悼む人(上) の商品レビュー
『おまえを〈悼む人〉にしたものは、この世界にあふれる、死者を忘れ去っていくことへの罪悪感だ。愛する者の死が、差別されたり、忘れられたりすることへの怒りだ。そして、いつかは自分もどうでもいい死者として扱われてしまうのかという恐れだ。』 ハードカバーで読んだけどなかったので文庫で登...
『おまえを〈悼む人〉にしたものは、この世界にあふれる、死者を忘れ去っていくことへの罪悪感だ。愛する者の死が、差別されたり、忘れられたりすることへの怒りだ。そして、いつかは自分もどうでもいい死者として扱われてしまうのかという恐れだ。』 ハードカバーで読んだけどなかったので文庫で登録。主人公・静人、天童荒太作品のイメージが凝縮された存在というか天童荒太のメンタリティそのものみたいな感じがした。繊細で、柔らかく見えるけど頑固で、愛とか生とか胡散臭くて、ちょっと暑苦しいくらいに切実。静人が結局母・巡子の死に目に間に合わなかった(間に合わせなかった?)の、辻褄が合っててよかったよね。どの死にも優劣はないというのを体現したのだなぁ。極悪人はいない性善説のお話だけど目を逸らしちゃいけない現実をていねいに書いている、天童荒太が書くから私も向き合えた話だったと思う。孤独の歌声と永遠の仔と家族狩りを読んでいたから、〈悼む人〉を鼻で笑わず斜に構えずに受け止められた。 ちなみにくだらない後悔だけど戯曲版では向井理が演じたらしいですね。読む前に知りたかった! 向井理の静人、いいよ…。
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人の死、様々な死因があるが死後には殆ど死者に対する営みが家族以外されず、忘れ去られる。家族、親戚、同僚、更に鳥の死から死後に報われる世界を見ていた静人は「悼む」事でその死を弔った。知りたかったことは3つ、生前、誰に愛され、誰を愛し、誰から感謝されたのか。僧侶が悟りを受けるまでの修...
人の死、様々な死因があるが死後には殆ど死者に対する営みが家族以外されず、忘れ去られる。家族、親戚、同僚、更に鳥の死から死後に報われる世界を見ていた静人は「悼む」事でその死を弔った。知りたかったことは3つ、生前、誰に愛され、誰を愛し、誰から感謝されたのか。僧侶が悟りを受けるまでの修行のような旅を続ける。
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不慮の死ー事故・家事・喧嘩等々ーを遂げた人々を 死を迎えた現場で“悼む”旅を続ける青年。 誰を愛し、誰に愛され、どんなことで人に感謝されたことがあったか。それを知り、そのことを覚えておく事で、悼む。 彼が悼みの旅を続ける意味合いを、エログロ記者を目撃者・偽善者として、余命わずかな...
不慮の死ー事故・家事・喧嘩等々ーを遂げた人々を 死を迎えた現場で“悼む”旅を続ける青年。 誰を愛し、誰に愛され、どんなことで人に感謝されたことがあったか。それを知り、そのことを覚えておく事で、悼む。 彼が悼みの旅を続ける意味合いを、エログロ記者を目撃者・偽善者として、余命わずかな母親を保護者・代弁者として、望まない夫殺しの殺人者を随伴者・傍観者として、解き明かそうとしている。 少なからず影響を受ける者、嫌悪する者、死者の記憶の共有を喜ぶ者。掴みどころのない彼の行為は、本人さえ理解できていないのか? うーん?どうなるのか、下巻へ。
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一般的には存在しないであろう「悼む人」が、何かのメタファーになっているのだろうと思って読んでいたら読み終えていた。「悼む人」の真理とは何かが気になると同時に、死=悲しいとは違う何かを考えさせてくれる作品で、下巻を早く読みたくて仕方がない。
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不慮の死を遂げた人々が生前誰を愛し、誰に愛され、感謝されたかを聞き「悼み」の旅を続ける主人公、静人。 彼の行動に心を揺さぶられる蒔野や倖世もまた、重い枷を背負っている。心を鷲掴みにされるような、怖いほどに純粋な静人の思いが描かれる。 読んでいて、気持ちのどこかがしんどくなってく...
不慮の死を遂げた人々が生前誰を愛し、誰に愛され、感謝されたかを聞き「悼み」の旅を続ける主人公、静人。 彼の行動に心を揺さぶられる蒔野や倖世もまた、重い枷を背負っている。心を鷲掴みにされるような、怖いほどに純粋な静人の思いが描かれる。 読んでいて、気持ちのどこかがしんどくなってくる程に、自らの死生観を問われているよう。 どう結末を迎えるのか、下巻に続く。
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“悼む” ----- 人の死を悲しみ嘆く ----- といっても、静人は各人の死亡現場で祈りを捧げ、「あなたのことを憶えておきます」と唱えるだけで、事件・事故のネタは新聞記事やラジオから拾ったもの。 しかも祈りに際して死にいたる顛末には触れないと決めているため、唱える内容は...
“悼む” ----- 人の死を悲しみ嘆く ----- といっても、静人は各人の死亡現場で祈りを捧げ、「あなたのことを憶えておきます」と唱えるだけで、事件・事故のネタは新聞記事やラジオから拾ったもの。 しかも祈りに際して死にいたる顛末には触れないと決めているため、唱える内容はどれも酷似したものになってしまいます。 被害者の遺族や友人から罵倒されることも多いにも関わらず、薄っぺらい祈りを重ねて何になるのか。 何より、他人の死を悼むあまり、何より大切な家族の死を身近で悼むことができなかったのは本末転倒ではないでしょうか。 友人の命日を忘れるよりも罪深いように思えるのですが… 「静人の悼む行為は理解され難い」と作中でも槇野に指摘されていますが、全くその通りで、 最終的な行き着く先が見えず、困惑が残る結末でした。
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静人という青年がただひたすら亡くなった人を悼み旅をする。静人に出会い戸惑いと疑問を感じながらもいつしか惹かれていく週刊誌記者と夫を殺した女性、静人の母親の視点を通して物語が進む。 見ず知らずの亡くなった場所へ行き、周辺でその人のことを聞いてただ悼む。それにどんな意味があるのか、...
静人という青年がただひたすら亡くなった人を悼み旅をする。静人に出会い戸惑いと疑問を感じながらもいつしか惹かれていく週刊誌記者と夫を殺した女性、静人の母親の視点を通して物語が進む。 見ず知らずの亡くなった場所へ行き、周辺でその人のことを聞いてただ悼む。それにどんな意味があるのか、何の為にそんなことをするのか周りから批判や疑問を投げかけられる。私も同様に思ったし、読んだ後もその疑問を拭えない。 当たり前だが、死の描写が多くニュースを見ているようで気分が重くなった。 ただ静人以外登場人物が魅力的なのでサクサク入り込んで読めた。主人公にもかかわらず静人だけどんな人間かよくわからない。 わざとそう描かれているのかも。 下巻に続く…
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
最初は人の死の部分が多いから、気持ちが重くなって読むのがしんどかった。でも文章は読みやすく、サクサクと読み進められた 死 やはり厳かなものだと、自分が考えている事がこの本で改めて認識。 最初、主人公が他人の死を悼む行為に対して、わたしは腹が立った。知らない他人が、自己満足で死を扱わないでほしい、軽く扱われている気がして 読了後は、悼む行為は、、 死者自身が救われる行為であるんだと、、 読み始めはしんどく 読了後は、魂の救いを感じた 自分の気持ちがけっこう揺さぶられた一冊
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いろんな視点から静人が語られる。 それぞれが自分の感情や状況を乗せてひとりの人、行動を理解しようとする。でも本当のところはどうなのか分からない。 何かものすごい盛り上りがある訳じゃないけど、先が気になる。 今後どんな感じに進むのか?下巻が楽しみ。
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人の死とはどういうものなのだろうか。 この世にいなくなった人をずっと思い続けることはできるのだろうか。 僕も大切な人を亡くしたのに。 その時は胸が張り裂けるような思いをしたのに。 今は日常の生に追い立てられ、大事な人の存在も希薄になっていく。 静人の悼むということは何を意味する...
人の死とはどういうものなのだろうか。 この世にいなくなった人をずっと思い続けることはできるのだろうか。 僕も大切な人を亡くしたのに。 その時は胸が張り裂けるような思いをしたのに。 今は日常の生に追い立てられ、大事な人の存在も希薄になっていく。 静人の悼むということは何を意味するのか。 生とは死とは。 徐々に明らかにされていくエピソードがどう帰結していくのか。
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