未踏峰 の商品レビュー
派遣社員でその日暮らしの裕也は、パウロこと蒔本がやる北八ヶ岳の山小屋の主人と出会うことで人生が助けられる。 山小屋にはアスペルガー症候群の戸村サヤカと知的障害をかかえる勝田慎二がいた。 4人でヒマラヤの6000m級の未踏峰を登攀する計画を立てるが、パウロさんは山小屋の火事で不...
派遣社員でその日暮らしの裕也は、パウロこと蒔本がやる北八ヶ岳の山小屋の主人と出会うことで人生が助けられる。 山小屋にはアスペルガー症候群の戸村サヤカと知的障害をかかえる勝田慎二がいた。 4人でヒマラヤの6000m級の未踏峰を登攀する計画を立てるが、パウロさんは山小屋の火事で不慮の死をとげる。 3人で挑むヒマラヤ未踏峰への挑戦!ドキドキしながら読んだ。面白かった
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とても前向きな気持ちになれる話だ。 一歩一歩前に進む、それは本当に大事です。 そこにステキな仲間がいれば尚のことです。 そういう影響を人に与えられる人になりたいなぁ。
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人生に迷いながらも辿り着いた頂はさぞ圧巻だったであろう。そこへ連なる縁、めぐり合いの偶然、そしてそこから始まる自己肯定の浮揚。たった三年で登れるか? という疑問はある (というかまず不可能では?) ものの、世間の所為にして逃げるなというメッセージ性は溢れんばかり。
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登場人物の設定がステレオタイプな感じがしたが、冒険小説としても、復活と再生の物語としても面白かった。面白かったので、雪山のデビューを、作中で登場した八ヶ岳の雨池にした。
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笹本稜平氏の山岳小説。登るのはヒマラヤの6000メートル級だが未踏峰の山。しかし登る人は、プロの登山家ではなく、むしろ素人に近い三人で、コミュニケーション障害や知的障害を抱える。そんな三人が登攀によって、人生の喜びを感じるという、やや精神論的な話である。
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「笹本稜平」の山岳長篇小説『未踏峰』を読みました。 『還るべき場所』、『春を背負って』に続き、「笹本稜平」作品です。 -----story------------- 圧巻の山岳シーン、骨太の人間ドラマ。 魂をすすぐ山岳巨編! 「魂の〝青さ〟をくすませるすべてのものへ叩きつけた...
「笹本稜平」の山岳長篇小説『未踏峰』を読みました。 『還るべき場所』、『春を背負って』に続き、「笹本稜平」作品です。 -----story------------- 圧巻の山岳シーン、骨太の人間ドラマ。 魂をすすぐ山岳巨編! 「魂の〝青さ〟をくすませるすべてのものへ叩きつけた 渾身の挑戦状」 これを読め! ときわ書房本店「宇田川拓也」、感動に吼える! 遺骨の入ったケースを胸に、それぞれに事情を抱える「橘裕也」と「戸村サヤカ」、「勝田慎二」の三人は、ヒマラヤ未踏峰に挑んでいた。 彼らをこの挑戦に導いたのは登山家として世界に名を馳せ、その後北八ヶ岳の山小屋主人になった〈パウロさん〉だった。 ビンティ・チュリ=祈りの峰と名づけた無垢の頂に、はたして彼らは何を見るのか? 圧巻の高所世界に人間の再生を描く、著者渾身の長編山岳小説。 ----------------------- 北八ヶ岳の天池、その畔にある山小屋「ビンティ・ヒュッテ」… オーナーは「パウロさん」という愛称で呼ばれる、五十代半ばの元登山家「蒔本康平」だ、、、 顔の下半分をごま塩の髭で覆い、白髪まじりの長髪をバンダナでまとめていて、力強いが鋭さよりも和らいだ光を感じさせる眼差しが印象的な、自分の過去を語りたがらない山男―― そんな「パウロさん」のもとの、ゴールデンウイークから十月下旬までのアルバイトとして三人の若者が集まってくる。 体格が良く力持ちで絵の才能に恵まれた27歳の「勝田慎二」、一流店でも充分通用するほどの天才的料理の腕前を誇る26歳の「戸村サヤカ」、そして、元システムエンジニアでコンピューターに詳しい29歳の「橘裕也」… だが、この三人には、現代社会に溶け込むことが困難な問題を抱えていた、、、 「慎二」には精神年齢が小学校高学年程度という知的障害が、「サヤカ」には他人の感情を読み取り理解する能力に問題があるアスペルガー症候群が、「裕也」には劣悪な環境下での激務から薬物依存となって罪を犯してしまった前科が―― つまり、三人は、それぞれの問題によって世間からドロップアウトし、辛い人生を経験してきた若者たちだった。 そんな三人が働き出してしばらく経ったある日のこと、「パウロさん」と三人の間に途方もない話が飛び出す… それは、ヒマラヤ未踏峰登頂計画、中国とネパールの国境線上に連なるカンティ・ヒマール山域の一角にある、標高6,720メートルの無名峰、、、 そこに「パウロさん」をリーダーにみんなで初登頂し、名前をつけようではないか、というのだ… 小屋の名前でもあるネパール語で"祈り"を意味する「ビンティ」に、"尖った高峰"を意味する「チュリ」をつけて、ビンティ・チュリ、直訳すると「祈りの峰」と。 一度は人生を諦めた三人に、初登頂という快挙を成し遂げることで、この人生が生きるに値するものだということを知って欲しい―― そんな「パウロさん」の想いに夢と希望を抱いた三人は、「パウロさん」の指導のもと、冬山でのトレーニングを開始する、、、 しかし、運命は思いも寄らぬ形で、あまりにも非情な現実を彼ら三人に突き付ける… 打ちひしがれ、夢も希望も打ち砕かれた三人、とうていヒマラヤ未踏峰登頂計画など実行に移せるわけもない、と思われたが、今の三人は、もう「パウロさん」と出会う前の三人ではなかった。 ここで逃げたら、死ぬまで人生から逃げ続けることになる―― 「裕也」は口にする「登ろう、ビンティ・ヒュッテに。パウロさんとおれたちの夢を実現するために」、、、 ハンデを背負った三人の若者と、未来を手放した伝説の登山家… 運命の出会いが「祈りの峰」への扉を開く。 雷による山小屋の火事という不慮の事故で命を失った「パウロさん」が、三人を見守ってくれてたんですね… 北八ヶ岳とヒマラヤを舞台にした山岳小説という体裁をとりつつ、それぞれの理由で世間からドロップアウトした三人が希望を見出す姿を描いたヒューマンドラマでした。
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自粛が解けたら、山登る。 恐怖と高揚、気温、風雨、食事の匂いまで感じる臨時感。本を持つ手に、力が入ってしまう一冊でした。
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その山の頂に立つことにより、今までよりも少しだけ成長したり強くなった自分になれる気がする。 だから山に向かう。 山にはそう思わせてくれるところがあると私も思っています。 誰も登ったことのない未踏峰ともなれば尚更な気がしますね
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北八ヶ岳に行きたくなった。 山を歩いている時の感覚、自分が自分で無くなり周りの自然と一つになるようなあの不思議な感覚を読みながら思い出していた。 また山に行こう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『還るべき場所』が8000m峰の公募登山を題材としているのに対して、本作品が題材としているのは、6000m台の未踏峰の一番容易なルートからの登山。尖鋭性はなく、ニュースにもならない、ある意味、自己満足の登山と言える。 登山を行うのは、北八ヶ岳のビンティ・ヒュッテの従業員の裕也、サヤカ、慎二の3人。過去にちょっとした出来心から、不祥事を起こして失職した裕也。アスペルガー症候群で他人から理解されずに苦しむサヤカ。知的障害を持つ慎二。 この作品の最大の特徴は、社会的に疎外され、登山経験の少ない3人が、彼ら3人を結びつけ、理解し、支えてくれたパウロさんの遺志を継いで、力を合わせて、4人の共通の夢である未踏峰初登頂に挑戦する姿にある。障害を持っている人と健常者とが、支え合い、協力する姿を描いたひとつのモデルと言える。 この作品を魅力的なものとしているのは、ビンティ・ヒュッテのオーナーのパウロさんの「ブナの古木」のような人柄だ。 また、作中には、人生や山に関する味わい深い言葉が随所に織り込まれている。 読み進めていくにしたがって、最後に何か大きなアクシデントに遭遇するものと思っていたが、二人パーティーの登場ぐらいで、その二人も悪人ではなかったので、やや拍子抜けした。 情景描写や心理描写に関しては、重複していて、やや冗長に感じる箇所がある。また、サヤカはアスペルガー症候群であるにも関わらず、パウロさんの心情を理解しているような描写があったり、知的障害者である慎二にちょっとしたミスが命取りになる高所冬山登山ができるのかと疑問を感じるなど、リアリティーに欠けていると感じるところもある。
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