誰がための刃 レゾンデートル の商品レビュー

知念実希人【著】

2012/06/06

自らが末期癌に冒されていることを知った若手の外科医、岬雄貴。
自暴自棄となった彼は体を鍛え上げ街の不良を襲撃する。
そのことがきっかけで、連続殺人鬼「ジャック」と接触を持った雄貴は、ジャックの思想に感化され、その共犯となる。
偶然助けた少女、沙耶と心を通わすうちに、自らの行動に苦悩するようになる雄貴。
「ジャック」はなぜ殺人を繰り返すのか、少女はなぜ追われるのか。
残り少ない命をかけ、雄貴は少女のために戦いを挑む。

第４回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作品。
まさかのハードボイルド。

読んでいる間中、むず痒く、居心地が悪かったです。
こっ恥ずかしいといいますか。
男の人の理想？妄想？が臆面もなく綴られているような感じを受けまして。
男の人にとって都合よすぎでしょ、っていう。
なんだこの展開、どこの青年誌連載漫画ですか。

と思っていたら読了後、御大の選評を読んで、思わず手を打ちました。
ここに全部書いてあるよ！
そしてそれでも賞をあげちゃう、その懐の深さと見識の高さに改めて感服いたしました。

末期癌→殺人、っていう点で『死命』とカブってしまったのも、たまたま続けて読んだのでマイナスになっちゃったかな。
あと医学用語、さらっと説明が挿まれていたら、もっと親しみを持てたかも。
唯一気に入ったのは最後、松田刑事をああしちゃった点。
こういう裏切りは大好きです。