ワーカーズ・ダイジェスト の商品レビュー
「暗い川に光がまたたいている。重信はその様子に目を細めながら、鍵盤ハーモニカのケースをひと撫でする。もう家に帰って寝たいとは思わなかった。今日のいつかに、いずれそう思うことはわかっていたけれど、いまはそう思わなかった。」 そんなにめちゃくちゃ好きってわけではないのだけれど、 気...
「暗い川に光がまたたいている。重信はその様子に目を細めながら、鍵盤ハーモニカのケースをひと撫でする。もう家に帰って寝たいとは思わなかった。今日のいつかに、いずれそう思うことはわかっていたけれど、いまはそう思わなかった。」 そんなにめちゃくちゃ好きってわけではないのだけれど、 気付いたら読みたくなるのが津村作品。 一応は、全作品読んでおきたいなぁ、と思ってしまう。 消極的津村ファンなのかもしれない。 今回も、イマイチやる気があるのかないのか分からない、職業人たちの 織り成す日々のお話。 偶然が偶然を重なって、まぁ物語なのだからなのだけれど、 同じ誕生日の二人が出会うわけですよ。 なんだろう、この客観性・・・ というぐらい、遠いところから物語を眺めてしまっていた。 いいのだけれど、入り込めない物語ではありました。 【7/21読了・初読・大学図書館】
Posted by
どうしようもない日常のなかに、ふと何かが前に転がり始める。そこで話が終わる。 ありがちっちゃありがち。まぁオチも見える。でも、その日常のどうしようもなさとか、でもそのなかにしか転がってく要素がないこととか、日常の期間の長さとか。そういう日々を描く文章はすんなり受け入れられた。柴崎...
どうしようもない日常のなかに、ふと何かが前に転がり始める。そこで話が終わる。 ありがちっちゃありがち。まぁオチも見える。でも、その日常のどうしようもなさとか、でもそのなかにしか転がってく要素がないこととか、日常の期間の長さとか。そういう日々を描く文章はすんなり受け入れられた。柴崎友香は好きやけど、私には若すぎるしなぁ、って人におすすめなのかも。うん、柴崎友香+10歳、みたいな印象。でもこんな風な日常って何時の間に終わるんやろか。年齢が区切りになるなら35,6あたりなのかな、とか考えたり。いずれにせよ、まだ僕には未到達の領域。でも、一度辿り着いたら戻って来れないけど。 君は永遠にそいつらより若い、のイメージを持っていただけに、著者の作風にまたちょっと違ったとこを感じました。
Posted by
32歳、か。若いのぅ。主人公たちがへんに格好をとりつくろうエピソードだったり、ループするようなクソな色恋で悩んだりしないのは好感。渇いてる文章すき。
Posted by
女32歳。あまりいいことがなかったというのは、厄年のせいだったのかもしれないけれど… 働く独身女は仕事や職場の人間関係、友人、疲れることばかりで、それでも、日々は過ぎていく。 打ち合せで出会ったその人は、同じ誕生日の同い年。 それ以降全く接点はないし、誕生日が一緒ということ以外の...
女32歳。あまりいいことがなかったというのは、厄年のせいだったのかもしれないけれど… 働く独身女は仕事や職場の人間関係、友人、疲れることばかりで、それでも、日々は過ぎていく。 打ち合せで出会ったその人は、同じ誕生日の同い年。 それ以降全く接点はないし、誕生日が一緒ということ以外のことは忘れてしまったけれど、ふとしたときに思い出す。 そして、同じく33歳になった二人は、東京と大阪で離れていたはずなのに、思いがけなく出会う。 そんな彼らの1年間は、重なり合いはしないけれど、今、重なってくるってなかなかおもしろいですね。
Posted by
最初から閉塞感ありありで、私は歳も主人公のダブル佐藤(笑)と同じなため、何かずっと自分が考えている気持ちなんじゃないかと錯覚してしまった。ラストまで二人には起死回生の出来事が起こる訳ではないのだが、ほんのりいい方向へ行くのかな、と思った。「オノウエさんの不在」もよかった。
Posted by
32歳は、欲望も希望も薄れていく年だった。けれど、きっと悪いことばかりじゃない。重信:東京の建設会社に勤める。奈加子:大阪のデザイン事務所に勤め、副業でライターの仕事をこなす。偶然出会った2人は、年齢も、苗字も、誕生日まで同じ。肉体的にも精神的にもさまざまな災難がふりかかる32歳...
32歳は、欲望も希望も薄れていく年だった。けれど、きっと悪いことばかりじゃない。重信:東京の建設会社に勤める。奈加子:大阪のデザイン事務所に勤め、副業でライターの仕事をこなす。偶然出会った2人は、年齢も、苗字も、誕生日まで同じ。肉体的にも精神的にもさまざまな災難がふりかかる32歳の1年間、ふたりは別々に、けれどどこかで繋がりを感じながら生きていく―。頑張るあなたに贈る、遠距離“共感”物語。 あんまり心に残らない内容だった・・・。
Posted by
ああ、やっぱりものすごく好きだ!!津村記久子。すごくおもしろくて読みやすくて、たたーーーと読んでしまったのでもう一度読もうと思ってる。なにか大きなできごとがあるというわけでもなく、平凡で、ぱっとしない、いやむしろそれより悪いというか、理不尽で苦しい勤め人生活の話が続いて、とくに変...
ああ、やっぱりものすごく好きだ!!津村記久子。すごくおもしろくて読みやすくて、たたーーーと読んでしまったのでもう一度読もうと思ってる。なにか大きなできごとがあるというわけでもなく、平凡で、ぱっとしない、いやむしろそれより悪いというか、理不尽で苦しい勤め人生活の話が続いて、とくに変化もないんだけど、なんというか、ああこんなんでいいんだなーと励まされるというか。若いときとは違って大人になって制約も増えて体も衰えてきたりして、できないことも増えていくけど、それでいい、と。今できることをしていけばいいんだ、と。ムリに、善きことをしたり、前向きになったり、がんばったりしなくてもいいんだ、と。ちょっとずつ自分なりの好きなことや楽しいことを見つけてちょっとずつやっていけばいいんだ、と。
Posted by
あまりにリアルなワークライフの描写が息苦しい。一歩大人になれば、イライラも来るしさも受け入れられる日がくるんだろう。ささやかでリアルな希望が見えるエンディングがよい。
Posted by
日常のごくありきたりな出来事が特に印象的な景色や言葉もなく淡々と綴られ、電車の中であっという間に読み終えた。
Posted by
すべてのはたらく人びとに対する「応援本」! 津村記久子を知ったのは、今年の1月号(だったかな・・・)の「新潮」だった。 どこまでも淡々とした語り口、それはまるで何かを諦観しているよう。 だけど読後感は不思議と明るく、希望がない訳ではないのが印象的だった。 それから半年以上経っ...
すべてのはたらく人びとに対する「応援本」! 津村記久子を知ったのは、今年の1月号(だったかな・・・)の「新潮」だった。 どこまでも淡々とした語り口、それはまるで何かを諦観しているよう。 だけど読後感は不思議と明るく、希望がない訳ではないのが印象的だった。 それから半年以上経ったある日に、 立ち寄った書店のレジ前にあった「仕事本コーナー」からなんとなく手に取り、そのまま購入してしまった一冊。 帰宅してさっそく開き、やられた・・・と思った。 冒頭の、今にもぶっ倒れそうになりながら出勤していく主人公の描写に、 首がもげそうなくらい頷いてしまった。 お世辞にもすばらしいとは言えない職場環境で、 惰性のように日々を生き、働き続ける男女二人。 なんでかうまくいかなくなってしまった同僚との仲に悩んだり、 不可解なクレーマーにつかまってしまったり、 彼らの日常は傍から見ていても本当に大変そうである。 それでも二人は何とか前を向き続けるのだ。 別に握りこぶしをつくるでもなく、 声高に思想、理念を掲げるでもなく、 ふと気づいたら、あぁ目の前に光が見えていた、 という具合に、肩の力を抜いて、笑う。 作品世界に共感して、 空って世界中どこでも繋がっているんだよなぁ、 と、そんなことを思ったりもした。 どういうことかいなと気になった方はぜひ読んでみてください(単行本ですけれど)。
Posted by