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日本の大転換 の商品レビュー

3.6

38件のお客様レビュー

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2020/10/07

釈迦が悟ったのは「縁起」であると言われる。 世の中は縁によって起こり、あらゆるものが関連し合っているという思想である。 そこから、生物との共生や自然との共生という思想にもなる。 しかし、一神教の思想は全く異なる。 縁で紡がれているはずの人間社会に、それを超越した神を持ち込んだのが...

釈迦が悟ったのは「縁起」であると言われる。 世の中は縁によって起こり、あらゆるものが関連し合っているという思想である。 そこから、生物との共生や自然との共生という思想にもなる。 しかし、一神教の思想は全く異なる。 縁で紡がれているはずの人間社会に、それを超越した神を持ち込んだのが一神教、すなわちユダヤ教、イスラム教、キリスト教である。 そして、宗教が力を失ったいま、拝金主義と科学信仰がはびこっている。 拝金主義の温床は資本主義だ。 そして、資本主義は縁でつむがれていた社会に「神の見えざる手」を持ち込んだ。つまり神を持ち込んだのだ。 さらに、科学信仰の真骨頂が核エネルギーであり、これは「神の領域」である。またも、神を持ち込んだのだ。 資本主義も核エネルギーも一神教的な神を持ち込んだという意味で同じであると著者は言う。 資本主義の市場原理はいまや、人々の心の中にどっぷりと入り込んでいる。子どもの心にさえ入り込んでいる。 核エネルギーは核廃棄物が処理できない時点で人間には扱えない代物であり、事故を起こして土地を汚染し住民の故郷を奪った。 神=外部性を持ち込んだ資本主義と核エネルギーは両者ともに行き詰まっている。 これを転換するには、仏教の縁起を思い出すことであろう。世界は縁によって紡がれている。 本書の原稿が書かれたのは原発事故から3ヶ月後の2011年6月だという。中沢新一氏の慧眼に感服する。

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2019/03/17

東日本大震災後に著された、社会基盤であるエネルギーと資本主義の関係性、日本の社会の在り方についての本。原子力発電への依存度を低減させる必要があるが、そのためには日本社会・日本文明のあり方も根底から見直さなければならない、という提言。 甚大な被害を(特に原発事故により)被った日本だ...

東日本大震災後に著された、社会基盤であるエネルギーと資本主義の関係性、日本の社会の在り方についての本。原子力発電への依存度を低減させる必要があるが、そのためには日本社会・日本文明のあり方も根底から見直さなければならない、という提言。 甚大な被害を(特に原発事故により)被った日本だからこそ、新たな世界をリードできる。キリスト教などの一神教社会ではなく、仏教徒神道が共存する多神教の日本だからこそ新たな道を見出せる。

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2017/11/29

福島の原発事故以降の日本がとるべき道筋について、宗教哲学者の著者が語った本です。 著者は、一神教と多神教の違いを文明論的な原理に拡張し、また、これからの日本に必要なエネルギー政策を生態圏の原理から導こうとしています。中沢新一といえば、浅田彰と並ぶニューアカデミズムの旗手であり、...

福島の原発事故以降の日本がとるべき道筋について、宗教哲学者の著者が語った本です。 著者は、一神教と多神教の違いを文明論的な原理に拡張し、また、これからの日本に必要なエネルギー政策を生態圏の原理から導こうとしています。中沢新一といえば、浅田彰と並ぶニューアカデミズムの旗手であり、フランス現代思想を自在に駆使しつつチベット仏教について論じる思想家として知られていますが、本書での著者の語り口はまるで梅原猛です。もっとも、アカデミズムの枠を飛び出す存在であるという意味では、はじめから両者は近かったといえるのでしょうけれども。 梅原に関していえば、アカデミズムではとうてい許容されないであろう、文明論的な大風呂敷の議論に対する多くの批判を浴びながらも、現実に中曽根内閣の政策決定にかかわろうとし、国際日本文化研究センターの設立に漕ぎつけるだけの「胆力」がありました。一方著者は今のところ、批判的知識人という、ある意味で気楽なポーズを崩してはいないようですが、もし今後著者が本書の示すような方向へと進んでいくのであれば、梅原のように生臭い現実の政治に積極的にかかわっていくことをいとわないでほしいと思います。

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2018/10/12

核融合とか核分裂という原子力は太陽圏のものであって 相対性で成り立つこの世の生態系の外にあるもので 媒介するものなしに直接繋がることは破壊を容認することであり 在ってはならないことだろう これは一成る完璧な存在を想定して トロイの木馬のように驚異的な暴力となる猛毒を 抱え込むこと...

核融合とか核分裂という原子力は太陽圏のものであって 相対性で成り立つこの世の生態系の外にあるもので 媒介するものなしに直接繋がることは破壊を容認することであり 在ってはならないことだろう これは一成る完璧な存在を想定して トロイの木馬のように驚異的な暴力となる猛毒を 抱え込むことと同じように 依存するしか無い環境に溺れることでしかない 資本主義も自然界に対する所有意識を正当化して 外部からの力に直接依存している点で 一神教や原子炉と同じ搾取と支配にオンブという構造上の欠陥を持つ 生命維持の生態系と意識上の生態系に対してリスクを発生する 資本主義は3つのリスクをもたらすという 市場におけるメカニズムが暴走して人間社会を破壊へ導きかねない 資本主義は自転車操業で搾取し続けていなければ転ぶ構造である そのため無駄に生産と消費を続けることを要求する 従って資源を際限なく使い捨て生態系のバランスを破壊すると同時に その廃棄物と二酸化炭素の大量排出で自らの首を絞めることになる 惑星である地球の生態系に属さない恒星である太陽のみが持つ力を あたかも地球環境の自然として内側に取り込んで 仲間を支配するための武器として 操縦不能な核発電という「小さな太陽」を作り出してしまったが その道具に逆襲されて共倒れの「飼い犬に手を噛まれ」て 「敵を呪わば穴2つ」に陥る 産業革命以前の市場は集合意識にコントロールされて過不足のない 需要と供給で循環する生命維持を可能にしていたが 産業革命以後の限りない不安による物欲と余剰生産物によって 集合意識を無視した権利意識と競争原理でお互いの信頼を壊し 敵対心に溺れてしまった社会には価値として計れない縁という 所有と無縁の繋がりの意識があるが 核発電という小さな太陽を持つことで人間は益々 外部から無償で与えられる太陽光線という贈与のエネルギーを 切り離してトーラスに閉じられた交換=搾取の自滅的な 資本主義の体質で人間社会を飲み込んでいく こうして自らの首を絞めた資本主義は核発電を手放し 太陽の一方的な贈与性にすがることで 脱核発電に伴って脱資本主義を迎えることになる 次なる新しい自然エネルギー革命には自律した中庸性によって 外に開かれ無償で与えられる太陽エネルギーを受け入れることで 成り立つ経済システムへと転換していく それはリムランド文明の再生となって エネルゴロジーと名付けた贈与の関係を生み出していくのだという そもそも太陽光線からなる膨大なエネルギーを利用している光合成を 応用することになり それは今現在に属す進行形の波の力であり水の流れであり風であり バイオマスであり地熱の利用であり化学と物理の変化という 再生可能で移ろいながらも永久に循環する調和の姿であろう

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2015/01/22

期待のハードルをかなり下げていたせいか、結構面白く読んだ。 ハードルを下げた理由は、「これはすごくいい本だし、すごくよくわかるが、過去から中沢新一を読んだりしている人からすれば、いかにも言いそうなことで、予測できてしまう」と誰かが言っていたこと。 中沢新一は東北をテーマに、昔本を...

期待のハードルをかなり下げていたせいか、結構面白く読んだ。 ハードルを下げた理由は、「これはすごくいい本だし、すごくよくわかるが、過去から中沢新一を読んだりしている人からすれば、いかにも言いそうなことで、予測できてしまう」と誰かが言っていたこと。 中沢新一は東北をテーマに、昔本を書いていたので、そのアップデートをするのもいいんじゃないかと思ったりはするのだけど。 とはいえ、行動・活動している点はえらい。愛知万博もそうだし、グリーン・アクティブを作ると明言し、実際作ったのもえらい。 http://green-active.jp/ デューイを研究する身としては、人の行動を左右する思想を作り上げ、また自らも行動するような人間――思想家、と呼ぶ他ない――を、評価したいと思う。

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2014/10/29

地震・津波、それは昔から何度も日本をおそってきた。そして、何度でも何度でもそこから立ち上がってきた。それは地球の中の出来事であって、多数の犠牲者は出てしまうけれど、我々人間でなんとか対処できることであった。ところが今回は違う。原子力という我々には手におえないやっかいなものに手を出...

地震・津波、それは昔から何度も日本をおそってきた。そして、何度でも何度でもそこから立ち上がってきた。それは地球の中の出来事であって、多数の犠牲者は出てしまうけれど、我々人間でなんとか対処できることであった。ところが今回は違う。原子力という我々には手におえないやっかいなものに手を出してしまったからだ。今回の出来事で、私はどうやら大きな誤解をしていたことに気付いた。私自身は、最初から原子力発電は欠陥品であって、人間に扱えるシロモノではないと判断していたし、この20年ずっと授業の中でもそう言ってきた。地球温暖化⇒CO2削減⇒火力発電から原子力発電へ??? クリーンエネルギーはもっとほかにある。太陽光であり、風力や地熱や波力、また小型の水力発電。などなど、そういう話をしてきた。世の中の多くの人も同じように考えていると思っていた。ところがそれはどうも間違いだったようだ。原子力発電に安全神話があったとは全く考えていなかった。そして、事後の対応についても、新聞記事などを読めば読むほど情けない状態。福島の方々には大変申し訳ないけれども、これを機に大きく舵を取り直してほしい。どうやら、著者たちがアグレッシブに具体的な行動に出るらしい。期待もするし、できるなら参加・協力もしたい。

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2014/10/04

[ 内容 ] 大地震と津波、そして原発の事故により、日本は根底からの転換をとげていかなければいけないことが明らかになった。 元通りの世界に「復旧」させることなどはもはや出来ない。 未知の領域に踏み出してしまった我々は、これからどのような発想の転換によってこの事態に対処し、「復興」...

[ 内容 ] 大地震と津波、そして原発の事故により、日本は根底からの転換をとげていかなければいけないことが明らかになった。 元通りの世界に「復旧」させることなどはもはや出来ない。 未知の領域に踏み出してしまった我々は、これからどのような発想の転換によってこの事態に対処し、「復興」に向けて歩んでいくべきなのか。 原子力という生態圏外的テクノロジーからの離脱と、「エネルゴロジー」という新しい概念を考えることで、これからの日本、そしてさらには世界の目指すべき道を指し示す。 [ 目次 ] 日本の大転換(津波と原発;一神教的技術;資本の「炉」;大転換へ;リムランド文明の再生) 太陽と緑の経済―「日本の大転換」補遺(はじめに;エネルギーと贈与;経済学の見えない土台;生存のためのモジュール;つぎの経済システムへ) [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2013/10/05

中沢さんの対談などを最近まとめて読んだせいもあり、本書の内容には目新しさはなかった。交換から贈与へ、一神教と原発といったトピック。

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2013/06/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2013/06/27:読了 タイトル通りの本。 なんかぱっとしない。 あとがきに「日本人が当面している2つの重大問題に、明確な言語表現をあたえることによって、問題解決の糸口を見いだそうと試みた」とある。  1つは、原発を巡る論争。  1つは、「原発以後」のエネルギー論争。 2011/3/11 東日本大震災 2011/8/22 初版  地震直後に、空とぼけて、いつものスタイルで、反原発のあおり本を出したとしか思えない。  表層的に色々ありすぎて、本当のことはよく見えないが、今、大転換は静かに進んでいると思っている。  いつもの抽象的な表現で無く、「大転換」について、【明確な言語表現】で、見えない姿を、見えるようにしてほしい。

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2013/06/12

面白かった。資本主義の「次の世界」を知りたくて、読んだ本。中沢新一の本は初めてちゃんと読んだ。結局最後が「地域通貨」と「エネルギー利用のモジュール化」なら、こんなくどくど同じこと繰り返し書かなくても、もっと端的に読みやすくすればいいのに。 元々は「すばる」に掲載されたものだそう...

面白かった。資本主義の「次の世界」を知りたくて、読んだ本。中沢新一の本は初めてちゃんと読んだ。結局最後が「地域通貨」と「エネルギー利用のモジュール化」なら、こんなくどくど同じこと繰り返し書かなくても、もっと端的に読みやすくすればいいのに。 元々は「すばる」に掲載されたものだそうですが、その元は恐らく講演録?なんですかね?だからこんなダラダラしてるのかな。 頭の良さそうな人が頭の良さそうな人の本を読んで満足するための本、みたいで気持ち悪い部分もあった。 何かに引用が載っていたのがきっかけで読んだんだけど、忘れた…

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