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世界屠畜紀行 の商品レビュー

4.2

74件のお客様レビュー

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2012/09/30

去年からちょこちょこ読んでようやく読了。 『世界屠畜紀行』の名の通り、世界中で動物を屠り、肉を作る現場を取材したルポタージュ。 屠畜を巡る長い長い旅である(著者曰く、まだまだ行きたいところがあるそうで現在続編を執筆中とか)。 本書は『部落解放』という雑誌に掲載されていた連載で...

去年からちょこちょこ読んでようやく読了。 『世界屠畜紀行』の名の通り、世界中で動物を屠り、肉を作る現場を取材したルポタージュ。 屠畜を巡る長い長い旅である(著者曰く、まだまだ行きたいところがあるそうで現在続編を執筆中とか)。 本書は『部落解放』という雑誌に掲載されていた連載であり、「日本における屠畜という行為、屠畜という職業に就く人々に対する差別感」に対する疑問がそもそもの執筆のきっかけになっているそう。 しかし私が本書を手に取ったのは部落差別、職業差別に興味があったからではない。 帯の「こうして今日も世界で『肉』は作られる」という文字に引かれただけのことだ。 でもそれこそが著者の最大の狙いだったのだ。 あとがきにこうある。 「本書では、日本はもとより芝浦の屠畜場で働く人々が具体的にどのような差別を受けてきたかの記述は最小限にとどめている。差別を受けた側の立場に成り代わって被差別の歴史を詳しく書くよりも、まず屠畜という仕事の面白さをイラスト入りで視覚に訴えるように伝えることで、多くの人が持つ忌避感を少しでも軽減したかった。」 ああ、まんまとひっかかった。 著者の屠畜と差別感に対する疑問は随所に現れているが、それよりも何よりも「屠畜」に対する関心や愛着が感じられるルポタージュである。 私も著者と一緒に世界中を旅し、楽しみ、自分の中の差別感を見つめるきっかけとなった。 今まで意識したことのない差別感と向き合う。 私はもちろん肉を食べる。 では、食べるために家畜を殺すことは「かわいそう」なことなのか、家畜を殺す人々は残忍で差別されて当然なのだろうか・・・。 最後に、屠畜には差別感だけではない他の様々な社会問題をも孕んでいる、ということを示唆しながら本書は終わっている。 続編に期待が膨らむ。

Posted byブクログ

2011/11/28

筆者がアメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。世界の屠畜現場を徹底取材して書かれている本書には各地の「お国柄」というものがにじみ出ておりました。 僕も前から何度も食肉を作る過程を扱った本をいくつか紹介してきて、動画サイトでそういう様子を見ていても、...

筆者がアメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。世界の屠畜現場を徹底取材して書かれている本書には各地の「お国柄」というものがにじみ出ておりました。 僕も前から何度も食肉を作る過程を扱った本をいくつか紹介してきて、動画サイトでそういう様子を見ていても、やっぱり平然と肉を食べることができるのは、この本の作者とどこか似通った感性を持っているからではないかと勝手にそう思っています。この本のあらずじは 「食べるために動物を殺すことをかわいそうと思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じるのは、日本だけなの?他の国は違うなら、彼らと私たちでは何がどう違うの?」 という筆者の疑問に端を発し、アメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄国内外の屠蓄の現場を訪ね歩き、詳細なイラストと、文章でつづったものです。この本を読んで、屠蓄のやり方、というものは国や民族によって、『お国柄』というものがすごく出るものなんだなと実感しました。 特にモンゴルの羊のつぶし方は長年の伝統で、こういうものが脈々と伝わっているんだなということに感動を隠せませんでした。そして、日本。東京は品川にある芝浦食肉加工場にも筆者は取材を敢行し、一体の牛や豚が屠蓄され、解体されて肉となり、皮革製品をつくるための革となり、ホルモンとなっていく様子をレポートしております。そこで展開されているのは目を見張るような職人芸で『仕事が人間を創る』という教えは本当なんだなと確信を深めたしだいでございます。日ごろ、僕らがおいしくいただいている、肉。それがいかにしてできるのか?今だからこそ、知っておかなければいけないことのひとつだと確信しております。

Posted byブクログ

2011/11/26

世界のあらゆる屠畜の様子を紹介しています。 牛/豚/羊/犬/ラクダまで!! 正直、かなり生々しい表現も満載で、想像するだけでお肉はちょっと・・・となりそうなものやけど それ以上に 肉が食べたい!!と思わせる文章力がすごい!! ひとえに筆者の取材対象への愛がそうさせるのだなと感じ...

世界のあらゆる屠畜の様子を紹介しています。 牛/豚/羊/犬/ラクダまで!! 正直、かなり生々しい表現も満載で、想像するだけでお肉はちょっと・・・となりそうなものやけど それ以上に 肉が食べたい!!と思わせる文章力がすごい!! ひとえに筆者の取材対象への愛がそうさせるのだなと感じます。 根性と愛情に満ちた1冊 イラストも魅力的! 身近なことのはずやのに知らないことだらけでワクワク感も半端ないです。 物事を公平に、そのものを伝えるってめちゃくちゃ難しいことやなと感じます。 おすすめ!

Posted byブクログ

2011/10/02

 タイトルどおりに世界の屠畜現場をルポ。  まずは詳細なイラストに目を奪われます。淡々と精密に描いているのですが、どこかユーモラスでもあり。内臓グッチョリなものが多くても、決してグロさは感じられない。  屠畜の「技」を紹介すると同時に、現場に関わる人たちへの差別問題に触れることが...

 タイトルどおりに世界の屠畜現場をルポ。  まずは詳細なイラストに目を奪われます。淡々と精密に描いているのですが、どこかユーモラスでもあり。内臓グッチョリなものが多くても、決してグロさは感じられない。  屠畜の「技」を紹介すると同時に、現場に関わる人たちへの差別問題に触れることがしばしば。  うーん、素晴らしい著書だとは思うけど、正直タイトルに求めていたものとはちょっと違う。もっと「モンド」な視点で語る方が、僕は逆に考えさせられたりするんだけど。

Posted byブクログ

2011/12/09

素晴らしい本だった。 牛や豚や鶏など肉を食べている人でも、 なぜ屠畜(家畜を殺して肉にすること、屠殺とも)を気味悪がるのか、 という根源的な問い。 命をいただくという行為の奥深さ。 主張の全てに同意できるわけではない。 けれども、取材姿勢と、豊かなイラストと正直な文章による...

素晴らしい本だった。 牛や豚や鶏など肉を食べている人でも、 なぜ屠畜(家畜を殺して肉にすること、屠殺とも)を気味悪がるのか、 という根源的な問い。 命をいただくという行為の奥深さ。 主張の全てに同意できるわけではない。 けれども、取材姿勢と、豊かなイラストと正直な文章による表現が胸を打つ。

Posted byブクログ

2011/08/27

なぜ屠畜に携わる人が差別されるのか、を考える上で大事な本。 この本を読んで「俺は差別しないけどなぁ」と思っている自分の心にこそ、別なものに対して差別したい心が潜んでいるような気がしている。 その差別したい心を偽って「私は差別しません!」と言ってしまうことこそ最悪なんであって、必要...

なぜ屠畜に携わる人が差別されるのか、を考える上で大事な本。 この本を読んで「俺は差別しないけどなぁ」と思っている自分の心にこそ、別なものに対して差別したい心が潜んでいるような気がしている。 その差別したい心を偽って「私は差別しません!」と言ってしまうことこそ最悪なんであって、必要なのは、差別したい対象に直面した時にどういう態度をとるかなんだと思う。 差別したい対象は、嫌いな人と同じように、突然お付き合いしなければいけないこともあろうから。

Posted byブクログ

2011/08/11

今までずっと詳しく知りたかったことが書いてあり、とても面白く読めた。 イスラム世界やアメリカ、インド、韓国、そして日本でどのように家畜が「屠畜」(屠殺)されているのかを分かりやすく、面白く(?)伝えている本。 イラストが詳細で、それでいて温かみがあって残酷さはあまりない。 ...

今までずっと詳しく知りたかったことが書いてあり、とても面白く読めた。 イスラム世界やアメリカ、インド、韓国、そして日本でどのように家畜が「屠畜」(屠殺)されているのかを分かりやすく、面白く(?)伝えている本。 イラストが詳細で、それでいて温かみがあって残酷さはあまりない。 文章が屠畜の様子をある意味浮つきながら面白がっているようにも見えるのが少し嫌だった。 その分最後の最後で、著者が自分で鳥の死体から羽を毟るところでの落ち着いた視点は興味深かった。 命をいただくことへ責任感や罪悪感を過度に感じてしまうのが日本人なのだろうか。 屠畜を行う人への差別のようなものもないつもりでいたし、肉食も否定していないし、ベジタリアンでもないが、この本を読んでいる間は肉を食べる気にはなれなかった。 直接見えなくでも、ゼラチンやスープの出汁、その他もろもろの食品に使われているのだから口にしていないということはないが……。 差別の歴史や、その反抗がどのように行われてきたかは意図的に省かれているようだが、次刊では詳しく触れてほしいと思う。 屠畜だけでなく、乳牛や卵の生産にも思うところはあり、これらも含めてじっくり考えていきたいと思う。

Posted byブクログ

2011/08/07

角川で文庫化されてたので買った。何カ所かの本屋でチェックしたのですが、特に丸の内丸善ではかなりの売れ行きと見ました。 何でそんなことチェックするのかというと、最近読んでいる『本の雑誌』に内澤さんが「黒豚革の手帳」という連載を持っているからです。(ミステリーの連載ではなく皮革装丁が...

角川で文庫化されてたので買った。何カ所かの本屋でチェックしたのですが、特に丸の内丸善ではかなりの売れ行きと見ました。 何でそんなことチェックするのかというと、最近読んでいる『本の雑誌』に内澤さんが「黒豚革の手帳」という連載を持っているからです。(ミステリーの連載ではなく皮革装丁が趣味のルポライターの身辺雑記) 倒錯する。雑誌というのはコミュニティなんやなぁと思います。 肝心の中身は、特にイスラム圏と、日本の芝浦屠場の屠畜ルポは詳細で、今まで全く知らなかったことばかり(私が不勉強なせいもある)の濃い内容。屠畜の過程や方法だけでなく、そこで働く人たちへのインタビューもボリュームたっぷり。 心臓が動いてる状態でないと放血できない、とか言われてみればそのとおりなのに、そうか、生きたまま頸動脈切るんだよな、とか初めて考えた。 ちなみに日本では豚は炭酸ガスを使って仮死状態にし、牛は電気銃を使って打額して仮死状態にした上で頸動脈を切る。 肛門や食道をいかに早く結紮し、正肉に内蔵の中身を触れさせないかという工夫とか、知らなかったことオンパレード。肉食いまくるくせに屠畜を知らずとは(ましてや忌み嫌うとは)どういうこっちゃという筆者の主張ももっとも。 若干、露悪的かなぁとか考察弱いなぁとか思うところはあるものの、それを措いても十分読む価値はあると思います。 特に最終章で、狩猟でとったキジと小ガモを、紙袋に突っ込んで山手線に乗って持って帰り、たった一人で自宅風呂場で屠畜するルポは、短いけれど前半のちょっと浮ついた感じが一掃されるので一読の価値あり。 他の章でウキウキしていた内澤さんが苦悶しながら(『許してくれえという気持ちをはじめて、ようやくはじめて味わった』)、やり遂げた後の感想も深い。 『殺すのはほんの一瞬だ(ヘタくそだと時間がかかる場合もあるが)。しかし殺した死体と一対一で向き合って、食える肉にするまでの時間は、はるかに長くて、しんどいものだったのだ。やはり私には屠殺じゃなくて屠畜ということばがぴったりくる。』

Posted byブクログ

2011/06/27

昨年宮崎で起こった口蹄疫のこともあり、屠畜という分野を「他の人よりかは多分知っている状態」である自分を戒めたくて読んでみた。 文章としてはどうかなーと感じる部分も多々あった。差別問題に関する記述が所々でてきたが、これはどうも蛇足だった感がする。(差別問題を取り上げるな、という意...

昨年宮崎で起こった口蹄疫のこともあり、屠畜という分野を「他の人よりかは多分知っている状態」である自分を戒めたくて読んでみた。 文章としてはどうかなーと感じる部分も多々あった。差別問題に関する記述が所々でてきたが、これはどうも蛇足だった感がする。(差別問題を取り上げるな、という意味では決してなく、扱うなという意味でも決してなく。)もっと別の所で掘り下げてもよかったのではないかなと。屠畜という行為そのもののこと、差別や文化の否定に関することと分けて読みたかった気もする。 世界の屠畜文化の描写はとても分かりやすく素晴らしかった。文化として肯定/否定する姿勢や、家畜の擬人化などの問題はどこにでもある問題で考えていかないとなぁと思わされる部分もあった。 「畜産王国」で育ってきたこと、子どもの頃から「屠ること」について高齢者から聞かされてきたこともあり、私自身にはこの本を読んで肉が食べれなくなったとかいうことはない。むしろ見えにくかった裏側が見えてよかったと思う。 モンゴルの章や、殺すという単語とは別に「切る」などの意味で言葉を分けている点など、前述した口蹄疫の問題を改めて考えさせられる内容も多くあった。私の中ではまだ口蹄疫は終わった問題ではないので、結びつけて考えさせられて、勉強になった。

Posted byブクログ

2011/06/27

世界の屠畜事情。 突撃取材という感じで、いろいろな国へ行って、何でも見て、食べちゃうバイタリティは素晴らしいし、異文化はとても興味深い。 でも、職業差別云々について、頻繁に触れてくる割には、とりとめのない話に終始した感じなのが、残念。 しかも、差別されてる側の人に、なんで差別され...

世界の屠畜事情。 突撃取材という感じで、いろいろな国へ行って、何でも見て、食べちゃうバイタリティは素晴らしいし、異文化はとても興味深い。 でも、職業差別云々について、頻繁に触れてくる割には、とりとめのない話に終始した感じなのが、残念。 しかも、差別されてる側の人に、なんで差別されてるんですかね?って聞いてしまうのは、あまりにも無神経だなと思った。

Posted byブクログ