アレグリアとは仕事はできない の商品レビュー
こういう作品ってあんまりほかにないような、津村さんならではという感じがする。ありがちな話だな、とか思わないところ、展開もけっして安易な解決があったり、ほのぼのしたりしないところが好きかも。ここまでマイナスの感情をこれでもかと書けることがすごいと思ったり。「アレグリアとは仕事はでき...
こういう作品ってあんまりほかにないような、津村さんならではという感じがする。ありがちな話だな、とか思わないところ、展開もけっして安易な解決があったり、ほのぼのしたりしないところが好きかも。ここまでマイナスの感情をこれでもかと書けることがすごいと思ったり。「アレグリアとは仕事はできない」ではコピー機(アレグリアという名前)や、会社の人々、仕事へのイライラ、恨みつらみ、「地下鉄の叙事詩」では満員の地下鉄に乗っている人々のイライラや怒り、それどころか人生への怨念とか呪詛とかまで言えそうな恐ろしい思いが書かれていて、けっこう読んでいてヘビー(とくに「地下鉄」のほうは読むのを挫折しそうになるくらい……)だけれども、ユーモアがあってときどき笑っちゃったもする、そのへんもほかの小説にはない感じ。 こういうイライラとか怨念を、わかるわかると思うのがわれながらこわい気もしたり。だれもがそういう暗い思いをもっているところが今の日本の社会のありようにもつながっているんだろうなあ、とかまで思ったり。 「アレグリア」では、コピー機へのいらいらももちろんわかるけれども、それより、そのいらだちをだれとも共有できないことの孤独感、みたいなことに共感して胸に迫った。人はだれでも、思いを共有したくて、共感してもらいたくて生きているのかも、とか考えたり。ラストではちょっと泣きそうになった。
Posted by