獣の奏者(4) の商品レビュー
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『獣の奏者』闘蛇編〜完結編 2023/07/23頃〜2024/05/10 1回目 最初はなつかしい気持ちだった エリンの子供なのに大人びた姿、動物のことになると現れる子供らしい姿 大人になってみるとどれも可愛らしい子どもの姿だった 母を失うという壮絶な経験をしてもなお、禁忌とも呼べるそれを解き明かそうとしたエリンの姿は勇敢だったけれど、勇敢な人がひとりいたとて世の中は災いをその目で知るまで変わろうとしない。苦しかった。バスの中で嗚咽しそうだった。 『獣の奏者』という話の中で一番鍵になるのは「母」だと思う。エリンは母を闘蛇に喰われ、イアルは母に売られ、ジェシも母をあの戦いで失う。 惨いと思ったのは、エリンもイアルも母を失ったことを辛く重く心を痛めているはずなのに、二人とも命を落とす覚悟がある。ジェシにそんな思いはさせたくないと言いながら、しっかり思いながら、そんな思いをさせてしまうことを自覚している。 しかし最後のジェシはあまりに強かった。 何度もその話をするのは苦しいだろう。獣ノ医者として働く度に母の背中を思い出すだろう。それなのにまだ母の背中を追っている。エリンとイアルの強かさを継いでいる。きっと孫も凄く強かだろう。 最後は本当にグロテスクだった。あそこまでの災いが起こるなんて想像していなかった。アニメ化しなくて良かった。 闘蛇の甘い匂いを嗅いでいるようだった。 兵士たちの死に顔が浮かぶようだった。 こうなると知ってもジェシは母を信じていた。強い子。私ならどうするだろう。きっと王獣で飛べない。 アルを飛ばすことを選べない。 最後に母と過ごした四日間はどんな気持ちだっただろう。 けれどエリンは叶えた。王獣を解き放つ願いを叶えた。 素晴らしい人だと思う。ただ、自己犠牲の強さだけはいただけない。 ソヨンはエリンをどんな顔で迎えるだろう。きっと二人とも地獄へ落ちる。戒律を破った者として、災いを起こした者として。それでも二人がしたことは間違っていない。エリンもソヨンも子を思ってしたことだ。 苦しい。暴れたい。これから外伝を読む。母としてのエリンがどうあったのか。きっと優しく、厳しい母であったのだろう。 イアルとの結婚までも気になる。二人がどうやって仲良くなっていったのか、それが気になって仕方ない。 幸せになって欲しかった。イアルと結婚したことを知ったときの安堵感はとてつもない。この二人が結ばれたことが何よりの幸せだったのかもしれない。 ジェシは二人の子に生まれて幸せだっただろうか。二人のことを誇って欲しいとおもう。 あーーーーーーあ また読み終わってしまってくるしい。 新しい本を探さなくては。 上橋菜穂子の本をもっと読もうかと思う。
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堂々の完結作。最後まで止まらない面白さだった。中弛みすることもなく素晴らしかった。またいつか絶対に読みたい。もっと悠々と考える時間を私も持ちたいと、人生を通して考える習慣をつけて豊かに生きたいと思った。
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いよいよ最終巻。 王獣と闘蛇の秘密をほとんど解き明かしたエリン。 過去の大きな災は王獣と闘蛇の接触により起きた可能性が高いことがわかりつつも、いよいよ戦争が始まってしまう。 その接触がやはりとんでもない現象を起こしてしまい、それを止めるためにエリンは決死の行動を起こす。 最後は感...
いよいよ最終巻。 王獣と闘蛇の秘密をほとんど解き明かしたエリン。 過去の大きな災は王獣と闘蛇の接触により起きた可能性が高いことがわかりつつも、いよいよ戦争が始まってしまう。 その接触がやはりとんでもない現象を起こしてしまい、それを止めるためにエリンは決死の行動を起こす。 最後は感動でウルウルしました。 上橋菜穂子さんの作品はリアルな設定の上に人間感情の機微が描かれ、夢中になって読める本当に面白い作品ですね。
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一貫して、獣はそして人はどう在るべきか、一つの考え方を示してくれる。そのメッセージを、これ程魅力的なストーリーに乗せられる作者にただ脱帽です。
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最後約50ページ程の描写は、『風の谷のナウシカ』で王蟲の暴走を食い止めるナウシカのようでした❗読み終わった後は、何だか高揚感がいっぱいの作品でした❗ 決してハッピーエンドとは言えないけれども、希望のある終り方でとても気に入っています♫ 読む前は『守り人』シリーズよりも面白いは...
最後約50ページ程の描写は、『風の谷のナウシカ』で王蟲の暴走を食い止めるナウシカのようでした❗読み終わった後は、何だか高揚感がいっぱいの作品でした❗ 決してハッピーエンドとは言えないけれども、希望のある終り方でとても気に入っています♫ 読む前は『守り人』シリーズよりも面白いはずがないと、勝手に決めつけていましたが、4冊読んでみると、甲乙つけがたい作品でした❗(ストーリーは守り人シリーズよりも深いと思います。)至福の時を過ごせたこの作品に感謝です。また、樋口さんのカバーデザインがとても綺麗で、とても気に入っています❗
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途中で苦しくなってきて、読むのが止まっていたものの、時をおき、読み始めると最後まで一気に読んでしまった。 生きとし生けるものすべての命を等しく愛したエリンの物語、ここに完結。
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一体何が正解だったんだろう。 エリンと王獣が心を通わせた事によって起きた地獄があまりにも悲劇で、耐え難くて、何度も読む手を止めてしまった。エリンが今まで生きてきた果がこれなの!?って、どうして?って。 だけど違った。あの地獄の先に、野に放たれた王獣の姿があって、きっとその更に先にも何かがある。果なんてどこまでもなくて、いつかはエリンのしてきた事の全てが無に等しいぐらい消え去ってしまい、同じような悲劇が繰り返されていくのかもしれない。 この長い長い、永遠の歴史の中で命は本当に儚くて、そこに意味なんてないのかもしれない。でも、エリンが火をつけた松明の炎は、少なくとも私の中では、私というちっぽけな一生の中では、永遠に燃えている。 野で生きる獣の美しさも、牧場で日を浴びながら過ごす一生も、人と心を通わせる事で芽生えた愛も、何が正解なんてきっとなくて、全部がそれぞれの命の形。 ただ私は、エリンが選び取ったこの命の形を途方もなく愛している。
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いよいよ完結編。禁忌とされていても、新たな時代のためにそれを犯すことになっても。その結果を受け止める覚悟で、主人公のエリンは闘いに向けて決意します。様々な不安の中で日々は流れ、闘いの時は確実に近づいてきます。その日々を主人公は、周囲の人々は、どのように過ごしていくのか。そしてそれ...
いよいよ完結編。禁忌とされていても、新たな時代のためにそれを犯すことになっても。その結果を受け止める覚悟で、主人公のエリンは闘いに向けて決意します。様々な不安の中で日々は流れ、闘いの時は確実に近づいてきます。その日々を主人公は、周囲の人々は、どのように過ごしていくのか。そしてそれぞれの決断が、最後にどのような結果となって現れるのか。結末に対しては色々と意見したい気持ちも出てきますが、それよりもそれぞれがどのように考えて行動したのか、そのことのほうが深く印象に残る読後感でした。それだけ登場人物の感情が豊かであり、そこに移入しやすい物語だったのだと思います。たったと言うと語弊かもしれませんが、たった4巻の中で、一人の女性の生きざまをこれだけ深く読者に印象を残す物語であることが不思議なくらいです。
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エリンの決意。 その結果がここへ集約したとき、涙が出ました。 と同時に過ちを過去の物にせず、忘れない…それもまた大切な事なんだと気付きました。
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