腐葉土 の商品レビュー
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重厚な作品。関東大震災と東京大空襲を生き延びた一人の女性の生き様が淡々と語られる。このくだりは物語に必要なのかと思いつつ読み進めるが、最後に納得。後半は一気に読んだ。この作家はいつも知らなかったことに目を向けてくれる。読む価値がある小説。
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関東大震災と東京大空襲を生き延び、戦後の闇市から身を立てた高利貸しの老婆が殺害された。疑いは彼女と揉めていた孫に向くが……というお話。 本筋のミステリは非常に入り組んだ話で読み応えがあったが、肝になるある仕掛けや事件の真相は予想通りだった。 熱量は高いが作者の筆が走りすぎているように感じる部分もあり、話が分かりにくかったり、かと思えば同じことを数ページ以内に繰り返したりしている部分があったりとややムラがある。 勢いに乗ってガーッと書くタイプの人なのかな……? (なお登場人物名に誤字があり、「実は別人の話してるっていう叙述トリック……?」と無駄に気が散ってしまったが別にそんなことはなかった。) ただ、その熱量ある筆致によって描写された関東大震災や東京大空襲の回想シーンは凄まじく、読んで良かったと思えた。各登場人物の心理描写も立体的でよかった。特に悪事を働いたり残酷な仕打ちをしたりする人物の心理は、共感はできないが腑に落ちるところがある。 このことに関して、作者は主人公の木部美智子を通してこのように書いている。 「背景を調査し分析することと、理解し共感することは違う。(中略)子供を虐待する親の背景を分析してもいいが、共感し理解できるように文脈を巧みにし、誰にでも起こり得ると結論することは、自堕落なのだ。」 このような気概を持つ望月諒子は、信頼できる作家だと思う。 木部美智子シリーズは『蟻の棲み家』につづいて2冊目。このシリーズは骨太でけっこう好きな気がするので、ちょこちょこ読んでいきたい。
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後半の読む手が止まらなかった。のめり込むようにして読んだ。登場するいろんな事件やらできごとが、どのように絡んでくるのか全然読めないままラストまでいった。大変おもしろかった。読み応えあり。笹本弥生視点の戦時中や震災のときの惨い状況の描写がリアルだった。
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高級老人ホーム資産家殺害事件を追う話。 フリーライター木部シリーズ2作目。 資産家高齢女性弥生さんが殺され、ヘルパーに遺産相続すると遺書があり、そのヘルパーの過去は、とどんどん深みにハマっていき真相が気になる。資産家の女性の関東大震災、東京空襲の描写が凄くて悲惨さに息を飲む。その状況下で私ならやっていけたとは思えやん、弥生さんの強さに惹かれると共に何故この人が殺されたのかと理不尽さを呪う。そして読み進めるにつれ深沢弁護士がどんどん好きになるのに訪れる心を乱されるラスト。もうええやん、何で、という思いがエピローグで綻ぶ。最初っから伏線が張られててそこが繋がるのかと舌を巻く。このシリーズ重いけどハマる。
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あらすじ 資産家の老人笹本弥生が老人ホームで殺害される。彼女は事件の直前、遺産の相続は唯一の肉親である孫健文ではなく、ホームで働く会田良夫にすると公言していた。会田良夫がかつて自分の娘が結婚前に産んだ子供だという。葬儀の日、会田良夫は遺言のコピーを持ってくる。弥生の顧問弁護士深沢はその遺言書はコピーであるため無効だという。一方、健文は他の大学の考古学研究室に入り浸っていた。そこへ資金も出していたらしい。研究室は現在詐欺事件に絡んでいると注目されていた。 主人公フリーライターの美智子は健文の同級生、笹本弥生の家政婦などから話を聞いて真相を突き止めようとする。同じく新聞社デスクの亜川は会田良夫の幼い頃に一度会ったことがあり、今の良夫は本物ではないと思っていた。 そして真相。会田良夫は偽物。良夫が運送会社で出会った男松井保。彼は生まれた時に捨てられ家族がいない。幼い頃から盗みや嘘を繰り返してきた。良夫の保険証を使って借金したことがばれるのを恐れ殺す。そして弥生は良夫が偽物だということに気がついていた。本物の良夫の行方を探すため、弁護士の深沢に自分を殺させ、わざわざ遺言のコピーをつけたのだった。それをきっかけに、良夫の身辺を誰かが探り始めることを期待したのだった。 《感想》フリーライター美智子のシリーズ、読むのは2作目。全くラストの予想がつかず、どんどん読み進めた。登場人物の背景は何層にも重なっていて読み応えがある。それぞれの登場人物の生い立ち背景なども丹念に書き込まれているので行動に説得力がある。 今回印象に残ったのは美智子。フリーライターとして働き続けようかどうしようかと、立ち止まったところ。40を過ぎて社会の闇の部分ばかりを書き続けて少し疲れて居る様子だった。ところが物語中盤、亜川の部下水木という若い記者がまとめたレポートを読んだ時に、その勢いとか思い込みに当てられ、再び進み始めた。そしてラスト、深沢と対峙する場面はどっしりとしていた。事件そのものも面白かったが一見淡々と仕事をしているように見える美智子もそれなりに葛藤を抱えながら取材しているところがよく分かった。
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フリーライター・木部美智子シリーズ第二弾。関東大震災や空襲、戦後の混乱を一人で生きぬいた資産家の老女・笹本弥生が殺された。序盤はなかなか話が進まない。残り200ページぐらいからは、ページをめぐる手が止まらない。何となく真犯人の予想がついたが、実際は複雑だった。ある弁護士の死亡交通...
フリーライター・木部美智子シリーズ第二弾。関東大震災や空襲、戦後の混乱を一人で生きぬいた資産家の老女・笹本弥生が殺された。序盤はなかなか話が進まない。残り200ページぐらいからは、ページをめぐる手が止まらない。何となく真犯人の予想がついたが、実際は複雑だった。ある弁護士の死亡交通事故も、笹本弥生の雛人形も、全てが伏線だった。
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2023/08/21予約 木部美智子シリーズ。関東大震災を生きた笹本弥生。 戦後一人残され、仕事先の呉服屋の残したものを闇市で売りさばき、やれることは何でもやって、資産を作り老後を高級ホームで過ごしていたが殺される。 資産管理を任せていた弁護士の深沢。と、13年前、深沢のかわりに司法試験の論文テストを受けてくれた宮田の関係。 熱心かつ良心的な弁護士の宮田は、何度も保証書を出し、裏切られ2億5000万にも達していた。 深沢が笹本弥生の預り金から融通して宮田に渡した直後、宮田は大金ごと事故、死亡する。 その宮田は、かつて弥生が働いていた呉服屋のご主人の孫だった。呉服屋から受けた恩義を忘れず、今世話になっている深沢の為に財産を譲ることは呉服屋の孫を間接的に助けることになる… 本の8割過ぎるまで、話があちこちに広がるため集中できず時間がかかった。その後はスムーズ。 弥生の戦後を生き抜く様が目に見えるようで、まさに地獄を見たら何でもできる、とつくづく感じた。
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関東大震災と戦時中を乗り越え、必死に生き抜いた様子がありありと伝わった。笹沼弥生の死からいくつもの事件が発覚し、伏線も多く、簡単に予想がつかない所に面白さがあった。警察よりも新聞記者と雑誌記者が執念で真相にたどり着く。ホントに有りそうな話だと思った。両者の棲み分けも垣間見れた作品...
関東大震災と戦時中を乗り越え、必死に生き抜いた様子がありありと伝わった。笹沼弥生の死からいくつもの事件が発覚し、伏線も多く、簡単に予想がつかない所に面白さがあった。警察よりも新聞記者と雑誌記者が執念で真相にたどり着く。ホントに有りそうな話だと思った。両者の棲み分けも垣間見れた作品。
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只の謎解きミステリーではなく 人の人生を一緒に生きたような気がしてくる 軽くも、お洒落でもなく、重くて暗い こういう物語、好きです。 天国も地獄も、あの世ではなく、この世にある。 本当にそう思います。
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