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蜩ノ記 の商品レビュー

4.1

263件のお客様レビュー

  1. 5つ

    83

  2. 4つ

    109

  3. 3つ

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2024/10/03

 自分の過ちで罪を問われるのならまだしも、理不尽なこと、陥れられて罪を問われるのは我慢ならないし、潔白を証明しようとあがくだろう。  でも、主人公の戸田秋谷は違う。彼への敵愾心、嫉妬心故に、ある出来事で罪に問われ、10年後の切腹を命じられる。でも、彼はそれを受け容れ、静かに残さ...

 自分の過ちで罪を問われるのならまだしも、理不尽なこと、陥れられて罪を問われるのは我慢ならないし、潔白を証明しようとあがくだろう。  でも、主人公の戸田秋谷は違う。彼への敵愾心、嫉妬心故に、ある出来事で罪に問われ、10年後の切腹を命じられる。でも、彼はそれを受け容れ、静かに残されている時間を見事に生ききる。  彼を見張るように遣わされた庄三郎も秋谷の人となりに感化され、変わっていく。庄三郎は秋谷の件が冤罪であると分かり、秋谷に弁明をすればと訴える。  しかし、秋谷は主君が家臣に疑心を持っているならば、弁明しても心を変えてもらうことはできない、と言う。  そう言う秋谷に、でも、とりあえずは弁明してみてはどうか、と私は思う。もしかしたら、事実を知って赦されるかもしれないではないか。武士には、それは見苦しいことなのか。  全てを受け容れて秋谷はその時まで、自分の為すべき事を淡々と為していく。その中で、息子の郁太郎の友、源吉の命が奪われる。その非道を赦せず、郁太郎は家老に物申しに行く。庄三郎も同行する。二人は捕らわれ、交換条件に秋谷にある物を手渡すように伝える。  それを聞いた秋谷は自ら出向く。幽閉中の者が城下に向かうのは、助命などとんでもなく、切腹はもはや免れない。  妻が「お前様が自分(郁太郎)のために命を投げ出したと知れば、郁太郎はどのように悲しむ事でございましょう。どうか、城下へ行かれるのはおやめくださいませ」と訴える。しかし、  「わしの命は郁太郎が引き継いでくれるであろう。親が先にあの世へ参るのは自然の理ではないか。何の不都合があろう。そなたにとって郁太郎は何物にも代えがたい大切な息子ではないか。その息子を取り戻しに参るのだぞ」と答える。そして、郁太郎達の元へと向かう。  無事に郁太郎と庄三郎を取り戻す。秋谷がその日を迎える前に、庄三郎と薫は結婚し、郁太郎は元服する。  悲しい結末で、最後は涙、涙だったが、でも、希望を感じることができた。  ひとは心の目指すところに向かって生きているのだ、と思うようになった。心の向かうところが志であり、それが果たされるのであれば、命を絶たれることも恐ろしくはない。  この庄三郎の思いは、秋谷の生き様を見てのうそ偽りのない想い。秋谷は切腹したが、その生き方は郁太郎、姉の薫に、そして庄三郎に確かに引き継がれていく。だから、希望を垣間見ることができるのだと思う。  いいお話だった。また読み返したいと一冊。

Posted byブクログ

2024/08/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

いつかは読んでみたいと思っていた本でした。評判通り心打たれる内容。武士として、人として、どう生きるべきか、人を守るということはどういうことか。 果たしてその通り、切腹の日を迎え… 分かるようで分からない時代のことです。

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2023/04/10

武士道と云うは死ぬことと見つけたり 有名な「葉隠」の一節ですね いつでも死んだらぁっていう意味に誤解されることが多いんですが、死ぬどころか武士としての正しい「生き方」を説いた言葉なんですね 詳しくはググって頂くとして(投げた!)やっぱり本作を読んでこの言葉が頭を過ぎりました 夜...

武士道と云うは死ぬことと見つけたり 有名な「葉隠」の一節ですね いつでも死んだらぁっていう意味に誤解されることが多いんですが、死ぬどころか武士としての正しい「生き方」を説いた言葉なんですね 詳しくはググって頂くとして(投げた!)やっぱり本作を読んでこの言葉が頭を過ぎりました 夜霧よ今夜も有難う(どうしても言いたかった) 主君の側室との不義密通のために十年後の切腹を命じられた戸田秋谷の武士としての生き方と死に方を描いた『蜩ノ記』 読み終えた感想は「武士〜」です いやもうめっちゃ武士やん、めっちゃ武士やん秋谷! 己が正しいと思うことを為す この一念ですよね そして曲げずに貫くにはどうしても死に方にもこだわらなければならなかったんでしょうね そして冒頭の「武士道と云うは死ぬことと見つけたり」を体現してたように思うんですよね 楽な道を選んでいては、正しいことを為せないし、正しくない道を行く自分を見せたくなかったんじゃないかなぁって思うのです まぁ、自分は多少正しくない道を歩んでも切腹は回避したいですけどね 武士じゃないし♪~(´ε` )

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2022/12/17

 殿様の側室との不義が疑われて切腹を命じられている武士を中心にした物語。そこへ見張り役に藩から派遣された武士が、なぜ不義が疑われるような羽目になったのかを調べるうちに、藩の闇の歴史に突き当たっていくというストーリー。やや藩の歴史が複雑すぎて途中でこんがらがってくるところは少し残念...

 殿様の側室との不義が疑われて切腹を命じられている武士を中心にした物語。そこへ見張り役に藩から派遣された武士が、なぜ不義が疑われるような羽目になったのかを調べるうちに、藩の闇の歴史に突き当たっていくというストーリー。やや藩の歴史が複雑すぎて途中でこんがらがってくるところは少し残念だったが、でも素敵な登場人物たちと素敵な雰囲気の物語だった。

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2020/08/10

驚きは無かったけど、 余韻がいつまでもある。 武士のようにはいかないが、人として恥じない生き方をしたい。

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2019/03/09

直木賞を取っているし、評価が高い本だけど、自分にはちょっと読みづらかったな。 葉室凜さんの小説の特徴でもある「主人公が輝く」が個人的には苦手かもしれない。 この小説も主人公がとても良い人で、主人公の悲劇を解決するために物語が進む。 途中におこる伏線も最後にきっちり回収される。...

直木賞を取っているし、評価が高い本だけど、自分にはちょっと読みづらかったな。 葉室凜さんの小説の特徴でもある「主人公が輝く」が個人的には苦手かもしれない。 この小説も主人公がとても良い人で、主人公の悲劇を解決するために物語が進む。 途中におこる伏線も最後にきっちり回収される。 よい小説なんですが、よい主人公がいい人すぎるのかな。

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2019/02/19

10年後に切腹、 幽閉の身、、、 これはこの設定ありきの創作なのかな。“羽根藩”や“三浦一族”がどうやら架空のようだし、、 にしても、秋谷の生き様は尊いけれども、胸塞ぐ話。武家社会に理不尽は付き物とはいえ、命とひきかえにせねばならないことは何一つないというのに。。。 己に恥じる...

10年後に切腹、 幽閉の身、、、 これはこの設定ありきの創作なのかな。“羽根藩”や“三浦一族”がどうやら架空のようだし、、 にしても、秋谷の生き様は尊いけれども、胸塞ぐ話。武家社会に理不尽は付き物とはいえ、命とひきかえにせねばならないことは何一つないというのに。。。 己に恥じることなく、家族にも汚名を残さず、子の世代を生かすためにはこれしかなかったのだろうか。 源吉のさいごにも涙。でもなんという哀れな。。。 巨悪はかすり傷のままで、それがかえってリアルだけれども、やりきれない。 直木賞受賞作×映画化された作品ではあるけど、心に染みるというより心に刺がささってしまう読後感。せつない。

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2018/08/11

いい話でした。 物騒な話がありつつも全体としてはむしろ穏やかで静かな空気が流れ、最後は泣けますね。 映画も是非観たいと思います。

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2018/02/28

「蜩ノ記」葉室麟著、祥伝社、2011.11.10 329p ¥1,680 C0093 (2018.02.27読了)(2018.01.17購入)(2012.01.30/7刷) 第146回直木賞受賞作 ・登場人物 檀野庄三郎 元奥祐筆、21歳 檀野治兵衛 庄三郎の弟 檀野平十郎 庄三...

「蜩ノ記」葉室麟著、祥伝社、2011.11.10 329p ¥1,680 C0093 (2018.02.27読了)(2018.01.17購入)(2012.01.30/7刷) 第146回直木賞受賞作 ・登場人物 檀野庄三郎 元奥祐筆、21歳 檀野治兵衛 庄三郎の弟 檀野平十郎 庄三郎の父、二年前に死亡 戸田秋谷(しゅうこく) 柳井与市の四男、戸田惣五郎の養子、名は光徳、順右衛門 戸田郁太郎(いくたろう) 10歳、秋谷の長男 戸田薫 郁太郎の姉 戸田織江 秋谷の妻、30余歳 中根兵右衛門(へいえもん) 家老 慶仙和尚 長久寺 三浦壱岐守兼保 羽根藩初代藩主 順慶院 六代藩主兼通(三年前に死去、47歳) 三浦義之 七代藩主 柳井与市 羽根藩勘定奉行、秋谷の実父 戸田惣五郎 馬廻役、秋谷の養父 水上信吾 庄三郎の元同僚 原市之進 奥祐筆差配、兼奏者番 (「BOOK」データベースより)amazon 豊後・羽根藩の奥祐筆・檀野庄三郎は、城内で刃傷沙汰に及んだ末、からくも切腹を免れ、家老により向山村に幽閉中の元郡奉行・戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室と不義密通を犯した廉で、家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。庄三郎には編纂補助と監視、七年前の事件の真相探求の命が課される。だが、向山村に入った庄三郎は秋谷の清廉さに触れ、その無実を信じるようになり…。命を区切られた男の気高く凄絶な覚悟を穏やかな山間の風景の中に謳い上げる、感涙の時代小説。

Posted byブクログ

2018/02/11

藩のため、領民のため、己の覚悟を貫く秋谷。武士のあるべき姿をこれでもかと見せつけられる。素晴らしい!源吉の真っ直ぐさにも涙した。この作品を紹介してくれた書店員さんに心より感謝!

Posted byブクログ