出世花 の商品レビュー
この所、高田郁の作品に嵌っています。 「みをつくし料理帖」「銀二貫」、 そしてこの度、「出世花」を読みました。 この小説の女主人公は武家の娘、旅中、毒草にあてられ父を失い、 本人にもあるお寺で何とか救われます。 このお寺、青泉寺では、死者を湯水などきれいに洗い清め出棺していたの...
この所、高田郁の作品に嵌っています。 「みをつくし料理帖」「銀二貫」、 そしてこの度、「出世花」を読みました。 この小説の女主人公は武家の娘、旅中、毒草にあてられ父を失い、 本人にもあるお寺で何とか救われます。 このお寺、青泉寺では、死者を湯水などきれいに洗い清め出棺していたのです。 そう、映画「おくりびと」にも出てくる納棺師です。 この小説では「屍(かばね)洗い」と呼ばれていますが、 彼女もやがてこの道に入ってゆくのです。 この本では4篇ありますが、圧巻は最後の章です。 子を思う母の気持ち、母を慕う子の心根。 それがある運命によって、引き裂かれてゆきます。 世間から、なんと冷酷なと思われようとも 互いに想い合う気持ちで、二人はじっと耐えてゆきます。 このあたりの解きほぐしが実に見事です。 それが母子草という野草になぞらえることよって あざやかに表現されています。 心ふるえる一編です。 所で、タイトルの「出世花」の「出世」とは 仏教では世を捨てて仏道に入ることだそうです。 この本の裏表紙に、「著者渾身のデビュー作」とあります。 これが初の作品、なんとおそろしい作家が現れたものだと驚嘆しています。 なお、あとがきに続編は必ず書くと本人が語っていますので、 これは楽しみなことだとわくわくしております。
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漫画原作者から時代小説作家への転進をはかった「みをつくし料理帖」作者、高田郁のデビュー作。女敵討ちを果たせず行き倒れとなった父をもつお艶。青泉寺の住職に拾われ、「縁」と名乗ることになった娘は、死者の湯灌を行う三昧聖として成長する。作者の人柄が伝わってくる、しっとりとしたいい作品。
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青泉寺に拾われた天涯孤独の縁。 働き者の縁は養子にと請われるが、自ら青泉寺で湯灌の仕事をすることに。 普通の人は避ける、死人に触れる仕事に真摯に向き合う縁の様子に心打たれました。 映画「おくりびと」で脚光を浴びた納棺師の仕事ですが、本ストーリーは江戸時代。 現代よりもさらに貧富...
青泉寺に拾われた天涯孤独の縁。 働き者の縁は養子にと請われるが、自ら青泉寺で湯灌の仕事をすることに。 普通の人は避ける、死人に触れる仕事に真摯に向き合う縁の様子に心打たれました。 映画「おくりびと」で脚光を浴びた納棺師の仕事ですが、本ストーリーは江戸時代。 現代よりもさらに貧富の差&差別の激しいなか、死人に思いやりを持って丁寧に触れていく描写に暖か味を感じます。 一読の価値ありです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
これでデビュー作か・・、と思わずため息が出るほどの秀作。みをつくしシリーズと同じように、主人公が真っ直ぐでしゃんとした女の子。周りの人たちも、あたたかくてそれでいて人間味溢れて。辛いことも多い時代の、辛いことも多い職業のお話し。それでも、読みおわると、ほんわり優しい気持ちになって、しゃんと前を向いて生きていたいと思わせてくれる一冊です。
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高田郁さんのデビュー作。もうすでにこの頃に「澪つくしシリーズ」の要素を漂わせています。 決して幸福ではない主人公のまっすぐな生きかたと、周りの人の暖かい思いやりがお話を引き立てます。 短編が3つ。 主人公、縁はお寺で死体を洗う「屍洗い」。侮蔑されるその職業を通して、縁は色んな事に...
高田郁さんのデビュー作。もうすでにこの頃に「澪つくしシリーズ」の要素を漂わせています。 決して幸福ではない主人公のまっすぐな生きかたと、周りの人の暖かい思いやりがお話を引き立てます。 短編が3つ。 主人公、縁はお寺で死体を洗う「屍洗い」。侮蔑されるその職業を通して、縁は色んな事に出会って行きます。 途中、謎解きの要素なんかもあって、これはまたドラマ化されそうです。
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読後のすがすがしさ。主人公の清廉さ。安定の高田節(笑)。続編を書きたいという思いがあるようなので楽しみに待っています。個人的な好みとしては銀二貫やみをつくしのほうが好きかも。
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江戸のおくりびと。 途中で涙が・・・・・ ~俺はこの身体にこの面だ。今生ではろくな目には遭わねぇ。けれども正縁さん、あんたの湯灌を受けたなら、晴れ晴れとあの世へ旅立って行けそうな気がするんだ。~岩吉
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いい話なのだけど、やっぱり設定が少し特殊過ぎるな… おくりびと、の映画があったぐらいなので、特殊とまではいえないのかもしれないけれども。 やっぱり普通に商人とか料理人の話の方が明るくていいな。
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筆者のデビュー作。数奇な運命により屍洗いの三昧聖が主人公であり、それだけで過酷な人生といえるのであろうけれど、この主人公は幸福に見える。このように描けるこころが筆者の腕なのだろうと思う。また、ミステリー仕立てになっており、その面でも意外性があり質が高い。ただ、後の作品に比べると、...
筆者のデビュー作。数奇な運命により屍洗いの三昧聖が主人公であり、それだけで過酷な人生といえるのであろうけれど、この主人公は幸福に見える。このように描けるこころが筆者の腕なのだろうと思う。また、ミステリー仕立てになっており、その面でも意外性があり質が高い。ただ、後の作品に比べると、男性の描き方がややステロタイプでぎこちない。まあ、後の作品に比べてはいけないのだろうと思うけれど。
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