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の商品レビュー

3.7

237件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2023/04/30

銃を拾った青年が銃の魅力に取り憑かれ破滅していく姿を描く。 人の悪の部分を引き出され支配されていく内面の描写が秀逸だった。読んでいて息苦しくなるほど。 特に刑事が青年を訪ねジリジリと追い詰める場面は短いが緊張感があった。1番ドキドキしたかも。

Posted byブクログ

2023/02/23

中村文則のデビュー作にして、新潮新人賞を受賞した長編小説。 作者の作品は初めて読んだが、非常に面白かった。繊細な情景描写と生々しい心理描写、このふたつが高いレベルで成立しているところに作者の突出したセンスが表れている。 都内の大学生、西川はある雨の夜に、倒れていた死体の隣に落ち...

中村文則のデビュー作にして、新潮新人賞を受賞した長編小説。 作者の作品は初めて読んだが、非常に面白かった。繊細な情景描写と生々しい心理描写、このふたつが高いレベルで成立しているところに作者の突出したセンスが表れている。 都内の大学生、西川はある雨の夜に、倒れていた死体の隣に落ちていた一丁の拳銃を持ち去る。西川はその拳銃に心酔し、隠し持ちながらも平凡な日常を送る。一方で、西川はそう遠くない未来に、自分がその拳銃を使って人を殺すと確信していた。その確信はやがて実行に移されていくことになり、、、 というのがあらすじ。 まずこの小説を読んで思い出したのは、ゴッフマンの「もし物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない」という言葉だった。 これは「ドラマツルギー」と呼ばれる概念を端的に表した言葉だが、「拳銃」というキーアイテムと、予め決定された運命に悲劇的に巻き込まれていく主人公という構図からそう感じた。 作者がこれを意識していないということはあり得ないと思うが、とはいえこれがメインの命題ではないと感じた。 本作における「拳銃」は人間の熱狂のシンボライズであり、その対象の一例に過ぎない。人によってそれは宗教であり、仕事、家族、酒、ギャンブルでありえる。たまたま西川の「熱狂」が「拳銃」に向けられただけである。 その熱狂によって、人はかくも簡単に狂い、すべてを失くしてしまう。これが本作の命題ではないか。 西川は退廃的で情緒の乏しい人間ではあるが、「拳銃」を手にするまでは決して破滅的な人間ではなかった。それが「拳銃」への熱と偏愛を抑えられなくなった瞬間から破滅へとトップスピードで向かってしまう。 この構成に作者の言いたいことがあると思った。 また彼は「拳銃」を手に入れたことで、「能動的になり、機嫌が良くなった」と自己評価しているが、周りからそのようなことを言われている描写がない。さらに小説は西川が「拳銃」を手に入れたところから始まるので、読者はこの西川の自己評価を客観的に判断することができない。 これは西川が隣人の女を撃てずに拳銃を捨てることを決意した後の描写も同様である。すべては西川の自己評価であり、彼の中で完結している。 このあたりの敢えて客観性をもたせない表現も、作者のセンスと言って良い。 ストーリーの展開として面白いのはラストシーンだろう。あれだけ緻密な準備をして臨んだ場面では女を撃てなかったのに、電車でたまたま横に座った粗雑な男を殺すために撃ってしまうあたりにドラマツルギーを感じる。 しかも「撃つとしたら女だろう」という西川の確信は当たらなかった。つまり撃ったのは西川ではなくて「拳銃」の意志なのだ。 このラストシーンがなければ、「まあまあおもしろかった」程度だった。だがこれによって自分の中でこの小説が傑作に変わった。 同収録の『火』もよかった。 こうした偏執したエネルギアな小説を読むのは楽しい。 作者の他の作品も読んでみたい。

Posted byブクログ

2023/02/21

細かい緊張、動揺の描写 今、銃が自分のポケットにあるように思えるくらい 息を飲むシーンの数々 特に警察二人とのやり取り 人間の弱さと儚い優しさを まざまざと見せつけられた 犯罪者がたまに笑ってるように見えるのも 何か弱さの現れなのかもしれないと思えた 誰しも「銃」を持ってる...

細かい緊張、動揺の描写 今、銃が自分のポケットにあるように思えるくらい 息を飲むシーンの数々 特に警察二人とのやり取り 人間の弱さと儚い優しさを まざまざと見せつけられた 犯罪者がたまに笑ってるように見えるのも 何か弱さの現れなのかもしれないと思えた 誰しも「銃」を持ってる気もする 勇気を奮い立たせる時、力みなぎるもの 私にとってはなんだろうか とても考えさせられる

Posted byブクログ

2023/02/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まず、文体がとても好きでした。 拾った、あるいは盗んだ銃を中心にした日常が淡々と語られているが、主人公の心情がリアルに感じられ、先へ先へと読ませる筆力が凄いと思った。 どことなく現代版「人間失格」を読んでいるような気分になった。 途中は銃を撃つのをやめてほしい、と思ったが、最後のシーンで弾を籠めるのに手こずる主人公に対しては、早く引き金を引いてほしいと思ってしまった。

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2023/01/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

長編の「銃」と、短編の「火」が収録されていますが、どっちも人間の狂気的感情が描かれています。 主人公と僕は育った環境も違うし、理解不能な感情がたくさん出てくるのですが、妙にリアルに描かれているからか、自然に心に留まります。不思議です。

Posted byブクログ

2023/01/08

青年期のどうにも制御できない衝動と分別のつかない感情を余すことなく表現しきっています。気が狂いそうになったに違いない、恐ろしいほどの想像力は半端ないです。無骨で無機質なタイトルバックがラストに銃声とともにきまる映像が浮かびます。最後の最後、突然エンタメに昇華します! 中村文則さん...

青年期のどうにも制御できない衝動と分別のつかない感情を余すことなく表現しきっています。気が狂いそうになったに違いない、恐ろしいほどの想像力は半端ないです。無骨で無機質なタイトルバックがラストに銃声とともにきまる映像が浮かびます。最後の最後、突然エンタメに昇華します! 中村文則さんの作家性が宿命づけられたと思わせる作品でした。

Posted byブクログ

2023/01/05

自分の考えを客観的に話す主人公で少し村上春樹っぽさを感じた。 また、性描写も艶かしくはなく淡々と書かれていてエロさを感じさせないところや、執拗に心の動きを客観視して書いているところもとてもよかった。 動揺している場面も「そういう時あるよね」というあるあるを見ているようで面白かった...

自分の考えを客観的に話す主人公で少し村上春樹っぽさを感じた。 また、性描写も艶かしくはなく淡々と書かれていてエロさを感じさせないところや、執拗に心の動きを客観視して書いているところもとてもよかった。 動揺している場面も「そういう時あるよね」というあるあるを見ているようで面白かった。心の動きを書くのがとても上手い。

Posted byブクログ

2022/12/19

感想 外部から突然もたらされる自信。偽りの自信は武器にならず、コントロールを失う。道具を使いこなせず振り回される。倫理観は暴走を止められない。

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2022/11/12

なんだかずっと悪い夢を見ていたような、読後感。 読んでいる間、拳銃を拾った主人公の脳内から出られず、息苦しかった。 ラスト、緊張感がピークに達したと思ったら、ポンッと急に彼の脳内から外に出され、ハッと我にかえって一気に味わった解放感と、やっと吸えた新鮮な空気。 読了の瞬間、...

なんだかずっと悪い夢を見ていたような、読後感。 読んでいる間、拳銃を拾った主人公の脳内から出られず、息苦しかった。 ラスト、緊張感がピークに達したと思ったら、ポンッと急に彼の脳内から外に出され、ハッと我にかえって一気に味わった解放感と、やっと吸えた新鮮な空気。 読了の瞬間、ああ夢で良かったと、ホッと息をついた。 もう一本収録されている短編『火』については、不快な内容ではあるのだが、読んでいて不思議と不快ではなかった。 巻末の、著者による「文庫解説にかえてーー『銃』、『火』について」にある、〈押し付けられるような明るさや、大多数が喜びそうに計算されたものが多い中、文学においてこういうものも必要なんじゃないか〉ということを、私も感じたからかもしれない。

Posted byブクログ

2022/10/31

前半は自分だけが分かる絶対的な自信を身につけたときのワクワク感に共感できた。実物の銃じゃなくても、何かいざとなれば他者を圧倒できるものを得ることが人生を生きるコツかもしれない。 後半は道具によって人生が操作される感覚に包まれたホラー感がある。著者のデビュー作であるが、このときか...

前半は自分だけが分かる絶対的な自信を身につけたときのワクワク感に共感できた。実物の銃じゃなくても、何かいざとなれば他者を圧倒できるものを得ることが人生を生きるコツかもしれない。 後半は道具によって人生が操作される感覚に包まれたホラー感がある。著者のデビュー作であるが、このときから自我や自由意識への懐疑的な視点があったんだな。 意図的にサイコパスとして主人公が描かれており、一人称で些細なことまでも淡々と記述されていくのが地の文の特徴だが、彼の感情は記述されたことだけしかないのかもと思った。基本文章外を想像する余地がない感情を基本とするからこそ、銃への異常な依存や愛情がたっぷりと色を帯びているように感じた。

Posted byブクログ