包帯クラブ の商品レビュー
『わたしのなかから、いろいろ大切なものが失われている。 敵にはとても思えない人とか、目に見えない何かによって。 わたしと、わたしの仲間はそれに気づいて、戦うことにした……いや、違う。 これは、戦わないかたちで、自分たちの大切なものを守ることにした、世界の片隅の、ある小さなクラブの...
『わたしのなかから、いろいろ大切なものが失われている。 敵にはとても思えない人とか、目に見えない何かによって。 わたしと、わたしの仲間はそれに気づいて、戦うことにした……いや、違う。 これは、戦わないかたちで、自分たちの大切なものを守ることにした、世界の片隅の、ある小さなクラブの記録であり、途中報告書だ。』 16歳。高校2年生の笑美子(ワラ)は、病院の屋上で妙な関西弁を操る入院患者の少年、井出埜(ディノ)に出会う。 ワラの左手首の傷をリスカと“勘違い”したディノは、その事実とワラにキスを拒否されたことに傷つき、金網を越えて飛び降りようとする。 「心が傷ついた場所には、血が流れてるんや。その痛みに、おれは耐えていくのがしんどうなってる。そんなことばかりつづいてきたから」 それはただの思いつきだった。 血が流れてるのだったら、止めればいい。 金網に包帯を巻いた。 「これでええ、血が止まった」 一見普通に生活を送りながらも、心の底に闇を抱え、傷を傷として認識できず、しかし社会や家庭の中で生き難さ感じている少年少女が、心に傷を負った嫌な思い出のある場所に包帯を巻くことで、傷を認識すること、他者に気づいてもらうこと、癒されていくことを知る。 傷付いた場所や風景に包帯を巻いて癒すという「包帯クラブ」を結成して、自分自身や皆の傷を癒し、大切なものを戦わない方法で守ろうとする姿を描く青春小説。
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