冬の灯台が語るとき の商品レビュー
ヨハン・テリオン四季シリーズ第2弾、冬。今回はエーランド島東部のウナギ岬が舞台。地図が載っていたので今までよくわからなかった位置関係がわかってよかった。現実の地名と架空の地名が混ざっているとはいえ、やはり位置関係は分かっていたい。 ウナギ岬の家に越してきた幼い子供のいるヨアキム...
ヨハン・テリオン四季シリーズ第2弾、冬。今回はエーランド島東部のウナギ岬が舞台。地図が載っていたので今までよくわからなかった位置関係がわかってよかった。現実の地名と架空の地名が混ざっているとはいえ、やはり位置関係は分かっていたい。 ウナギ岬の家に越してきた幼い子供のいるヨアキム夫婦、島で押し込み強盗をする若者3人、そして島に赴任した若い女性警官ティルダ。この三者の物語が絡み合う。 そして今回大きく存在感を放つのがヨアキム夫婦の越してきた家。その家は1846年にウナギ岬沖で遭難した船の木材で建てられたのだった。それだけで何か因縁が生まれるかも、と思うが、案の定、納屋には家に住んで死んだ者たちの名前と年月が刻み込まれた隠し部屋があった・・ ヨアキムの妻カトリン、そしてティルダの祖父もこの家に関係があった・・ そしてこの家の話が、カトリンの母の書いた手記によって語られる、という構造になっている。このカトリンの母も強烈な存在感。 事件は早々に、ヨアキムの妻がウナギ岬の灯台の麓で死ぬ。足をすべらせての事故死と思われたが、ここでイェロフ爺さん登場! なんといっても新任警官ティルダの大叔父なのだ。イェロフの船乗りとしての経験と、死んだ妻の気配に囚われるヨアキムの思いが事件解決につながる。わかってしまえばちょっとあっけない感じだが、そこに至る、家が生きているかのような描写、家に生きてきた昔の人たちの息遣いが、読んでる身体を覆う。 クライマックスは、強盗を追ってウナギ岬の家に収束する場面。その時は何十年に一度かのブリザードでその描写がすごい。雪嵐というと単に雪が舞っているだけかと思ったら、エーランド島のブリザードは地面の砂をも含む雪風となり目をやられてしまうという描写。 ブリザードが止んだ翌朝、晴れ渡った空。ヨアキムも子供たちも新しい生活が始まるだろう、と感じる。 2008発表 2012.2.15発行 図書館
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秋から始まり、季節は冬へ。暗く寂しいイメージそのままに、一つの家族を悲劇が襲う。一見ただの事故にしか思えない悲劇はどうやら殺人だったらしい。けれど、事件の謎を追うわけではなく、人間関係や自然の厳しさ、過去の悲劇を辿っていくのが、一連の作品の特徴に思える。一作目から読み始めると登場人物達を深掘りすることが出来るが、まぁどこから読んでも概ね面白く読めそうな気がする。ミステリーや謎解きを期待するとちょっと物足りなさを感じるかもしれない。死後の世界、幽霊は存在するのか。それを証明するのは不可能だ。けれど、確かに感じる出来事がこの世に存在しているのもまた、事実だ。今回の犯人が、逮捕されるのかどうかはまだこの時点では分からないが、少なくとも殺されただろう被害者は真実を知っている。しかし、突然喪った妻が愛しいのは分かるのだが、ブリザード吹き荒れる中、子供達だけを家の中に残しておくのは、流石に頂けない。今回はたまたま子供達に何も無かったけれど、もう少し、生きている子供達に目を向けてあげて下さい、と思ってしまった。
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これはミステリなのか?と思うほど、推理は遅々として進まない。主人公の心の不安定さがオカルト的なものにつながって、不思議な雰囲気を出している。屋敷にまつわる歴史も加わって、全体として暗いトーン。終盤、一気に事が進むので、その緊張感で読むのが止まらなかった。
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スウェーデン エーランド島ミステリー四部作、昨年10月「秋」に続き第二弾「冬」を読みました。 「冬」は「彷徨う死者の気配」 舞台は「泥炭湿地」「凍る海」を背景に「うなぎ岬の二つの灯台と屋敷」で、今回も独特の情景を描いて、読み手を夢中にしてしまいます。 風と波と、海が凍る音、岩...
スウェーデン エーランド島ミステリー四部作、昨年10月「秋」に続き第二弾「冬」を読みました。 「冬」は「彷徨う死者の気配」 舞台は「泥炭湿地」「凍る海」を背景に「うなぎ岬の二つの灯台と屋敷」で、今回も独特の情景を描いて、読み手を夢中にしてしまいます。 風と波と、海が凍る音、岩間を抜ける風の音、建物の軋み、足音、壁の中の物音、誰かの囁き、読んでいて心がザワザワ……と、なんだかホラー映画のようですが、そこはあくまでミステリー。 心に抱える「冬の闇」 後ろめたさ、後悔、疑念、思い込み それは愛情とは裏腹に心に粘り着く。 様々な思惑が、やがて冬のブリザードの夜に向かって押し寄せていく。 読後に冷静になって考えるといくつもツッコミどころがあるものの、不思議な役割を持つイェルロフと凄まじいスウェーデンの冬が、そんなことを吹っ飛ばしてくれます。 終盤に灯台から出てきた○○○の油絵が見たい……。 次は「春」に「春」を読みます。
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エーランド島4部作の2作目。とは言っても、前作とのつながりは薄く(名探偵役が一緒なのと舞台がエーランドだという以外はほとんど関係なし)、こっちから読み始めても全く問題なしだと思う。 スウェーデンにあるエーランド島東部、ウナギ岬という場所にある古い館をリフォームしようと訪れた一家の奥さんエトリンが謎の死を遂げるところから話がジワジワ転がっていく。 一家をとりまく幽霊の気配から、ホラー系の話に展開するのかと思いきや、他の登場人物たちはやたら世俗的なことにうつつを抜かす。別荘荒らしグループや、不倫相手の都合よさに翻弄される女性警官…。 それだけでなく、登場人物たちの生まれる前くらい過去に関わる血縁関係者の話が話中に挟まれる。挿話の多さと展開の遅さに「おいおい、これどうなんの?」とジレたりもする。 だが、安心してそのゆっくりしたストーリー展開に身をゆだねて、クリスマス準備シーズンのエーランド情景を楽しんでおけばよい。ブリザードが荒れるクライマックスの描写と物語の収束…風呂敷回収の見事さは期待を裏切らないので。 いやー、上手いわ。ミステリーというジャンルで語り尽くせない良い小説。暖冬とはいえ、冬に読めて良かった。残り、春と夏の2作が楽しみである。
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再読なのにたくさんの事を忘れてしまっていた私。でもだからこそまた新鮮な気持ちで読めた。 イェルロフが直接関わっている訳では無いけど、所々でいい味をだしている。 そして嫌な奴はちゃんと報いを受けているのが小気味良くもある。
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環境的な寒さ、冷たさはヒシヒシ伝わるけど、感情面の描写は全く寒さ、冷たさを感じない。 人ってあったかいもんやなって感じる。
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1作目の『黄昏』同様、ゆっくりゆっくり進む。でも『黄昏』よりもミステリー度が少なく、主人公男性の後ろ向きさ加減が読むペースまでスローダウンさせる。いや、長いわー…。
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「黄昏に眠る秋」の続編にあたるスウェーデンミステリー。「黄昏…」から判断して、重くゆるりと進むストーリーと思ったので、なかなか手をつけずに未読のままだった。 といっても、読み始めればやっぱりページをめくる手は止まらなかったので、さすがだなあ、と感心しきり。 ただ、ページをめくってもめくっても、なかなか話が進んでいる気がしないのは予想通り。内容がないわけではないのだけど、雰囲気とか幽霊とか過去話の挿入などが絡まって、肝心の事件も、殺人なんだか事故なんだか、かなり後半にならないとはっきりしないんだよね。 でも、今回は脇役的なイェルロフ船長が、見事に最後に存在感を示し、畳み掛けるようにパズルのピースがはまっていくかのごとくのラストはお見事。 次作がとっくの昔に出てるので、またいずれ買う予定。で、またしばらーく未読のままになるんだろうなあ……
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スウェーデンの小さな島を舞台にしたミステリー。寒そうな様子がよく伝わってくる。 人の少ない島に引っ越してきた一家。主人公の妻が海で溺れて死ぬのだが、不審な点があった。別の窃盗事件を調査していた婦人警官が絡んでくる。 北欧という世界が個人的にとても新鮮だった。構成が緻密でデリケート...
スウェーデンの小さな島を舞台にしたミステリー。寒そうな様子がよく伝わってくる。 人の少ない島に引っ越してきた一家。主人公の妻が海で溺れて死ぬのだが、不審な点があった。別の窃盗事件を調査していた婦人警官が絡んでくる。 北欧という世界が個人的にとても新鮮だった。構成が緻密でデリケートで、厳かな読後感に満たされる。 途中までは展開がスローだが、日本の量産ミステリーに飽きてしまった人に、是非お勧めしたい不思議な魅力のある本だった。
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