電通とリクルート の商品レビュー
電通をはじめとする大手広告代理店の収益は、マス・メディアとの長い歴史の中で育まれた関係を維持することでもたらされてきた。広告ビジネスには、外部からの印象以上に、きわめて「農耕的」な風土がある。 それに比して、リクルートは次々とメディア自体を開発して、クライアントを開拓してきた。対...
電通をはじめとする大手広告代理店の収益は、マス・メディアとの長い歴史の中で育まれた関係を維持することでもたらされてきた。広告ビジネスには、外部からの印象以上に、きわめて「農耕的」な風土がある。 それに比して、リクルートは次々とメディア自体を開発して、クライアントを開拓してきた。対比的にいえば、明らかに「狩猟的」である。p10 「発散志向広告」と「収束志向広告」 リクルートが毛細管の拡張と維持を最大の経営資産としていったのに対して、電通は元栓を押さえることで収益の基盤を確立した。p61 Cf. 「金曜日はワイン」→辞書的、文脈の書き換え 「幸福のペンタゴンモデル」 ①時間密度 ②手ごたえ実感 ③自尊心 ④承認 ⑤裁量の自由 Cf. 『幸福の方程式』p98 Cf. 『「分衆」の誕生』
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※このレビューにはネタバレを含みます
1980年代から両社が拡散志向広告と収束志向広告で相互補完してきた歴史を通して、広告と消費社会の30年間がざっと分かった。 2007年に両社が資本提携したという「オチ」もインターネット時代の広告ビジネスをとりまく現状を考えれば必然だったんだろう。 なんにしても両社ともすごい会社だ。
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企業論に見せかけて時代論。電通とリクルートをベースに戦後の広告業界が求められてきた社会への役割を概要で語る一冊。視点が遠距離すぎて電通とリクルートの内情なんて一切でてこない。数値としては売上利益の推移があるぐらいで、あとは電通の主な広告とリクルートが発行した媒体から時代のありよう...
企業論に見せかけて時代論。電通とリクルートをベースに戦後の広告業界が求められてきた社会への役割を概要で語る一冊。視点が遠距離すぎて電通とリクルートの内情なんて一切でてこない。数値としては売上利益の推移があるぐらいで、あとは電通の主な広告とリクルートが発行した媒体から時代のありようを茫洋と語るのが主題。分析の内容は納得できる部分がそれなりにあるにはあるが、それを裏付ける要素がなく、同じことを何度も何度も語るもんだから読めば読むほど説得力が下がっていく。人目を惹くタイトルで釣ってんだから「そうだったのかもね〜」以上の感想を読者に与える具体性が欲しかった。
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著者の言う変換と編集の違いについて検討。意味自体の編集と、メタデータの編集。新たな疑問。メタデータはコンテクストか。コンテクストはメタデータか。 著者の対置に従えば、「電通的」とはコンテクスト編集であり、「リクルート的」とはメタデータ編集と言える。そこで先の疑問。本質的な違いは...
著者の言う変換と編集の違いについて検討。意味自体の編集と、メタデータの編集。新たな疑問。メタデータはコンテクストか。コンテクストはメタデータか。 著者の対置に従えば、「電通的」とはコンテクスト編集であり、「リクルート的」とはメタデータ編集と言える。そこで先の疑問。本質的な違いは? リクルートは「住宅情報」で、怪しげな不動産広告市場をクリーンにする一助を担ったという。「徒歩一分=80m」に象徴されるように。いまの共同購入クーポン市場に必要なのもまさにそれだ。住宅情報創業に関する資料を掘り起こす価値はありそう。 「電通的広告」がいかに夢を語ろうとーすでに80年代からー「リクルート的広告」には現実が並んでいた。それは価格という現実だ。そこに人々は自分自身の情報を読んでもいた。ーこれは慧眼。 コミュニケーションとは「編集された情報の伝達・交換」ではなく、「編集構造・編集体系の伝達・交換」である、というのに似ている。情報誌に自分自身を読み、行動を決定するという行為もまた「編集」だからだ。 「電通的」は「コンテンツ的」、「リクルート的」は「アーキテクチャ的」。
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『売れないのは誰のせい?』に続いて著者が新潮新書から出した一冊。隣どうしで並んでいたから手に取り、『売れない~』のほうはかなり納得して読めたんだけど、こちらはいまいち。ま、あくまでも憶測だけど、ネタに困っちゃったんじゃないかなと。前著で述べていたことが再出していたりもするし。そも...
『売れないのは誰のせい?』に続いて著者が新潮新書から出した一冊。隣どうしで並んでいたから手に取り、『売れない~』のほうはかなり納得して読めたんだけど、こちらはいまいち。ま、あくまでも憶測だけど、ネタに困っちゃったんじゃないかなと。前著で述べていたことが再出していたりもするし。そもそも、編集者の発案だそうだが、タイトル見たときに何となく違和感があったんだよね。コピーとしてのツカミはいいんだけどね、著者らしくはない。 書中では、電通とリクルートの両者を広告界の雄としつつ、前者のマス広告を発散志向、後者を現在のネット広告のような個人向けの収束志向と位置づけて対比的に論じている。いや、というよりは大筋では発散志向から収束志向へと流れてきた広告の世界、人々の思考性を論じている。そのあたりは著者の真骨頂でおもしろい。 いかにも自分で選択しているような現代人だけど、その実、大海を一人で漕いでいる小舟のようなものだとか(ま、いろんな船に乗り移れるのが実際の航海者とは違うと書いてあったけど)。そういう頼りない状況だから、一人で後悔しているようで、人の航跡をたどったり、コバンザメのようだったりするという。一人で選ぶのは酷だからネット評とか気にしてしまうという文脈なんだけど、これって医療とかにしたら顕著かも。治療法の選択とか、患者任せにされるのはそれなりに酷だよな。 ネット評といえば、事前情報との期待値で評価をする現代というのもおもしろいなと思った。「みんなが賞賛しているほどの名店じゃなかった」みたいな評のことを指すんだけど。 ただこの本、タイトルからすると電通とリクルートについて論じているみたいだし、実際のところタイトルで手に取った人はそれを期待するだろうから、自分もその一人でちょっと齟齬を感じたまま読んでしまったかな。そもそも、自分に広告界の知識がないこともあるかもしれないけど。
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題名から、広告業界の泥沼で生き馬の目を抜く世界を紹介するのかと思ったら、戦後広告史を丁寧に俯瞰する良著だった。ちなみに著者は博報堂出身で、両者にたいして妙に距離のある書き方だったのもあとがきまできて納得した。
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電通とリクルートという、非常に関心を引き付ける2社の歴史と共に日本人の情報との関わり、購買欲のあり方の変遷について論じる。 目新しい点は特に見当たらず。図書館で借りてもよかったかな。 今の時代は答えあわせをする、というようなことが書いてあり、確かにと思う一方、はじめから決めつ...
電通とリクルートという、非常に関心を引き付ける2社の歴史と共に日本人の情報との関わり、購買欲のあり方の変遷について論じる。 目新しい点は特に見当たらず。図書館で借りてもよかったかな。 今の時代は答えあわせをする、というようなことが書いてあり、確かにと思う一方、はじめから決めつけて結論に持っていっている感があり素直に頷けない。
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最近この本の存在を知ったので読んでみました。発散志向の電通と収束志向のリクルート、という対比で展開される前半。そして、この十数年で広告が日本人の消費行動にとってどのような存在になったのかで展開される後半。個人的には、後半が興味深かったです。
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(summary) 電通=発散志向型広告、リクルート=収束志向型広告と比較の視点を持ちつつ両社は相互補完的な役割を果たしながら消費者/労働者である同一の人に様様な影響をもたらしてきたとしている。ネットの浸透により広告は一つの情報ソースの一つとして組み替えられ再整理されたため、憧憬...
(summary) 電通=発散志向型広告、リクルート=収束志向型広告と比較の視点を持ちつつ両社は相互補完的な役割を果たしながら消費者/労働者である同一の人に様様な影響をもたらしてきたとしている。ネットの浸透により広告は一つの情報ソースの一つとして組み替えられ再整理されたため、憧憬を生み出すことが困難となった。こうした中で、広告ビジネスのあり方は変化が求められており、それは自分で自分のことを決める際に本当に役に立てる情報を伝えること、つまり自由と自立への支援という原点への回帰である。 (memo) 電通とリクルートの相違点 •電通=関係維持のための営業/農耕的風土/発散志向広告/変換スキル •リクルート=新規開拓のための営業/狩猟的風土/収束志向広告/編集スキル 両社の共通点 •情報を加工して届ける •買う人/稼ぐ人という同一の人 •情報の流れの元栓を押さえる •インターネットによって企業ポジションに揺らぎが見える 広告のあり方 •消費活動と広告へのニーズは比例(GDPと広告費は比例)⇒消費の量的拡大が広告の使命 •拡声と伝達⇒1970s〜辞書の書き換え(=幻想への憧れ)⇒拡声と伝達(?) •欲求の多様化 •人々が欲しかったのはモノではなくモノを買う理由 •消費財のマス依存度UP=マス広告の効果が限定的に •広告も数多くの情報の中に再整理された •新たな意味を付け加えるのは広告からメーカーへと変遷した ex)DS,Wii,食べるラー油 •情報自体に感謝する時代 •情報の期待値と体験の答え合わせをする時代
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本屋で見かけて色々ない見で興味深い2社なので気になって衝動買い(3時間で読了) 内容が必ずしも悪いわけではないが、電通とリクルートについてではなく、広告業界全体の社会や時代背景、それぞれの時代に両社がどのようなポジションでどのような戦略をとってきたのかということが書いてあるだけで...
本屋で見かけて色々ない見で興味深い2社なので気になって衝動買い(3時間で読了) 内容が必ずしも悪いわけではないが、電通とリクルートについてではなく、広告業界全体の社会や時代背景、それぞれの時代に両社がどのようなポジションでどのような戦略をとってきたのかということが書いてあるだけで、両社についての理解が深まるような内容ではなく、少々期待はずれであった。 電通は「拡散型情報」、リクルートは「収束型情報」というのは、そのとおりだと思うので、タイトル負けしている感じが強い。読む価値がないとは言わないが、そういうものと理解して読んだほうが良い本。
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