1,800円以上の注文で送料無料

遺伝子の不都合な真実 の商品レビュー

3.5

47件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    8

  3. 3つ

    20

  4. 2つ

    2

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2012/09/17

「遺伝子の不都合な真実 ー すべての能力は遺伝である」安藤寿康 著 筆者の主張は、「遺伝があるのは当然だ、しかし重要なのは環境なのだ」という、環境影響を遺伝のくびきから解放させる存在として重視しがちな教育界の考え方に対し、「環境が遺伝の出方を調整する」、「環境の影響の受け方自体...

「遺伝子の不都合な真実 ー すべての能力は遺伝である」安藤寿康 著 筆者の主張は、「遺伝があるのは当然だ、しかし重要なのは環境なのだ」という、環境影響を遺伝のくびきから解放させる存在として重視しがちな教育界の考え方に対し、「環境が遺伝の出方を調整する」、「環境の影響の受け方自体が遺伝によって調整されている」という、まあ生物学的にはごく当たり前の主張を非常に慎重な物言いで行なっている。その為か、その先に踏み込んだ話はあまりなくて、終盤はよくわからない行動経済学との関連の話になってしまっていて、心理学界の歴史上の一大データ捏造スキャンダル「バーとアフェア」の再解釈や、最近の双子研究による学習の遺伝効果の研究結果以外の部分はあまり得るところがなかった。 自分にとっての現代日本の教育制度は、「18歳まではとにかくひがまれずに周りより秀でることを目指し続ける」という高度に社会的で非常にアクロバティックな行動命題を追求させられる場であって、まさに人間性を疲弊させる制度そのものであり、大学には「大学」は存在せず、ただ建物と人がそこにいただけだった。この世から「教育制度」がなければいいのにとすら思っていたけれど、一方で教育そのものは重要だと考えていた。何を学んだかというより、何を学ばないかの方がはるかに大切だった。でも、教育を受けない権利はこの国にはない。受けている振りをしながら、かろうじて精神の自由を保つのが精一杯だ。 国にとって教育制度とは何か。国力(=経済力)を高める為に必要な人材を排出することがその第一目的だとしたら、成長産業に向いた教育が目的であって、それがかつて上手くいった面はあったかもしれない。 一方現場レベルでは、目の前に子供や知的好奇心をもつ人がいて、自分の方がそれについてより知っていたら教えたいと思い、そうでなくても学んでほしいという自然な「敎育欲」はある。しかし両者には大きな断絶がある。 正直、敎育のことはよくわからないけれど、人の持つ才能を引き出す環境を提供することが敎育の目的であってほしい。今は漠然とそう思う。 そういえば、大学の頃、文系科目の単位がどうしてもとれず、仕方なく発達心理学の大学院レベルのゼミに参加した。そこで、「青少年の性非行と性教育」というテーマで発表した。内容は、霊長類間や国家間、時代別に、現代日本の敎育界が性非行と考えている行動の統計データを比較し、現在の日本の敎育観が青少年の精神に与えている悪影響について論じ、失笑を買った(笑)。今ではいい思い出だ。 11 遺伝の影響があることを認めつつも、最終的には「しかし遺伝だけでは決まっていない」 18 実は環境こそが、遺伝子に対して制約を与え自由を阻んでいる 26 単に環境を平等にしただけでは、かえって遺伝的な差異を顕在化する 45 真実が客観的には全く不明と判断されなければならない出来事が、善意の願望と正義の志によって、心ならずも歪曲して紹介されている可能性がある 46 捏造という不正とそれを糾弾しようとする正義とは、実は紙一重であるという、かつて志賀直哉が「正義派」で描いたような我々の業とでも言うべき真実の劇がそこから浮かび上がってきます。 52 解決のつかない問題だから一生やっても食いっぱぐれることもないから 55 遺伝があるのは当然だ。しかし重要なのは環境なのだ 77 行動にはあまねく遺伝の影響がある 共有環境の影響が殆どみられない 個人差の多くの部分が非共有環境から成り立っている 118 1996年に初めて新奇性追求というパーソナリティとの関連が報告されたDRD4遺伝子のエクソンIIIの繰り返し配列の数に関する研究結果は、その後たくさんの追試がなされた結果、一貫性が見出されませんでした(ただし同じDRD4遺伝子のなかのC-521Tの多型については一貫した結果が得られ、およそ2%を説明する効果が見出されています)。 127 環境こそが私達を制約している 135 学業成績にはたいてい40%程度の遺伝の影響 152 環境が遺伝の出方を調整する 環境の影響の受け方自体が遺伝によって調整されている 171 教育的投資の見返りはおよそ10%

Posted byブクログ

2012/09/04

学習能力や知能には、遺伝的な要素が関係している。 高等教育の大衆化により、努力や価値観や運、家庭環境などに遺伝的差異が関与していないかのように考えるようになってきた。 しかし、遺伝的差異があったとしても、本来持つ遺伝的才能は、環境や学習によって発現する。 一般知能は遺伝の影響が大...

学習能力や知能には、遺伝的な要素が関係している。 高等教育の大衆化により、努力や価値観や運、家庭環境などに遺伝的差異が関与していないかのように考えるようになってきた。 しかし、遺伝的差異があったとしても、本来持つ遺伝的才能は、環境や学習によって発現する。 一般知能は遺伝の影響が大きいので、成績の優劣や学歴差を生む。しかし、それらは不都合な真実なので、「生育環境の差」「親や教師の力量の差」「本人の努力と心がけ」に原因の矛先が向けられる。 このように書いていくと、この本が優生学を支持しているように感じられるかも知れないが、決してそうではない。 遺伝的要因を隠す方へ向かう現代社会の思考のねじれを、正常に戻すアプローチであると、僕は解釈した。

Posted byブクログ

2012/08/19

人間の能力や性格は遺伝によるのか環境によるのか、それともその両方なのか。そういった疑問に対して、双生児研究で得られた知見をもとに回答している。また、近年話題になっている「遺伝子診断」についても取り上げられている。 広範な内容のカバーは遺伝子と人間についてまとめられた入門書として...

人間の能力や性格は遺伝によるのか環境によるのか、それともその両方なのか。そういった疑問に対して、双生児研究で得られた知見をもとに回答している。また、近年話題になっている「遺伝子診断」についても取り上げられている。 広範な内容のカバーは遺伝子と人間についてまとめられた入門書として相応しいと言えるのではないだろうか。ただし、何点か理解に詰まった部分もあったので、時間をおいて再読したい。

Posted byブクログ

2012/08/13

著者の主張は概略以下の通り。 知能は遺伝子によってあらかた規定されているのであり、努力や教育で無限の可能性がある、というおためごかしはダメ。ただし、知能など表現型の「優劣」というのは現代社会において、という前提のもとでのことであり、遺伝子そのものの優劣という評価をくだすべきではな...

著者の主張は概略以下の通り。 知能は遺伝子によってあらかた規定されているのであり、努力や教育で無限の可能性がある、というおためごかしはダメ。ただし、知能など表現型の「優劣」というのは現代社会において、という前提のもとでのことであり、遺伝子そのものの優劣という評価をくだすべきではない。 さらに、元来は平等な人同士が努力によって差が生まれる、という考え方自体が利他行為を排除するのではないか(努力が足りなかったから不遇でも仕方ない、と思わせる)、むしろ本人の努力など関係なく、もって生まれた遺伝子によって得られた優位にすぎないのではないか、と考えることで優生学的な考えからも自由になれる、と言うがそれはさすがにちょっと詭弁かも。 ・教育のリターンは10%。一卵性双生児で教育に投資した者・しなかった者を比較すると収入に10%の差があったという ・ポリジーンの遺伝に関する説明が分かりやすかった。たとえば、A-Jの10個の対立遺伝子について、父親はA-Eを、母親はF-Jを持っている場合、両親は5/10の遺伝子を持つ平凡な人間だが、その子供はA-Jの全てがONになった天才かもしれないし、全てがOFFになっているかもしれない。つまり、ポリジーンの遺伝は遺伝子によって決まるが、両親と同じになるわけではない

Posted byブクログ

2012/07/24

高度に社会的な動物であるヒトはいかに利己的に振舞おうとしても、また本人がいかに自分が利己的だろうと思ったとしても、そこにどうしても利他性が現れてしまう。

Posted byブクログ

2012/07/22

タイトルがすごいインパクトだが、内容は行動遺伝学の成果の紹介を軸に展開していて、論理的にすっきりしていて読みやすい。最後のヒトは教育的動物であるという安藤先生の私論はおもしろかった。

Posted byブクログ

2012/07/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

行動遺伝学の3原則 1、行動にはあまねく遺伝の影響がある 2、共有環境の影響がほとんどみられない 3、個人差の多くの部分が非共有環境から成り立っている ・生まれてからずっと重要だったはずの親の育て方の影響がほとんどみられない ・高齢者の認知症のはじまるきっかけやその重篤度に、遺伝よりも環境の違いが大きく影響している

Posted byブクログ