挑戦する脳 の商品レビュー
脳科学者・茂木健一郎が、集英社の読書情報誌「青春と読書」に2010~2011年に連載したエッセイ20篇をまとめたものである。 茂木氏は、日本の社会及び日本人の間に閉塞感が高まっている中で(後半の数篇は東日本大震災後に書かれた)、「私は、ぜひ、人間の脳の持っている「挑戦」の素晴らし...
脳科学者・茂木健一郎が、集英社の読書情報誌「青春と読書」に2010~2011年に連載したエッセイ20篇をまとめたものである。 茂木氏は、日本の社会及び日本人の間に閉塞感が高まっている中で(後半の数篇は東日本大震災後に書かれた)、「私は、ぜひ、人間の脳の持っている「挑戦」の素晴らしい能力について、書いてみたいと思っていた。脳が、いかに、逆境に立ち向かうことから「創造性」を引き出すか、その神髄を書いてみたい。魂の危機(emergency)が、文化の創発(emergence)に通じるその道を、描き出してみたいと思っていた」と語っており、脳の持つ様々な可能性とそれを引き出すためのアイデアについて、自らの思いを綴っている。 エッセイ風でありながら、印象に残るセンテンスも少なくなく、以下はそのいくつかである。 「起源においては「偶然」であったにもかかわらず、いったんそのように存在してしまった以上、それが最初からの「必然」であったかのうように作用し始める。このように、「偶然」から「必然」への命がけの跳躍が介在すること、すなわち「偶有性」こそが人間存在の本質である」 「大人になった時点で、自分なりのプリンシプルを確立できている人は幸いである。そのような人は、何があるか容易にはわからないこの世界の中で、必ずや「根拠のない自信」を持って、「挑戦」し続けることができるだろう。「挑戦する脳」を支えるのは、鍛え上げられた「プリンシプル」である」 「「挑戦する脳」を笑いが支える。笑いの爆発力は、タブーに挑む勇気に比例する。・・・行き詰った今の日本の社会は、あえてタブーに突っ込んだ笑いを必要としてはいないか。笑いは、不安や恐怖で凍り付いた空気を解きほぐし、大らかな生命の時間を取り戻してくれる、大いなる恵みなのである」 「人生には、最初から決まった正解などない。なのに、あたかも正解があるかのような思い込みをして、自分自身がその狭い「フェアウェイ」を通ろうとするだけでなく、他人にも、同じ道を通ることを求め、強制する。それは「挑戦する」という脳の本質からかけ離れている」 「私たちが、ついには病み、老い、あるいは傷付き、死んでいくということ。そこには、ついには「自由」な「意志」など持ちようのない、私たちの生命の本来の在り様が投影されている。その重苦しさをいったん引き受けた上でなければ、生きることの軽やかなステップは戻ってこないだろう」 変化に対して保守的になった脳と心に「挑戦する勇気」を与えてくれる一冊である。 (2012年10月了)
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[ 内容 ] 日本を取り巻く困難はより深いものになっており、私たちは先の見えない日常を送っている。 だが、このようなときにこそ、人間の脳が持つ「挑戦」の素晴らしい能力が生きてくる。 脳はオープンエンドなシステムであり、試験に直面したときにこそ新たな力を発揮するのだ。 私たちの日常...
[ 内容 ] 日本を取り巻く困難はより深いものになっており、私たちは先の見えない日常を送っている。 だが、このようなときにこそ、人間の脳が持つ「挑戦」の素晴らしい能力が生きてくる。 脳はオープンエンドなシステムであり、試験に直面したときにこそ新たな力を発揮するのだ。 私たちの日常の中に「挑戦」は遍在している。 人間は誰もが、経験したことのない新たな世界と出合い、自分の存在を確立しようと奮闘して生きている。 困難さを力に変えて生きるために、私たちはどうすればよいのか? さまざまな事象をもとに論じる、著者渾身の書。 [ 目次 ] 暗闇の中を手探りで歩く 発見の文法 「挑戦」の普遍性 非典型的な脳 誰でも人とつながりたい 偶然を必然とする 盲目の天才ピアニスト 欠損は必ずしも欠損とならず 脳は転んでもただでは起きない 笑いが挑戦を支える 日本人の「挑戦する脳」 アンチからオルタナティヴへ 挑戦しない脳 死に臨む脳 臨死体験 自由と主体 「自由」の空気を作る方法 地震の後で できない リヴァイアサン [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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集英社「青春と読書」に20回にわたって連載されたものを加筆、修正してまとめたもの。 章ごとに扱う内容もさまざまで、何より章のタイトルが非常におもしろく、引き込まれる。 さすが連載なだけある。 書き方も非常にわかりやすく、すらすら引き込まれるように読めてしまう。 「化粧する脳」「欲...
集英社「青春と読書」に20回にわたって連載されたものを加筆、修正してまとめたもの。 章ごとに扱う内容もさまざまで、何より章のタイトルが非常におもしろく、引き込まれる。 さすが連載なだけある。 書き方も非常にわかりやすく、すらすら引き込まれるように読めてしまう。 「化粧する脳」「欲望する脳」も拝読したが、その中で1番易しい日本語で書いてあると思われる。 特に読んでほしいのが 12 アンチからオルタナティブへ 19 できない あとがきも面白い。
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ダイアログインザダーク 視覚による一覧 視覚というものの便利さと暴力性 全てを一気に見てしまう、見てしまっていると思い込んでいることでかえってこの世から巧みに隠されている豊穣なものたちに十分な注意を向けていない嫌いがある アインシュタインが相対性理論を生み出そうと...
ダイアログインザダーク 視覚による一覧 視覚というものの便利さと暴力性 全てを一気に見てしまう、見てしまっていると思い込んでいることでかえってこの世から巧みに隠されている豊穣なものたちに十分な注意を向けていない嫌いがある アインシュタインが相対性理論を生み出そうと苦闘したその日々はまさに暗闇の中を手探りで進むようなものだった 偶有性 私たちが根底において偶有性な存在であるという点に私たちの脳にとっての挑戦することの実質がある 典形と非典形 非典形な脳の持ち主の中に潜む素晴らしい原石 私が一つの言葉を発する するとキムの神経細胞ネットワークの中に次から次へと連想の渦が生まれる。その速度と広がりが尋常ていはないので常人にはついていけない 偶然と必然 視覚にたよることが自由な創造性の妨げになっている可能性がある 自分の中に高いレベルの安全地帯を構築できている人は根拠のない自信を持つことができるだろう 転んでもただでは起きないのが人間の脳である 挑戦する脳は悪い環境におかれたことで諦めはしない むしろ独創性につながることも多い 挑戦する脳を笑いが支える 何が起こるか分らないという偶有性の状況 偶有性は生命そのものの本質であり環境との相互作用において私たちの脳を育む大切な要素である その大切な偶有性から目をそらしそこから逃走してしまうことで日本人の脳は成長の機会を奪われている インターネットは偶有性そのものである 予想できるものと予想できないものが入り混じっている状況が常態化している 偶有性の時代に求められているのはある決まった知識を身に付けることではない むしろ大量の情報に接し取捨選択し自らの行動を決定していく能力である異なる文化的バックグラウンドの人たちと行き交いコミュニケーションしていく能力である
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
散文形式の文章を読むのは苦手である。構造のない論理を主張として捉えるのが得意でない。一方で、一見して散漫とした文章のなかで、螺旋状に議論を深めて行くことで、近づける領域もあるらしい。 本書は後者で、「挑戦する脳」という主題から想像される(私の場合は)、体系だったサイエンスの本というよりは、挑戦するという思考を主たる手段とした、哲学の本に近かった。 アンチからオルタナティブへ。は非常に胸に刺さった。また、リヴァイアサンとしての国家、社会集団の定義も新しい。 全体を通してあとがきが一番面白い。 やはりクオリアや偶有性と幻想としての自由意志の話、とかになると、格段に筆致が瑞々しい。この本は実践的哲学書だが、茂木さん自身はやはり科学者だなと思う。
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[ ]安全基地の重要性 ボウルビイの研究 根拠のない自信を持って不確実性の時代に挑むべき 安全基地の水準が高い人ほど挑戦ができる これは勝間和代のマルコムグラットウェルの訳本 マタイ効果 豊かな者はより豊かに貧しい者は貧しく。ようは豊かになっていい権利がある。挑戦する権利がある。...
[ ]安全基地の重要性 ボウルビイの研究 根拠のない自信を持って不確実性の時代に挑むべき 安全基地の水準が高い人ほど挑戦ができる これは勝間和代のマルコムグラットウェルの訳本 マタイ効果 豊かな者はより豊かに貧しい者は貧しく。ようは豊かになっていい権利がある。挑戦する権利がある。 これが影響しているんじゃああるまいか。 メタ認知 自分自身を客観的に把握すること。 これは心の安定に資する。 嫌な気持ちの日は何が原因だったか、客観的に分析することは効果的。 アンチからオルタナティブへ アンチは駄目だと思うことに正面から向き合うこと。 時代はアンチの時代じゃない。揺るぎない巨悪や権力が跋扈する時代じゃない。 これが俺のスタイルや!と誰かを批判するでもなく、結果を言い訳するでもなく実践するのがオルタナティブ。 ウィキリークスは現代のリヴァイアサン。 社会契約論の次のモデル。
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居心地がよく、安定したつまらない仕事をしている中で感じていた 「何か違う、このままでは腐っていきそう」 という気持ちは「挑戦していない」という状況に自分の脳が危険信号を出していたのだと思った。 人間とは挑戦し続けることが存在理由である。 いま日本の産業が衰退していく一つの理由...
居心地がよく、安定したつまらない仕事をしている中で感じていた 「何か違う、このままでは腐っていきそう」 という気持ちは「挑戦していない」という状況に自分の脳が危険信号を出していたのだと思った。 人間とは挑戦し続けることが存在理由である。 いま日本の産業が衰退していく一つの理由として 日本人が偶有性という不確実な状況の中に飛び込まないことがあげられる。 加えてインターネットの登場で既存の組織や肩書、今まで成功と考えられていたことの価値が薄まってきたことにより、日本人の「挑戦しない」ということが他の国とくらべて如実に出てきているのだ。 今までの価値観が崩れていくのがこれからの時代。 そういった時代で生きていくには、自分が満足する人生を送るには、偶有性の海に自らを投じて、色々な人と出会い、良いも悪いも経験を積み、前に進まなければならない。 今、抱いていたモヤモヤが書いてあった一冊。 ワード:リヴァイアサン、偶有性、ウィキリークス、根拠のない自信、安全基地、オルタナティブな人(否定だけでなく体現する人)
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生まれた時の人間の脳は絶えず挑戦し続けている。それが、成長するに従って、挑戦しない方向に躾けられ、やがて社会のルールに黙って従うようになる。昔はそれが合理的だったが、東日本大震災を始め、想定し得ないような事態が起きると、今の日本人は身動きが取れなくなる。本来、脳は既成概念に囚われ...
生まれた時の人間の脳は絶えず挑戦し続けている。それが、成長するに従って、挑戦しない方向に躾けられ、やがて社会のルールに黙って従うようになる。昔はそれが合理的だったが、東日本大震災を始め、想定し得ないような事態が起きると、今の日本人は身動きが取れなくなる。本来、脳は既成概念に囚われず、未知のもの、新しいものに挑戦する物であるということが分かった。これからは何が正しいのか分からない時代。前提が大きく覆る可能性が高いのだから、少なくとも若者に対しては予断を持って語るのはやめようと思う。
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メモ ソクラテス 無知の知 どんなに智恵のあるものでも知らないことの方が多い、無知を自覚する事が、最高の知性のあり方 人間は変わることに最大の喜びを感じる。変わる事は不安で時に恐ろしい事。自分が更新される事に対する不安は乗り越えなければならない障壁。 脳は逆境に立ち向かうこ...
メモ ソクラテス 無知の知 どんなに智恵のあるものでも知らないことの方が多い、無知を自覚する事が、最高の知性のあり方 人間は変わることに最大の喜びを感じる。変わる事は不安で時に恐ろしい事。自分が更新される事に対する不安は乗り越えなければならない障壁。 脳は逆境に立ち向かうことから、創造性を引き出す。魂の危機が文化の創発に通じる。 魂の危機が起きた時、脳が機能停止しないための安全弁として、笑いがある。 視覚に頼ってしまいがち。見えないものを探るという態度が徹底しない。 今まで探った概念空間の五センチ横に重大なヒントがあるかも。 Derek paraviti 偶有性忌避症候群 contingency 日本の風土病、人々の思考能力の低下 正解とされている道から外れず、他人にも同じ道を通ることを求める。挑戦することの真逆。本来、何が起こるか分からない偶有性に適応し、そこから学ぶのが脳の最も優れた能力 アインシュタイン 感動するのを忘れた人は、生きていないのと同じである。
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人は幾つになっても、どんな場所でも学ぶことができる、と聞いたのはいつだったのか、また誰の言葉だったのか。 それが人間として必然のことなのだということが、この本を読んで分かりました。 考えてみれば私達の日々の暮らしの中に、挑戦というものは溢れている。 知らない道を通って通勤するの...
人は幾つになっても、どんな場所でも学ぶことができる、と聞いたのはいつだったのか、また誰の言葉だったのか。 それが人間として必然のことなのだということが、この本を読んで分かりました。 考えてみれば私達の日々の暮らしの中に、挑戦というものは溢れている。 知らない道を通って通勤するのも、新しいお店にランチで入ってみるのも、言ってみれば挑戦。 しかし日々の中に「挑戦」が多く存在し、日々挑戦し続けているはずなのにも関わらず、時に不安になり、怖くなり、立ち止まってしまうことがある。 それはなぜか。文中で人間の脳は「確実なことと不確実なことのバランスをとろうとする。自分の中に確実なことが蓄積されるほど、その分不確実なことを受け入れることができる」とありましたが、だとするとその「確実なこと」が足りないから立ち止まってしまうことになる。 ここで言う蓄積されるべき「確実なこと」が「自信」なのだとすると、いかに自分に自信を持つことが出来るかが大切なのだと思います。経験に培われた「自信」に加え、「根拠のない自信」もより必要になってくる。本書でも「根拠のない自信」を持つことができるかどうかがこれからの時代、重要になるといっています。自信をもって不確実性に向き合えと。 大切なのは不確実性に向き合い続けること。一方で、自分の中の「標準」に当てはめて、周囲のその姿勢をはじかないこと。受け入れること。 「難しさの本質は、未来が容易には見渡せないという事実の中にある」けれども、 そもそも脳は決して完成せず、その働きは挑戦することだとするならば、挑戦することは不安で恐ろしいことであるならば、自分が不安で辛い思いを感じている時こそ、本当に生きているといえるのではないでしょうか。
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