未来国家ブータン の商品レビュー
「未来国家」というよりは「ロストワールド」ブータンだ、とつくづく思う。実際、高野秀行は今回の旅を称して「これは遠野物語的だ」と何度も言い放っている。「遠野」の人たちは昔話をするつもりで話したのではなかった。みんな「現実(リアリティ)」として喋ったのである。だから、みんな実在の地名...
「未来国家」というよりは「ロストワールド」ブータンだ、とつくづく思う。実際、高野秀行は今回の旅を称して「これは遠野物語的だ」と何度も言い放っている。「遠野」の人たちは昔話をするつもりで話したのではなかった。みんな「現実(リアリティ)」として喋ったのである。だから、みんな実在の地名と名前で喋っている。ブータンでも例えば「そういえば、つい2日前神隠しに遭った女の子が帰ってきた」という話が普通にドンドン出てくる。普通の民俗学者がこれを読んだら、「もう明日にでもブータンに行きたい!」と思うはずだ。私が未だ大学の常民文化研究会に居た若い20代ならば、きっとそう思ったはずだ。何故ならば、100年前の日本には其処彼処にあったそんな語り手は、現代では絶滅し(かかっ)ているからである。 2010年4月より遡ること数ヶ月前、高野秀行はブータンの農業省の国立生物多様性センターと提携して事前調査を依頼される。しかし、旅行費用は自前で。いくら辺境大好きだからと言って、それはない、と思った途端に彼にキラーワードが囁かれる。 「高野さん、ブータンには雪男(イエティ)がいるんですよ」 村人ではない。政府の高官が言っているのである。 高野秀行は即答する。「行きましょう!」 確かにブータンでは雪男(ミゲ)の話が其処彼処(そこかしこ)に語られる。でも決して映像に入るとか、実在の痕跡を見つけるとか出来ない。つい最近までの体験として語られる、というのは正しく「遠野物語」だ。 それどころか、謎の生物チュレイ(ロバやヤクに似ていて、赤い顔、赤い足の裏、長い前髪)の目撃譚も語られる。政府の役人と共に辺境を旅しながら、高野さんは伝統的な生活もきちんと記録し、人々の信仰、雪男や毒人間、精霊や妖怪も生き生きと伝えられてゆく社会を記録してゆく。 日本を含めたアジアの国々は悉く、近代化によって伝統文化を壊し、高度な教育や医療・福祉を実現し、環境を破壊して、知識人は国家を否定し或いは寄生し歪んで成長してきた。その一方で、ブータンは近代国家のいいところを吸収し、弊害を取り入れまいと意識的に努力しているかのようだ。それが高野さんが「未来国家」という根拠ではある。 ブータン国家論を展開すれば、また長い学術書になってしまう。私たちは「軽い読み物」として、高野秀行版ブータン版遠野物語を読んで「願わくばこれを語りて平地民を戦慄せしめよ(柳田國男)」となることを楽しみたいと思う。 表紙は、影山徹さんが本書のために描いた(と思う)、東京上空に天空の城ラピュタみたいに浮かぶブータンの山々。
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SFチックなタイトルですが、ブータンの現地人に取材した紀行文。ブータン人の文化に深く切り込んでいて、今まで触れたことのない価値観はとても面白い。
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- ネタバレ
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すっぴんに高野さんがゲストででてらしたので、どんなかなあっと思って借りてみる。 めっちゃおもしろかった。 これが9年前のことだから、今のブータンはどうなっているんだろう、と思う。 行きたい、とは思わない(なんか移動もたいへそうだし、これといって食べたい、っと思うもんがなかったので)けれど、ここの人たちに会ってみたいなあっとは思う。 生物多様性の研究の下見としては、どうだったんだろう?大丈夫だったのかな? 現金収入をかねた歓迎がウケた。 国がディズニーランドみたいなもん、とゆーのがちょっとなるほどなあっと思った。 その空間そのものが皆が幸せになるようにできている。 すごいなあー。 水戸黄門王様、カッコいいわあ。 二ェップのシステムはいいなあっと思った。 多様な人間と日常的に関わりあうってことは人間力を上げるんだな。 選択肢が少ない方が幸せってゆーのはあるかも。 迷いが人を苦しめる?
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ブータン国民がなぜ世界一幸せなのか? それは、「ブータン方式」が機能しているからである。 本書の中で触れられているブータン方式は、なかなか、いわゆる先進国と呼ばれる日本のような国では見られないシステムと感じる。 病気一つ直すにも、患者に様々な選択肢が与えられており、病院に通うも...
ブータン国民がなぜ世界一幸せなのか? それは、「ブータン方式」が機能しているからである。 本書の中で触れられているブータン方式は、なかなか、いわゆる先進国と呼ばれる日本のような国では見られないシステムと感じる。 病気一つ直すにも、患者に様々な選択肢が与えられており、病院に通うもホメオパシーのような医療を受けるも自由である。 選ぶ自由があることによって、その選択肢が間違いだったとしても、自分で選んだのだからと自分を責める時もある。 けれど、 ブータン方式は違う。
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筆者のモットーである「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をまさに体現したようなこの本。 国民総幸福量(Gross National Happiness)がとても高いとは聞くけれど、でも半鎖国体制を敷いているがために情報が少ない魅惑の国ブータ...
筆者のモットーである「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をまさに体現したようなこの本。 国民総幸福量(Gross National Happiness)がとても高いとは聞くけれど、でも半鎖国体制を敷いているがために情報が少ない魅惑の国ブータンを自分の足で歩き、 現地の人と積極的に触れ合うことで得たブータンの生(なま)の情報が面白おかしく綴られた良書でした。 僕も含め旅行好きの人にとって、筆者の高野さんがブータンでやったことは読んでいてとてもうらやましく、自分もブータンに行ってみたいという衝動に駆り立てられます。 この本はしかし、単なる面白おかしい旅行記ではなく、ブータンという国の成り立ち、文化、民族、チベットとの関わりなど、高野さんが足で得た情報が多く綴られている他に、生物多様性の問題について切り込んでいる点も興味深かったです。 毎日たくさんの動物や植物が絶滅していく昨今、なぜ多くの種を残すことが重要なのか、なぜブータンという国は種を残す環境として最適で「生物多様性の聖地」とも呼べるのか、そしてそういう環境がどうしてブータン国民に幸福をもたらすのか、その謎に迫っています。 ブータンは、「周回遅れのトップランナー」とも呼ばれているそうです。 世界各国が競うように近代化していく中、鎖国をしていた(いまも半鎖国体制の)ブータンは近代化が遅れたが、環境保全や生物を大切にする思想など独自路線を貫いた。 資源を酷使して近代化した先進国は、今度はロハスだとか環境保全だとか国民の幸福の重要性といった、経済合理性を越えた「最先端の思想」にたどり着いた。 その結果、一周回って、ビリを走っていたブータンに追いついてしまった、という先進国への皮肉を込めた呼び方でもあるそうです。 謎が多い分、魅力的な国ブータン。 この国に興味がある方はぜひ読んでみてください。
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GNPではなくGHPを目指すという小王国ブータン、美男美女の国王夫妻の来日も記憶に新しい。 著者はひょんなことからブータンに滞在してその幸福度を実感していく。 教育はすべて無償(素晴らしい!) 小学校からの英語教育、と聞けば日本人はもう真似したくて仕方ないだろう。だが実は多民族国...
GNPではなくGHPを目指すという小王国ブータン、美男美女の国王夫妻の来日も記憶に新しい。 著者はひょんなことからブータンに滞在してその幸福度を実感していく。 教育はすべて無償(素晴らしい!) 小学校からの英語教育、と聞けば日本人はもう真似したくて仕方ないだろう。だが実は多民族国家ゆえに英語を共通語にするしかないそうだ。 国民の幸福度が高いのも何だか嘘くさいと思ってしまう。
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「探検部」の著者の真骨頂は、怪獣がいると言われるアフリカの奥地とか、ソマリアの紛争地帯とか、無茶なところに、わりあいどうでもよい目的で行って、無茶なことをすること。ブータンに行くのも、雪男?が目的だが、雪男はもちろん見つからないし、ブータンは無茶というよりは牧歌的でのんびりしたと...
「探検部」の著者の真骨頂は、怪獣がいると言われるアフリカの奥地とか、ソマリアの紛争地帯とか、無茶なところに、わりあいどうでもよい目的で行って、無茶なことをすること。ブータンに行くのも、雪男?が目的だが、雪男はもちろん見つからないし、ブータンは無茶というよりは牧歌的でのんびりしたところだし、いつもの旅と違ってガイドもついていれば旅程も決まっているし、結局「高野秀行と愉快な仲間たちのブータン民話採集の旅」みたいになってる。まあグダグダといえばグダグダなんだけど、目くじらたてるほどのことでもなあ、という感じの一冊。
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今回読んだのは、高野秀行さんの『未来国家ブータン』だ。 ブータンといえば、若くてイケメンの王様がいる国として話題を呼んだが、子供の頃切手を収集していたぼくにとっては、当時鉄製の切手を発行していた国としての印象が強い。紙の封筒に鉄の切手を貼る。何とも間抜けな光景が目に浮かぶが、それ...
今回読んだのは、高野秀行さんの『未来国家ブータン』だ。 ブータンといえば、若くてイケメンの王様がいる国として話題を呼んだが、子供の頃切手を収集していたぼくにとっては、当時鉄製の切手を発行していた国としての印象が強い。紙の封筒に鉄の切手を貼る。何とも間抜けな光景が目に浮かぶが、それ故にブータンという国に不思議な魅力を覚えた。 ブータンの王様に関していえば、現在は王政ではないので政治的な支配者ではないのだが、その存在の国民に与える影響は今でも凄まじいものがあるらしい。 高野さんの独特な表現によると、「日本で言うならジャニーズ事務所の全タレントとイチローと村上春樹を合わせたくらいのスーパーアイドル」くらいの人気を誇っているそうだ。 国としては、GDP(Gross Domestic Product/国内総生産)ではなく、GNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)に重きをおく政策でも知られている。 ネパール難民に対する政策は、国外からも非難されているけれど、この本を読むとそれ以外の国民にとってブータンというのは確かにGNHが高いのだろうと納得した。 今回はじめて知ったのだが、全人口を合わせても八王子と同程度だという。今も半鎖国状態のブータンの知られざる一面を興味深く読みつつ、それに比べれば日本は悩みや葛藤が多い国だなと思った。だからといってそれが不幸せだとも一概には言えないと思うのだけど。
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ブータンといえば幸福であるの国、というイメージしかなかったからどれも新鮮で面白く読んだ。ディズニーランドのような国というのが印象的。そして国王様すごすぎ!一ヶ月かけて全てを見て回れる規模というのは国土的にも、王と民との距離的にもちょうどいいんだろうな。教育と伝統の話もだし、西洋医...
ブータンといえば幸福であるの国、というイメージしかなかったからどれも新鮮で面白く読んだ。ディズニーランドのような国というのが印象的。そして国王様すごすぎ!一ヶ月かけて全てを見て回れる規模というのは国土的にも、王と民との距離的にもちょうどいいんだろうな。教育と伝統の話もだし、西洋医学と伝統医学の話もだし、現地雇用のビジネスの話も、本当興味深い。
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