赤頭巾ちゃん気をつけて の商品レビュー
これはなんだか、キャッチャー・イン・ザ・ライを日本版にして小説的効果を放棄させたような、そんな本だとおもった。要するに、けっこうぼこぼこ『これだ!』みたいなものがそのまま書いてある。その『これだ!』みたいなものは、文学として力を持たせるためには、技巧的になりますが小説という装置の...
これはなんだか、キャッチャー・イン・ザ・ライを日本版にして小説的効果を放棄させたような、そんな本だとおもった。要するに、けっこうぼこぼこ『これだ!』みたいなものがそのまま書いてある。その『これだ!』みたいなものは、文学として力を持たせるためには、技巧的になりますが小説という装置の中にしっかりとした技術をもって落とし込むことが必要で、それが本当に素晴らしくできたものっていうのがずっと読み継がれるような強力な力を持つ文学である。って考えると、この本はちょっと弱い小説というか、小説の機能を放棄している節はあるんだけれど、その『これだ!』みたいなものが結構な純度の高さで一生懸命書かれているので、やっぱり心動かされるところがあるのかなあ。
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こりゃ重い。物語の構造にしても、思想的な部分にしても。語り口の軽妙さが読みやすさを助長して、読後、きっと皆がなにがしかを考えるだろう、傑作じゃないかしら。
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はじめて読んだときは、斜に構えていない村上春樹みたいな小説だなぁと思った。 最後のページが大好き。 こころの中では饒舌で、みっともなくて、ひとりぼっちを手玉にとっていて。 男の子の青春小説は、こういうものなのだと思う。
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薫くんシリーズ、第一弾。1969年の二月の出来事です。著者曰く、あわや半世紀のあとがき、が読めます。初めて手にして、四十四年、改めて味わう薫くんの世界。なるほど、なるほどです。村上龍の69と併せて読んでは、如何でしょうか。
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印象的なタイトルで前々からずっと気になっていた本。 予備知識無しに読み始めたので、始めは、その独特の文体(頻繁に出てくる括弧付きの挿入句)にかなり読み辛さを感じたが、「小林」くんの告白の件から加速度的に読書ペースが上がった。時は1969年。ベトナム戦争に対する反戦の機運や70年安保闘争への盛り上がり、そして「薫」くんを否応無しに巻き込んだ全共闘運動が激化していた時代。僕はその時代を生きた若者の大多数の気持ちを代弁していたのが、小林くんのこの言葉であったように思う。 「この新しい敵ってのは、おまえたちみたいにはっきりとマークできるような見事な相手じゃない。なんともつかまえどころがないような得体の知れないような何か、いわば時代の流れそのものみたいな何かなんだ。つまり、ちょうどおれがおまえたちをマークし、おまえを狙い撃ちにしたみたいに、今度は、気がついたら、このおれもおまえたちと一緒になって時代の流れそのものからマークされ狙い撃ちされている、というようなそんな気がし始めたんだ」 当時、本気で国を変えようという志を持った若者がいたのは事実だと思うし、その可能性も実際あったと思う。でも、本書で言うところの、踊らにゃ損々の"阿波踊り"の連中がどんどん増幅していって、結局彼らが次第に小林くんの言うような心境になっていった結果、運動自体も衰退、さらには「内ゲバ」みたいな最悪な結末を迎えてしまったのだと感じる。 当然僕は該当世代ではないので、当時のリアルな社会の空気が感じられ、そこに葛藤する若者の姿を垣間見られたのは良かった。ただ、「みんなを幸福にするにはどうすればよいか」などと、聖人君子じみた結論を持ってきている割には、あとがきの著者の文言が妙に鼻についた。
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1.小説における「キャラメル」の威力。 2. 「あのね。あたし、こんなこと言いたくないけど、この話ゆうべ聞いて、それからずっと、きょうあなたに会ったら話してあげようと思ってたんだわ。」 「でも、いまの気持をお伝えすれば、舌かんで死んじゃいたいわ」 3.椿姫、ケーコートー 4.薫...
1.小説における「キャラメル」の威力。 2. 「あのね。あたし、こんなこと言いたくないけど、この話ゆうべ聞いて、それからずっと、きょうあなたに会ったら話してあげようと思ってたんだわ。」 「でも、いまの気持をお伝えすれば、舌かんで死んじゃいたいわ」 3.椿姫、ケーコートー 4.薫くん四部作、清水次郎長 5.枝葉の部分を刈り込んじゃうとなんだって同じような意見に要約されかねない つまり、私はすっかり薫くんに惚れちゃったわけです。
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女の子を殺さないために、を読んでから気になっていた。 おもしろかったー。これが1969年の本、信じられない。 次の本も借りてきているので、とても楽しみ。
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東大入試が中止になった。愛犬のドンが死んだ。左足親指の生爪を剥がした。幼馴染の由美と喧嘩した。いろんな不幸が薫くんに押し寄せる。 これを最初に読んだ頃も随分時が経っていて、学生運動とか時代背景のことはよくわからなかった。実はいまでもあまりわかってない。読み返した意味はあまりなかったのかと思うけど、以前(中学生だった)と同じように、薫くんの優しさにじわじわきた。足を踏んづけた5歳の女の子に「あかずきんちゃん」を選んであげる姿。難しい話もいっぱい出てくるけど、そういう場面を楽しむだけでもいい話だと思う。
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私はいわゆる“ゆとり世代”に近いぐらいの年齢ですが、本作品には非常に共感を覚えました。人間の本能的な部分を解放しようとする潮流に、そっくり乗っかることが出来ない、という点においてです。 考えたり律したりすることはどこへ行ってしまうのか、それは私たちが放してはならないものではない...
私はいわゆる“ゆとり世代”に近いぐらいの年齢ですが、本作品には非常に共感を覚えました。人間の本能的な部分を解放しようとする潮流に、そっくり乗っかることが出来ない、という点においてです。 考えたり律したりすることはどこへ行ってしまうのか、それは私たちが放してはならないものではないのか? 小林の独白にも、そういった純粋な熱っぽさを感じて、好きな作品です。
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家にあったので読んでみた。 東京大学への受験を考えていたが、学生紛争により東大が入試を取りやめになってしまった日比谷高校3年生の薫くんの、発表その後の数日の思考が綴られた本。 学生紛争に対して知識がない、その時代の学生の流行が分からない、シェイクスピアや椿姫で盛り上がるだけのこ...
家にあったので読んでみた。 東京大学への受験を考えていたが、学生紛争により東大が入試を取りやめになってしまった日比谷高校3年生の薫くんの、発表その後の数日の思考が綴られた本。 学生紛争に対して知識がない、その時代の学生の流行が分からない、シェイクスピアや椿姫で盛り上がるだけのこだわりがないということから、自分にはまったくあわない小説だった。 感性の合う人には共感できる作品となるのだろうが、申し訳ないが自分の評価は低い。 作者と同名の主人公ということもあり、どうしても作者の頭の中に浮かんだ考えを見ているだけ、という感じで、途中から読むことが苦痛になってしまった。
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