまとめ上げざるを得ないだろうが、日露戦争の仇討ち部分が多かったことも書いて欲しい気がする。
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後半にロシア兵の語りが長々と続きストーリーへの興味が一旦離れたが、結びになってこのためにあったのかと納得。千島で戦わざるを得なかった人々、強制労働で死なざるを得なかった人々の無念で無願いいっぱいになった。ところで最後のサクセスは何だったのだろう
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1945年8月15日、玉音放送後に〈知られざる戦い〉が、美しい北の孤島で始まった――。第64回毎日出版文化賞受賞作。
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1945年8月15日、終戦。しかし、夏は終わっていなかった。日本はポツダム宣言を受諾した。日本軍の武装解除後、ソ連が占守島へ侵攻。アイヌ民族を占守島から追放した戒めであろうか。この理不尽な戦闘が起きてしまった。日本軍、ソ連軍ともに多くの死者を出した。鬼熊然り、片岡然り、正義感にあふれ、勇敢な方々が散ってしまった。日本は絶対に日米開戦はしてはいけなかったということに尽きる。戦後75年、占守島の史実を目の当たりにして、日本を守ろうとした先人への敬意と、武力で解決できることはあまりにも小さいことを認識した。
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昭和20年8月15日を過ぎてから始まった北方の島でのソ連軍との戦い。 400名の缶詰工場で働く勤労動員された女学生達だけが辛くも生き残れただけが唯一の救い。 何処かでハッピーエンドを期待していたけれど、そうはならなかった。 何処の世界でも、川下で働く人が受ける辛酸さは変わることが...
昭和20年8月15日を過ぎてから始まった北方の島でのソ連軍との戦い。 400名の缶詰工場で働く勤労動員された女学生達だけが辛くも生き残れただけが唯一の救い。 何処かでハッピーエンドを期待していたけれど、そうはならなかった。 何処の世界でも、川下で働く人が受ける辛酸さは変わることがない、辛いエンディングでした。
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2020/3/31読了 ソ連兵の手紙から下巻は始まる。 スターリングラード、ベルリンと戦い抜いた兵士、故郷に帰れると思っていたが無情にも兵士を乗せた列車は故郷を通り過ぎ、極東の辺境の土地までくる。 軽井沢の集団疎開を脱出した、譲と静代は軽井沢の駅で玉音放送を聞き、ある男に出会...
2020/3/31読了 ソ連兵の手紙から下巻は始まる。 スターリングラード、ベルリンと戦い抜いた兵士、故郷に帰れると思っていたが無情にも兵士を乗せた列車は故郷を通り過ぎ、極東の辺境の土地までくる。 軽井沢の集団疎開を脱出した、譲と静代は軽井沢の駅で玉音放送を聞き、ある男に出会う。 占守島では、きたるべき終戦に向けて吉江少佐が大屋准尉や片岡に協力を求める。
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