さよなら渓谷 の商品レビュー
男は昔、ある許されない罪を犯した。それは若気の至りとしか言いようのない出来事で、常にその罪を感じながら生きている。それは男であることそれ自体が悪であるような罪であった。 女は一生を被害者として生きないといけなかった。ただ単純に可愛そうな人としてではなく、汚され避けられるべき存在と...
男は昔、ある許されない罪を犯した。それは若気の至りとしか言いようのない出来事で、常にその罪を感じながら生きている。それは男であることそれ自体が悪であるような罪であった。 女は一生を被害者として生きないといけなかった。ただ単純に可愛そうな人としてではなく、汚され避けられるべき存在として、いつも見られていた。 加害者は罪を償えるのか、被害者は加害者を許すべきなのか、そして幸せになれるのか。 男と女の極限の関係を通して、償うとは、許すとは何か、考えさせられる作品でした。
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なるほど。尾崎は最初に出会った時少しだけ表現を間違ってしまっただけなのだ。自分が好きだったらちゃんとした表現をもってして向かえばいい。一時の感情に振り回され犯してしまった過去それは取り戻せない。例え本当に好きな人だったであろうと。
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子供を失った女に焦点が向く物語かと思ったが、その隣人の物語だった。 途中からかなこは偽名で被害者と加害者が一緒にいる事は気付いたが、結局あの子供を殺めた犯人はだれだったのか?母親?そしてその母親のメディア陣に対する奇行にも謎がのこるままだった。 綺麗に終わらず、ずーんとしたまた...
子供を失った女に焦点が向く物語かと思ったが、その隣人の物語だった。 途中からかなこは偽名で被害者と加害者が一緒にいる事は気付いたが、結局あの子供を殺めた犯人はだれだったのか?母親?そしてその母親のメディア陣に対する奇行にも謎がのこるままだった。 綺麗に終わらず、ずーんとしたまた終わるのがいかにま自分の好きな吉田修一の作品だ。 悪人や怒りからファンになっただけあって、やはり彼の小説には独特の感情が芽生え、それは吉田修一らしさと、自分の中ではどんどん確立されていっている。
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傑作である。そして吉田修一の凄さが際立つ作品だと思う。まず情景描写の素晴らしさ。そして人間の描き方。加えて複雑な感情表現・・・それらが組み合わさってはいるが、サラリと描くのが実に旨いのだ。 なので、先が読めるとか、あり得ないとか、都合がよすぎるとか、正直どうでもいい。人によって感...
傑作である。そして吉田修一の凄さが際立つ作品だと思う。まず情景描写の素晴らしさ。そして人間の描き方。加えて複雑な感情表現・・・それらが組み合わさってはいるが、サラリと描くのが実に旨いのだ。 なので、先が読めるとか、あり得ないとか、都合がよすぎるとか、正直どうでもいい。人によって感じる度合いや深さが異なるように敢えて書いているのだから。よって様々な意見が無限に出てくるのは当然であり、それが作者の狙いでもある。 反発が出てくる事も承知の上でこのテーマに踏み込んだ吉田修一の覚悟が伝わってくる。
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ある夜の出来事を許してほしい、忘れたい、そう思っても自分をずっと許せない男女が探すのは、生きていく場所なのか死に場所なのか。若かりし頃にノリで踏み外した一歩の代償は大きい。暑い夏のジメッとした描写のなかに、どことなく冷え冷えした空気感がずっと漂っていた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
あらすじや登場人物の関係性はなんとなく知ってた上で読んだけど、最後まで引き込まれて一気に読んでしまったのはさすが吉田修一さん! 夏美のこのセリフが苦しくて印象的だった。 私が死んで、あなたが幸せになるのなら、私は絶対に死にたくない。 あなたが死んで、あなたの苦しみがなくなるのなら、私は決してあなたを死なせない。
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さよなら渓谷 吉田修一著 1.購読動機 「路」「森は知っている」と読了してきました。 前情報なく、既知の作家さんなので手にとりました。 渓谷からは、清らかなイメージがわいたからでもあります。 2.テーマ 罪を犯し、生きる意味、生活することへの疑問を抱く男。 そして、その罪の...
さよなら渓谷 吉田修一著 1.購読動機 「路」「森は知っている」と読了してきました。 前情報なく、既知の作家さんなので手にとりました。 渓谷からは、清らかなイメージがわいたからでもあります。 2.テーマ 罪を犯し、生きる意味、生活することへの疑問を抱く男。 そして、その罪の犠牲になり、両親もそして自らの幸せも壊された女性。 この2人を軸に物語が進行します。 他の人のレビューにあるとおり、過去、複数の大学で事件になった「暴行」を扱っています。したがって、物語とはいえ、読むのを躊躇うこともあります。 3.作者がなぜこのテーマを、そして伝えたかった世界は、、、 物語の登場人物のセリフに、作者の想いが込められている作品は多いです。 しかし、この作品は、それが少ないからでしょうか? 読者側に相当の想像力を求めているようにも感じます。 罪を犯した者と、その被害者が、なぜ一つ屋根の下で暮らすのか? その背景と展開に、吉田修一さんは、何を託そうとしたのか、、、 残念ながら、僕には、言語化できるほど消化は出来ませんでした。
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〇暗い空気、絶望が支配する物語に救いが訪れてほしい 桂川渓谷の奥にある団地に住む幼児が殺害された。 その母親が犯人と疑われ、警察に連行されていったが、その隣の部屋に住む夫婦の夫がその母親と不倫関係があるのではないか、と疑われる。 疑われた夫である尾崎俊介の出自を調べる、雑誌記...
〇暗い空気、絶望が支配する物語に救いが訪れてほしい 桂川渓谷の奥にある団地に住む幼児が殺害された。 その母親が犯人と疑われ、警察に連行されていったが、その隣の部屋に住む夫婦の夫がその母親と不倫関係があるのではないか、と疑われる。 疑われた夫である尾崎俊介の出自を調べる、雑誌記者の渡辺は、俊介が過去にレイプ事件を起こして大学を退学していることを突き止め、当時の関係者らにあたっていく。妻のかなこがそのことを知らずに結婚したのか、そして仲睦まじく歩いている二人の姿を見ていた渡辺は本当に俊介が不倫していたのか、不思議に思い、バディの小林と一緒に調べを進めていく中である事実に気づく。 * 2013年6月に映画が公開され、主人公のかなこ役に真木よう子を迎え、演じさせたのは「可哀そうな妻」役。 ところが、読んでいるうちに、かなこが警察に俊介を告発し、ガラっと様相を変える。え、なんでそんなことしたの、と。 その感情を引きずったまま、読者は2つの別の線が実は一緒になってしまうことに、記者の渡辺・小林と共に気づかされる。 全体として、はじめから支配する不穏な空気をむんむんと感じつつも、この物語は「愛」の物語であるとさえ思った。 しかし、2つの別な線が一緒になってしまったとき、その「愛」は、何を原動力にしたものだったのか、途端に私たちはわからなくなるはずだ。 レイプの残虐さを、静かに伝えるこの小説。 静かだが、男性の視点(加害側)、女性の視点(被害側)、それぞれからそれぞれの心の動きを丹念に表現する。登場人物に語らせるのは残酷だ。 しかしその心の動きに、やるせなさ、諦め、憤り、怒り、反省、すべての感情がないまぜになって、現状があるのだ、と気づかされる。絶望さえ、感じる人もいるに違いない。 かなこの幸せとは、夫婦の幸せとは、「愛」とは、いったいどこにあったのだろうか、悶々と考えざるを得ない。 相容れない男女の姿を私たちは目撃し、最後は呆然とするだろう。
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※このレビューにはネタバレを含みます
幼児殺害事件と尾崎と里美の間に起きた決して忘れることのできない過去から、それぞれが歩んできた2人。うだるような暑さの描写や男性からの視線が印象的だった。当時いた同級生の1人は、社会的地位にいて女性のこと、そんな風に思ってたのがいると思うと虫酸が走った。決して幸福とは言えない人生を送る被害者。 尾崎と立花里美が一緒に暮らしてる?2人にはもう何もない…池袋の映画館で「許して欲しいなら死んでよ」から結末が展開していった。話しの内容は理解しがたいけど、不思議と惹き込まれてしまうのは吉田修一さんだからなのでしょうか。
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