ワーカーズ・ダイジェスト の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
二人の佐藤が主人公。 女佐藤は大阪のデザイン事務所で働いていて、ライターの副業をしている。 男佐藤は建設会社のサラリーマン。 仕事で短い接触を遂げた二人は、同じ苗字の上、生年月日も同じだと知るが、特にロマンスは生まれず別れる。 女佐藤は職場の同僚女性たちとの人間関係や面倒なクライアントの相手に疲弊している。 男佐藤は東京から地元大阪に転勤になっても、変わらず大きな野望も持たず、それなりに真面目に働いている。 二人の一年を淡々と綴った物語。 ささやかな事件や問題が二人に降りかかるけれど、 特に人生を変えるようなドラマは起こらない。 本当に、ありふれた30代前半サラリーマンの日常。 淡々とした雰囲気は悪くなく、面白くないわけではないけど、ここまで盛り上がらないと少しつらい。 中盤、クレーマーに悩まされる男佐藤と、 どうしようもない同僚にぶちきれる女佐藤のくだりはどんどん読めて、 うまいなあと思うけれど、山場が過ぎるとまた淡々とした日々に戻る。 とにかく淡々としすぎている。 まるで日常みたいだ。 だからこの「淡々」を、日常に疲れたサラリーマン読者は高く評価しているようだけど、なんだか健全な楽しみ方ではない気がする。 たぶん最初から最後までリアルすぎるから。 作中、いくつか問題や謎が出てくるものの、 忙しさにかまけたり、どうでもよくなったりしてそれらは答えが提示されることなく今の忙しさに押し流されて消えていく。 この辺りがとても現実的だと思った。 日常のすべてを解きほぐすのは不可能で、苛立ちも矛盾も他の問題で上書きすることで生きていける感じ。 そう、リアルだけど、リアルなことは必ずしもいいことだろうか。 読み手がこんな物語を必要としているかそうでないかで評価は大きく分かれる。 たぶん本なんてそんなものだろうけれど、 物語の中まで「毎日ってこんなに代わり映えしないし楽しくもないけど、まあぼちぼちがんばれ」って言われたいかどうか、それにかかっている。 ただ、あくせく働く人々が望むささやかな希望がこめられているとは思う。 そして満員電車に詰め込まれる人々を「柔らかい消耗品」と表現したフレーズだけで、この人は特別な人だと思った。
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はじめの2ページは何てよくわかってるんだ!!って思ったのになー。なにもないと物足りないけど、ドラマチック過ぎるのは違うなぁって思ってしまう。もうSFとか全く違う世界の話を読むしかないのかなぁ。
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冒頭の「中々定時に起きれない」って所に共感して手に取った。その後の気だるさ感が伝わってくる文章にリアルさを感じる。でも、今の私にはその気だるさ感にエネルギーを奪われるような鬱陶しさを感じ、読み進められなかった。
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かなり退屈な小説だった。あまりにも登場人物が普通すぎるし、同じような人だらけ。小説って人物のキャラクターに差異がないととっても地味なものになってしまうのだ。そういう意味では、非常にリアルな小説でもあるかもしれない。普通の人の書く普通の日記を淡々と読まされているような空疎さがあった...
かなり退屈な小説だった。あまりにも登場人物が普通すぎるし、同じような人だらけ。小説って人物のキャラクターに差異がないととっても地味なものになってしまうのだ。そういう意味では、非常にリアルな小説でもあるかもしれない。普通の人の書く普通の日記を淡々と読まされているような空疎さがあった。この著者の現代のプロレタリアをテーマとして描く姿勢はいいと思うが、もうひとつ色々足りなかったなという気がする。しかしところどころで出てくる、音楽がマニアックでそこは際立っていた。
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30代の働いている男女のリアルな日常。 大きな仕事を成し遂げる達成感!とか。 困難な仕事に打ち勝つリーマン魂!とか。 そういう劇画チックな熱いサクセスストーリーとは程遠い、働いている人ならわかる倦怠感だとか焦燥感だとか肉体的衰えの表現がガチでリアルです。 「ワーカーズダイジェスト...
30代の働いている男女のリアルな日常。 大きな仕事を成し遂げる達成感!とか。 困難な仕事に打ち勝つリーマン魂!とか。 そういう劇画チックな熱いサクセスストーリーとは程遠い、働いている人ならわかる倦怠感だとか焦燥感だとか肉体的衰えの表現がガチでリアルです。 「ワーカーズダイジェスト」と「オノウエさんの不在」の2編。 たまたま打ち合わせでであったデザイン会社の女性社員奈加子と建築会社のの男性社員重信。 二人は同じ苗字で同じ誕生日で似たような感覚の持ち主。 でも、だからといってすぐに仲良くなるわけでもなく。 ただなにかの折にふと思い出す程度の赤の他人。 奈加子は同僚で既婚者の富田さんに、何故だか理由はわからないけど急に避けられて、仕事の依頼元の男性に仕事の駄目ダシを何度もされて… 重信はうつ病になった同僚の代わりに大阪に配属になって元同級生らしい人物に覚えのないクレームをつけられ… 上手く行くことばかりじゃないし、スッキリ物事が解決するわけじゃない。 でも、なんだか同じ年の友人の近況を聞いているような「あ~あ~わかるわかる」っていう感じ。「で?どうなったの?」と話の続きが気になる。 ハッピーエンドで大団円!って終わり方じゃないけど、ほっとするような上手く行けば良いねぇ~って終わり方で楽しく読めました。 この話の二人みたいに、作者の「津村記久子」さんの名前が私のHNと同じキクコだし、会社員兼業ということでなんだか親近感があって頑張って欲しいなぁと勝手に思っていたんですが、ようやく読みました。 ここら辺が日常生活に疲れている人間の「アレやりたい」と思いつついつまでもダラダラ実行できない瞬発力の衰えが現れていますが。 読みやすくってスラスラ読めたので今度はポトスライムとアレグリアも読みたいです。 それにしても、重信の仕事場のクレーマーの奥さんはなんなの。 だんなさんにベッタリなのに重信にちょっかい出そうとするその気持ちだけはちょっとよく理解できなかった。
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これは私のことだ、と読者に思わせたなら、その小説は成功だという。その意味では本書の2箇所、サンマルコの茄子カレーのところと、マトリョミンのところで「これ、俺やん」と思いました。それはさておき、やっぱりこれは働く人のためのファンタジーです。御伽噺みたいに、読者と微妙に重なる主人公た...
これは私のことだ、と読者に思わせたなら、その小説は成功だという。その意味では本書の2箇所、サンマルコの茄子カレーのところと、マトリョミンのところで「これ、俺やん」と思いました。それはさておき、やっぱりこれは働く人のためのファンタジーです。御伽噺みたいに、読者と微妙に重なる主人公たちに幸あれかし、と思わせる、その見事さ。特に不幸でも、善良でもない、あまりに普通な人々の、あまりに普通なしんどさ、切なさ、そして淡白すぎる希望。エンディングはあるいみ最初からわかっているのだけれど、けっして予定調和の嫌味がない。いい小説です。 ただ、オノウエさんの不在ともどもゼネコン勤務の男性が主人公ながら、なんか、ゼネコン事情にそれほど詳しくないような?もし関係者が読んだら少しリアリティが薄いと感じるかもしれません。
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津村さんの作品らしく?、 そぅそぅあるある…みたぃな、ふつぅなテーマ…。 表題作の方は、 引っ張ったわりには、最後の展開が安易な気も…。 もぅ一遍の方は、 引っ張らなかったのが、よかったのかな…?? なんか…、自分の感想も、イマイチなんだよねぇ…。 それだけふつぅな感じ…。...
津村さんの作品らしく?、 そぅそぅあるある…みたぃな、ふつぅなテーマ…。 表題作の方は、 引っ張ったわりには、最後の展開が安易な気も…。 もぅ一遍の方は、 引っ張らなかったのが、よかったのかな…?? なんか…、自分の感想も、イマイチなんだよねぇ…。 それだけふつぅな感じ…。可もなく不可もなく…みたぃな…。 あっ…、でも、読者が、 主人公と等身大じゃないと、普通感が出てこなぃかも…。
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何か分かる,といういつもの感想。佐藤さんを応援している自分が不思議だった。そうさせる作品だからか,私の環境が変わったからか。
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序盤から中盤にかけては鬱がうつりそうだった。 最後は光ある未来をちらつかせた感じ。 でも誰かにどうしようもなくむかつくこととか、人生に微妙な絶望感を抱いていることとかには共感できました。
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大阪OLの物語。毎日のちょっとした迷いとか、女同士のすれ違いとか、共感できるところがビシビシあった。
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