未踏峰 の商品レビュー
人生においてそれぞれ負い目を持つ三人が、これまた負い目を持った人生を歩んでいた山小屋の主人との四人で未踏峰登山を計画する。 実際に登る三人が登りながら、幸せとは何かを問いつつ、自分の出来ることを発揮しながら登頂する。 山を知らないけれど、登ったような読み心地だった。
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ビンティ・チュリ(祈りの峰)僕ら3人が出会った山小屋「ビンティ・ヒュッテ」から名前を取って命名した。未だ名前の無い未踏峰。7000m満たない目立たぬ頂きだが、僕らを残し亡くなったパウロさんと僕らの希望の頂だ。パウロさんと僕らは4人のチーム、必ず彼と共に祈りの峰に辿り着こう。胸には...
ビンティ・チュリ(祈りの峰)僕ら3人が出会った山小屋「ビンティ・ヒュッテ」から名前を取って命名した。未だ名前の無い未踏峰。7000m満たない目立たぬ頂きだが、僕らを残し亡くなったパウロさんと僕らの希望の頂だ。パウロさんと僕らは4人のチーム、必ず彼と共に祈りの峰に辿り着こう。胸にはパウロさんの遺骨と、彼が僕らに残してくれた希望を抱いて・・・。 元敏腕システムエンジニアだった裕也は、万引きにより逮捕され職を追われた。 派遣社員として先の見えない仕事に明け暮れる毎日の中、ふと目にした北八ヶ岳の山小屋の募集に応募する。 山小屋「ビンティ・ヒュッテ」のオーナの蒔本(パウロ=洗礼名)は裕也を即決で雇い入れ暖かく遇した。 パウロは世界的に名の知れたクライマーだったが、現役を退き登山用品店経営を経て、北八ヶ岳で山小屋を経営するに至った。 ビンティ・ヒュッテのスタッフには、卓越した料理の才能が有りながら、アスペルガー症候群であるが故に職場に馴染めずなかったサヤカ。 知的障害はあるが頑強な体と繊細なスケッチ能力を持つ慎二が働いていた。 彼らはパウロの大木のような魅力の下で伸び伸びと仕事を続けていた。 4人は共通の夢を見るようになる。それはエベレストに有る名も無き未踏峰に挑み4人で頂きを踏む事。 具体的に実現する為4人は冬の富士山で訓練を繰り返し着実に実力を伸ばしていった。 山小屋はシーズンオフは働く事が出来ない。3人はそれぞれ違う職場でシーズンインの日を夢見て仕事に勤しんでいた。 そんなある日、山小屋が火事になりパウロは焼死してしまう。 彼らは嘆き悲しんだが、弁護士を通しパウロから3人に遺言が届く。 その遺言にはパウロの生きてきた足跡、そして遺産を彼らに譲り各々の人生に役立てて欲しいという記載が有った。 サヤカは言った「パウロさんを連れてってあげようよ・ビンティ・チュリへ」 分かった。登ろう、ビンティ・チュリに。パウロさんと僕らの夢を実現する為に・・・ この本を山岳小説と読むか、成長小説と読むかで正反対の評価になります。 評判があまりよろしく無い本ではありますが、僕はこの本とても感動しました。 山に夢中でしがみつく事で生きている喜びを全身で感じて、新たな人生の扉を開く原動力にしていく姿を頭に描いて、自分も頑張らなくっちゃと高校生みたいな安直な感想を抱きました。
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久しぶりにあっという間の2日間で読み終わりました。 パウロさん、裕也、さやか、慎一それぞれに悩みを抱えながらも寄り添い、良い方向へと進んでいった中での、パウロさんの死。その死が3人にもたらしたものはお金だけではなく、かけがえのない繋がり、夢。 この先がきっと明るいものになるであろ...
久しぶりにあっという間の2日間で読み終わりました。 パウロさん、裕也、さやか、慎一それぞれに悩みを抱えながらも寄り添い、良い方向へと進んでいった中での、パウロさんの死。その死が3人にもたらしたものはお金だけではなく、かけがえのない繋がり、夢。 この先がきっと明るいものになるであろう終わりに、すごく満足です。
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笹本稜平の警察小説も侮りがたいが、山岳小説はこそ秀逸。 それぞれに事情を抱える三人が、亡くなった山小屋の主人の魂と一緒にヒマラヤ未踏峰を目指す。世間の片隅で小さくなっていた負け犬根性の自分たちの人生を生きなおすために。 山岳小説の白眉『還るべき場所』とともに、この作品も「生きると...
笹本稜平の警察小説も侮りがたいが、山岳小説はこそ秀逸。 それぞれに事情を抱える三人が、亡くなった山小屋の主人の魂と一緒にヒマラヤ未踏峰を目指す。世間の片隅で小さくなっていた負け犬根性の自分たちの人生を生きなおすために。 山岳小説の白眉『還るべき場所』とともに、この作品も「生きるとは何か」を問いかける。 著者は、登場人物の一人に語らせる。 『幸福は他人から与えられるものじゃない。誰かから盗みとれるものでもない。自分の心の中にもともと火種があるんだよ。幸福になれるかなれないかは、それを自分で燃え立たせられるかどうかで決まるんだ。・・・』 生きることに疑問を感じるひとへ 『つまり、人間て、ただ生きているだけで意味があるんだってということよ』 さらに、著者は呼びかける。 「自分の落ち込んだ苦境を時代のせいにするのは簡単だ。しかしそれでは何も変わらない。時代を変えられないのなら、自分を変えるというやり方もある。自分が変われば世界の見え方も変わってくるはずだ。」 そして、夢を持つこと、希望を抱くこと、未来を信じること、を。
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私の近くにもブナの古木のようなパウロさんのような人がいるなと思った。北八ヶ岳の森をのんびり歩きたくなった。
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笹本氏の本はけっこう好きな方。 三人がどのように出会って未踏峰に挑んでいくのかが書かれていた。 個々の事情やら抱えている問題など様々なんだけど、山小屋の主人の想いやらてんこ盛りでいっきに読めた。
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一度、単行本で読んでいたが、文庫が出たので再度。 笹本稜平のヒューマンドラマ長編。 それぞれの事情を持って三人の若者が八ヶ岳の山小屋で出会う。 小屋のオヤジ、パウロさんに出合いヒマラヤの未踏峰を目指してゆく。 登山を通して、生きることの意味を見出していく。 彼らのその後の成...
一度、単行本で読んでいたが、文庫が出たので再度。 笹本稜平のヒューマンドラマ長編。 それぞれの事情を持って三人の若者が八ヶ岳の山小屋で出会う。 小屋のオヤジ、パウロさんに出合いヒマラヤの未踏峰を目指してゆく。 登山を通して、生きることの意味を見出していく。 彼らのその後の成長が読みたい。是非、続編を書いて欲しいです。
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2013.9.30読了 ヒマラヤはもちろん、6,720mというのも未知の世界だが、一緒に登っている気分になった。 前半の舞台は北八ヶ岳ということで、実在する山小屋などを思い浮かべて楽しめた。 ~登るというただ一つの行為に集中するうちに、余分な思考が消えてゆく。(中略)自分を...
2013.9.30読了 ヒマラヤはもちろん、6,720mというのも未知の世界だが、一緒に登っている気分になった。 前半の舞台は北八ヶ岳ということで、実在する山小屋などを思い浮かべて楽しめた。 ~登るというただ一つの行為に集中するうちに、余分な思考が消えてゆく。(中略)自分を閉じ込めていたちっぽけな殻が融けていく。生きることを楽しんでいる自分がいる。いまここにいるという、ただそのことから喜びが湧いてくる。~ そこまで大げさな事ではないけれど、 そうそう、そうなんだよね~(*˘︶˘*)
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北八ヶ岳での出会いから、ビンティ・チュリでの各ステージ模様までを背景に、濃厚な人間臭さを押し出してくる。鎮魂を秘めながらも四人を結ぶ純真な絆は、四様の未来への希望の頂を目指す。過去の洗い流し~転機・決別~成長への足跡、前半から後半へ架けての人生ドラマのスイッチ切り替えは見事。多く...
北八ヶ岳での出会いから、ビンティ・チュリでの各ステージ模様までを背景に、濃厚な人間臭さを押し出してくる。鎮魂を秘めながらも四人を結ぶ純真な絆は、四様の未来への希望の頂を目指す。過去の洗い流し~転機・決別~成長への足跡、前半から後半へ架けての人生ドラマのスイッチ切り替えは見事。多くの言葉に胸打たれ、読後は当方に清廉な気持ちと勇気を与えてくれる。
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川端祐人の『夏のロケット』の山岳ver.のようなお話。異能の青年達が幾多の困難にぶつかりながらも乗り越えていく姿をちょっとファンタジーっぽく、ややノスタルジックな視点から描くとこなんて本当に川端氏にそっくり。今なお世界最高峰がある種の価値を持っているのは否定できない事実である。し...
川端祐人の『夏のロケット』の山岳ver.のようなお話。異能の青年達が幾多の困難にぶつかりながらも乗り越えていく姿をちょっとファンタジーっぽく、ややノスタルジックな視点から描くとこなんて本当に川端氏にそっくり。今なお世界最高峰がある種の価値を持っているのは否定できない事実である。しかし夏の北アルプス並みの大渋滞の写真を見ると、前人未到の地にひっそりと佇む6000メートル級の無名峰にノーマルルートから初登頂する方が魅力的に思えてくる。起承の次に転が来ると思わせながらもうひとつ承を繋いで静かに結を置くスタイル。 『実はヒマラヤの風は、空気が希薄なせいで、風速のわりに威力はさほどでもないらしい。』←本当?知らんかった。言われてみれば、そんな気もする。体験した訳じゃないけど。^^; (6月22日)
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