遺伝子の不都合な真実 の商品レビュー
図書館で借りて。一人ひとり生まれ持った能力の違いを無いかのようにふるまうのは却って不平等だ、という主張には納得。
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ざくっと読みましたが、著者がわりに問題意識の強い方で、遺伝を社会的な視点からとらえた項目が印象的。好き嫌いはありますが。遺伝の基本的な情報もわりあいしっかり載ってます
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「人間の能力は遺伝と環境のどちらで決まるのか」。著者はこの不毛な問いを「長方形の面積は縦の長さと横の長さのどちらで決まるのか」という問いと同じくらいナンセンスだと述べる。行動遺伝学の豊富な研究成果に基づき、身体的性質がそうであるように、学力や性格など、人間のあらゆる能力・性質には...
「人間の能力は遺伝と環境のどちらで決まるのか」。著者はこの不毛な問いを「長方形の面積は縦の長さと横の長さのどちらで決まるのか」という問いと同じくらいナンセンスだと述べる。行動遺伝学の豊富な研究成果に基づき、身体的性質がそうであるように、学力や性格など、人間のあらゆる能力・性質にはすべからく遺伝の影響がみられるということが説得力を持って示される。 しかし、能力や行動に遺伝が影響するということは、それらが遺伝的に決定されているということを意味しない。遺伝的差異と環境の差異が相互作用してはじめて、多様な個性がそれぞれの能力を発揮するのである。 遺伝と環境の二分法にとらわれ、遺伝子決定論を恐れる人にとって、本書で示されていることがらは題名通り「不都合な真実」だろう。だが、二分法を捨てればむしろ本書は当たり前のことを当たり前に述べていることが理解される。 「遺伝的差異を指摘することは差別につながるからそういうことは言ってはならない」と行動の遺伝的影響を否定する人たちは、むしろ彼ら自身が「もしも遺伝的差異があったならそれは差別の対象となる」という優生思想にとらわれているのだ、という著者の考えには大きくうなづいた。 控えめな語り口ながら、証拠に基づく堅実な議論でこんにちの教育のあり方にまで踏み込む姿勢にも好感がもてる。
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橘玲氏の著書が面白かったので、関連した進化心理学、行動遺伝学についての本(カテゴリはよくわかりませんがw)という事で読んでみました。 結論自体は何となくわかっているので少し速いペースで読み進めたところ、あまり中身を理解しない結果にw 遺伝的な要素と環境的な要素の両方が何事にも...
橘玲氏の著書が面白かったので、関連した進化心理学、行動遺伝学についての本(カテゴリはよくわかりませんがw)という事で読んでみました。 結論自体は何となくわかっているので少し速いペースで読み進めたところ、あまり中身を理解しない結果にw 遺伝的な要素と環境的な要素の両方が何事にも関与してくるため、万人が同じスタートラインなのだから結果劣った成績を残した者は怠慢であるという風潮に警鐘をならすというスタンス。(だと思っていますw 才能、努力、希望、落胆、なんか複雑な感情が芽生えます。 やはり少し専門的な掘り下げをする本になると、なかなか読み進めるのが億劫になってきますね。 もう少々読書量が必要だと感じました。
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兄弟や親子が似るのはどうしてか? 遺伝子によってもたらされている個性と、 共に過ごした環境によってもたらされている個性。 遺伝子はどこまで人の特徴を次の世代に受け渡しているのか。 まだまだ未知の部分が多くて、神秘的だと思います。
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この本は「不都合な真実」という題名がつけられていて、最初に著者が解説しているように、うすうすみんなが知っているけれど、それをあからさまに口にしたらまずいことになるので言わない、という事実=「不都合な真実」として、すべての能力は遺伝である、という内容を伝えています。 努力すれば成...
この本は「不都合な真実」という題名がつけられていて、最初に著者が解説しているように、うすうすみんなが知っているけれど、それをあからさまに口にしたらまずいことになるので言わない、という事実=「不都合な真実」として、すべての能力は遺伝である、という内容を伝えています。 努力すれば成功すると言われますが、それには前提があって、良い遺伝子を持った人が頑張れば成功するということのようですね。 悲しい現実のようですが、いくら頑張っても成果が出ないにも拘らず、頑張り続けなければならない環境にある場合、そのような事実を知っておくと少しは気が楽になるのではないでしょうか。 努力は大事だと思いますが、正しい方向にエネルギーを使えば成果が出るということだと私は理解しました。 以下は気になったポイントです。 ・本書は、人間の能力や性格など、心のはたらきと行動のあらゆる側面が遺伝子の影響を受けている、という事実を科学的に明らかにする(p7) ・一卵性(遺伝子的類似性100%)と二卵性(50%)では、遺伝の類似性が2倍も違うが環境は同じ。二卵性双生児と比較して一卵性双生児が似ていたら、それは遺伝の影響によるもの(p59) ・行動遺伝学の3原則とは、1)行動にはあまねく遺伝の影響あり、2)共有環境の影響がほとんど見られない、3)個人差の多くの部分が非共有環境から成り立っている(p77) ・年齢が上がるにつれて、遺伝の影響が大きくなってくる(p85) ・上海バイオチップは、知能や性格、才能に関する遺伝子検査ビジネスを始めた、日本遺伝子検査会社が代理店となってサービスを提供している(p113) ・環境こそが私たちを制約している(環境が人々を遺伝の制約から自由にする考え方とは正反対)私たちが自由を求め、自由を必要とし、自由を目指そうとするその根底のところに遺伝が大きくかかわっている(p127) ・遺伝の表れというのは、環境と無関係なのではなく、環境条件に応じてその発現が調整されている(p183) ・集団主義が高い国としては、韓国・台湾・中国・シンガポールがあり、個人主義が強いのは、アメリカ・イギリス・オーストラリア等、日本はその中間(p191) ・知能の個人差は、社会階層の高い方では遺伝の影響が大きく、低い方では共有環境の影響が大きい(p196) ・遺伝的に優れた人は、それぞれ自分に見合った仕事につくことで生き延びている(p203) ・ある人の遺伝的に優れた部分が、その部分で遺伝的に恵まれない人のその部分を助けているという関係がある(p205) ・生きるための「三欲」で、食欲・性欲は必ずあがるが、三つ目としては、学習欲(p209) ・チンパンジーと人間の最も大きな違いは、子供が大人の目の前で自分と同じことを真似しようとしても、教えるということを一切しない、つまり教育がない(p213) 2012年12月16日作成
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やっぱりか・・。といった感じ。 どうにもならないような、どうにかできるような。 環境によって遺伝子の影響の出方が変わる。
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遺伝は親から直接受け継いだ避けられない運命、ではないが、能力や収入に明らかに影響する、という本。とはいえ、遺伝で決まってるから諦めろ、というものではない。一方で、人間が(いまのところ)手を出せない遺伝という設計が、そういうことを前提としていない社会にどう影響していく可能性があるの...
遺伝は親から直接受け継いだ避けられない運命、ではないが、能力や収入に明らかに影響する、という本。とはいえ、遺伝で決まってるから諦めろ、というものではない。一方で、人間が(いまのところ)手を出せない遺伝という設計が、そういうことを前提としていない社会にどう影響していく可能性があるのか。実はかなり怖い本です。 タイトルがいかにも新書、という感じだけど、その言い訳をふくめ、読み方の説明が多い。それだけ誤解されそうな内容、ということなのだろう。難しく書いてはいないけど、たしかに読み解くのはなかなか大変。 「ユートピアのもつ光は、その光が強ければ強いほど、そこにできる影も暗く濃く深くなる可能性があります。」とある。遺伝のあれこれがわかるようになり、いろいろな手が打てるようになれば、闇も深くなる。僕はこの光、いらないけと思うけどなあ。
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人間の能力は、遺伝的要素が強いが、現実社会はそれに向き合っていない。違う能力を発揮できるはずなのに、無理な平等主義を押し付けてしまっている。そのため、環境や教育などに必要以上の重点と画一性がうまれている。 環境の効果はその人の素質(主に遺伝的要素)に左右うされ、同じ環境下でも全く...
人間の能力は、遺伝的要素が強いが、現実社会はそれに向き合っていない。違う能力を発揮できるはずなのに、無理な平等主義を押し付けてしまっている。そのため、環境や教育などに必要以上の重点と画一性がうまれている。 環境の効果はその人の素質(主に遺伝的要素)に左右うされ、同じ環境下でも全く違う能力/結果を人々は出すことが著者も携わる一卵性双生児の研究でわかっている。
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特に教育に関しては,遺伝的素質を軽視し,知能も「努力すれば伸びる」という根性論が幅を利かしてきた。それは真実から目を背けているだけだという,行動遺伝学からの主張。 個人が獲得する能力には,遺伝と環境の両方が影響する。これはあまりにも当然だ。だから本書の主張も極めてもっともであ...
特に教育に関しては,遺伝的素質を軽視し,知能も「努力すれば伸びる」という根性論が幅を利かしてきた。それは真実から目を背けているだけだという,行動遺伝学からの主張。 個人が獲得する能力には,遺伝と環境の両方が影響する。これはあまりにも当然だ。だから本書の主張も極めてもっともである(副題はミスリーディングだが)。ただ,遺伝的影響をあまり強調すると,それは優生学に近づいていってしまう。 そのためになるべく遺伝を軽視することが政治的に正しいとされてきたが,行動遺伝学によって,双子研究などを通して,遺伝がIQ等にどう影響するのか,明らかにされつつある。一昔前になされたそのような研究は,それをタブー視する勢力からデータ捏造疑惑をでっちあげられ,葬られてきたという(バート事件)。 人間の能力といっても何を是とするかはそのときの社会が決める暫定的なものであり,たまたまその能力に秀でていたからと言って絶対的に優れているというものでもない。この事実をいわば言い訳にしつつ,著者は知能が遺伝である程度決まるという不都合な真実を直視すべしとする。 遺伝子の不都合な真実に目をつぶることは,「できないのは努力が足りないせい」などという切り捨てにつながり,能力に乏しい人に過度のダメージを与える。遺伝的差異の存在を踏まえて教育制度等を設計する方が有意義。 まっとうな結論と思う。ただ,遺伝の影響を評価する手法がいまいち腑に落ちなかった。
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