花競べ の商品レビュー
江戸職人の人情ものを探していて、本作を手に取りました。朝井作品は『眩』『恋歌』『すかたん』と読み進めてきました。そのどれよりも早い時期の作品、しかもデビュー作だと知りびっくりしました。 なずな屋の花師「新次」と「おりん」夫婦をはじめ、登場する人々は皆江戸っ子の粋な一面をもちつつ...
江戸職人の人情ものを探していて、本作を手に取りました。朝井作品は『眩』『恋歌』『すかたん』と読み進めてきました。そのどれよりも早い時期の作品、しかもデビュー作だと知りびっくりしました。 なずな屋の花師「新次」と「おりん」夫婦をはじめ、登場する人々は皆江戸っ子の粋な一面をもちつつ、情けの深い愛すべきキャラクターでした。特に「雀」こと「しゅん吉」が幼い「お梅」に掛けていた言葉が印象に残ったのですが、それがのちにあんな形で実を結ぶとは思いもしませんでした。 次は庭師の世界を描く『ちゃんちゃら』に繋がってみようと思います。
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イケメン花師、新次と、その女房、おりんの 物語。 花師という仕事の華やかさ、複雑さ、 そして、新次を支える、おりんの健気さ。 昔、心を通わせた理世との再会、預かった雀との やり取り、要素すべてがたくましく、あたたかく、 江戸の市井小説だと、納得のいくものだったが、 新次とおり...
イケメン花師、新次と、その女房、おりんの 物語。 花師という仕事の華やかさ、複雑さ、 そして、新次を支える、おりんの健気さ。 昔、心を通わせた理世との再会、預かった雀との やり取り、要素すべてがたくましく、あたたかく、 江戸の市井小説だと、納得のいくものだったが、 新次とおりんの夫婦の物語として、 二人の結びつきや、おりんにも、もう少しスポットライトが 当たっていれば…と思うのは、ただの勝手?
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
花競べ 向嶋なずな屋繁盛記 著者:朝井まかて 発行:2011年12月15日 講談社文庫 単行本『実さえ花さえ』(2008年10月)に加筆、改題 朝井まかての時代小説は、なにを読んでも面白い(そんなに読んでない)が、この花競べは彼女のデビュー作だという。300ページ余りの長編だが、4章立てで各章が短編的なプロットで締めくくられ、かつ、全体でひとつのストーリーにもなっている。 文化文政時代の江戸・向嶋を舞台に、小さな苗物屋「なずな屋」を営む新次とおりん夫婦の物語。苗物屋は、花師という職人の店であり、花屋とも庭師とも違う。木や草花を栽培し、種から育てたり、挿し木、接ぎ木、品種改良などをしたりする。これは市井時代小説であり、職業小説で人情小説でもある。朝井まかての最も面白い分野かもしれない(改めていうがそんなに読んでない)。 1章は、シチュエーションの紹介をしつつ、日本橋にある太物問屋の隠居から、快気祝い用に新次のオリジナル商品である桜草の注文をされる話。言われたのは30鉢で30両という破格の値段。受けたはいいが、鉢を注文した焼き物商が途中で受注を翻した。別のところもギブアップ。どうやら、邪魔する者がいるらしい。しかし、最後はおりんがトコロテンからヒントを得て、木箱にすることでいいものができあがる。 邪魔をしたのは、どうやら大店の植木屋である霧島屋の七代目のようだった。新次はその霧島屋で修行を積んだが、娘の理世と噂がたって辞めた。霧島屋には娘しかおらず、婿を取って七代目にしていた。 2章は、この本のタイトルにもなっている「花競べ」に出場する話。そこで〝優勝〟する。しかし、そのコンテストは実質的にコネのある者しか最終審査まで残れず、出来レース的でもあった。新次は太物問屋の隠居のコネで出場。最後に残ったのは、霧島屋の理世の作品と、新次の作品だった。 3章は、雀(しゅん吉)という幼い男の子供を預かることになった新次とおりんの話。伊勢の藤堂家の下屋敷の広大な庭のうち、百坪だけ、あるイベント用に整えてくれと仕事が来る。新次は大変な力を注ぎ、手持ちの希少種や、高価なものと交換で手に入れた希少種などを投入して、1年を通して楽しめるように造った。とても気に入ってもらえたが、イベント直後にそれらは撤去され、希少種なども消えていた。その後の庭を造っていたのは理世だった。新次と理世は、昔、恋仲だった。久しぶりに再会し、ついに一夜を過ごした。しかし、それできっぱりけじめをつけて別れた。その後の出来事だった。2人は現場で紹介されるが、初対面のふりをした。 庭が壊され、ショックを受けた新次だったが、理世は希少種などを捨てずに確保し、新次のもとへと送った。最後のオチが読めるプロットだった。 4章は、雀(しゅん吉)の生みの母親と、その母親をDVの夫から連れ出し、雀に教育をした男に、おりんが会いに行った話。この段階になると小説がきれい事に染まりすぎてくる。子供がそこまで気を使って行動するわけがないし、DVの夫が本当はとても良い人だったというような話でも染め上がるし。 最後は、霧島屋が門外不出、一子相伝で引き継いできた桜を、新次が預かっていたが、それを外に出したこと、それがのちに(天保時代)染井吉野となったことが記される。地名の染井と、吉原の花魁である吉野が絡んだ話。
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そうか、これがまかてのデビュー作品か。才気溢れ、そして、初作から飛び抜けたおもしろさ。すごいなぁと末尾解説にも納得。新次とおりんが主役なんだろうけど、雀、六兵衛、辰之助のキャラが圧倒的で、魅了した。楽しかった!
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花師、新次とおりんが営む「なずな屋」と雀、六兵衛が中心となるのお話。 なんで新次が修行した「霧島屋」が「なずな屋」にちょっかいを出すのか、ちょっとわかりにくい場面もあるけれど、面白く読了かと思いきや... 巻末の展開は予想だにしなかった。 哀れ吉野、吉野からの染井吉野。 上手く出...
花師、新次とおりんが営む「なずな屋」と雀、六兵衛が中心となるのお話。 なんで新次が修行した「霧島屋」が「なずな屋」にちょっかいを出すのか、ちょっとわかりにくい場面もあるけれど、面白く読了かと思いきや... 巻末の展開は予想だにしなかった。 哀れ吉野、吉野からの染井吉野。 上手く出来ている。
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向島にある種苗屋「なずな屋」。真面目な仕事ぶりと質のいい種苗や植木で繁盛している。そんななずな屋を営んでいる花師の新次とおりん夫婦の物語。 新次のかつての修行先との争いや預かる事になった子供との絆など様々な出来事が描かれている。 なずな屋夫婦の人柄が良くて読みやすく読後感もよかっ...
向島にある種苗屋「なずな屋」。真面目な仕事ぶりと質のいい種苗や植木で繁盛している。そんななずな屋を営んでいる花師の新次とおりん夫婦の物語。 新次のかつての修行先との争いや預かる事になった子供との絆など様々な出来事が描かれている。 なずな屋夫婦の人柄が良くて読みやすく読後感もよかった。
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苗物屋の新次・おりん夫婦の物語。304ページと中編だが、内容はたっぷり。序盤は悪役に嫌がらせをされ、中盤は理世との逢瀬、終盤は花魁吉野と染井吉野の話。もっと引っ張っても良さそうだが、まさかデビュー作とは。さすがは朝井まかて氏です。
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花師という職業を通して江戸時代の人々の植物に対する価値観や関わり方を知ると共に、この時代のプロフェッショナルが持つ矜持に心惹かれます。 また有力な幕閣や商人がとても粋な役で登場し、身分を超えた関係がとても好ましい。 染井吉野は本当に染井の植木屋が売り出したものらしいですが、その事...
花師という職業を通して江戸時代の人々の植物に対する価値観や関わり方を知ると共に、この時代のプロフェッショナルが持つ矜持に心惹かれます。 また有力な幕閣や商人がとても粋な役で登場し、身分を超えた関係がとても好ましい。 染井吉野は本当に染井の植木屋が売り出したものらしいですが、その事実に素敵な物語を重ねたところも良い。 デビュー作なのにこの完成度には驚きました。
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朝井さんのデビュー作だそうだ。 びっくりするのは、大阪近辺が舞台ではなく、江戸だったこと。 もうこの頃から、園芸がテーマになっていたのね。 向嶋の花師、新次が主人公。 妻のおりんと、「なづな屋」という植木屋を営んでいる。 新次は高い育種の力を持ち、大変な美丈夫だが、職人気質で...
朝井さんのデビュー作だそうだ。 びっくりするのは、大阪近辺が舞台ではなく、江戸だったこと。 もうこの頃から、園芸がテーマになっていたのね。 向嶋の花師、新次が主人公。 妻のおりんと、「なづな屋」という植木屋を営んでいる。 新次は高い育種の力を持ち、大変な美丈夫だが、職人気質で客あしらいがよくない。 おりんは元寺子屋のお師匠として自活してきた女性。 植物の専門家ではないけれど、あれこれとアイディアを提供して、小さな店は繁盛していく。 近所に住む職人の留吉とお袖夫婦、なずな屋の得意客である上総屋のご隠居六兵衛さんとその孫の辰之助、そして新次夫婦が預かっているしゅん吉が物語の「メンバー」である。 ちょっとにぎやかすぎる印象もあるけど、それぞれのキャラがはっきりしていて、楽しい。 かつて修行した植木商、霧島屋のお嬢さんにして、天才的な花師でもある理世との複雑な関係を軸に、なずな屋にさまざまな困難が降りかかっていく。 しっかり者のおりんの目から、人々の細やかな気持ちや交わりが描かれ、引き付けられる。 植木屋が舞台だから当然だが、四季の移り変わりの様子も印象深い。 そうか、この人はデビュー作から、もうこんな風に完成された作家だったんだな。
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