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感性の限界 の商品レビュー

4.1

75件のお客様レビュー

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2012/04/25

この本をどのカテゴリーに分けるかで少し悩んでしまった。「限界」、「不合理性」とタイトルにあるし、著者も哲学者なので一応哲学とする。しかし本書は哲学に限らず、行動経済学、認知科学、進化生物学を横断的に用いて、人間の自由意志の限界に迫る一冊である。 自分の意思で決定したことが実は遺...

この本をどのカテゴリーに分けるかで少し悩んでしまった。「限界」、「不合理性」とタイトルにあるし、著者も哲学者なので一応哲学とする。しかし本書は哲学に限らず、行動経済学、認知科学、進化生物学を横断的に用いて、人間の自由意志の限界に迫る一冊である。 自分の意思で決定したことが実は遺伝子や、周りから得る意思決定には無関係だと考えている情報に操作されているかもしれないというのは興味深い。特に行動経済学のアンカリング効果は、ランダムな情報ですら意思決定に影響を与えるという点で特に面白い(国連実験)。 タイトルからものすごい難しい文章が書いてあると思われがちだが、中は架空のディスカッション形式で行われグイグイよめる。登場人物には行動経済学者などの専門家から、我々の目線に立つ大学生や会社員、話を横見にそらす急進的フェミニスト、議論をまとめる司会者といろいろなキャラがいて、それぞれのキャラが一貫しているので愛着が持てる。 タイトルに敬遠せずにぜひ読んだほうがいいと思う。 アタマの体操になる。 *ちなみにカント主義者は今回も健在であった。彼の話は司会者によく流されてしまうが、司会者は限界3部作を通じてどれだけの話題を別の機会にお願いしたのだろうか。それだけでシンポジウム2回は開けそうである。

Posted byブクログ

2012/04/24

限界シリーズ第3弾。 難しいテーマを取り上げているにもかかわらず、あいかわらず面白くてわかりやすい。 自らの遺伝子を残すために、我々は生きている。 と、当たり前のことのように考えていたのだが、 有性生殖の場合、子に受け継がれるの遺伝子は半分。孫なら1/4だ。 8世代目には1/2...

限界シリーズ第3弾。 難しいテーマを取り上げているにもかかわらず、あいかわらず面白くてわかりやすい。 自らの遺伝子を残すために、我々は生きている。 と、当たり前のことのように考えていたのだが、 有性生殖の場合、子に受け継がれるの遺伝子は半分。孫なら1/4だ。 8世代目には1/256でしかない。 これでは自らの遺伝子を残していると言えない、という疑問。 つまりは「自ら」ではなく「種」の遺伝子を残そうとしているに過ぎない。 個体は所詮、遺伝子の乗り物でしかないのだろうか? 一方、大腸菌などの無性生殖の方が、自らの遺伝子を残すという意味では優秀だ。 自らをそのまま複製し続けるのだから。そのシステムは至ってシンプル。 複製の速度は早く、膨大な数を生み出す。 ならなぜ、有性生殖などというシステムができたのか?、その答えは多様性。 環境の変化に対応し続ける多様性、バリエーションと質の向上による生存戦略。 一見、有性生殖が高度で優れたシステムに思える。 だが、大腸菌のような無性生殖の生命は、ヒトや動物の体内に棲みつき存在し続けている。 それは、自らの進化ではなく、乗り物である有性生殖の生命に、環境への対応を丸投げすることで、繁栄し続けているとは言えないだろうか? こちらのほうが、合理的かつ高度な生存戦略なのではないだろうか? 生命、存在、あるいはヒトの謎はつきることはない。 まるで、ミステリー小説を読むように、謎が謎を呼ぶ。 だから科学は面白い。 興味深いキーワードはまだまだある。 ・利己的遺伝子 ・ミーム(meme , 非遺伝的な複製子) ・スタノヴィッチの二重過程理論 だが、収集がつかなくなりそうなので、今日はこの辺にしておこう。

Posted byブクログ

2019/06/02

[関連リンク] 404 Blog Not Found:不合理性・不自由性・不条理性 - 書評 - 感性の限界: http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51792243.html

Posted byブクログ

2018/10/14

人の認識や意思とはどのようなものか、どういう見方がありえるのか、をカリカチュアライズされたシンポジウムを聴いているという見立てで、紹介している。

Posted byブクログ

2012/04/22

限界シリーズの3冊目。今回は「愛」と「自由」と「死」という概念についてシンポジウム形式で本書は進む。 本書の面白いところは、「疑問」が随所に提示されることだ。シンポジウム形式で書かれているので、登場人物の一人が、例えばこんな風に疑問を呈する。 「私がすごく不思議なのは、少なく...

限界シリーズの3冊目。今回は「愛」と「自由」と「死」という概念についてシンポジウム形式で本書は進む。 本書の面白いところは、「疑問」が随所に提示されることだ。シンポジウム形式で書かれているので、登場人物の一人が、例えばこんな風に疑問を呈する。 「私がすごく不思議なのは、少なくとも一度はすごく愛し合って、だからこそ結婚したような二人が、どうして後になってから、すごく憎しみあうようになったり、ついには離婚するようなことになってしまうのかということです」 「そこまで人間が環境に左右されるんだったら、「自由意志」はそんざいしないのでしょうか?」 「そもそも、なぜホロコーストのような異常事態が生じたのか?」 「なぜヒトは、こんなに簡単に服従してしまうのか?」 こういう疑問がところどころに出てくるので、自分のQも整理される。 それにしても、カーネマンとトヴェルスキーの行動経済学から、人は得をするフレームではリスクを避け、損をするフレームではリスクを冒そうとする傾向がある、フレーミング効果から、行為の限界の説明。 リチャード・ドーキンスの利己的遺伝子を、「分析的システム」と「自立的システム」の2つのシステムで捉える二重過程理論で説明し、「個体」対「遺伝子」の意味を再考する意思の限界の説明。 アルベール・カミュの『異邦人』を例に引いて「本質」と「実存」の対比を行い、世界の「意味」について考える。人はどうしても世界に意味を求めようとする。だから、多くの人々はこの世界に意味を持っていると勝手に思っている。だが、それは根本的に間違っているかもしれない訳で、それは誰にも分からない。つまり、世界には生々しい「実存」が優先してあり、「本質」は後付けだから、「不条理」なのであるというあたりは考えさせられる。 こういう疑問に、古くからのアプローチだけでなく、最近の事例もたくさん引いているので興味が尽きない。例えば、自爆テロリストの研究によると、多くの人は結婚をしていて子どもも要る。さらに、信仰心も一般より特に高いわけでもなく、非宗教的で、無心論者さえいる。どうして、こういう人たちが自爆テロを引き起こすのか? 最近の研究では、「小集団の論理」にあるのではないかという。「信仰」や「信条」などという観念的な理想よりも、むしろ「共感」や「排他」といった感情的な結合にあると。なるほどと思う。情報が多ければ多いほど、逆に限定した情報だけしか見なくなる傾向があるという点も納得する。 著者はあくまで科学者だ。その科学者の視線から、疑問を提示している。「なぜ、人間は「空気」に支配されやすいのだろうか?」 「なぜ、理性的であるはずの人間が、このような「愚かな」集団行動を取るのだろうか?」 「理性や知性、つまり論理や情報とは別の、感性によるアプローチとはいったいなんなのだろうか?」 こういう疑問から本書を書き始めたとあとがきにあった。 疑問を大切にしながら、その疑問を解き明かすアプローチの多様性も視野に入れる。知的好奇心を満たす一冊だと思う。

Posted byブクログ