アレグリアとは仕事はできない の商品レビュー
初めて読んだ津村さんの作品でした。 大好きです。 ひねくれてるよなあ、と思いつつ 笑ってしまいます。 ひねくれてる、ってネガティブイメージですが 津村さんの場合はポジティブになります。 文体がそうさせるのか、 ストーリーがそうさせるのか。
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※このレビューにはネタバレを含みます
タイトルの意味をはかりかねていたが、それは読み始めてすぐに氷解。複合コピー機に付けられた愛称だった。その一方、主人公で物語の語り手でもあるミノベを、暫くの間は男性社員だとばかり思って読み進めていた。なにしろ、ミノベの最初のセリフが「おまえなあ、いいかげんにしろよ!」だったものだから。それとも、女性社員も独白する時にはこんな口調が普通なのだろうか。さて、小説はアレグリアを基軸にしながら、ミノベや先輩のトチノさん、その他の登場人物たちを翻弄してゆく。たかが1台の機械でも、その後の人生だって左右しかねないのだ。
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収録作はどれも、他者に理解してもらえない主人公のディスコミュニケーションの孤独さがよく表れていた。表題作よりかは2作目の方が、4人の人物にそれぞれ焦点をあて、場面を丁寧に描いたところがとても良かった。著者持ち味であるユーモア溢れる表現は少なかったように思う。
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私も今使っている複合機が本当にとろくて鈍くて、そのくせインクは大量に喰うのでイライラします。気持ちがよーく分かります。「地下鉄の~」は少し物足りなかったです。けれどどちらもラストが良かった。
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働いているのはみんな同じだ、とミノべは誰かに言いたくなった。けどその中にあって、少しだけ、油田から延びたパイプに穴を開けて石油を吸い上げるように、らくをしようとしたり、自分にだけ有利なようにことを運ぼうとしたり、ちんけな自尊心を満足させようとしたりするやつがいる。けどわたしたちは...
働いているのはみんな同じだ、とミノべは誰かに言いたくなった。けどその中にあって、少しだけ、油田から延びたパイプに穴を開けて石油を吸い上げるように、らくをしようとしたり、自分にだけ有利なようにことを運ぼうとしたり、ちんけな自尊心を満足させようとしたりするやつがいる。けどわたしたちはわかっている。そういうやつらの顔も罪も。わたしたちにはわかっちゃいないやつらは間抜け面を晒してケチなことをし続けるけども。(91) 難しいよね。でも、仕事について、頑張ってない人なんて、いないんじゃないかなって最近思う。だけど、やっぱり自分のことに精一杯で、それを取りまとめる人もまた、自分のことに精一杯で。お互いがお互いのことをよくわかって折り合いをつけるのって難しいんだろうなとも思う。社畜、なんて言葉で揶揄されるみたいに、ゆとりがないんだろうね。いまの世の中。 2013/10/05読了。
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表題の「アレグリアとは仕事はできない」と「地下鉄の叙情詩」の2編が所収されている。 「アレグリアとは仕事はできない」:アレグリアとは、コピー・スキャナー・プリンターの機能を備えた複合機の俗称。しかし、肝心のコピー機としての機能は最悪。このコピー機を否が応でも毎日使わざるを得ない...
表題の「アレグリアとは仕事はできない」と「地下鉄の叙情詩」の2編が所収されている。 「アレグリアとは仕事はできない」:アレグリアとは、コピー・スキャナー・プリンターの機能を備えた複合機の俗称。しかし、肝心のコピー機としての機能は最悪。このコピー機を否が応でも毎日使わざるを得ない女性社員のいらだちとはいかばかりか。にも関わらず、取り替え、買い換えられることもないアレグリア。そもそも、何故、このアレグリアは、この会社に設置されることになったのか。。。 「地下鉄の叙事詩」:通勤客で混んだ身動きさえままらない電車の一車両。そこに偶然だか必然だか居合わせた人たちが、車両内の人たちの動きや立ち居振る舞いなどを、どのように観察し、感じ、想像し、思いを巡らしているのか。同じ車両に居合わせたそれぞれの人の視点から、綴られた短編。
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解説の千野帽子氏の推薦により購入。一読、感心する。なんとまあこれは。 表題作は、アレグリアという名のコピーFAXスキャナー複合機を巡るミステリー仕立ての人間模様。はじめは面食らう。小説の「文法」といったら言いすぎかもしれないが、よく言えば約束事、悪く言えば紋切り型の定型句が通用し...
解説の千野帽子氏の推薦により購入。一読、感心する。なんとまあこれは。 表題作は、アレグリアという名のコピーFAXスキャナー複合機を巡るミステリー仕立ての人間模様。はじめは面食らう。小説の「文法」といったら言いすぎかもしれないが、よく言えば約束事、悪く言えば紋切り型の定型句が通用しない。正面からガツンと否定するのではなく、いなし肩すかしひっかけ。 それを面白いと思うかは別。私は半分は驚き楽しみ、半分はいらつきいぶかしんだ。さらに、書かれてあることを読み取れたのか自信がない。チャレンジ精神を呼び起こす未征服感ではなく敗北感。 キャラにもストーリーにも分かりやすさはない。思わせぶりな謎もない。理解や共感を拒むような難解さもない。奥行きがあることすらわからない。 武道の達人が、単なる好々爺にしか見えないのに殴ろうが蹴ろうが空振りし、気がつくと床に転がされていた、というあの感じ。 私のような乱読多読人間は、書物の約束事に頼って先読み飛ばし読みしているところがあって、それがことごとくツボを外されたような疲労感が抜けない。 著者に実力があって、それに甘んじることなくチャレンジしている証左だとは思うが、本当のことを言えば「もう少し手加減して下さい」です。
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毎朝電車に揺られながら出勤しているので 地下鉄の叙事詩はとても生々しく感じた。 つねづね、「通勤電車」という空間は、なぜ 人々をそっけなく、攻撃性に満ちたものにして しまうのか不思議に思っていたところだったので。 空間のもつ特殊性?閉鎖された狭い空間に あれだけの人間がつめこまれ...
毎朝電車に揺られながら出勤しているので 地下鉄の叙事詩はとても生々しく感じた。 つねづね、「通勤電車」という空間は、なぜ 人々をそっけなく、攻撃性に満ちたものにして しまうのか不思議に思っていたところだったので。 空間のもつ特殊性?閉鎖された狭い空間に あれだけの人間がつめこまれているという状態が 人間の本能的な危機意識を刺激するんだろうか。 謎だ。
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この具体的な共感。この感情。好きだなあと思って、また新しい作品が読みたくなる。まぬけなこよみも好き。つまりファンってことなんだ。
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気難しいコピー機「アレグリア」をめぐる人間たちの悲喜こもごもを描いた表題作。 コピー機に振り回される女と、コピー機の秘密を知る男の二つの視点から見えてくる問題児「アレグリア」の不気味さと、コピー機が上手く作動しない苛立ちが、こちらまで痒くなるくらい丹念に描写されている。 同時...
気難しいコピー機「アレグリア」をめぐる人間たちの悲喜こもごもを描いた表題作。 コピー機に振り回される女と、コピー機の秘密を知る男の二つの視点から見えてくる問題児「アレグリア」の不気味さと、コピー機が上手く作動しない苛立ちが、こちらまで痒くなるくらい丹念に描写されている。 同時収録されている「地下鉄の叙事詩」も、一つの事象を多角的に描いている点で面白い。
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