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痕跡本のすすめ の商品レビュー

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37件のお客様レビュー

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2012/08/12

「ここに人と人との良好な関係がある」 前の持ち主の残した痕跡がみられるという痕跡本には痛い思い出がある。 『アインシュタインの謎を解く』 (三田誠広 / ネスコ・文藝春秋)を図書館で借りて読んだときのこと。軽い気持ちで手にした本ではあった。数式や物理の法則などまともにぶつかった...

「ここに人と人との良好な関係がある」 前の持ち主の残した痕跡がみられるという痕跡本には痛い思い出がある。 『アインシュタインの謎を解く』 (三田誠広 / ネスコ・文藝春秋)を図書館で借りて読んだときのこと。軽い気持ちで手にした本ではあった。数式や物理の法則などまともにぶつかったらお手あげだ。でもこの本はそんな一読者にさえきちんと向き合って、「新幹線車内で光速の球を投げる松坂投手」など身近な例を駆使して根気強く語りかけてくれた。自分が大好きなアインシュタインの感じたこと、考えたことを一人でも多くの人に伝えたい、知ってほしい、そういう著者の熱意の感じられる本だった。読んでいくうちに自然と居住いを正される思いがした。 最終的に、アインシュタインの謎をこれほどの熱意をもって解く著者自身は、果たして「物理科学」をどのようにとらえているのかとても興味深く読むに至った。それが書かれていたのが最終章の「考える葦として」だった。物の理を突きつめようとする者の孤独を伝えたかったとあり「絶海の孤島から、瓶の中に手紙をつめて、未知の誰かに救援を求めるようなつもりで」この本を書いたそうだ。だが、その結論は読めなかった。それが書かれていたはずの本書の最終ページは丸々破りとられていたからだ。目の前で人がいきなり首を刎ねられるのを見たような後味の悪さがこみ上げる。 多くの人が、小さい頃から本の上にのっちゃいけないとか、落書きをしちゃいけないとかいわれて育つ。それは本=人間の思考=人間そのものというとらえかただと思う。学生の頃、一人でいる図書室は怖かったものだ。部屋の中にいろんな人間の思考が渦を巻いていて、四方八方から人に見られているような気がしてしまう。逆に明るく広い書店などにいるとたくさんの人に賑やかに囲まれている気がして楽しい。そういう気持になるのも一冊の本を一人の人間と感じていればこそ。 さて、件の本だ。本=人が定義できるとするなら、著者いうところの「痕跡本」には本と持ち主との、極めて良好な人と人との関係がある。本に残された、思い込みたっぷりの感想や、意外な書き込み、はさまれていたメモ書き、無数の針穴に至るまで、そこには少なくとも人と人との無言の対話がある。本それ自体は無機物なだけに、本のほうがもっぱら聞き手で持ち主が一方的に主張しているような観はあるものの、言われっぱなしになっている本の困惑した「顔」も含めて、痕跡本はトータルな魅力を醸しだしている。 人と人との関係ということから本書を見渡して一番印象に残ったのが、『Mの世界』という本の扉に上下逆向きに書かれたスパゲティのレシピ。著者も「本への無関係な書き込みは、本好きか否かの踏み絵のよう」という。生きている人同士究極の関係は「無視」。因みにあとから気が付いたのだが、レシピを走り書きされた『Mの世界』の著者を見たら偶然にも『アインシュタインの謎を解く』を書いた三田誠広。ご難続き…。

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2012/06/10

坂東市の図書館【蔵書紹介】図書館では本が返却されたとき、時々しおりやメモなどがはさまっていることがあります。(その場ですぐに持ち主に返されます。)メモや写真などには、その人の人柄などをふと感じてしまうこともあります。古書店主である著者の思いにも似ている気がします。

Posted byブクログ

2012/04/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

古本に残された痕跡から、以前の持ち主のストーリーをあれこれ妄想するエッセイ。 著者は古本屋さんを経営している。 署名してあったり、感想・想いが書き込まれていたり、切り取られていたり、 物がはさまっていたりするような本のことを、著者は〈痕跡本〉と呼ぶ。 突いて穴があけてあったり、サインの練習をしていたり、 グラビアアイドルのシールが貼ってあったり、メモ代わりにしているもののある。 このような本は売り物にならないし、仕入れ時には敬遠するような本なのだが、 著者は残された痕跡から勝手に想像を膨らませて、物語を作る。 想像だから、本当のところはわからないけど、とてもおもしろかった。 私は本を汚したくないので、物をはさんだり、ましてや書き込みをするなんて 絶対にしないけど、(本を図書館で借りることが多いということもあるが) 世の中にはこんな風に本に想いを込める人もいるんだとびっくり。 自分の本だったら、なにをやってもいいのかも。 その時の自分の心情を記録しておくと、読み返した時、自分でも笑えそう。

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2012/04/26

伊那図書館では、「痕跡」は悩ましい問題。「痕跡」の見方を変えると、こんな楽しみ方ができるんですね。「本が泣いてる」じゃなくて、「本の持ち主が語っている、想像する」。痕跡には、本と前の持ち主の物語が刻まれています。本と自分、その本を読んだ「ある人」が結ばれる感じ。 最近、多面的に見...

伊那図書館では、「痕跡」は悩ましい問題。「痕跡」の見方を変えると、こんな楽しみ方ができるんですね。「本が泣いてる」じゃなくて、「本の持ち主が語っている、想像する」。痕跡には、本と前の持ち主の物語が刻まれています。本と自分、その本を読んだ「ある人」が結ばれる感じ。 最近、多面的に見れなくなってきたわたし。著者のやわらかな感性もキニナル。(R)

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2012/04/17

持ち主が分かったうえでの本の痕跡への想いは、とても理解できる。ただ、破れていたり虫の死骸が挟まっていたりというのは、生理的に無理。眺めるだけの風景にしても、本屋さんだけにしておきたい。 電子書籍への挑戦という点からは、紙の本派として応援したい。

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2012/04/16

私が初めて痕跡本と出会ったのは父の本棚の本であった。 父は読書が趣味で、若い時は梅田の古書の街の古本屋でもよく買って来ていた。 そこで買ったのか京都の古本屋で買ったのかわからないがある本に大学図書館の蔵書印が押してあった。 これは学生が借りて売ったものであろう。 なんて不届き者!...

私が初めて痕跡本と出会ったのは父の本棚の本であった。 父は読書が趣味で、若い時は梅田の古書の街の古本屋でもよく買って来ていた。 そこで買ったのか京都の古本屋で買ったのかわからないがある本に大学図書館の蔵書印が押してあった。 これは学生が借りて売ったものであろう。 なんて不届き者! さてこの本はいろんな古本に残る痕跡を集めている。 著者が本の中身よりも痕跡を探して買い集めてしまう。という気持ちが すこしわかる気がした。 私が一番印象に残った痕跡本は以前アルバイトをしていた仏教系の大学図書館でインドから取り寄せたらしい本に挟まっていた虫の死骸。 そして先に書かれた金額がひと桁なのに、その上に書き直された金額が 随分と桁違いだった。インチキ?

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2014/05/02

売られた本に残された痕跡から、元の持ち主のストーリーをあれこれ妄想するエッセイ。 前の持ち主を辿ったり考察したりするのではなく、あくまで想像をめぐらせて楽しむ遊び。 私は本に手を入れることが(折り目でさえも)嫌なタイプだから、他人の残した「汚れ」を楽しむという感覚を知りたくて手...

売られた本に残された痕跡から、元の持ち主のストーリーをあれこれ妄想するエッセイ。 前の持ち主を辿ったり考察したりするのではなく、あくまで想像をめぐらせて楽しむ遊び。 私は本に手を入れることが(折り目でさえも)嫌なタイプだから、他人の残した「汚れ」を楽しむという感覚を知りたくて手に取った。 趣味が合わないなあと思った。 「本にとっての幸せ」という考え方がまず好きじゃない。 取り上げられる本に写った女子の写真の扱いや(半端な伏字と黒線)、持ち主たちが余裕で存命な古さのものをお披露目するデリカシーのなさも嫌。 (と思ったけど最後まで読んだらそうでもないかもしれない。元の持ち主への配慮や、古本屋らしいマナーを呼びかけてはいる) 痕跡の読み方もだいぶ私とは違う。 本当に痕跡だけを見て(地の文を読まずに)書いているみたいだし。 たとえば最初の連続名前はよくある「サインの練習」じゃないのか? 啓発本の書き込みは読んだ人の脳内サクセスストーリーではなくその本の概要じゃないのか? でも、読んでいるうちに面白くなった。 自分と違う読み方を見るのもまた楽しい。 痕跡本風のあとがきにイライラしたから、やっぱり自分は痕跡本向きではないんだけれど、こういう見方があるというのは面白い。 同性愛という言葉にチェックが入れられた「愛の島々」をネタにした妄想コラムで痛ましい思いがした。 文章自体は妄想で、実際の持ち主が何を思いどんな意図で傍線をひいたのかはわからない。 それでも、こんな風に、こんな僅かでひどい記述くらいしか縋るもののなかった人たちは確かにいる。

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2012/04/07

ずいぶん前、(就職後のことだが)「A10奪還チーム出動せよ」を再読していたら、記憶に無い駅の切符が挟まっていた。不思議に思って良く見たら、”面白かった”と書かれていた。そういえば、大学時代に隣のゼミの女の子に、その面白さを力説して貸した事があったのを思い出した。返してもらった時に...

ずいぶん前、(就職後のことだが)「A10奪還チーム出動せよ」を再読していたら、記憶に無い駅の切符が挟まっていた。不思議に思って良く見たら、”面白かった”と書かれていた。そういえば、大学時代に隣のゼミの女の子に、その面白さを力説して貸した事があったのを思い出した。返してもらった時には気付かなかったようだ。好きになって告白したけど振られて。懐かしい思い出。また、「水上紀行」を読んだ時には、挟んであった紙片に、ミミズののたくったような字で「昨日土砂崩れがあり~」と書いてあるのを見つけて、晩年の父が猿ケ京温泉に行ってみたいと言っていた理由が分かった。本来の痕跡本の楽しみ方とは違うが、そういった体験を思い出す。かつては本の奥付に読了日を書いていた事もあった。「W君て読み終わった日を本に書いているんだね」って、本を返してもらった時に言われたな、確か。そんな思い出ばかり。 以下、引用 ●本が古本屋に並ぶ前、その本は必ず、誰かの本棚にあったものです。そして、様々な理由で持ち主の手元を離れ、古本屋へ流れ着くことになりました。(略)そう、すべての古本には、前の持ち主がその本と過ごした時間という「物語」が刻まれているのです。それが目に見える形で残されているもの、それが痕跡本。そこには、本の内容だけじゃない、前の持ち主と本を巡る、世界でたったひとつだけの物語が刻まれています。 ●古本屋で本を買ってくると、たまにレシートやチラシなど、様々な紙が挟まっていることがあります。(略)まれに遠く離れた県のものが挟まっていることがあります。それに気づいた瞬間、その本が、実は遥かな旅をしてきたことに驚かされたりします。(略)本と旅。そこには切っても切れない関係があります。そして、古本以外にも旅をする本は存在します。たとえば、バックパッカーに同行している本。(略)それにしても、何故本には、これほどに旅が似合うのか。それは、本がすべてを受け止めてくれる存在だからなのだと思います。バックパッカーの間を旅する本の中に、たまに前の持ち主から「この本を西に運んで下さい」などというメモが添えられている本があるそうです。それは、本に自分の気持ちを託した証。(略)人は、本の旅に自分自身の旅を重ねることができるのです。 ●「全ページ妄想」「本来の本の内容にほとんどふれられていない」という、前代未聞のブックガイド

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2012/03/30

自分には本に書き込みをする習慣が無かったので、 痕跡本という存在の深さに驚きました。 でも、それでもなかなか自分の本に痕跡を残すことにまでは たどり着かないなぁと実感・・

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2012/03/20

ラジオで聞いて痕跡本という存在を知り、書店で見て即買い。ただの中古本という枠を飛び越え、前の所有者がなぜそんな書き込みをしたかなどという、本の内容だけでなくある意味想像をいろいろふくらませてくれる読み方を教えてくれた本。

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