ゼラニウムの庭 の商品レビュー
これは物語なのか。 実在する一家の記録なのではないか。 書かれていることが信じられるかと言われれば、信じるのはとても難しい。 でもそれを信じるしかない状況に置かれてしまった人達の心の動きには、これは現実なのかもしれないと思わせる説得力がある。 語り手は小説家の「るるちゃん」。 ...
これは物語なのか。 実在する一家の記録なのではないか。 書かれていることが信じられるかと言われれば、信じるのはとても難しい。 でもそれを信じるしかない状況に置かれてしまった人達の心の動きには、これは現実なのかもしれないと思わせる説得力がある。 語り手は小説家の「るるちゃん」。 彼女は祖母に教わった秘密を記録した。 曾祖父が隠すことに決めてしまったことで守るしかなくなった秘密。 どんなに怖くても逃れられない呪縛のような秘密。 そしてその中心にいるある人のことが、好奇心と畏れの両面から書かれている。 嘉栄さん程に極端ではないにしても、誰もがみんな違う時間の流れの中で生きているのではないだろうか。 死ぬ年齢はバラバラだし、老い方も人それぞれ。 他人と生きるということは、そのずれを受け入れることなのかもしれない。 豊世さんが嘉栄さんとのずれを受け入れざるを得なかったように。 先に老いていく辛さと置いていかれる辛さ。 自分のこととして想像するとどちらも恐ろしい。 では、身近に嘉栄さんのような人がいない私には、この恐ろしさは他人事なのか? たぶん、そうではない。 私はいずれこれに近い恐怖を感じることになる。 一緒にいられると信じていた人から切り離される日がきっと来る。 その時にきっと豊世さんと嘉栄さんのことを思い出すはず。
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大島真寿美さんの作品は中学だったか高校時代から読んでいる ゼラニウムの庭、この一冊は今まで読んできた作品とはまるで違う印象を受けた ファンタジーに近いからだろうか 何かこう、真に迫るものを感じる やさしい言葉遣いが好きだ 読み始めると、するすると引き込まれてゆくところも ...
大島真寿美さんの作品は中学だったか高校時代から読んでいる ゼラニウムの庭、この一冊は今まで読んできた作品とはまるで違う印象を受けた ファンタジーに近いからだろうか 何かこう、真に迫るものを感じる やさしい言葉遣いが好きだ 読み始めると、するすると引き込まれてゆくところも 夢の中のような、午後の昼下がりのような独特な世界観もどこか中毒性がある 初めて宙の庭を読んだときみたいな心地になりました
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双子の姉の嘉栄は、成長する時間が妹の豊世の倍かかる。 特殊な病気だから子どもが産めないだけではなく、子どもの成長に追いつかれ、追い越される心配もある。 思いつかない苦悩、るるがこの物語を書き、その後、嘉栄も素人っぽい文章で、自分の人生を語る、その構成も面白かったが、入り込むのに、...
双子の姉の嘉栄は、成長する時間が妹の豊世の倍かかる。 特殊な病気だから子どもが産めないだけではなく、子どもの成長に追いつかれ、追い越される心配もある。 思いつかない苦悩、るるがこの物語を書き、その後、嘉栄も素人っぽい文章で、自分の人生を語る、その構成も面白かったが、入り込むのに、けっこう苦労した。
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他人とは違う時間軸で生きている女性を巡る家族の物語。彼女の双子の姉の視点と、その孫娘の視点と、そして、彼女自身の視点と。彼女の視点だけが、少し、ずれているのだけれど、彼女の辿っている人生からすれば、当然。他人の常識から外れたところに生きるならば、他人とは違う処世となることは自明な...
他人とは違う時間軸で生きている女性を巡る家族の物語。彼女の双子の姉の視点と、その孫娘の視点と、そして、彼女自身の視点と。彼女の視点だけが、少し、ずれているのだけれど、彼女の辿っている人生からすれば、当然。他人の常識から外れたところに生きるならば、他人とは違う処世となることは自明なのだから。
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普通の人よりも時間をかけて人生を過ごす(何て表現したらいいのやら!)大伯母・嘉栄に翻弄されて生きた、主人公とその家族の物語。 祖母、母、嘉栄と、女性ばかりが中心。 物語の設定も、みんなの気持ちの揺れ感も、そして個性ある女中さんの役割も面白かった。 けど、読み終わった後、最終的に何...
普通の人よりも時間をかけて人生を過ごす(何て表現したらいいのやら!)大伯母・嘉栄に翻弄されて生きた、主人公とその家族の物語。 祖母、母、嘉栄と、女性ばかりが中心。 物語の設定も、みんなの気持ちの揺れ感も、そして個性ある女中さんの役割も面白かった。 けど、読み終わった後、最終的に何が心に残ったかと言うと…f(^^;。 嘉栄さんは最後の独白で、るるちゃんが命を削って書いていた小説は、るるちゃんが亡くなった後、見る間に街中から消えて行きましたと言い、井戸から澄んだ水が湧き続けることこそがこの世の姿と言います。 これなのかな? 大島作品はテンポが好きだし、選ばれてる言葉も好き。 でもピエタから、ちょっと難解かなぁ(本音)。
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双子の姉妹、嘉栄と豊世。 ふたりを廻る人々、家族や子孫へと続く長い長い物語。 そりゃ、長くなるよね 人の半分の速さでしか成長しないのだから・・・ 設定はおもしろいのだけど、話に全く入ってゆけず、いらいら・・・ 読み切るのにかなり手こずった 大島さんの作品はかなり好きですが、本...
双子の姉妹、嘉栄と豊世。 ふたりを廻る人々、家族や子孫へと続く長い長い物語。 そりゃ、長くなるよね 人の半分の速さでしか成長しないのだから・・・ 設定はおもしろいのだけど、話に全く入ってゆけず、いらいら・・・ 読み切るのにかなり手こずった 大島さんの作品はかなり好きですが、本作はどうもあわなかったようです
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人の半分の速度でしか成長できない双子の姉の嘉栄。普通の生活ができない嘉栄を守り、隠し続ける家族の話。いつでまも若々しい姉と接しながら、自分の老いの時間の流れに恐怖を感じる妹の豊世の気持ち。周りの人々が自分にはつくることのできない家族を築き、子を育て、どんどん老いて旅立つのを見てき...
人の半分の速度でしか成長できない双子の姉の嘉栄。普通の生活ができない嘉栄を守り、隠し続ける家族の話。いつでまも若々しい姉と接しながら、自分の老いの時間の流れに恐怖を感じる妹の豊世の気持ち。周りの人々が自分にはつくることのできない家族を築き、子を育て、どんどん老いて旅立つのを見てきた嘉栄の気持ち。時間の流れは皆平等なのがいい。子孫を残し、自らは枯れていく。これが自然なんだなぁ。
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著者の作品は8割がた読んでいる中で、これは出色の出来という気がする。(ピエタの評価が高いけれど、残念ながら個人的にはあまり印象に残らず。) "時間と共に年を取らない"が故に、一族から隠され疎まれてもきた嘉栄。嘉栄の双子の姉・豊世の孫娘であり作家となった&quo...
著者の作品は8割がた読んでいる中で、これは出色の出来という気がする。(ピエタの評価が高いけれど、残念ながら個人的にはあまり印象に残らず。) "時間と共に年を取らない"が故に、一族から隠され疎まれてもきた嘉栄。嘉栄の双子の姉・豊世の孫娘であり作家となった"るるちゃん"ことるみ子が嘉栄について記した本編に、嘉栄自身による附記がつく。外見的な異形だとか内面の狂気というホラー的な怖さはないため、初めのうちは「家族はどうしてそんなに嘉栄を恐れるんだろう」というような気持ちになる。が、読み進めるにつれて嘉栄その人がというよりも、豊世にしろその娘静子にしろ、またその娘であるるみ子にしろ、「自分の産む子が嘉栄のようであったら...」という恐れに囚われ、それこそが嘉栄が忌避されてきた原因なのだということがわかってくる。そしてその恐れとは、周りの誰もが死によって自分よりも先に去ってゆくという孤独に対する恐怖に他ならない。数多の人々の死を見てきた嘉栄の、大往生もあったし犬死にもあったが誰もが死んでいった、というような回顧が沁みた。
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不思議なお話でした。 人より成長するのが遅い嘉栄さん。 ありえないと思いながらも、本当にありそう・・・と感じさせる力のある作品でした。
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普通の人の半分の速さで成長する女性という設定は それだけで興味深いものだけど、 読んでてあまりグッとくるものがなかった。 富豪とまではいかなくても、取り巻く環境が生活に困らないほど 裕福なせいか、本人目線のお話が少なかったからか。 それでも時間については考えさせられた。 もしも寿...
普通の人の半分の速さで成長する女性という設定は それだけで興味深いものだけど、 読んでてあまりグッとくるものがなかった。 富豪とまではいかなくても、取り巻く環境が生活に困らないほど 裕福なせいか、本人目線のお話が少なかったからか。 それでも時間については考えさせられた。 もしも寿命がもっともっと長ければ、 今より人間は大らかで達観したものの考え方ができ、 世の中は平和になるのかもしれないのかなぁ。
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