「フクシマ」論 の商品レビュー
先日、小浜から敦賀へとつながる国道162号線を走った。 「郊外ですらない」何も無い道。あるのは「原発」への案内標識―― ------------------------------ この本は、原発問題の本質を捉えていると思う。つまり、原発問題の中心にあるのは「内なるコロナニゼ...
先日、小浜から敦賀へとつながる国道162号線を走った。 「郊外ですらない」何も無い道。あるのは「原発」への案内標識―― ------------------------------ この本は、原発問題の本質を捉えていると思う。つまり、原発問題の中心にあるのは「内なるコロナニゼーション」問題だということだ。原発労働者の多くが、身元のはっきりしない「ジプシー」的人材であったり、中でもとくに過酷な作業に従事しているのは「黒人」だ――などと語られるのはじつに象徴的である。そう、「コロナニゼーション」問題を解決しないことには、いくら問題提起しようと、所詮、机上の空論、すなわち「帝国側」「中央側」からの「上から目線」での主張にすぎない。 では、いかにして「コロナニゼーション」を解消(解放のほうが適切かもしれない)するのか。 個人的には、とりあえず「地方」「中央」ともに民度を高めていくことの必要性を感じる。「地方」は「前近代の残余としての愛郷」からもう一つ上の視点を持つ必要があるし、「中央」は「中央」で「搾取している側」という自覚を持つことが必要なのではないか。 (具体的に思うのは、「電力供給を受けている中央側の脱原発派」が本当に原発を止めたいのなら、「地方」が「原発」に依存しなくてもいいような資本を投入するのが手っ取り早いのではないかと思う。勿論、そのさいに必要な議論はある。たとえば「地方の一領主にのみ資本が届く体制を避け、いかに地方を効率的に活性化させるか」といった議論だ。しかし、現状の運動を観る限りでは、搾取している側は全くリスクを払わずにシュプレヒコールをあげるのみではないか??本質を捉えていない問題提起は世間から乖離し、どんどん衰退していってしまうのではないか??)
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原子力を対象として、中央と地方、支配と被支配を原発推進でも反対でもない当事者内部からのニュートラルな視点から問題の本質を見極めようとした非常に面白い研究。 日本に暮らす者として読んでおいたら良いんじゃないかなと思います。 しかし、この本が、東京大学大学院の修士論文として書かれたも...
原子力を対象として、中央と地方、支配と被支配を原発推進でも反対でもない当事者内部からのニュートラルな視点から問題の本質を見極めようとした非常に面白い研究。 日本に暮らす者として読んでおいたら良いんじゃないかなと思います。 しかし、この本が、東京大学大学院の修士論文として書かれたものだとは、レベル高くて驚きました。
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【読書その36】本書は、福島県いわき市で生まれ育ち、2006年から福島原発を研究していた東大博士課程在籍の開沼博氏が「原子力ムラ」が生まれた歴史とその構造、日本社会における中央と地方の関係について論じた本。著者によれば、「原子力ムラ」とは2つの意味があり、1つめは、原発とその関連...
【読書その36】本書は、福島県いわき市で生まれ育ち、2006年から福島原発を研究していた東大博士課程在籍の開沼博氏が「原子力ムラ」が生まれた歴史とその構造、日本社会における中央と地方の関係について論じた本。著者によれば、「原子力ムラ」とは2つの意味があり、1つめは、原発とその関連施設を抱える地方、2つめは中央側にある閉鎖的保守的な原子力行政を意味する。原子力発電所を福島県が誘致した背景や、その後の地方と中央との複雑な関係。佐藤元福島県知事へのインタビューを含めた現地調査から見える、地方側の「原子力ムラ」の現実。
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原子力を受け入れた村は、原子力を押しつけられたのではなく、受け入れざるを得ない理由があった。原子力を推進する側と原子力を受け入れる側の共存関係が地震により崩壊した今、改めて原子力を、そせて地方を考えさせられる本。
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震災前から地道にフィールドワークを行なっていただけあって文献や関係者の証言によって基盤がしっかりと固められてる。 原発は危険だからすぐ止めなきゃ!いや現実的に考えろ原発無しには既に立ち行かない!のやりとりの前に考えなきゃいけない事があるだろうと。戦後から連綿と続く経済・エネルギー...
震災前から地道にフィールドワークを行なっていただけあって文献や関係者の証言によって基盤がしっかりと固められてる。 原発は危険だからすぐ止めなきゃ!いや現実的に考えろ原発無しには既に立ち行かない!のやりとりの前に考えなきゃいけない事があるだろうと。戦後から連綿と続く経済・エネルギー政策がいかにして現在の「原子力ムラ」と<原子力ムラ>を作り上げたのか。今後の道筋を考える上でもまず振り返ってみる事が重要。 本書は近代地方史としての優れた思索も含んでいる。
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「原子力ムラ」は原発を「抱擁」しながら生きてきた。それがフクシマだった。そう捉える事でしか、原発との「共存共栄」という、一見摩訶不思議な論理に迫ることは出来ない。 本書は、元々修士論文として書かれたものを急遽出版したという背景がある。処女作にして、かくも広範な読者を獲得した開沼氏...
「原子力ムラ」は原発を「抱擁」しながら生きてきた。それがフクシマだった。そう捉える事でしか、原発との「共存共栄」という、一見摩訶不思議な論理に迫ることは出来ない。 本書は、元々修士論文として書かれたものを急遽出版したという背景がある。処女作にして、かくも広範な読者を獲得した開沼氏の視座の確かさ、ブレイクスルーにまずは★五つを献上したい気分。 しかし、論文ゆえの固さ、ナイーブさは、読者にもある種の緊張、覚悟を迫ってくる。「『脱原発のうねり』もまた何かをとらえつつ、他方で何かを見落としている…(中略)…ただ純粋にそれ(=原発:レビュアー注)を止めることを叫び、彼らの生存の基盤を脅かすこともまた暴力になりかねない」とは何か。読者がいわゆる「中央」の立場に安住することを良しとしない視座の厳しさは、ちょっと万人向けでは無いし、想定読者層が今ひとつ絞り切れていないとも思うので、★一つ減。
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2011年の1月14日に著者の修士論文として東京大学大学院に提出されたのが本書だ。その時点では「『原発』といってもなかなか伝わらない。興味も持たれない」テーマでしか無かった。 しかし、その2ヶ月後の3月11日、東日本大震災が起こり、福島県の原発がある町を研究対象とした本書は一気に注目をあびることになった。まさにそれは著者が巻末で書いているように、夕闇の中、誰もいないと思ってグラウンドを周回していて、グラウンドの証明がパッと点いたら、満場の観客の視線を一身に浴びていた、という状態だった。 しかしながら、一方で、著者は自分の研究の視点(それはいわゆる「地域の活性化」と呼ばれるような中央と地域の駆け引きを、単なる二項対立という観点ではなく、一種の共生のようなものとして捉え、その成立過程を丹念に追う)とは異なり、マスメディアも反マスコミの識者も、旧来のステレオタイプな視点しか持ち得ないという事を知って、焦燥感、危機感までを感じているようにも見える。 今年のBestに入れたい一冊。
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2011の日本国民必読書。 戦後日本の成長神話と服従のメカニズム。 反原発、脱原発を語る前に是非読むべき。 原発立地の首長に推進派が再選される構図がよくわかる。 根底に臨床心理学的視点があって、すごく読みやすかった。
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福島県出身の著者が、原発事故直前に修士論文として提出したものがベースとなっている。故に事故後ではなく事故前の話、それも相当前からの話。著者は社会学者であり、原発の技術の話でも政治の話でもなく、社会の中の原子力発電のポジション、「電力」とは別の「原発依存」を描いた話。 著者がいう「...
福島県出身の著者が、原発事故直前に修士論文として提出したものがベースとなっている。故に事故後ではなく事故前の話、それも相当前からの話。著者は社会学者であり、原発の技術の話でも政治の話でもなく、社会の中の原子力発電のポジション、「電力」とは別の「原発依存」を描いた話。 著者がいう「原子力ムラ」は、飯田哲也がいう原子力産業に関連するコミュニティを指すのではなく、原発立地自治体そのものを指している。原子力マネーが転がり込んでくる(引っ張り込んでくる)と、ムラはかくも変わっていくのかと。 脱原発の声を聞くにつけ、各地の原子力ムラでは、栄えてきた歴史の逆をたどることになるのか、という恐怖につつまれているのだろうか。
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学生らしい素直な文体で福島と原子力発電所をめぐる問題を浮き彫りにしていくその姿勢に感服しました。問題提起のアプローチも的確で色々と参考になります。
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