大いなる眠り の商品レビュー
読み始めに感じた読みづらさというのはいつのまにか消えていた。その理由が慣れによるものであるか、そうでないかは定かではない。私は基本的にあとがきを好んで読書前に読んでしまう。だからと言って後悔したことは決してなく、また読んでよかったと思うこともない。ところが本作においてはあとがきを...
読み始めに感じた読みづらさというのはいつのまにか消えていた。その理由が慣れによるものであるか、そうでないかは定かではない。私は基本的にあとがきを好んで読書前に読んでしまう。だからと言って後悔したことは決してなく、また読んでよかったと思うこともない。ところが本作においてはあとがきを先に眺めることで、チャンドラーワールドに入り込むことができたと言える。読んでよかった。読みづらさの正体はひとつの要素にとどまらずいくつかあったのだろうと振り返ってみる。その一つがまさにしつこい描写なのだ。しかしこれがチャンドラーワールドたらせる要素であるのだと理解すれば、なるほど単にそれらの描写を読むのではなくマーロウをトレースするように自分で思い描けばいいと気が楽になった。 チャンドラーワールドを楽しんだことには違いないが、それと本作を面白いと感じたかについては感想が異なる。ザ推理もの(つまりわかりやすい謎とその謎解き)を好む私には合わなかったように思う。 なぜ本作に興味を持ったか。それは『ようこそ実力至上主義の教室へ』の作中に本作が登場するからである。厳密に言えば2作目であるがシリーズものである以上1作目から読みたいと思うのは普通の感覚だろう。2作目を読んでシリーズ読破を目指すのかを決めたい。
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フィリップ・マーロウのシリーズで、この前初めて『ロング・グッドバイ』を読んだ。 本好きな人が出てくる小説に、これは読んでおきたいものとして『長いお別れ』がたびたび登場するからである。 そして、このシリーズが村上春樹さんの訳で初めて出されたのが『ロング・グッドバイ』だったということ...
フィリップ・マーロウのシリーズで、この前初めて『ロング・グッドバイ』を読んだ。 本好きな人が出てくる小説に、これは読んでおきたいものとして『長いお別れ』がたびたび登場するからである。 そして、このシリーズが村上春樹さんの訳で初めて出されたのが『ロング・グッドバイ』だったということもある。 そうしたら、その文庫本の「訳者あとがき」に、チャンドラーが出版した年代順が載っていて、この『大いなる眠り』(1939年)が最初だった。 私は、シリーズものだったら最初から順に読みたい派。 シリーズ1作目のこの本では、ちゃーんとドレスアップして、紹介された依頼人を訪ねる、という正統派な導入部である。 フィリップ・マーロウ、33歳、と若い。 すぐに乱闘するし、銃を使うことにためらいがない。 頭脳しか使わないし、警察には協力的な日本の探偵に慣れているのでびっくりする。 そして、若いからか、自分の仕事に対する誇りと信念をはっきり口にする。 『ロング・グッドバイ』では、すでに場数を踏んでいて、感情をあまり出さず、正義感に対しても韜晦気味だった。 最後の謎は悲劇的だった。家族のためを思ったのかもしれないけれど・・・ 老将軍が皆に敬愛されていたことは分かった。 そして、執事もできた男である。 このあとは、チャンドラーが発表した順に読んでいきたい。
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ミステリなんだけどミステリ以外の要素が強くてミステリぽくない。 ミステリ以外の要素ってなに?ってなると、マーロウの、男気、としか表現ができない心情に基づいての行動、に尽きる。 2023.8.20 133
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「運転手は誰に殺された?」の逸話に象徴される、レイモンド・チャンドラーらしい「とっ散らかった」話。この作品の肝は短編2作をくっつけて創作した某キャラクター(ピーターパン?誰それ、で読んでいて背筋が寒くなるあの人)。短編の片方では少年で、それだとまぁありがちというか、きれいに腑に落ちる話(三島由紀夫の午後の曳航など)ながら、2つを組み合わせたことでまさにキマイラになり、発表当時には相当衝撃的な人物像形だったのではないかと思われる。彼女と比較すればパリス・ヒルトンが優等生に見えてしまうとんでもない人なので、終盤に性格のまともな女性を登場させてバランスをとっているのかな。 この作品は、学生の頃に冒頭だけを読んで挫折しかなり長い間放置だったが、フィリップ・マーロウが訪れた邸でカーテンとカーペットのアイボリー×白の組み合わせを批判していたのがずっと頭に残っていた。参考になった反面、このハードボイルド探偵の代表と言える有名キャラクターから予測できない、いわゆるオネエ言葉がふさわしいような審美眼コメントの違和感に独特の面白さを感じていたのだと思う。
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1939年レイモンド・チャンドラーが私立探偵フィリップ・マーロウを主人公にしたハードボイルドミステリー小説の第1作目が本作です。シリーズは7作刊行されてます。 物語は、二つの括りの事件で構成されています。 前半は、富豪の主人が娘の借金で書店店主から強請られている事件の解決だ...
1939年レイモンド・チャンドラーが私立探偵フィリップ・マーロウを主人公にしたハードボイルドミステリー小説の第1作目が本作です。シリーズは7作刊行されてます。 物語は、二つの括りの事件で構成されています。 前半は、富豪の主人が娘の借金で書店店主から強請られている事件の解決だ。後半は、娘の元夫の行方不明事件の捜索だ。 ロサンジェルスで原油採掘を手掛けているスターンウッド将軍に、次女カーメンの賭博での借金返済の脅迫が書店主のガイガーから有った。 私立探偵フィリップ・マーロウは将軍の依頼を受けガイガーの尾行から開始するがガイガーの自宅前での張り込み中に、銃声が聞こえた。ガイガーが射殺され次女のカーメンが裸で意識を失っていた。 二件目の殺人が発生した。将軍の運転手オースティンだ。車ごと桟橋から墜落。 三件目の殺人がおこるものの、直ぐに連続して発生した事件の真相が明らかになる。 書店主の卑猥な裏稼業のネタにされた元恋人を救う為に店主を銃撃、店主と同居していた彼が店主の復讐から店主銃撃犯を殺害し更に店の裏稼業を横取りしたゆすり屋を殺害。 これで一件落着かと思いきや、長女ヴィヴィアンの行方不明の元夫を探す事となった。ヤクザの妻と駆け落ちの線が濃厚の中、カーメンの異常な行動にマーロウは事件解決の閃きを得る。 マーロウの推理と行動が小気味良く読み手を引き込むが事件があっという間に解決されこちらは取り残された感じがして来る。後半の行方不明事件もマーロウは直ぐに真相を究明してしまう。ここでも読み手の私はついて行けませんでした。。。 80年前の小説とは思えない程に古めかしくも無く時代を感じさせる事も殆ど無かった事に作家の秀逸さを感じます。流石世界的著名作家ですね。
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村上春樹はもちろん、カシオ・イシグロ他たくさんの作家がレイモンド・チャンドラーの大ファンだという。いったい魅力は何なんだろう。つまるところ文体の力というしかないのか。情景描写・行動描写・会話の奥深さ、機知にとんだ比喩があり、主人公のマーロウの行動そのままに物語が進み、次々にいわく...
村上春樹はもちろん、カシオ・イシグロ他たくさんの作家がレイモンド・チャンドラーの大ファンだという。いったい魅力は何なんだろう。つまるところ文体の力というしかないのか。情景描写・行動描写・会話の奥深さ、機知にとんだ比喩があり、主人公のマーロウの行動そのままに物語が進み、次々にいわくありげな人物が出てくる。そういう文体の吸引力に魅力が凝縮されているに違いない。事件自体は糞だし、しょうむないやつも盛りだくさんだ。現実世界もこんなふうに乾ききったものと言いたいんだろうし、それでこそハードボイルドと言われるゆえんかもしれない。
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現代も影響大のミステリーとして読んでみたかった作品。粋なタフガイ探偵フィリップ・マーロウがお目見えしたシリーズ第1作。正直期待が大き過ぎたのと、チャンドラー節に全く慣れない内に触れてしまったので、あまり純粋に楽しめなかった。星を引いた理由の一つ、語り方が単純に古く、上手くストーリ...
現代も影響大のミステリーとして読んでみたかった作品。粋なタフガイ探偵フィリップ・マーロウがお目見えしたシリーズ第1作。正直期待が大き過ぎたのと、チャンドラー節に全く慣れない内に触れてしまったので、あまり純粋に楽しめなかった。星を引いた理由の一つ、語り方が単純に古く、上手くストーリーに入り込めない。もう一つ、寄り道が多い割にそのデティールが面白くない。先に進むのがかなり苦痛な時もあった。最後に一つ、お色気シーンが唐突過ぎてそこで意識が途切れてしまう。 とはいえマーロウ自体はなかなか面白い人物。チャンドラー節に慣れたら色々楽しめるような気もするので、何年後かにリベンジしたい。
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チャンドラーの長編第一作目。 1939年なんて歴史の教科書に出てくるような年に書かれた小説とは思えません。 読後、村上さんのあとがきを読みながら、つくづくすごい作品だなぁと溜め息をつきました。 なにがすごいのか・・マーロウが素敵すぎる、それにつきます。 タフでクールで自分の信...
チャンドラーの長編第一作目。 1939年なんて歴史の教科書に出てくるような年に書かれた小説とは思えません。 読後、村上さんのあとがきを読みながら、つくづくすごい作品だなぁと溜め息をつきました。 なにがすごいのか・・マーロウが素敵すぎる、それにつきます。 タフでクールで自分の信念に正直。好意を示されても皮肉できりかえし、嫌われることを自ら望んでいるようなところも魅力的。 大胆不敵なようで繊細、命令不服従に多少の実績があると自負していて、スターンウッド将軍から言わせれば「いささか拗ねものでもある」。。好きにならずにいられません! 今回の依頼人というのが、三分の二は死んでいるスターンウッド将軍なる人物。なにやら脅迫を受けているようだけど、それだけではなさそうで。 ご令嬢の二人はそれぞれに問題を抱えているようだし、当初の依頼がなんだったのか忘れそうになりながら読みすすめていくうちに話がどんどんキナ臭くなっていって・・ 推理というより行動によってマーロウがたどり着いた真相に、タイトルもあいまって、なんというか満足です。
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チャンドラーによる私立探偵フィリップ・マーロウシリーズの大一作。 海外小説なので気合を入れて読むか!と覚悟して読み進めたものの、マーロウが登場してすぐ彼の魅力にどっぷりとハマり、夢中で読んでいました。 小気味良い会話、印象的な登場人物、ハードボイルドな世界観。どれを取っても素晴ら...
チャンドラーによる私立探偵フィリップ・マーロウシリーズの大一作。 海外小説なので気合を入れて読むか!と覚悟して読み進めたものの、マーロウが登場してすぐ彼の魅力にどっぷりとハマり、夢中で読んでいました。 小気味良い会話、印象的な登場人物、ハードボイルドな世界観。どれを取っても素晴らしく、この作品が時代を超えて愛される理由が分かります。 シリーズ物なのでまだまだマーロウの活躍が見られると思うと楽しみで仕方がありません。
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