屍者の帝国 の商品レビュー
出版までの経緯を省くにせよ、何と言っても、「円城さん、ありがとうございました」に尽きると。 以前に伊藤計劃の遺稿であるあの硬質なプロローグを読んでからのち、円城さんがインタビューでおっしゃる「悪ふざけ」展開は予想できていなかった。 そういう極々エンタテインメントな作品として両手...
出版までの経緯を省くにせよ、何と言っても、「円城さん、ありがとうございました」に尽きると。 以前に伊藤計劃の遺稿であるあの硬質なプロローグを読んでからのち、円城さんがインタビューでおっしゃる「悪ふざけ」展開は予想できていなかった。 そういう極々エンタテインメントな作品として両手に載ってきて、ゆかいなタイムトラベルをもたらしてくれた。繰り返しの読み返しを、様々な読みを許容する懐があり、しかしこれはなにより、真摯な、魂の悪ふざけなのであって、エピローグには熱く胸打たれた。 作家はうつせみを生き、死ぬことを繰り返すのだなと、それはとりもなおさず過去から未来へ繰り返されていくあらゆる人生の似姿であるかもしれない、と時折感じることが陳腐とは思わない。 おふたりともほんとうによくお書きになられたと感謝したい。
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プロローグを伊藤計劃が、第一部以降を円城塔が担当した、伊藤計劃最後の遺作。 伊藤計劃、円城塔、両氏の作品を読んでいたので、どんな作品になるかと期待と不安だったが、個人的には期待以上だった。 結果的にほとんど円城塔作品となった訳だが、見事にバトンを繋いでいると思う。 ネタバレ...
プロローグを伊藤計劃が、第一部以降を円城塔が担当した、伊藤計劃最後の遺作。 伊藤計劃、円城塔、両氏の作品を読んでいたので、どんな作品になるかと期待と不安だったが、個人的には期待以上だった。 結果的にほとんど円城塔作品となった訳だが、見事にバトンを繋いでいると思う。 ネタバレはしたくないので詳しくは書かないが、きちんと虐殺器官の流れ(言葉)、ハーモニーの流れ(人間性)を汲み、なおかつ今まで読んで感じて来た円城塔らしさ(クライマックス部分とか)も表現されている。 しかも伊藤計劃が尊敬してやまない作品についてオマージュしている所など、ちょっと粋だなぁと感じた。 恐らく伊藤計劃本人が書いていたらこういう内容ではなかったろうが、「こういうのもアリだよね」と円城塔と楽しそうに話していそうな、エンターテインメント溢れる傑作であることは間違いない。 ただ一つ、伊藤計劃はもっと血なまぐささというか、じめっとした雰囲気を感じていたのだが、円城塔は逆にドライな雰囲気に感じられて、やっぱり二人は違うんだと改めて感じさせられた。 そしてこれで、伊藤計劃の作品は最後なんだなぁと改めて残念な気持ちもありつつ、円城塔の新しい面も見れたとも思うので、これからの円城塔作品が楽しみでもある。 とにかく本当に面白い作品なので多くの人に読んで欲しい!
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あらかじめ、「フランケンシュタイン」jの原作を読んでおくとよい。青空文庫にあります。 http://www.aozora.gr.jp/cards/001176/card44904.html
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死体の操作技術が開発された世界。死者が労働力として産業や軍事を支える架空の19世紀末を舞台としたSF冒険譚。 歴史上の人物から物語上の人物まで、様々な登場人物たちが物語を彩ります。理性を、想像力を強く刺激する作品です。 作品全体通して、人の意識とは何か、魂とは何処から生じ...
死体の操作技術が開発された世界。死者が労働力として産業や軍事を支える架空の19世紀末を舞台としたSF冒険譚。 歴史上の人物から物語上の人物まで、様々な登場人物たちが物語を彩ります。理性を、想像力を強く刺激する作品です。 作品全体通して、人の意識とは何か、魂とは何処から生じるのかを問いかけてきます。意識と言葉は切り離せないものであり、言葉は死者さえも蘇らせる力を持つ、というのがテーマでしょうか。 深く考えなくてもSF冒険譚として十分に楽しめますが、深く読み込もうとすることで、さらに楽しめる作品。 難解で説明も多くはないので、消化不良に感じた部分は多々ありました。しかし、少し読み返すだけでも、なるほどと思わされる部分が見つかりますし、読み返すことで新しい発見がありそうです。 また、考察や想像の余地が多く残っていることは、この手のSF作品の大きな魅力にもなっているとも感じます。 時間おいてまた読み返したいです。 そして、この設定を使った他の作品もぜひ読んでみたいと思います。
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面白かった。 続きを書いてくれた円城塔には感謝するが、やっぱり伊藤計劃自身に依るものが読みたかった。
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少し伊藤計劃を期待しすぎたかな感はある。プロローグはまさしく伊藤だが、その後はエッセンスを盛り込んでいるとはいえ、円城塔だった。 物語はとても面白かったが、話がグローバル過ぎて要素が薄く、固有名詞がたくさん出てきたけど内容が弱くだるく感じた。
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久々に小説の世界に浸った。 やっぱSFは良いね!大好きだ! ゼロ年代最高の作家の一人と言われている伊藤計劃の遺稿を円城搭が引き継いで完成されたこの作品。 正直、どちらの作風が色濃くでるか、読み始めるまでは期待もしつつ疑問も抱いていたけど、読み終えたらどちらも裏切られた気分。 こ...
久々に小説の世界に浸った。 やっぱSFは良いね!大好きだ! ゼロ年代最高の作家の一人と言われている伊藤計劃の遺稿を円城搭が引き継いで完成されたこの作品。 正直、どちらの作風が色濃くでるか、読み始めるまでは期待もしつつ疑問も抱いていたけど、読み終えたらどちらも裏切られた気分。 こんなにロマンチックな作品になるなんて。。。 終わり方も良かったなー。 あのシリーズと繋がりを連想させてくれて。 個人的に一気に読むのをお勧め。 特に後半。 途切れ途切れで読むと全体像が分かりにくなりそう(そこらへんは円城搭っぽい)。 しかし、改めて伊藤計劃という作家が若くして世を去ったことが惜しまれてならないな。。。
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自意識とは何か。我々が主体として感じている世界は実在するのか。というような、SFではクラシックなテーマを扱っている作品。 伊藤計劃が遺作として書いたプロローグを円城塔が引き継いで完成させた話。 19世紀のイギリス、アフガニスタン、インド、日本、アメリカが舞台。屍体の頭に「ネク...
自意識とは何か。我々が主体として感じている世界は実在するのか。というような、SFではクラシックなテーマを扱っている作品。 伊藤計劃が遺作として書いたプロローグを円城塔が引き継いで完成させた話。 19世紀のイギリス、アフガニスタン、インド、日本、アメリカが舞台。屍体の頭に「ネクロウェア」というシステムをインストールすることで社会のインフラとしている世界という設定。 退屈しない。引き込まれる。時代設定・状況設定も面白い。 円城塔は他作品でも言語や言葉というものをひとつのキャラクターとして扱うけれど、この話も途中から、難解さが増して行く。 万人にはオススメできないけれど、読了した人と読後感を語りたい本だと思う。
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魔法全盛の科学。 メスメリズムとスチームパンクじゃ!わーお! 科学史の中で二つの説、二つの道、二つの選択肢が提示された時。歴史上では選ばれなかった方に、正しくなかった方に進んだ話だと思っている。 プロローグ以外は円城塔の執筆だけど、伊藤計劃が語り続けた人間のあやふやさは今作で...
魔法全盛の科学。 メスメリズムとスチームパンクじゃ!わーお! 科学史の中で二つの説、二つの道、二つの選択肢が提示された時。歴史上では選ばれなかった方に、正しくなかった方に進んだ話だと思っている。 プロローグ以外は円城塔の執筆だけど、伊藤計劃が語り続けた人間のあやふやさは今作でも新しい形で書かれている。伊藤計劃らしさを感じられる大ネタだったので、遺作として見ても非常に満足している。 日本編でちょっとお遊びが過ぎるかなー。 あとまさかの神話的(蛸)ほのめかしにニヤニヤ。選ばれなかった方、正しくなかった方というネタの選定基準を考えればおかしくは無いな。
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河出書房新社(http://bit.ly/R2eXcQ) はてなブックマーク(http://bit.ly/PMBXxw) 2012 年 第 33 回日本 SF 大賞特別賞受賞作品。
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