「本当のこと」を伝えない日本の新聞 の商品レビュー
東日本大震災から1年半、導入部分の”青い目からみた3.11”を読むと、改めて当時の記憶が蘇った。 そこから筆者は、放射能の拡散状況予測システムであるSPEED1、西松建設事件などを例証に挙げて、日本大手新聞社を中心とした閉鎖的な報道姿勢を痛烈に批判している。記者クラブという制度...
東日本大震災から1年半、導入部分の”青い目からみた3.11”を読むと、改めて当時の記憶が蘇った。 そこから筆者は、放射能の拡散状況予測システムであるSPEED1、西松建設事件などを例証に挙げて、日本大手新聞社を中心とした閉鎖的な報道姿勢を痛烈に批判している。記者クラブという制度の奇怪さ、検察や警察、官僚や大企業との癒着の実態を論じている。 ジャーナリズムに対する考え方を改めさせる本である。ここまでの内容を出版させる新書というのも、なかなか包容力があると感じた。内容も読みやすく、売れる新書になるだろう。この書を、新聞の書評欄で扱うだけの包容力が、各新聞社にも欲しいところだ。内容が内容だけに、当然反論もあるだろうに。
Posted by
学生の時、マスコミを目指した。旧帝大、早稲田、慶応。芸能人の子供、地元の代議士の推薦といったコネがないと無理、といわれていた。 元々、閉鎖的な入り口から入った人達のとじられたエリート層。能力やマインドは、二の次だから、すべてコピペで記事が出来上がる。 烏賀陽さんのいうが如く、自分...
学生の時、マスコミを目指した。旧帝大、早稲田、慶応。芸能人の子供、地元の代議士の推薦といったコネがないと無理、といわれていた。 元々、閉鎖的な入り口から入った人達のとじられたエリート層。能力やマインドは、二の次だから、すべてコピペで記事が出来上がる。 烏賀陽さんのいうが如く、自分で考えない、まさに脳死状態。 ただ、大手新聞社、TV局に疑問を持っている人も多くいる。 その人達に期待!
Posted by
「記者クラブ」のいびつさから始まる、青い目の方による日本の新聞への提言。 丁寧な切り口とまとめ方で、非常に「読ませる」内容でした。 「世界でも稀に見るこの組織は、英語圏では「kisha club」「kisha kurabu」と呼ばれる。 あまりにも特異すぎて、翻訳語が存在...
「記者クラブ」のいびつさから始まる、青い目の方による日本の新聞への提言。 丁寧な切り口とまとめ方で、非常に「読ませる」内容でした。 「世界でも稀に見るこの組織は、英語圏では「kisha club」「kisha kurabu」と呼ばれる。 あまりにも特異すぎて、翻訳語が存在しないのだ。」 この方の記事が読めるのであれば定期購読をしてもいいかな、とまで感じるくらいには。 もっとも、ニューヨーク・タイムズで書かれている間は、その機会はないでしょうけど。 「ジャーナリストとは、基本的に権力寄りであってはならない。 (中略)権力と市民の間に立ちながら当局を監視し、不正を糺していく。」 この基本理念こそが、メディアが第四の権力と呼ばれる所以と思いますが、、 果たしてこの原則(プリンシプル)を貫いているメディアは、日本にどれだけいるのでしょうか。 例え広告主であろうと、自身の理念と異なるのであれば喰らいつく、そんな「反骨心」が、 ジャーナリストには必要とされると、そして大事なのは読者だと、そう述べられています。 「新聞にとって最も重要な財産は読者からの信頼だ」 そうそう、個人的には何故あんなに持て囃されるのか疑問を感じていた日経新聞ですが、 経済界の太鼓持ちとして見ておけばいいとは得心です、見出しの集約って位置づけですかね。 「自らが疑問を抱き、問題を掘り起こすことはなく、何かしらの「お墨付き」が出たところで報じる。」 自分の言葉で考えられず、表現もできない、、サラリーマン記者である以上は仕方ないのでしょうか。 専門職の矜持ではなく、ルーチンで回すだけの記事に魅力が無くなっていったのも、必至だったのでしょう。 「オンリーワンの記事を読みたいからこそ、読者はニューヨーク・タイムズを手に取ってくれる」 この要件に応えられない日本の既存メディアの惨憺ぶりは、言をあらためる必要もなく。 「記者やカメラマンの手を借りることなく、自らがニュースの発信者としてチャンネルを開いた」 そのチャンネルの一つとして、ネットがあり、ブログがあり、SNSが定着し始めています。 一朝一夕に変わるわけではないでしょうが、新聞のビジネスモデル変更が迫られてるとは納得です。 「記者クラブメディアの本当の被害者は、私たち海外メディアの記者ではない。 (中略)一番の被害者は、日本の民主主義そのものだ。」 読み手の信頼に根差した発信者の強みは、最近とみに実感していますが、 人々が、主体的に考え、判断し、行動していくのが、民主主義社会の理念の一つであり、 それを実現していくために、必要な知識や情報を提供する社会的基盤であるのが、 「ジャーナリズム」であり、その実行者である「ジャーナリスト」なのだと、感じています。 「横並びの偏った記事が紙面を埋めることになるのだが、 それでは読者に有益な情報を伝えられないばかりか、 誤った認識を与えてしまう危険性すらある」 故にこそ、恣意的に統制された、フィルタリングされた情報など、害悪でしかないかと。 メディアの人々の導いていただく必要などない、人が主体的に歩んでいくための一助となればよい、 「情報サービス」とはその辺りの原則を踏まえるべきと思いますが、さて。 なんて、至極まっとうなことを考えさせてくれるヒントが、根拠と共に示されていて、 一気に読めてしまいました、ただ一点だけ奇異に映ったのは、、 何故か、朝日新聞が繰り返している捏造問題には一言も触れようとしていない、点でしょうか。 他の大手新聞は大体、事例を挙げながら指摘しているにもかかわらず、です。 ん、両社が提携していることもあってか「身内」扱いなのでしょうか、 その点についてジャーナリズムの精神が発揮されていないのは、非常に残念ですね。 ここまで丁寧な取材をされているのであれば、「アサヒる朝日新聞」を知らないはずはないと思いますが、、 一度、この点について完オフで結構ですので、見解をお伺いしてみたいですね、なんて。 個人的にはそんな奇異な点が気になったので、☆-1にしています。
Posted by
以前から日本には、責任をもって書かれた記事がないと思っていた。アメリカにいる時に新聞を見て印象的に思ったことは、記事の一つ一つに書いた記者の名前が付してあることだった。日本の新聞には未だに原稿を書いた記者の名前は載っていないし、内容も大本営(政府や東電)が発表したものをよこながし...
以前から日本には、責任をもって書かれた記事がないと思っていた。アメリカにいる時に新聞を見て印象的に思ったことは、記事の一つ一つに書いた記者の名前が付してあることだった。日本の新聞には未だに原稿を書いた記者の名前は載っていないし、内容も大本営(政府や東電)が発表したものをよこながしするだけだ。だから、うちの新聞も3.11以降、新聞の中でも少しまともな東京新聞になった!
Posted by
筆者は、日本のマスコミのダメな原因を大きく2つ指摘しているようだ。一つは記者クラブ。これに関しては、上杉隆氏が噛みついている記事などから、確かにこんなんじゃダメだなと思っていた。もう一つは、記者がサラリーマンであること。これを指摘しているのはこの本で初めて読んだが、やはりか、と...
筆者は、日本のマスコミのダメな原因を大きく2つ指摘しているようだ。一つは記者クラブ。これに関しては、上杉隆氏が噛みついている記事などから、確かにこんなんじゃダメだなと思っていた。もう一つは、記者がサラリーマンであること。これを指摘しているのはこの本で初めて読んだが、やはりか、と言う感覚をもった。 サラリーマン根性が日本では大勢を占めていて、それが様々な分野で何か物事の本質的な進むべき道を歪めているような気がする、と言うのは言い過ぎか。
Posted by
メディア・リテラシーという言葉がある。ご存じの方も多いはずだ。しかしながら、この言葉をいつどこで、どの媒体から、どのような定義付けと重要性でもって聞いたのか、そこまで覚えているだろうか。私は高校の「情報」の科目の時間であったと思う。 これはインターネットの普及により広まった概念...
メディア・リテラシーという言葉がある。ご存じの方も多いはずだ。しかしながら、この言葉をいつどこで、どの媒体から、どのような定義付けと重要性でもって聞いたのか、そこまで覚えているだろうか。私は高校の「情報」の科目の時間であったと思う。 これはインターネットの普及により広まった概念だと思われる。玉石混合の情報の海から、「正しい」情報を抜き出す力、僕は当初そのような理解をした。まったくもって論理的だ。このような理解の前提には、ネットではないメディア、裏返すと新聞などは裏付けが取れた「信頼に足る」媒体であるという暗黙の了解がある。実際、僕が携わっている英語ディベートにおいても、証拠資料として提出するものとして、リソースは可能な限り新聞社が望ましいと言われていた。 しかしながら、この「メディア・リテラシー」、実際にこの能力が高まってくると、今度は既存の(オーセンティックな?)メディアをも精査の目が襲う。事実、新聞やテレビのクロス・オーナーシップ(親会社が同じ)や、宅配制度の保護などがここ数年で批判にさらされてきた。この書は、そういった既存のメディアへの糾弾を、もう一歩先に進めた書だ。 切り口は、海外メディアが苦渋を舐め続けてきた「記者クラブ」の存在から始まる。僕自身が目新しいと思ったのは、この制度保存のせいで記者の競争原理(コンペティション)が働かず、質の低いマスコミの言質が温存されるという指摘だ。こうやって甘やかされてきた記者の取材能力は芳しくなく、海外メディア(この書で想定されているのはアメリカ)に移動した場合には、全くもって雇ってもらえないだろうという。 「情報」がいかに主観で彩られているかを知るためにも、必読の書。
Posted by
前半は3.11の現状を作者がどんな視点で取材したかについてふれている。震災の話は直視するのがつらい。自分にふりかかっていないから勇気や気力がいる。つらいのは皆同じ、だからこそこういった記者がいてくれることに感謝しなくては。後半はタイトルのごとく日本の記者への駄目だしばかり。言われ...
前半は3.11の現状を作者がどんな視点で取材したかについてふれている。震災の話は直視するのがつらい。自分にふりかかっていないから勇気や気力がいる。つらいのは皆同じ、だからこそこういった記者がいてくれることに感謝しなくては。後半はタイトルのごとく日本の記者への駄目だしばかり。言われっぱなしじゃなくて、奮起してほしいものです。
Posted by
ニューヨークタイムズ東京支局長の筆者が、日本の新聞には、記者とその組織に根本的な問題点があることを指摘している。日本大手の新聞には、これからも革新的な変化は期待できない、地方新聞や、他の媒体による記事がこれから重要な役割を果たすだろうと、筆者は語る。新聞をはじめマスコミからの情報...
ニューヨークタイムズ東京支局長の筆者が、日本の新聞には、記者とその組織に根本的な問題点があることを指摘している。日本大手の新聞には、これからも革新的な変化は期待できない、地方新聞や、他の媒体による記事がこれから重要な役割を果たすだろうと、筆者は語る。新聞をはじめマスコミからの情報を受け取るさいに、情報を鵜呑みにせず、情報の背景などを考える必要だと感じた。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
確かに日本のメディアの閉鎖性や速報性を求める日本の独自性に関しての意見はもっともでただすべき問題であると思います。しかし、記者クラブの何が悪いのかという「核」を批判している訳でなく、重箱の隅をつついているような感じがしてならない訳で、私は記者クラブが悪いわけではないと思う。もっと問題のコアとなっている部分は他にあるはずです。 加えて、キャリアアップの仕方についても、被取材者との距離感についてもいずれの国で異なっていてもどれが正解ということはないと思う。 海外メディアはすごいんですっていいたいんでしょとまでは言わなくても、海外メディア記者の完全な立場からの目線でしかない(ニュートラルじゃない)見解だなと思いました。
Posted by
日本取材歴12年のニューヨーク・タイムズ東京支局長が、日本のメディアの現状に警鐘を鳴らす書。特に日本に固有の「記者クラブ」の存在を舌鋒鋭く批判する。 その弊害は東日本大震災と福島第一原発事故でも露呈した。原子炉のメルトダウンの可能性に気付いていたにも関わらず当局の発表通りに報道、...
日本取材歴12年のニューヨーク・タイムズ東京支局長が、日本のメディアの現状に警鐘を鳴らす書。特に日本に固有の「記者クラブ」の存在を舌鋒鋭く批判する。 その弊害は東日本大震災と福島第一原発事故でも露呈した。原子炉のメルトダウンの可能性に気付いていたにも関わらず当局の発表通りに報道、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)のデータ隠蔽を追及できず結果的に避難住民を生命の危機にさらしたこと―。 原発事故直後、南相馬市では日本の記者たちはすべて逃げ出し、著者が取材に入ると、桜井市長は「日本のジャーナリズムは全然駄目ですよ! 彼らはみんな逃げてしまった!」と激しく憤ったという。一人くらい気骨のある記者はいなかったのか。 メディアあげての「小沢一郎バッシング」も米国人ジャーナリストから見るとかなり奇異に映るようだ。小沢氏の公設秘書が逮捕され、洪水のような報道が始まったのは政権交代の前夜である。もしオバマ大統領が誕生する直前に陣営が当局によって強制捜査されれば、「ジャーナリストだけでなく国民も『おかしい』と怒るはずだ」と著者。同感だ。 米国のジャーナリズムも問題点は多いし、著者もいくつか例を挙げて指摘しているが、少なくとも日本よりは開放的で健全だ。 「私が12年間、日本で取材活動をするなかで感じたことは、権力を監視する立場にあるはずの新聞記者たちが、むしろ権力側と似た感覚をもっているということだ」 こんなエピソードも紹介される。元防衛大臣の議員のバースデイ・パーティーを記者たちが中心となって企画、総勢50人が参加し、議員に花束とぬいぐるみを贈呈した。 「もしこんな誕生会を企画してプレゼントまで贈っていたことがわかれば、ニューヨーク・タイムズの記者なら即刻クビだろう」 たしかに、これがまともな感覚だろう。
Posted by