フェルメール光の王国 の商品レビュー
光の王国に魅せられた分子生物学者の生命観《赤松正雄の読書録ブログ》 たまたま福岡伸一氏(分子生物学者)と高橋源一郎氏(作家)のラジオでの対談を聴く機会があった。その中でフェルメール作品だけの美術館の紹介があった。早速、足を運んだ。37のフェルメール作品のうち34もの作品が展示...
光の王国に魅せられた分子生物学者の生命観《赤松正雄の読書録ブログ》 たまたま福岡伸一氏(分子生物学者)と高橋源一郎氏(作家)のラジオでの対談を聴く機会があった。その中でフェルメール作品だけの美術館の紹介があった。早速、足を運んだ。37のフェルメール作品のうち34もの作品が展示されていた。これらは、「フェルメール・センター・デルフト」より受けた画像素材を最新技術によって、350年前の色彩を求めて再創作(クリエイト)したものである。 今まで見たいかなる絵画作品よりも光の鮮やかさに眩暈を覚えるほどだった。平面に描かれた絵画なのに立体感を感じさせ、奥行きを感じてしまう。福岡さんはもとの絵が展示され保管されている世界中あちこちの美術館を実際に訪れた。『フェルメール光の王国』はその華麗なる訪問記ともいうべきものだ。 34の作品について訪れた美術館での出会い順に、紹介されている。一枚一枚の絵や関連する写真は豪華であり贅沢だ。「時間を止めながら、時間の流れを表現する方法、いうならば微分的な要素が含まれている」―光のツブやら時の流れについての表現はこの人ならではのもの。分子生物学者としての彼が『生物と無生物のあいだ』の中で発見しえたものを、今度は美術作品の中で見出す試みといえようか。前者では正直いって今一歩掴み得なかったものも多い。科学と芸術のあいだを遊泳する著者の新境地に今度こそはとの思いもあって、読み進めた。「フェルメールは絶え間なくうつろう光の粒と時間の流れをいかに絵の中に封じ込めることが出来るかを一心不乱に考え続けた。絵画とそれを見つめるもの、そのあいだの界面をいかに溶かしうるかを全身全霊で求め続けた」という境地がそこはかとなく伝わってくる。 オランダからアメリカ、フランス、イギリス、アイルランド、ドイツ。訪れた国々の美術館で学芸員たちとかわす会話の妙。素晴らしい作品のグラビア。これまで美術館で幾度となく作品の写真集を手にしたが、この本ほど魅惑的なものはない。私はこれまでも中野京子『怖い絵』のような絵画の読み解き方的なものに興味をもってきたが、これはまた格段の異彩を放つ。 福岡氏は『動的平衡』のなかで、独自の生命観を展開している。ここでも「私たち生物は絶え間のない流れの中にある元素の淀みにすぎない。そして生命にとっては、つねに変わり続けることが、できるだけ変わらないための唯一の方法なのだ」とあり、日蓮仏法で説く生命観との類似性を思わせ興味深い。 最後の「ある仮説」がまた楽しい。同時代、同地域に生きたフェルメールと光学顕微鏡の先駆者レーウェンフックとの交流を推察している。これは美術ミステリーのようで、好奇心が妙に高められる。
Posted by
37点しか 存在しない フェルメールの「絵」 の一つ一つ を 堪能できる 旅 その地に なかなか 行くことの出来ない 我々フェルメール 好きには たまらない 好著 の 一冊
Posted by
福岡ハカセの生物学者としてキーワードである「動的平衡」を鑑みると、フェルメールの絵に魅かれるのがよく理解できる。ハカセの専門分野の多くの科学者たちとフェルメールを交錯させながらレーウェンフックで始まりレーウェンフックの昆虫の観察スケッチで閉じるといった構成は、虫大好き少年だったハ...
福岡ハカセの生物学者としてキーワードである「動的平衡」を鑑みると、フェルメールの絵に魅かれるのがよく理解できる。ハカセの専門分野の多くの科学者たちとフェルメールを交錯させながらレーウェンフックで始まりレーウェンフックの昆虫の観察スケッチで閉じるといった構成は、虫大好き少年だったハカセの真骨頂と言え、楽しめた。「フェルメールの作品は、それを所蔵する美術館にあえてわざわざ出かけて行ってこそ見たい。」それはそのとおりと思うが、この本に触発されてBunkamuraの「フェルメールからのラブレター展」を見に行った。目玉は修復後初公開となる「手紙を読む青衣の女」だが、私の一押しは「手紙を書く女」。彼女の静謐で柔らかいまなざしを前にするととても穏やかな気持ちになれる。ということで昔見た「少女」にもまた会いにメトロポリタン美術館に飛んで行きたくなった。
Posted by
駄作の部類。帯には「科学と芸術のあいだを遊泳する(中略)極上の美術ミステリー紀行」とあるが、版元の経費でヨーロッパ旅行しているだけに見えた。肝心要のフェルメールが描いたという「光のつぶだち」は最後まで消化できないまま終わった。 掲載される絵画のチョイスがわけわからない。本文に...
駄作の部類。帯には「科学と芸術のあいだを遊泳する(中略)極上の美術ミステリー紀行」とあるが、版元の経費でヨーロッパ旅行しているだけに見えた。肝心要のフェルメールが描いたという「光のつぶだち」は最後まで消化できないまま終わった。 掲載される絵画のチョイスがわけわからない。本文にまったく登場しないフェルメール作品の写真がいくつも挿入されているのに、重要な意味をもつエッシャーなどの図版がない。まず間違いなく、複数ヶ所で許可とる面倒を避けた編集者の怠慢。心からしょうもない本。
Posted by
福岡氏と美術館が好きなので手に取ったが、フェルメールはあまり好きではなくそこまで楽しめなかった。 こういう旅の仕方は好き。
Posted by
フェルメールとその絵にまつわる場所を旅行し、実際に絵を見に行く本。 ブログはこちら。 http://blog.livedoor.jp/oda1979/archives/4054994.html
Posted by
フェルメールの存在は、実は福岡伸一さんの講演会で話をされていたのきっかけに知った。 その時は、「地理学者」の絵について何か話をされていた。(何を話していたのかは覚えていないが)。 本書ではフェルメールの絵が数多く紹介されているが、やはり特徴てきなのは光の表し方だろう。 なん...
フェルメールの存在は、実は福岡伸一さんの講演会で話をされていたのきっかけに知った。 その時は、「地理学者」の絵について何か話をされていた。(何を話していたのかは覚えていないが)。 本書ではフェルメールの絵が数多く紹介されているが、やはり特徴てきなのは光の表し方だろう。 なんとも暖かい光の加減を見事なまでに表している。 そして福岡さんの名文がこれらを引き立たせる。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
翼の王国連載作です。私も海外に行ったときは出来るだけ時間をとって、美術館へ行ったりしているのですが、漫然と観ているだけなので駄目ですね。フェルメールもいくつか観てるはずなのに、、、。筆者の専門分野を観て,そういう見方もあるのかと納得しました。
Posted by
これ、☆10個つけることが出来るなら、それでも15個つけたくなるぐらい面白い本でした。 ヨーロッパ、アメリカの美術館に点在するフェルメール作品を辿る紀行文なんですけど、超絶に楽しいのです。生物学者である作者が、自らの専門分野の知識を活かし、各地ゆかりの学者のお話をからめつつ、フェ...
これ、☆10個つけることが出来るなら、それでも15個つけたくなるぐらい面白い本でした。 ヨーロッパ、アメリカの美術館に点在するフェルメール作品を辿る紀行文なんですけど、超絶に楽しいのです。生物学者である作者が、自らの専門分野の知識を活かし、各地ゆかりの学者のお話をからめつつ、フェルメール作品に隠されたナゾを推理してくんですけど、なんというか、それ以上に、各都市の空気感みたいなのが行間からにじみでてて、チョーー旅行に行きたくなるという。って、これ、もとはANAの機内誌の連載だったんですね。たまらんわ!!
Posted by
ANAの機内誌「翼の王国」に掲載されたもの。 フェルメールの作品が所蔵されている美術館を巡る旅がテーマの、機内誌というコンセプトに合った内容。 各国の美術館を巡りながら、野口英世や数学者ガロア、ライアル・ワトソンとフェルメールの絵が描かれた時代背景を語りつつ、特徴である「光の...
ANAの機内誌「翼の王国」に掲載されたもの。 フェルメールの作品が所蔵されている美術館を巡る旅がテーマの、機内誌というコンセプトに合った内容。 各国の美術館を巡りながら、野口英世や数学者ガロア、ライアル・ワトソンとフェルメールの絵が描かれた時代背景を語りつつ、特徴である「光のつぶだち」を、同じオランダ、同じ年に生まれた顕微鏡の父レーウェンフックとの関わりについて仮説を立てる。 結論は出なくても、こんな知的好奇心をそそる旅って素敵だね。 写真が多く(その写真がまた良い)本の作りも素晴らしい。
Posted by