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終わらざる夏(下) の商品レビュー

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67件のお客様レビュー

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2013/12/16

多くの作品と読者を持つ、日本を代表する作家のひとり、浅田次郎。 最近、短編小説を続けて読んでいたので、「この作家さんの長編小説を読みたいな」と思っていました。 昭和の戦争を扱ったこの作品が、上中下3巻の文庫となって書店に平積みされていたので、読んでみることにしました。 舞台は昭和...

多くの作品と読者を持つ、日本を代表する作家のひとり、浅田次郎。 最近、短編小説を続けて読んでいたので、「この作家さんの長編小説を読みたいな」と思っていました。 昭和の戦争を扱ったこの作品が、上中下3巻の文庫となって書店に平積みされていたので、読んでみることにしました。 舞台は昭和二十年の夏。 地下壕に設けられた大本営参謀本部に、ある指令が与えられます。 その指令により「数字」としての兵士動員数を決める中央官僚、そしてそれを「人の名前」に落とし込んでいく地方役人、さらには「赤紙」を持って個人宅を回る担当者へと、役割がめぐっていきます。 おおかたの成人男性が軍隊へと徴兵された後に、今回の動員に借り出されたのは、45歳の英語文学翻訳者。 ある指令を果たすため、彼が送り込まれたのは千島列島の北端、国境の島「占守島」。 この作品は、島へ渡るまでの経緯と、島で起こった事件とが中心となって、話が展開していきます。 恥ずかしながら、戦争末期の千島列島で、このようなことが起こっていたということを、これまで知りませんでした。 そして、「徴兵」という行為にどのようなプロセスがあり、どのような人間模様が起こっていたのかを、この作品を通じて初めて、窺い知ることが出来ました。 登場人物それぞれのエピソードが重厚に織り込まれており、また疎開先での生活や千島列島の歴史なども挿話として書かれているので、複数の視点で興味深く読ませていただきました。 戦争小説ということなので、明るく前向きなストーリー、というわけでは無いのですが、このような人達の奮闘を経て、今の日本という国があるのだなあと、考えさせられる作品でした。 一連の作品を読んでいると、浅田次郎という人は、日本という国がどのように歩んできたかを、考えている作家さんなのだなあと感じます。

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2013/11/12

浅田次郎の戦争文学。終戦間際から終戦直後の北方領土は占守島を舞台とした、群像劇。 『戦争ってのは悲惨だなぁ…』と素直に感じさせられました。何千何万と亡くなっていった人たちや、その家族には、何千何万の物語があって。 誰だかが『戦争が良くないというのなら、本だとか映画だとかは戦争を美...

浅田次郎の戦争文学。終戦間際から終戦直後の北方領土は占守島を舞台とした、群像劇。 『戦争ってのは悲惨だなぁ…』と素直に感じさせられました。何千何万と亡くなっていった人たちや、その家族には、何千何万の物語があって。 誰だかが『戦争が良くないというのなら、本だとか映画だとかは戦争を美化してはならない』と言っていたのを思い出しました。

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2013/11/07

うぐぐ。なるほど。 上、中巻は、終戦間際に戦地へと向かう人々の群像劇になっていて、 それはまあ、悲劇には違いないのだけれども、 それでもそれぞれになにがしか自分が命をかけるに足る意義を見つけようとしている 前向きさともいうべきものがあったように思います。 どうあれ起きてしまっ...

うぐぐ。なるほど。 上、中巻は、終戦間際に戦地へと向かう人々の群像劇になっていて、 それはまあ、悲劇には違いないのだけれども、 それでもそれぞれになにがしか自分が命をかけるに足る意義を見つけようとしている 前向きさともいうべきものがあったように思います。 どうあれ起きてしまった戦争に対して、自分がやるべき事をできる限りやろう、 そうすればきっと報われるだろうという感覚がどこかあって。 しかし、下巻で描かれる、実際の戦争は そんなものをすら全て吹き飛ばしてしまう理不尽さで、 あらゆるものを一瞬にして取り返しのつかないところに持って行ってしまう。 それまで群像劇を編み出していた人々のお話は、 この戦闘を持ってねこそぎ終わってしまう。一切の理屈なく。ぱたっと。 あとはエピローグで語られる事後の話のみ。 これが戦争か。と。 浅田次郎さんが描きたかったのはこれだったのかと。 自分の考えの甘さを思い知らされました。 戦争。よくない。 あ、こちらのサイトで当時の戦車の写真などが見られます。 http://xn--glrs3qn5a.com/

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2013/11/03

国と国の戦争に駆り出される兵隊達やその家族の一人ひとりが様々な事情をそれぞれ抱え辛い思いをした事に苦しさを感じる。そして、それは日本人も他の国の人も同じである。占守島での出来事は多くの人達に知って貰い忘れないようにしないといけないと思う。

Posted byブクログ

2013/10/23

戦争ものではあるけど、戦闘の場面は一切描かれない。描かれるのは、主人公の編集者や家族を中心に、この時代を生きたあらゆる人の日常。戦うことを前提にした軍隊があって、戦争が生活の中心にあった時代が、間違いなくこの国にあったのだと実感した。

Posted byブクログ

2013/09/30

上中下読了。残暑中読んでいたが夏終了とともに終わった。ロシアの意図が全くわからない。スターリンってなんなのだ。シベリア抑留で亡くなった方はさぞ無念だったことだろう。とても悔しい。そして北方領土は不当に奪われたのだという気持ちが新たになった。

Posted byブクログ

2013/09/28

戦争が引き起こす悲劇。 戦争に関わるすべての人の視点を取り入れて物語は完結。当然のことながら、ハッピーエンドではないものの、最後に救いがある。 歴史に埋れていた出来事を掘り起こすとともに、深いメッセージが込められている気がした。

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2013/09/22

今まで詳しくというか、ほとんど知らなかっ占守島の戦い。 玉音放送後、無条件降伏の3日後にソ連軍が仕掛けてきた戦争。 そしてシベリア抑留。 生まれてこのかた、漠然としか知らなかった自分を恥じます。。 「止めて止まぬ戦争と、終わってから仕掛けてくる戦争とでは、同じ戦争でもまるでちがう...

今まで詳しくというか、ほとんど知らなかっ占守島の戦い。 玉音放送後、無条件降伏の3日後にソ連軍が仕掛けてきた戦争。 そしてシベリア抑留。 生まれてこのかた、漠然としか知らなかった自分を恥じます。。 「止めて止まぬ戦争と、終わってから仕掛けてくる戦争とでは、同じ戦争でもまるでちがうと思うのであります」 世界大戦は3日前に終わっているのに、千島列島は平和的外交条約で定められているのに。 なぜ?と、そればかり疑問に思う。 普通に生活してきた市民達が登場するからこそ 悲劇であり、それに付随する人物の背景や家族とか恋人とか なんともいえない悲しみ。 細かいとこまで結局どうなったのかは描かれてないけど 読み終わった後、手が震えた。

Posted byブクログ

2013/09/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

いよいよこの物語のメインテーマである終わってから仕掛けてくる戦争が始まる。そのに描かれるのは、なぜかこの場に来ることになった兵士、本当は愛する人がいて、ここに来ていなければ別の幸せな人生を生きていたであろう人々、それは日本人もロシア人も、、、この最後の戦争までに多くにページをさいてそれぞれの人物の背景を細かく描写していたのに戦闘の場面は直接描かない、それはソビエト軍の兵士の戦闘報告と今、命を失おうとしているソビエト兵士の独白という形で描かれる。片岡は、鬼熊軍曹はその時どんな思いで最後を迎えたのかは、描かれない。肩すかしをくらったような気持ちだが、何度も読み返してみた。行間にちゃんと書いてある。又シベリアまで生き残った菊池医師の苦悩もこの戦争の悲惨さを最後まで教えてくれる。

Posted byブクログ

2013/09/21

8月15日、終戦。 この日から混乱の中、復興が始まったと思っていたけれど、北の果てでは新たに戦いが始まっていたのだ。 降伏したとわかっていながら闘いを仕掛けるソ連、国を守るためにやむを得ず応戦する日本。 生身の人間が闘う先には悲劇しかない。 敵も味方もなく一人の人間としての苦悩。...

8月15日、終戦。 この日から混乱の中、復興が始まったと思っていたけれど、北の果てでは新たに戦いが始まっていたのだ。 降伏したとわかっていながら闘いを仕掛けるソ連、国を守るためにやむを得ず応戦する日本。 生身の人間が闘う先には悲劇しかない。 敵も味方もなく一人の人間としての苦悩。 死に行く者、生き残った者の苦悩。 つい昨日までは家族のために働いていた者たちを戦地へ送り込む者たちの苦悩。 人それぞれの苦悩、苦悩、苦悩。 読むたびに胸が締め付けられた。 唯一救われたのは、疎開先から逃げ無事母親と再会した子。 そして、北の果ての島に動員された女子工員が無事に札幌に帰還したこと。 私たちが今あるのは、戦争という苦難の経験の先にあるもの。 人々の苦悩、希望、命の尊さを忘れてはいけない。

Posted byブクログ