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砂の本 の商品レビュー

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26件のお客様レビュー

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2026/02/13

ボルヘスの小説にはあらゆる対立的なものが同時に織り込まれている。個別と全体、時間と空間、生と死、有と無、遠と近。文学において対立とは物理的ないし精神的な距離を生じさせるためのある種のレトリックだが、ボルヘスはそれを敢えて自らに禁じている。 『伝奇集』の冒頭に記された有名な一節は...

ボルヘスの小説にはあらゆる対立的なものが同時に織り込まれている。個別と全体、時間と空間、生と死、有と無、遠と近。文学において対立とは物理的ないし精神的な距離を生じさせるためのある種のレトリックだが、ボルヘスはそれを敢えて自らに禁じている。 『伝奇集』の冒頭に記された有名な一節は、彼の文学的態度を端的に示している。 "長大な作品を物するのは、数分間で語りつくせる着想を五百ページにわたって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である。よりましな方法は、それらの書物がすでに存在すると見せかけて、要約や注釈を差し出すことだ。"(『伝奇集』、プロローグ) 個別的な断片を差し出すことによって、それと表裏一体を成す全体を欠落として提示することと同義だ。ボルヘスの短いテクストは、人間の生命一つでは到底記述しようもない世界の全体を、影画という形でくっきりと浮かび上がらせる。 "ウルリーケはすでに着衣を脱ぎすてていた。本来の名、ハビエルでわたしを呼んだ。雪が激しくなっているのが感じられた。もはや家具も鏡も消えた。二人のあいだには剣もなかった。砂のように、時間が流れた。幾世紀にわたる闇のなかで愛が流れ、わたしは、最初にして最後に、ウルリーケのイメージを抱いた。"(『砂の本』、「ウルリーケ」) もちろん、言外の影を美しく彫琢するためには、膨大な知識が要る。彼が言語という有限をもって世界という無限を幻視させることができるのは、彼が「記憶の図書館」と形容するに相応しい圧倒的な知識を有していたからに他ならない。世界史と思想史を遍く知悉していたボルヘスには、世界それ自体の姿が本当に見えていたのかもしれない。 "もし空間が無限であるなら、われわれは、空間のいかなる地点にも存在する。もし時間が無限であるなら、時間のいかなる時点にも存在する。"(同上、「砂の本」) 昨今、ラウラ・シタレラやマティアス・ピニェイロといった映画監督が映画界を賑わせている。市井の人々は「なぜアルゼンチンという辺境からこんな才能が?」と首を傾げるが、ホルへ・ルイス・ボルヘスというあまりにも偉大な作家の足跡を思えば、そこには一切の疑念の余地もない。

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2026/01/26

ガルシアマルケスを読んだ時にも感じるような浮遊感というか、取り止めのなさを短編で感じられる。読みやすいかと言われるとそうじゃないけど、メッセージ性も感じられて面白い。

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2025/10/31

初ボルヘスでしたが、非常にクオリティの高い作品でした。 「読む」というよりは「挑む」という表現の方がしっくりときます。いずれの作品も10ページ程度ですが、それでも理解することが難しいぐらい文構造も複雑で情報量も多いです。ただ、2回3回と読み返していくうちに少しずつ解像度が上がって...

初ボルヘスでしたが、非常にクオリティの高い作品でした。 「読む」というよりは「挑む」という表現の方がしっくりときます。いずれの作品も10ページ程度ですが、それでも理解することが難しいぐらい文構造も複雑で情報量も多いです。ただ、2回3回と読み返していくうちに少しずつ解像度が上がってきて、「もしかしてこういう意味?」と自分なりの解釈が出来るようになってくる、その過程に「挑む」ことの面白さを感じられる作品でした。 後半パートは「汚辱の世界史」という悪党をテーマにした短編になっていて、海外の女海賊や殺人犯、そして日本からは吉良上野介をモチーフにした作品も載っています。1人1人で話が分かれていて、いずれも10ページ程度の短編ですが、これまたドラマチックで面白いです。少ない文量でも場面が鮮明に浮かんでくるので、とにかく読み応えがありました。これだけ短いのに凄いなぁ〜と感心しながら読んでいました。1話読むだけでも中編小説読んだぐらいの読後感でした。 ボルヘスは、長編小説は短編で表現できることを無駄に引き延ばしているだけだと、とにかく否定派の立場らしいです。でも、なるほど。この作品を読んだらその言葉にも納得です。私は長編の方が好きですけどね。

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2025/04/13

コエーリョを読んで思い出した 中学生の時にバベルの図書館を読んでよく分からんと思った思い出 成人してから読んでみても読後感は対して変わらず…図書館で借りたのもあり、半分くらいしか読めなかった 序盤の老人の自分と会話する話が、夢みたいで好き 南米文学って幻想的な、示唆的な著者が多い...

コエーリョを読んで思い出した 中学生の時にバベルの図書館を読んでよく分からんと思った思い出 成人してから読んでみても読後感は対して変わらず…図書館で借りたのもあり、半分くらいしか読めなかった 序盤の老人の自分と会話する話が、夢みたいで好き 南米文学って幻想的な、示唆的な著者が多いのか?

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2022/07/30

初ボルヘス。短編ばかり残したアルゼンチンの作家/詩人です。本作は捉え所のない話が13篇。どれも浮遊感があり幻想的で白昼夢のような話。掴みづらく消化しきれてないので感想はまだ出てこないです。鎌倉の古書店で購入。再読すると印象がかわりそうな本。 「伝奇集」も積読にあったような気が…

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2025/05/28
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※このレビューにはネタバレを含みます

前半の砂の本は話としては幻想小説ジャンル。日本で言うなら安部公房みたいな。 でもちょっと退屈だったかな~。 タイトルの砂の本が教訓話めいていてちょっと好き。 後半の『汚辱の世界史』にまさかの忠臣蔵が出てくるとは。 あと女海賊のメアリ・リードとアン・ボニーは絞首刑にはなってない説もあるようです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%8B%E3%83%BC

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2019/10/31

ボルヘスの短編集『砂の本』、『汚辱の世界史』を収録。  久しぶりに病院に定期検診に行ったら2時間待ちで、10ページほどの短編をひとつ読んでは自分の番号が表示されていないか確認し、スマホをチェックし、次の短編を読む、を繰り返していたら2時間のうちに『砂の本』部分を読み終わってし...

ボルヘスの短編集『砂の本』、『汚辱の世界史』を収録。  久しぶりに病院に定期検診に行ったら2時間待ちで、10ページほどの短編をひとつ読んでは自分の番号が表示されていないか確認し、スマホをチェックし、次の短編を読む、を繰り返していたら2時間のうちに『砂の本』部分を読み終わってしまいました。  そんな感じで読んでしまったので正直、ひとつひとつがあまり頭に残っていない。なんか漠然とした、夢の中で聞いた物語のような。それもまたボルヘス的なのでしょうか。  (ちなみに、専用アプリがあればスマホでも自分の番号を確認できること、病院にはカフェも併設されていることを後から知る。この今さら感もちょっとボルヘス。)  悪役列伝である『汚辱の世界史』には女海賊やビリー・ザ・キッドと並んで吉良上野介が登場。ラテンアメリカで『忠臣蔵』がどのくらい知られているのか不明ですが、討ち入り前に隣近所に断りを入れた話とか、大石内蔵助をなじった人物が墓に詫びにくるエピソードなんかが嬉々として書かれている。  以下、引用。  「お前の最初の女は、なにをくれた?」と彼はきいた。 「なにもかも」と答える。 「わしにも、人生はすべてをくれた。生はすべての者にすべてを与える。だが、多くの者がそれに気づかぬ。」  彼はそれを「ユートピア」と名づけた。「そんな場所は存在しない」という意味のギリシア語である。 ケベード  「二千冊もの本を読める者はいません。わたしも、今まで生きてきた四世紀のあいだに、半ダースの本も読んではいません。それに、大事なのは、ただ読むことではなく、繰り返し読むことです。今ではもうなくなったが、印刷は、人間の最大の悪のひとつでした。なぜなら、それは、いりもしない本をどんどん増やし、あげくのはてに、目をくらませるだけだからです」  画や活字の方が、それらが写しだす物よりもリアルでしたね。発表されたものだけが真実だった。『存在スルトハ、認識サレルコト』つまり、『存在することは、写真にとられることだ』というのが、われわれ独自の世界認識の、はじめであり、真中であり、終りだった。  朦朧とした冒頭は、カフカの小説を真似ようとしたもので、終結部は、チェスタトンかジョン・バニヤンの法悦境に到ることをめざしたが、あきらかに失敗した。  読むことは、さしあたり、書くことの後に来る行為である。それは、より慎み深く、より洗練された、より知的な行為なのである。 

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2018/10/28

【由来】 ・図書館のマイライブラリの「テーマ一覧」の「変化する知と図書館」で。 【期待したもの】 ・ 【要約】 ・ 【ノート】 ・

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2016/12/21

短編集であり,どうやら「砂の本」と「汚辱の世界史」が合冊されているようである.「砂の本」は前者の中の一編のタイトルでもあるが,本書の前半はいずれも砂でできた本のように捕らえどころがなく,何度も読み返した方が良さそうだ.後半の「汚辱の世界史」では吉良上野介と赤穂浪士のお話しも掲載さ...

短編集であり,どうやら「砂の本」と「汚辱の世界史」が合冊されているようである.「砂の本」は前者の中の一編のタイトルでもあるが,本書の前半はいずれも砂でできた本のように捕らえどころがなく,何度も読み返した方が良さそうだ.後半の「汚辱の世界史」では吉良上野介と赤穂浪士のお話しも掲載されている.

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2016/08/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

短編集20代と70代の自分が出会う話、片側しかない円盤をもつ王の子孫の話、無限のページをもつ本の話、どれも面白いが、短すぎてアイデアが未消化な気がする。 併収の『汚辱の世界史』のほうが、各国の歴史・伝説から、ギャング・詐欺師・悪党の話をまとめていて、面白い。

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