ゼラニウムの庭 の商品レビュー
一人の数奇な女の人を中心として、語られる一族の盛衰の物語。のように読めた。 戦前から現代へ、そして未来へ。たくさんの人を見送った女の計り知れない孤独。 でも、彼女には時間がたくさんあるだけで、普通の女の人だったのだなぁ、と、附記を読んで思いました。
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雨の午後に読むには、ちょっと鬱々としているかも… 時間の流れに、最初はとまどったけれど、「秘密」がわかってからは、流れるように読み進められた。 るるちゃんが、書く宿命にあるからこそ語られる物語という発想がおもしろかった。 だけど、多分、読み返すことはしないだろうな。
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祖母の双子の姉妹は、人の倍の時間をかけて成長し、老いていく女性だった。女性にかかわって生きる、祖母、母、娘、そのまた娘。女性が傍にいることで、流れゆく時間をいつも意識し、その流れの速さを感じざるを得ない周囲の人間たち…そして、女性本人のぞっとするような孤独と、両者から感じるそこはかとない優越感のようなもの。娘が綴る女性を巡る一族の歴史(前半部)よりも、女性本人が綴る後半部のほうが私には印象に残った。古代から現代にいたるまで、若々しく長く生きたいという人間の欲望は強いけれど、私はこの女性のように強くないので、絶望しながらそれでも生きていくことはできないだろうと思ったし、改めてこの「生きている」時間のかけがえのなさを考えさせられた。 萩尾望都の傑作「ポーの一族」が思い起こされた。ただ、導入部に感じた恩田陸の常野物語シリーズのような雰囲気も話が進むにつれ薄れ、「ポーの一族」や常野物語を思い起こさせる割に、その2作品に比べると少し迫力不足という感じがして、少し残念に思った。
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るるの祖母、豊世と双子の嘉栄。嘉栄は、人よりも何倍も遅い成長をする運命にあった。人生の中で時間が過ぎることにとらわれすぎていく人たちと残されていく人による物語。どんどん時間が流れて(ふつうに)老いていく人たちの焦り、嘉栄の存在の不安を抱える人たちと、自分よりも後に生まれたものさえ...
るるの祖母、豊世と双子の嘉栄。嘉栄は、人よりも何倍も遅い成長をする運命にあった。人生の中で時間が過ぎることにとらわれすぎていく人たちと残されていく人による物語。どんどん時間が流れて(ふつうに)老いていく人たちの焦り、嘉栄の存在の不安を抱える人たちと、自分よりも後に生まれたものさえも追い越して老いて死に、取り残されていく嘉栄をめぐる不思議な物語。 上手くは言えないけれど、後半からじわじわと惹きつけられるものがあって、読後もどこか考えさせられるものがありました。
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『ピエタ』読了後に手を取った。 不思議なお話。時間がゆっくり流れる人・時間が時間のママに流れる人。 淡々と語られている分、不気味さもある。変化のない話が気持ち悪い気もする。変化のなさを楽しむか・つまらないと感じるか。読む人次第かなと思う。
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ある一家には100年以上守り続けた秘密があった。 明治末期に生まれた双子の女の子、豊世と嘉栄。 嘉栄は人よりも時間の流れが遅く、ゆっくりとゆっくりと成長する。 豊世がすっかり中年の女になった頃も、嘉栄は輝くような若さを放っていた。 豊世の葬儀の際も、嘉栄は女盛り。 歳を取らない...
ある一家には100年以上守り続けた秘密があった。 明治末期に生まれた双子の女の子、豊世と嘉栄。 嘉栄は人よりも時間の流れが遅く、ゆっくりとゆっくりと成長する。 豊世がすっかり中年の女になった頃も、嘉栄は輝くような若さを放っていた。 豊世の葬儀の際も、嘉栄は女盛り。 歳を取らない本人ではなく周囲の人々の思いが色濃く反映されているのが、ありがちな不老不死の物語とは違うところか。 嘉栄の苦悩や孤独よりも、むしろ豊世が嘉栄の存在によって引き起こされる不安感や厭わしさが物語全体を覆っている。 双子で生まれて誰よりも近しい存在になるはずなのに、敢えて存在と遠ざけてしまう愚かしさ、哀しさ。 小説全体に流れる幻想的な雰囲気とあいまって、三島さんの文章力はさすが。 話は飛ぶが、知人の家にミーちゃんと言う猫が一匹飼われていた。 確か私が小学校の頃から飼われていたように思う。 我が家もその後、犬を飼ったり猫を飼ったりしていたがとうに亡くなっている。 しかし、みーちゃんはまだまだ生きていた。 私が成人しても、結婚しても、まだまだ確かに生きていた。 亡くなったのは私が30歳を過ぎてからのことだろう。 おそらく、ミーちゃんのいた時間は軽く20年を超えていたのではないか。 猫の年齢は20年を超えると化け猫の域とどこかで読んだことがあるが、猫は何年生きようが家族にひた隠しにされたりしない。 長生きだねー、で終わりである。 もちろん、猫同士で短命の猫が長命の猫を羨んだりもするまい。 人間てなんと愚かな生きものだろう。
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決して面白いストーリーではないのどけれど、引き込んで放さない独特の空気・薫りを漂わす物語。そう!彼女の磁場から逃れられない感じ。哀しみも伴わせ魔性の女性を描かせたらピカイチですね♪
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1911年から2050年(?)くらいまでを生きた嘉栄さんのお話。 ひととしてあり得ない時間を生きながら、でもひとであった嘉栄さん。 不老不死なわけでもなく、怪我もすれば病気にもなる(でも頑丈なんだって)、ご飯も食べれば(あんまり食べなくていいみたいだけど)毒盛られて危機一髪なこ...
1911年から2050年(?)くらいまでを生きた嘉栄さんのお話。 ひととしてあり得ない時間を生きながら、でもひとであった嘉栄さん。 不老不死なわけでもなく、怪我もすれば病気にもなる(でも頑丈なんだって)、ご飯も食べれば(あんまり食べなくていいみたいだけど)毒盛られて危機一髪なことも。 でも、周りのみんなが年老いていくなか、若々しい姿で生き続ける嘉栄さんだから、まわりのみんなは色んなことを思います。 神のような、悪魔のようなと思う人もいます。 るるちゃんの話のだけでは怖いように感じた嘉栄さんですが、最後まで読むと、人間なんだなーって思いました。 自分を神聖なものとして扱おうとする男にキスして誘惑してみたり…女ですね。(あっけらかんとしていて、突き抜けていて嫌いじゃないよ) ただ、こんな長い時間、多くの人を見送ってきた彼女は、本当に強い人だ。寂しかっただろうね。 泰代さんが、菩薩のよう、といったところ、心に染みました。 ところで、嘉栄さんの話では、2050年ころは、富士山噴火、海に人工の島つくりまくり、平均寿命短縮、日本人口減少になってるらしい。
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主人公の祖母、豊世の双子の姉妹、嘉栄。 異質な時間を彼女は生きる・・・ゆっくりと長く・・・彼女は生き続けた。 この小説は、小説家の主人公が公表しないつもりで書いた記録、 という形をとっている。 奇抜な設定なのに地味に感じ、異形を描いているにもかかわらず、現実感を伴う。 前作...
主人公の祖母、豊世の双子の姉妹、嘉栄。 異質な時間を彼女は生きる・・・ゆっくりと長く・・・彼女は生き続けた。 この小説は、小説家の主人公が公表しないつもりで書いた記録、 という形をとっている。 奇抜な設定なのに地味に感じ、異形を描いているにもかかわらず、現実感を伴う。 前作「ピエタ」が大好きなので、ものすごい期待して読みはじめ・・・・ んー・・・やっぱ越えられない感があるかな・・・と思いつつ読了。 「嘉栄附記」として描かれる後半、 嘉栄が異形の立場から観る主人公「るる」とその周辺・・・が面白くて、(ソレ以前は☆3つ、これがあるから☆4つ)。 嘉栄附記を読んだ後、もう一度最初から読みなおしました。 一度目より、二度目に読んだほうが面白く、胸に沁みるものがあります。 やさしい言葉遣い、 夢の中のようなやわらかい、独特な世界観は健在です。 (ピエタは甘かったけど、これは甘くないかなー。)
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おそらく、信じてはもらえまい。こんな話、信じるほうがおかしい。でも、たしかに彼女はそこにいる―― 双子の妹は、その存在をひた隠しにされて育てられた。 秘密の存在は、それを知る人々に、何もなければ意識せずに済んだはずのことを見せつけ、深く、大きな影響を与えていく。 生きることの孤独...
おそらく、信じてはもらえまい。こんな話、信じるほうがおかしい。でも、たしかに彼女はそこにいる―― 双子の妹は、その存在をひた隠しにされて育てられた。 秘密の存在は、それを知る人々に、何もなければ意識せずに済んだはずのことを見せつけ、深く、大きな影響を与えていく。 生きることの孤独と無常、そして尊さを描き出す物語。
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